とある英雄達の最終兵器
第02話 少しマッチョだったり、肌が青白かったり
(ん? ここはどこだ? って、うおっビックリした!!)
目を開けるとそこは知らない天井、と赤ん坊の顔を覗き込みながら知らない言葉を交わし続ける四人の顔が映っていた。
(何語だ? 英語か? んー、英語ではなさそうだ……。中国語でもない、かなぁ? んー、ダメだ! さっぱり分からんっ!)
男は知っている単語がないか注意深く会話を聞いているが、一向に聞いたことのある単語は出てこない。
(なんだこれ? つーか、ここどこだよ……。何がどうなってんだ? あー、もうわけわからんし、眠いし……、もういいや。寝ちゃえ)
「む、今この子が一瞬目を開けたさね、きっとあたしの考えた名前が気に入ったんだろう。そうだろうそうだろう」
「バカ言え、お前が考えた名前より俺の考えた名前の方が強いし、カッコイイ。絶対にこっちのが気に入る」
「えー、ボクが考えた名前だってカッコイイよ? オシャレだし? 高貴な感じもするし?」
「ワシが考え……」
「「「モヨモトは黙って(て)(ろ)」」」
「おんしら……」
というわけで、結局三者は譲り合わず、モヨモトがこの3つの名前から選ぶということで落ち着く。そして選んだ名前が──。
「そうさね、このジジィがセンスまでボケていなくてあたしゃ嬉しいよ。フフフ、決まりだ。お前の名前は今日からテュールだ」
「ッチ……。俺のビーフストロガノフの方が強そうだったんだがな……」
「むぅ、ボクのクアトロフォルマッジョの方がオシャレだし……」
「ホントはワシだって……ゲレゲレの方が……いや、なんでもない……」
こうして転生した赤ん坊は自分の知らない間に名前が決定し、今日からテュールという名前でこの世界で生きていく。
さて、テュールとして転生してから一ヶ月、この間テュールはひたすらに言葉を聞くことに専念し、屋敷に済む四人の言葉を少しずつ理解することができ、状況が把握できてきた。
どうやらこの屋敷はとある島に建てられており、住居者は四人だけ、自給自足の生活をしており、畑や畜産をしている。どうやらこの四人はセカンドでスローなライフを満喫しているようだ。
テュールは未だ上手く喋る事はできず、腹が減ったら泣く、トイレをしたら泣く、モヨモトが近くにきたら泣く、そしてルチアが来たら泣き止むということをライフワークとしていた。
そして、どうやらこの世界は転生する際に会った神が言っていたように魔法が存在するらしい。というか存在する。断言できるのはテュール自身がそれを見たからだ。
それからはひたすら魔法を覚えようとしているがいかんせん動けない、喋れない赤子が魔法とか使えるわけがない。
一歳までは成長に専念しよう。それからでも遅くないはずだ、と言い聞かせ今日もテュールは泣いて、食べて、トイレをして寝る。
そんな日々が一年程続く。
「お誕生日おめでとうテュール、あんたももう一歳さね、元気に育ってくれてあたしゃ嬉しいよ」
「そうじゃの、テュールほんにおめでとう。ワシは……ワシは……」
「かぁー、ジジィになると涙もろくなるってのはホントだな……。ガハハハ! テュールめでたいな! 強くなれよ?」
「フフ、テュールおめでとう。これからもよろしくね?」
居間のテーブルをみんなで囲い、一人一人からお祝いの言葉を貰う。四人が四人とも個性的な性格をしているが、皆、心からテュールを愛してくれているのがテュールにはこの一年で十分すぎるほどよくわかった。
「みんあ、あいがと」
テュールは舌っ足らずな言葉を笑顔と一緒にお返しする。
感謝の気持ちをきちんと言葉にしたいが如何せん一歳児の口から発せられる言葉はこれが限界であった。しかし、それを聞くとモヨモトは号泣し、他の三人も目を潤ませ笑顔になってくれる。
(あぁー、俺はなんて素晴らしい人達に育ててもらっているんだろう……。)
こうして暖かい屋敷での夜は更けていく。
一歳にもなるとほとんどの言葉を聞き取ることはでき、簡単な単語での発話が可能になった。そして歩くことができるようにもなっているため行動範囲が一気に広がった。と、言っても屋敷内とその敷地程度であるが……。
そして、とにもかくにもこの世界のことを知りたかったテュールは四人に様々なことを聞く。
その結果分かったことは、この世界は大きな大陸が一つあり、その大陸に国が五つあり、五つの種族があること。北から時計回りに竜族の国アルクティク皇国、エルフの国リエース共和国、人族の国エスペラント王国、獣人族の国パンゲア王国、そして魔族の国エウロパ領だ。
そしてその大陸の外は霧の深い海が広がっており、未開の地となっている。そんな未開の地と呼ばれる外海にこの島イルデパン島が存在する。
また、大陸に住む五種族の仲は悪く、今でこそ大きな戦争はないが、良くて不干渉。国内での他種族差別や国境近くでの威嚇、小競り合いと言ったことは当たり前に続いている。
そこでテュールは尋ねた。
「なんで、ここのみんあは仲いいの?」
優しい笑みでルチアはゆっくりとテュールに答える。
「そうさね、あたしとテュールも種族は違う。けど言葉を交わせば分かり合えるさね。ここにいる筋肉ダルマやモヤシ、ボケジジィも一緒さ、少しマッチョだったり、肌が青白かったり、ボケてたりするだけで言葉を交わせば理解しあえる。たまにケンカをすることもあるけどケンカした後謝って仲直りすることができる。それが理性ある生き物さね」
「そうじゃな、ワシらは多くの戦場、多くの血、そして多くの死を見てきたんじゃ……。だからこそ五つの種族がいがみあうことなく生きていける平和な世の中を誰よりも願った。しかし、個人の力とは無力よのぅ……」
「モヨモト、それ以上は一歳児に言ったって仕方あるめぇ。と、言ってもテュールは賢いからなぁ、大抵の言葉は既に理解できている節はあるわな。まぁテュール、俺から言えるのは一つだ。お前はちぃせぇ男になるな。種族なんていうちぃせぇもんに囚われるんじゃねぇぞ」
「フフ、そうだね。ボク達はきっと世界からしたら異端に入るんだろうね。でもボクはここのような場所が当たり前になってくれるのと嬉しいんだけどね~」
そうして四人は優しく微笑みながらテュールにこの世界の知識、常識を少しずつ教えていくのであった。
目を開けるとそこは知らない天井、と赤ん坊の顔を覗き込みながら知らない言葉を交わし続ける四人の顔が映っていた。
(何語だ? 英語か? んー、英語ではなさそうだ……。中国語でもない、かなぁ? んー、ダメだ! さっぱり分からんっ!)
男は知っている単語がないか注意深く会話を聞いているが、一向に聞いたことのある単語は出てこない。
(なんだこれ? つーか、ここどこだよ……。何がどうなってんだ? あー、もうわけわからんし、眠いし……、もういいや。寝ちゃえ)
「む、今この子が一瞬目を開けたさね、きっとあたしの考えた名前が気に入ったんだろう。そうだろうそうだろう」
「バカ言え、お前が考えた名前より俺の考えた名前の方が強いし、カッコイイ。絶対にこっちのが気に入る」
「えー、ボクが考えた名前だってカッコイイよ? オシャレだし? 高貴な感じもするし?」
「ワシが考え……」
「「「モヨモトは黙って(て)(ろ)」」」
「おんしら……」
というわけで、結局三者は譲り合わず、モヨモトがこの3つの名前から選ぶということで落ち着く。そして選んだ名前が──。
「そうさね、このジジィがセンスまでボケていなくてあたしゃ嬉しいよ。フフフ、決まりだ。お前の名前は今日からテュールだ」
「ッチ……。俺のビーフストロガノフの方が強そうだったんだがな……」
「むぅ、ボクのクアトロフォルマッジョの方がオシャレだし……」
「ホントはワシだって……ゲレゲレの方が……いや、なんでもない……」
こうして転生した赤ん坊は自分の知らない間に名前が決定し、今日からテュールという名前でこの世界で生きていく。
さて、テュールとして転生してから一ヶ月、この間テュールはひたすらに言葉を聞くことに専念し、屋敷に済む四人の言葉を少しずつ理解することができ、状況が把握できてきた。
どうやらこの屋敷はとある島に建てられており、住居者は四人だけ、自給自足の生活をしており、畑や畜産をしている。どうやらこの四人はセカンドでスローなライフを満喫しているようだ。
テュールは未だ上手く喋る事はできず、腹が減ったら泣く、トイレをしたら泣く、モヨモトが近くにきたら泣く、そしてルチアが来たら泣き止むということをライフワークとしていた。
そして、どうやらこの世界は転生する際に会った神が言っていたように魔法が存在するらしい。というか存在する。断言できるのはテュール自身がそれを見たからだ。
それからはひたすら魔法を覚えようとしているがいかんせん動けない、喋れない赤子が魔法とか使えるわけがない。
一歳までは成長に専念しよう。それからでも遅くないはずだ、と言い聞かせ今日もテュールは泣いて、食べて、トイレをして寝る。
そんな日々が一年程続く。
「お誕生日おめでとうテュール、あんたももう一歳さね、元気に育ってくれてあたしゃ嬉しいよ」
「そうじゃの、テュールほんにおめでとう。ワシは……ワシは……」
「かぁー、ジジィになると涙もろくなるってのはホントだな……。ガハハハ! テュールめでたいな! 強くなれよ?」
「フフ、テュールおめでとう。これからもよろしくね?」
居間のテーブルをみんなで囲い、一人一人からお祝いの言葉を貰う。四人が四人とも個性的な性格をしているが、皆、心からテュールを愛してくれているのがテュールにはこの一年で十分すぎるほどよくわかった。
「みんあ、あいがと」
テュールは舌っ足らずな言葉を笑顔と一緒にお返しする。
感謝の気持ちをきちんと言葉にしたいが如何せん一歳児の口から発せられる言葉はこれが限界であった。しかし、それを聞くとモヨモトは号泣し、他の三人も目を潤ませ笑顔になってくれる。
(あぁー、俺はなんて素晴らしい人達に育ててもらっているんだろう……。)
こうして暖かい屋敷での夜は更けていく。
一歳にもなるとほとんどの言葉を聞き取ることはでき、簡単な単語での発話が可能になった。そして歩くことができるようにもなっているため行動範囲が一気に広がった。と、言っても屋敷内とその敷地程度であるが……。
そして、とにもかくにもこの世界のことを知りたかったテュールは四人に様々なことを聞く。
その結果分かったことは、この世界は大きな大陸が一つあり、その大陸に国が五つあり、五つの種族があること。北から時計回りに竜族の国アルクティク皇国、エルフの国リエース共和国、人族の国エスペラント王国、獣人族の国パンゲア王国、そして魔族の国エウロパ領だ。
そしてその大陸の外は霧の深い海が広がっており、未開の地となっている。そんな未開の地と呼ばれる外海にこの島イルデパン島が存在する。
また、大陸に住む五種族の仲は悪く、今でこそ大きな戦争はないが、良くて不干渉。国内での他種族差別や国境近くでの威嚇、小競り合いと言ったことは当たり前に続いている。
そこでテュールは尋ねた。
「なんで、ここのみんあは仲いいの?」
優しい笑みでルチアはゆっくりとテュールに答える。
「そうさね、あたしとテュールも種族は違う。けど言葉を交わせば分かり合えるさね。ここにいる筋肉ダルマやモヤシ、ボケジジィも一緒さ、少しマッチョだったり、肌が青白かったり、ボケてたりするだけで言葉を交わせば理解しあえる。たまにケンカをすることもあるけどケンカした後謝って仲直りすることができる。それが理性ある生き物さね」
「そうじゃな、ワシらは多くの戦場、多くの血、そして多くの死を見てきたんじゃ……。だからこそ五つの種族がいがみあうことなく生きていける平和な世の中を誰よりも願った。しかし、個人の力とは無力よのぅ……」
「モヨモト、それ以上は一歳児に言ったって仕方あるめぇ。と、言ってもテュールは賢いからなぁ、大抵の言葉は既に理解できている節はあるわな。まぁテュール、俺から言えるのは一つだ。お前はちぃせぇ男になるな。種族なんていうちぃせぇもんに囚われるんじゃねぇぞ」
「フフ、そうだね。ボク達はきっと世界からしたら異端に入るんだろうね。でもボクはここのような場所が当たり前になってくれるのと嬉しいんだけどね~」
そうして四人は優しく微笑みながらテュールにこの世界の知識、常識を少しずつ教えていくのであった。
コメント
ノベルバユーザー602508
面白かったです。
ノベルバユーザー361123
一歳で喋れるとか有り得んだろって思ったけど
よく考えたら弟10ヶ月くらいで喋れるようになったな。
相当頭良かったんだろうな。今は何故か今Fランだけど。
ペンギン
言語理解能力すげぇ...w
ノベルバユーザー233455
てか、普通言葉理解できなくね?
だっていきなりアルゼンチンに飛ばされて理解するのと一緒だよww
基礎もないのに出来るわけw
博夜
1歳で喋れるの…?