とある英雄達の最終兵器
第69話 ポメベロスはおっさんくさかった
こうしてケルベロスがポメラニアンサイズになってしまったことで、なし崩し的にテュールの世話係が決定されてしまう。
3対1とは言え敗北を喫してしまい、かつ魔界からわざわざテュールのために稽古をつけにきてくれたのだからあまり食い下がれず、割り切って受け入れるテュール――
「で、世話って何をすればいいんだ?」
しゃがみこみ、見た目が三つ首だけどポメラニアンになったケルベロス――略してポメベロス、を撫でながらナベリウスに問う――
「遊んであげて」
「「「アウッ!」」」バクッバクッ……!!
「なるほど、まぁそれくらいなら――って、お前ら俺の手を喰おうとすんな」
撫でていた手を三つ首達が噛み付いてくる――が、ポメベロスの噛みつきなら痛くはないので口頭注意で済ませる。ベトベトにはなるが……。
そんなテュールとポメベロスを無表情で眺めていたナベリウスは、ぽんっと手を叩き、思い出したかのように付け加える――
「あ、それと遊ぶ時は元のサイズだから」
「それ、小さくなった意味ねぇじゃん!?」
「「「アウッ!」」」
そのツッコミに対してはナベリウスは無視を決めこみ、ポメベロスの甲高く可愛らしい鳴き声だけがダンジョンに響き渡った――。
そんな場面に音もなく歩いてくる執事が見える。そして、やはり近くまできても足音のしない執事が口を開く――
「おやおや、テュール様に食事の支度ができたことを伝えにきましたら、懐かしい方々にお会いしましたね」
「ふん、白々しいな。ワシらのことはとっくに気付いておったろうに。久しいのぅ、小僧」
「ベリト……! ベリトォ――!」
アガレスは自然に挨拶をするが、ウァレフォルは案の定大興奮だった。そりゃもう目が血走って、獅子の四肢に血管浮きまくり、筋肉盛り上がりまくりである。
「ウァレフォル君ダーメ。ベリト君ごめんなさいね? ウァレフォル君がこんなだからアガレス老やナベちゃんとの挨拶はまた今度ね?」
寸でのところでグレモリーに抑えつけられ踏みとどまっているが、いつ爆発するか分からない。――にも関わらずベリトは平然と挨拶を返す――
「えぇ、アガレス様 お久しぶりでございます。壮健そうでなによりですよ。フフ、ウァレフォル様は相変わらずですね。またいつでもお相手しますよ――と、思いましたがグレモリー様の折角の提案なので今日はお互い引きましょう?」
――などと。
「ツギハ……コロス……」
相変わらず物騒なことを言うウァレフォルだが、一応言葉は通じるらしく今回は引いてくれるみたいだ。こうして緊張していた空気が緩むとナベリウスが――
「もういい? じゃ、そういうことで」
ベリトに興味はないようで一言そう言うと、音もなく消え去る。
そして、それを見たアガレスとウァレフォルも続いて同じように消え去る。
「おや、ナベリウス様とは挨拶もまだでしたのに、せっかちですね」
「フフ、ナベちゃんは淡白だから仕方ないですね。では私も旅館の方に戻ります。テュール様食事の前に汗を流していくのでしたらどうぞ」
「あぁありがとうございます。じゃあそうしようかな」
「畏まりました。では、上でお待ちしていますのでお願いしますね」
テュールが温泉に行く旨を聞くと、ベリトはそう言い、上へと戻っていく。
「じゃあ、グレモリーさん行きましょうか」
「えぇ」
「「「アウッ!」」」
こうして、グレモリーとテュールとポメベロスは一緒になって歩き――
「って、おい!! お前なんで帰ってないんだよ!?」
「「「アウッ?」」」
三つ首は一斉に首をかしげる。ちょっとカワイイところが腹立つ――!
「フフ、いいではありませんか。こんなにも可愛らしいんですもの」
「「「ハッ、ハッ、ハッ……」」」
グレモリーがそう言って撫でると、ポメベロスはきちんとお座りし、地面をサッサと尻尾が往復する。
「いい……のかな? カワイイからいいのか。うん、グレモリーさんがそう言うならそんな気がしてきました。ならば、よし! ポメベロス旅館までダッシュだ! いくぞ!」
「「「アウッ!」」」バクッ、ぶらぶら。
テュールがそう言って走り出すと気持ちが通じたのかポメベロスは一声鳴き、テュールの足に噛み付く。そして、テュールはイラっとしたため、そのまま走り続けた。ポメになっていても流石は地獄の番犬――どれだけ振られても文字通り喰らいついてきた。
こうしてテュール達は旅館に辿り着く。グレモリーからは、ここを利用するのはテュール達だけなのでどうぞとポメベロスを温泉に入れる許可をもらえた。
折角なので不思議空間な露天風呂に入ろうとテュールは何度も噛まれながらもポメベロスを洗ったあと、露天の扉をくぐる。そして頭にタオルを乗せて入ろうとすると――それを見たポメベロスが自分も頭にタオルを乗せたいのか吠えはじめる。
「タオル乗せたいのか? おっさんくさい犬だな……ほれ」
仕方なく自分の頭の上に置いたタオルをベロの頭の上に乗せかえる。するとベロは満足そうな顔で静かになる――が、ケルとスンが自分に乗ってないことが気に食わないのか左右からアウッアウッとうるさい。
「ったく、めんどくさいお犬サマだな! 分かった分かった! ちょっと待ってろ!」
早く上がって食事に向かわなければならないので、急いでタオルを取ってきて三つ首全てに乗せる。
それでようやく三つ首とも落ち着き、舌を出してまぬけ面で目を瞑るポメベロス。そんなのと一緒に温泉に入り、空を見上げていると、まぁこれはこれでいっかと許せてしまうテュールであった。
そんな折角の温泉だが、食事を待たせてしまっているのが気になるとゆっくりと浸かることもできず、いそいそと上がって服を着替える。自分の支度が済むとタオルでポメベロスの水気を取り、ドライヤー型魔道具――より、魔法でやったほうが早いなと、魔法で乾かす。
こうして風呂に入って満足げなポメベロスを頭の上に乗せ、ダンジョンを汗をかかない程度に走り、食卓を目指すテュール。そこまで距離はないため5分も経たない内に――
「到着、と。すまんすまーん。遅くな――」
ガタッ!
「うわー!! なんなのだ!? そいつはなんなのだ!?」
――そこにはイスから腰を浮かせて、目を輝かせるチビっ子がいた。
3対1とは言え敗北を喫してしまい、かつ魔界からわざわざテュールのために稽古をつけにきてくれたのだからあまり食い下がれず、割り切って受け入れるテュール――
「で、世話って何をすればいいんだ?」
しゃがみこみ、見た目が三つ首だけどポメラニアンになったケルベロス――略してポメベロス、を撫でながらナベリウスに問う――
「遊んであげて」
「「「アウッ!」」」バクッバクッ……!!
「なるほど、まぁそれくらいなら――って、お前ら俺の手を喰おうとすんな」
撫でていた手を三つ首達が噛み付いてくる――が、ポメベロスの噛みつきなら痛くはないので口頭注意で済ませる。ベトベトにはなるが……。
そんなテュールとポメベロスを無表情で眺めていたナベリウスは、ぽんっと手を叩き、思い出したかのように付け加える――
「あ、それと遊ぶ時は元のサイズだから」
「それ、小さくなった意味ねぇじゃん!?」
「「「アウッ!」」」
そのツッコミに対してはナベリウスは無視を決めこみ、ポメベロスの甲高く可愛らしい鳴き声だけがダンジョンに響き渡った――。
そんな場面に音もなく歩いてくる執事が見える。そして、やはり近くまできても足音のしない執事が口を開く――
「おやおや、テュール様に食事の支度ができたことを伝えにきましたら、懐かしい方々にお会いしましたね」
「ふん、白々しいな。ワシらのことはとっくに気付いておったろうに。久しいのぅ、小僧」
「ベリト……! ベリトォ――!」
アガレスは自然に挨拶をするが、ウァレフォルは案の定大興奮だった。そりゃもう目が血走って、獅子の四肢に血管浮きまくり、筋肉盛り上がりまくりである。
「ウァレフォル君ダーメ。ベリト君ごめんなさいね? ウァレフォル君がこんなだからアガレス老やナベちゃんとの挨拶はまた今度ね?」
寸でのところでグレモリーに抑えつけられ踏みとどまっているが、いつ爆発するか分からない。――にも関わらずベリトは平然と挨拶を返す――
「えぇ、アガレス様 お久しぶりでございます。壮健そうでなによりですよ。フフ、ウァレフォル様は相変わらずですね。またいつでもお相手しますよ――と、思いましたがグレモリー様の折角の提案なので今日はお互い引きましょう?」
――などと。
「ツギハ……コロス……」
相変わらず物騒なことを言うウァレフォルだが、一応言葉は通じるらしく今回は引いてくれるみたいだ。こうして緊張していた空気が緩むとナベリウスが――
「もういい? じゃ、そういうことで」
ベリトに興味はないようで一言そう言うと、音もなく消え去る。
そして、それを見たアガレスとウァレフォルも続いて同じように消え去る。
「おや、ナベリウス様とは挨拶もまだでしたのに、せっかちですね」
「フフ、ナベちゃんは淡白だから仕方ないですね。では私も旅館の方に戻ります。テュール様食事の前に汗を流していくのでしたらどうぞ」
「あぁありがとうございます。じゃあそうしようかな」
「畏まりました。では、上でお待ちしていますのでお願いしますね」
テュールが温泉に行く旨を聞くと、ベリトはそう言い、上へと戻っていく。
「じゃあ、グレモリーさん行きましょうか」
「えぇ」
「「「アウッ!」」」
こうして、グレモリーとテュールとポメベロスは一緒になって歩き――
「って、おい!! お前なんで帰ってないんだよ!?」
「「「アウッ?」」」
三つ首は一斉に首をかしげる。ちょっとカワイイところが腹立つ――!
「フフ、いいではありませんか。こんなにも可愛らしいんですもの」
「「「ハッ、ハッ、ハッ……」」」
グレモリーがそう言って撫でると、ポメベロスはきちんとお座りし、地面をサッサと尻尾が往復する。
「いい……のかな? カワイイからいいのか。うん、グレモリーさんがそう言うならそんな気がしてきました。ならば、よし! ポメベロス旅館までダッシュだ! いくぞ!」
「「「アウッ!」」」バクッ、ぶらぶら。
テュールがそう言って走り出すと気持ちが通じたのかポメベロスは一声鳴き、テュールの足に噛み付く。そして、テュールはイラっとしたため、そのまま走り続けた。ポメになっていても流石は地獄の番犬――どれだけ振られても文字通り喰らいついてきた。
こうしてテュール達は旅館に辿り着く。グレモリーからは、ここを利用するのはテュール達だけなのでどうぞとポメベロスを温泉に入れる許可をもらえた。
折角なので不思議空間な露天風呂に入ろうとテュールは何度も噛まれながらもポメベロスを洗ったあと、露天の扉をくぐる。そして頭にタオルを乗せて入ろうとすると――それを見たポメベロスが自分も頭にタオルを乗せたいのか吠えはじめる。
「タオル乗せたいのか? おっさんくさい犬だな……ほれ」
仕方なく自分の頭の上に置いたタオルをベロの頭の上に乗せかえる。するとベロは満足そうな顔で静かになる――が、ケルとスンが自分に乗ってないことが気に食わないのか左右からアウッアウッとうるさい。
「ったく、めんどくさいお犬サマだな! 分かった分かった! ちょっと待ってろ!」
早く上がって食事に向かわなければならないので、急いでタオルを取ってきて三つ首全てに乗せる。
それでようやく三つ首とも落ち着き、舌を出してまぬけ面で目を瞑るポメベロス。そんなのと一緒に温泉に入り、空を見上げていると、まぁこれはこれでいっかと許せてしまうテュールであった。
そんな折角の温泉だが、食事を待たせてしまっているのが気になるとゆっくりと浸かることもできず、いそいそと上がって服を着替える。自分の支度が済むとタオルでポメベロスの水気を取り、ドライヤー型魔道具――より、魔法でやったほうが早いなと、魔法で乾かす。
こうして風呂に入って満足げなポメベロスを頭の上に乗せ、ダンジョンを汗をかかない程度に走り、食卓を目指すテュール。そこまで距離はないため5分も経たない内に――
「到着、と。すまんすまーん。遅くな――」
ガタッ!
「うわー!! なんなのだ!? そいつはなんなのだ!?」
――そこにはイスから腰を浮かせて、目を輝かせるチビっ子がいた。
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