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太陽王の剣〜命を懸けて、君と世界を守り抜く!〜

みりん

10 ステラの提案

「ほう。なるほど。それで、目覚めた時にはオームにいた、ということだな?」

 アルサスが顎を撫でて唸った。

「うん。そう……。それがオームで、グラディウムからずっと離れた、大陸の最西南の都市だって理解するまでには、数日かかったけど……」

 ステラはその後の数年間をオームで過ごした。その間にオームの伝統舞踏カルミナを覚え、半年前に思い立ち、踊りで旅費を稼ぎながらゆっくりとグラディウムまで旅をして、先日ようやく首都に帰ってきたばかりだと話した。

「ふ~ん。じゃあ、君は6年前、その男に呪いをかけられてから、そんな奇妙な体質になったっていう訳だ」

 レオニスが言うと、ステラは、また嗚咽がぶり返したようで、震えながら涙を拭った。

「うん。ステラ、ステラあれ以来初めて会ったよ。ステラのこと忘れない人。ずっとずっと探してた。カルミナを踊るのも、お金を稼ぐだけじゃなくて、踊りを見た人の中でステラのこと覚えてくれる人が現れないかなって思って。毎日同じ時間に、同じ場所で。派手な格好をしたらどうかな、とか。複雑な踊りの技を使ったらどうか、とか。いろいろやってはみたけど……。大抵『こんな素晴らしい踊り手に会えたのは初めてだよ』って言われて終わり……」

「じゃあ、君には呪いの力を操る力はないんだね?」

 レオニスが念を押すと、ステラは怒ってレオニスをきっと睨んだ。

「当たり前だよ! そんなこと出来るなら、こんな寂しい、悲しい思いしてない! なんでわざわざ自分から一人ぼっちになるようなことしないといけないの?」

「だよな。ごめん。いや、なんで僕だけは覚えていられるんだろうと思って……」

 レオニスが謝ると、ステラは気を取り直したように微笑んだ。

「きっと、レオニスがおじさんの言ってた“継承者”なんだよ!」

「“継承者”ねえ」

 アルサスが呟く。この場には部外者のホークがいるため、口には出さなかったが、レオニスとデンテとアルサスが頭に浮かんでいるのは同じ言葉だった。レオニスが継承者であるとするならば、その男は、レクス神の御印を持つ“王位継承者”にのみ、呪いの効果が及ばない魔法をかけたことになる。

 三人が無言で目配せし合っていると、そんなことにはお構いなしで、ステラは何かを思いついたように、ぽんと手を叩いた。

「ステラ決めた! これから、ずっとレオニスと一緒にいる!」

 そして、レオニスの腕に自分の腕を絡めてその肩に頬を寄せた。

「うわ! また!?」

「もう離れない! 一人ぼっちはもういや! これから一生、レオニスの傍で生きることにするー!」

 甘えるように頬をすり寄せられて、免疫のないレオニスは動転して赤面した。耳まで真っ赤に染めながら、ステラを引き剥がしにかかる。

「だから、くっつくなって!」

「いいなー。美少女の抱擁。羨ましい……」

 ホークが呟くと、レオニスはきっと睨みつけた。

「どこがっ!? 鬱陶しい! こんな泥棒女に懐かれても全然嬉しくないよ!」

「そんなこと言わないで! レオニスもきっと、ステラのこと好きになるよ! ステラ、こう見えても、最近モテるんだよ! 踊りを踊ってるとき、いっぱい告白されるんだから! まあ、すぐ忘れられちゃうから、後が続かないんだけどねー……。うう」

「泣くなーっ! 誰が君なんか好きになるもんか! 離ーれーろーっ!」

 無理やり引き剥がされたステラは、うるうると瞳を潤ませてレオニスを見つめる。

「まあ、そう照れるなよ」

 アルサスが若干ニヤけ顔で諌めるが、逆効果だった。レオニスは叫ぶ。

「照れてません! そんなことより! 僕たちは至急やるべきことがあるんですよ! 早く城に行きましょう!」

「お城? グラディウム城に何か用でもあるんですか?」

 ホークの問いかけに、レオニスは慌てる。

「観光だよ! なっ! 俺達普段首都に来ることないから、やっぱり王国一の城ってやつを見物していこうと思ってな!」

 デンテがとっさにでっち上げた嘘に、レオニスは縦に首を何度も振って合わせた。

「そうなんですかあ。グラディウム城は見事ですよー。幾重にも連なる塔。純白で彫刻の施された壁や柱。200年前に大改築された時に取り替えられたという精巧な装飾をされた屋根! どれも美しいと有名なんですよ。王国に建てられた中で最も素晴らしい建造物です!」

 ホークは頬を紅潮させてまくし立てた。城マニアだったらしい。

「へ~。そうなんだ」
「なんなら、ご案内しましょうか!? まだまだお城の薀蓄ならいくらでもありますよ!」
「いや、遠慮しとくよ」

 俄然張り切るホークに、レオニスは引きつった笑顔で返す。

「それより、早く屋敷に帰らなくて良いのか? いつまでも油を売っていると、落ちる雷が大きくなるんじゃないのか?」

 渋るホークにアルサスが止めを刺す。ホークは衝撃を受けてよろめいた。

「そうでした! では私、帰ります! 失礼します!」

 敬礼すると、ホークは矢のように駆けていった。レオニスは、やれやれと溜息をついた。

「で? お城に何しに行くの?」

 袖を引っ張られて、レオニスは驚く。

「うわ! 君かあ。君にも関係ないことだよ」

 レオニスがつれなく袖を取り返すと、デンテが宥めるように口を開いた。

「まあ、こいつには話しても良いんじゃないか? 話しても他に漏れることもなさそうだし。それに、なんかこいつ、他人とは思えないんだよな~。俺だって、団長がいなかったら首都にずっといただろうし。そしたら、呪いを受けたのはもしかして、俺だったかもしれねえ訳じゃん? なんか、そう考えるとさ……」

 最後は口を濁したが、デンテはステラに同情しているらしい。無理もない話しだった。実際に自分がステラのことを忘れてしまうのだから、呪いの効果をリアルに感じ、故に身のつまされる思いがしているのだろう。出会う人全てに忘れ去られる、というのは、一体どれほどの孤独と向き合うことになるだろう。

 レオニスは溜息をついた。アルサスも特に異論はないらしい。

「――わかったよ。話そう。でも、時間がないから歩きながらだぞ」

 レオニスは、自分が王太子であること。授剣の儀の一件。そしてそれが原因で山賊団リベルタスの仲間に入ったこと。最後に昨夜夢に現れた月の女神ルナの言葉を全て話した。話し終える頃には、一行は城の西門の目前にまで迫っていた。少し離れた路地裏に隠れて、城の様子を伺いながら、声を潜めて話した。

 話しを最後まで聴き終えると、ステラは少し考えた後、口を開いた。

「わかった! じゃあ、ステラがその聖剣を手に入れられたら、ステラをリベルタスの仲間に入れてよ! 皆は聖剣が手に入ってラッキー、ステラは仲間に入れてハッピー! ねっ! いい考えでしょ!?」

 名案と言わんばかりに瞳を輝かせるステラに、レオニスは呆れたように首を振った。

「そう簡単に言うけどな。聖剣は王城の奥の『宝剣の間』に厳重に保管されているんだ。確か、宝剣の間の鍵を持っているのは国王と神官長の二人だけだったはず。素人が簡単に手を出せる場所じゃないんだぞ! 僕たちでさえ不可能に近いっていうのに」

 しかし、それを聞いても、ステラの表情は変わらない。むしろ、にへら、と緊張感の欠片もない笑みを浮かべている。

「まっかせて! 不本意だけど、忍び込んだり、盗んだりはステラの得意技なの! 捕まった時に困っちゃうから、開錠も練習して一通り出来るようになったよ!」

「はあ!? でも、昨夜はホークさんに簡単に捕まってたじゃないか!」

「う~ん。あのホークって人、すっごい動きが速くて。でも大丈夫! ステラ滅多に捕まったりしないから! 絶対平気! まっかせて!」

 ニコニコと胸を張るステラに、レオニスは胡散臭げな目を向けた。しかし、ステラは絶対的な自信があるらしい。結局、レオニスたちに「聖剣を取りに行く」というステラを止める理由がないことから、押し切られる形で彼女を送り出すこととなった。

 作戦としては、レオニスがホークに扮して、ディべス邸に入った泥棒として衛兵にステラの身柄を渡す。そして、まんまと城に潜入したステラは隙を見て逃げて、そのまま城の中を捜索。聖剣を入手して、帰りは王家に伝わる秘密の地下通路を通って脱出という流れだ。

「やっぱり、僕も一緒に行きます」

 レオニスが落ち着かない様子で言うと、ステラが首を振った。

「ステラ一人の方が動きやすいから。信じて」
「わかったよ。無理だと思ったら帰ってくるんだぞ。中の様子を見てきてくれるだけで十分助かるんだからな」

 仕方なくレオニスが念を押すと、ステラは嬉しそうに頷いた。

「頼んだぞ!」

 デンテが言い、アルサスも頷いた。

 そして、レオニスとステラは、ゆっくりと西門へ近づいていった。

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