絶対守護者の学園生活記
クリスマス特別編 思い出のマフラー
「レオン、これ」
「ん? マフラー?」
冬のある日の事。レオンは暖かい屋敷でクーと一緒にだらけているとカレンから赤いマフラーを手渡された。
「私が編んだのよ。感謝しなさい」
「ありがとう。けどどうして急に?」
「仕事に向かう度に寒さで顔をしかめる馬鹿がいるからね」
「……すいません」
心当たりがありすぎた。というか自分だ。
「これであんたにマフラーをあげたのは二度目ね」
「一度目は村にいた頃か」
「そうそう、あの時は雪が降ってたわよね。ふふ」
その時を思いだしたのか、カレンは懐かしむように笑った。
※※※
それは新しい春を迎える前の冬、レオンがまだ故郷にいた十歳の頃の事だった。
冒険者のガルムに剣術を教えてもらい、それが終わると雪が降る中レオンは帰宅した。
「ただいま~。リリィはどこだ~」
愛しの義妹を抱き締めて暖をとろうと家をうろつく。中から話し声が聞こえる部屋を見つけ、ノックをして中に入る。
「母さん、リリィ? 何してるんだ?」
部屋ではレオンの母であるリンと義妹のリリィがせっせと編み物をしていた。
「お母さんはお父さんのマフラーを編んであげてるのよ~」
「……私はお兄ちゃんの」
「お……おぉ……」
愛しの義妹が自分の為にマフラーを編んでくれている。レオンは歓喜に震えた。
「……もうすぐ出来るから待ってて」
「お兄ちゃんはいくらでも待つからな!」
レオンは上機嫌のまま部屋を後にした。
それから一週間が経ち、レオンに待望の時が訪れた。
「もう一年中使うわ、これ」
ついにリリィお手製のマフラーを手に入れた。既に首に巻きレオンは天に昇る気持ちだ。
「せめて夏は外してね~」
どこか少しズレた様なことを言うリン。
「カレンに自慢してくる!」
母の言葉は耳に届いておらず、レオンはすぐさま駆け出した。
盗賊に捕まっていた孤児達を引き取ってから約一年。その孤児のリーダーのような存在の少女カレンは、レオンにとっては良き友であった。早速マフラーを自慢しようと、カレンのいる家へと向かう。
前世を合わせると精神年齢は三十を超えているはずだが、この時だけは嬉しさのあまり年相応になっているようだ。
「カレン!」
バン!と人様の家の扉を思いっきり開く。それだけ大きい音を立てれば嫌でも来客に気付くだろう。目当ての人物はすぐにやってきた。
「なにようるさいわね」
「見てくれ見てくれ! これリリィが編んでくれたマフラーなんだぞ!」
「そう……」
満面の笑みを浮かべているレオンにカレンは素っ気ない返事を返す。とりあえぜレオンを家へと入れる。
「リリィも女の子らしくなってきたよなぁ……」
「そうね。きっと他の男の子からはモテモテよ」
「なぬ!? そんなのお兄さんは許しませんからね!」
ハイテンションのあまり、いつもよりうざい。カレンのイライラが募るばかりだ。
それに。
(なによ、リリィリリィって……。私には何も興味を示さないくせに)
一緒の時間を過ごすにつれて芽生えた恋心がイライラを助長する。レオンはリリィを一人の女の子ではなく義妹として愛しており、そういった関係になる心配はないと分かっている。
それでもモヤモヤとした気持ちが溢れてくる。
「話はそれだけ? ならさっさと帰って」
「ん? もう少しぐらいいてもいいだろ?」
「帰って!!!」
「お、おう……」
なぜカレンが機嫌を悪くしているか分からず、レオンは首を傾げながら帰っていった。
「なによ、もう……」
思わず頭を抱えてしまう。キツイ言葉が勝手に口から出てしまうのだ。このままでは嫌われてしまっても仕方ないと考えてしまう。
(でもあいつだって……)
鈍感なのがいけないんだ。そう自分に言い聞かせても気分は晴れない。
「そうだ!」
ふと名案を思い付く。即実行!とばかりにカレンは義母の元へと向かった。
※※※
「あの時は急にカレンが『私もマフラー編んだからあげる!』って家に押し掛けてきたからな」
「お義母さんに頼んで編み方を教えてもらったのよ」
「ま、ボロボロだったけどな」
「うっさいわね」
カレンは睨みを利かす。だが自分でもそう思っていたのか少し頬が染まっていた。
「でも暖かかったぞ、アレ」
「当時も同じこと言ってたわね。一応嬉しかったわよ」
「一応ってなんだよ一応って。素直じゃないな」
「殴るわよ」
「それはともかく」
レオンは寝てしまったクーの頭を優しく撫でながら貰ったマフラーに視線を向ける。
「あの頃に比べて大分作るの上手くなったよな」
「何年経ったと思ってんのよ」
「それもそうだけどさ……お?」
窓の外をふと見ると、雪がちらほらと舞い始めていることに気付いた。
「あの時と同じになったな……そうだカレン」
「なによ」
「一緒に巻かないか?」
「……嫌に決まってるでしょ、恥ずかしい」
不満気に言いながらもカレンはレオンの隣に並んで座る。そして一つのマフラーを二人で巻いてギュッとくっついて外を眺める。
「……あったかいな」
「……そうね」
互いに体温を感じながら、緩やかに時間は過ぎていった。
「ん? マフラー?」
冬のある日の事。レオンは暖かい屋敷でクーと一緒にだらけているとカレンから赤いマフラーを手渡された。
「私が編んだのよ。感謝しなさい」
「ありがとう。けどどうして急に?」
「仕事に向かう度に寒さで顔をしかめる馬鹿がいるからね」
「……すいません」
心当たりがありすぎた。というか自分だ。
「これであんたにマフラーをあげたのは二度目ね」
「一度目は村にいた頃か」
「そうそう、あの時は雪が降ってたわよね。ふふ」
その時を思いだしたのか、カレンは懐かしむように笑った。
※※※
それは新しい春を迎える前の冬、レオンがまだ故郷にいた十歳の頃の事だった。
冒険者のガルムに剣術を教えてもらい、それが終わると雪が降る中レオンは帰宅した。
「ただいま~。リリィはどこだ~」
愛しの義妹を抱き締めて暖をとろうと家をうろつく。中から話し声が聞こえる部屋を見つけ、ノックをして中に入る。
「母さん、リリィ? 何してるんだ?」
部屋ではレオンの母であるリンと義妹のリリィがせっせと編み物をしていた。
「お母さんはお父さんのマフラーを編んであげてるのよ~」
「……私はお兄ちゃんの」
「お……おぉ……」
愛しの義妹が自分の為にマフラーを編んでくれている。レオンは歓喜に震えた。
「……もうすぐ出来るから待ってて」
「お兄ちゃんはいくらでも待つからな!」
レオンは上機嫌のまま部屋を後にした。
それから一週間が経ち、レオンに待望の時が訪れた。
「もう一年中使うわ、これ」
ついにリリィお手製のマフラーを手に入れた。既に首に巻きレオンは天に昇る気持ちだ。
「せめて夏は外してね~」
どこか少しズレた様なことを言うリン。
「カレンに自慢してくる!」
母の言葉は耳に届いておらず、レオンはすぐさま駆け出した。
盗賊に捕まっていた孤児達を引き取ってから約一年。その孤児のリーダーのような存在の少女カレンは、レオンにとっては良き友であった。早速マフラーを自慢しようと、カレンのいる家へと向かう。
前世を合わせると精神年齢は三十を超えているはずだが、この時だけは嬉しさのあまり年相応になっているようだ。
「カレン!」
バン!と人様の家の扉を思いっきり開く。それだけ大きい音を立てれば嫌でも来客に気付くだろう。目当ての人物はすぐにやってきた。
「なにようるさいわね」
「見てくれ見てくれ! これリリィが編んでくれたマフラーなんだぞ!」
「そう……」
満面の笑みを浮かべているレオンにカレンは素っ気ない返事を返す。とりあえぜレオンを家へと入れる。
「リリィも女の子らしくなってきたよなぁ……」
「そうね。きっと他の男の子からはモテモテよ」
「なぬ!? そんなのお兄さんは許しませんからね!」
ハイテンションのあまり、いつもよりうざい。カレンのイライラが募るばかりだ。
それに。
(なによ、リリィリリィって……。私には何も興味を示さないくせに)
一緒の時間を過ごすにつれて芽生えた恋心がイライラを助長する。レオンはリリィを一人の女の子ではなく義妹として愛しており、そういった関係になる心配はないと分かっている。
それでもモヤモヤとした気持ちが溢れてくる。
「話はそれだけ? ならさっさと帰って」
「ん? もう少しぐらいいてもいいだろ?」
「帰って!!!」
「お、おう……」
なぜカレンが機嫌を悪くしているか分からず、レオンは首を傾げながら帰っていった。
「なによ、もう……」
思わず頭を抱えてしまう。キツイ言葉が勝手に口から出てしまうのだ。このままでは嫌われてしまっても仕方ないと考えてしまう。
(でもあいつだって……)
鈍感なのがいけないんだ。そう自分に言い聞かせても気分は晴れない。
「そうだ!」
ふと名案を思い付く。即実行!とばかりにカレンは義母の元へと向かった。
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「あの時は急にカレンが『私もマフラー編んだからあげる!』って家に押し掛けてきたからな」
「お義母さんに頼んで編み方を教えてもらったのよ」
「ま、ボロボロだったけどな」
「うっさいわね」
カレンは睨みを利かす。だが自分でもそう思っていたのか少し頬が染まっていた。
「でも暖かかったぞ、アレ」
「当時も同じこと言ってたわね。一応嬉しかったわよ」
「一応ってなんだよ一応って。素直じゃないな」
「殴るわよ」
「それはともかく」
レオンは寝てしまったクーの頭を優しく撫でながら貰ったマフラーに視線を向ける。
「あの頃に比べて大分作るの上手くなったよな」
「何年経ったと思ってんのよ」
「それもそうだけどさ……お?」
窓の外をふと見ると、雪がちらほらと舞い始めていることに気付いた。
「あの時と同じになったな……そうだカレン」
「なによ」
「一緒に巻かないか?」
「……嫌に決まってるでしょ、恥ずかしい」
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