絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

きっとこれからも

 熱い歓迎パンチを受けた後はなんやかんやでリーフェさんのことは受け入れてもらえた。これで俺は八人の嫁を持つこととなる。幸せ者だ。

 あれからは特に何事もなく平和な日々を送っている。

 シャルとリーゼさんは学園を卒業し、それぞれの進路先へと進んだ。少なくとも俺が結婚できる年になり就職するまでは働いてくれるとのこと。でも時々シャルが「早く子供が欲しいです」と囁いてくるのは心臓に悪い。真面目系女子のリーゼさんは俺のオアシスだ。

 アリスとソフィは三学年となったが既に騎士団への入団が決まっているとのこと。だからかは分からないが朝の鍛錬の時の激しさが半端ではなく、それに付き合ってる俺も中々にしごかれている。元々大人っぽかった二人がさらに精神的に成長したからか、妖艶さを兼ね備えるようになり色々と辛い。

 カレンとリリィとミーナは同じ学年でありいかにも女の子らしい女の子達なので気が合うらしく、青春を謳歌しているようだ。一緒に仲良くショッピングに行く姿もよく見るし、あまりにも仲が良すぎて俺の存在を忘れてるのではないかと思わされたりする。まぁ仲が良いに越したことはない。

 リーフェさんはやはり愛着があるらしく冒険者ギルド受付嬢を辞めなかった。嫁入りしたとしても続けていきたいとのこと。俺もそれには反対はしないが、職場で惚気けてくるのをどうにかして欲しいと同僚の人に言われた時は溜息をついた。あの人ははしゃぎすぎだ。

 クーは孤児院に預けてる内にユウちゃんにかなり懐いていたようで、少女二人が戯れてる光景は微笑ましくて素晴らしいと気付けた。別に俺はロリコンではない。

 そして俺。王様から正式に『絶対守護者』という中二らしさ溢れる異名を授かった。『英雄』と並ぶもので、名誉あるものらしい。ぶっちゃけどうでもいい。

 それよりも大事なのが学園卒業後、騎士団長の地位に就かせてもらえると確約したことだ。冒険者を続けても少し上質な生活を保てるぐらいの稼ぎは出来るとは思うが、常に命を懸けた仕事というのは嫁達に心配をかけてしまう。だからこそ騎士団に入れるのは嬉しかった。
 しかし卒業してから急に騎士団長になるのではいろいろと心許ない。いくら活躍していたとしても、若造の下につくのは……と思う者がいないとは限らない。だから今の内から騎士団の活動に加わって信頼を勝ち取っておけと言われた。肉体的にはそこまでだが、周りには経験豊富な年上の人たちばっかりなので精神的に疲れる。

 とまぁ最近はこんな感じで各自頑張っている。
 朝起きて各自の行くべき場所に向かい、終わると帰ってくる。ただそれだけの事だが、俺の周りには笑顔が溢れ、満ち足りた生活がここにはあった。
 俺がそういう体質なのかは知らんが、たまに面倒事に巻き込まれたりもするが……

 そうそう、実は俺は本の執筆を始めた。実際には本の巻末に載せられる本人からのメッセージとやらを書くだけなんだけどな。いまだにどんな内容を書くかは思い付いていない。
その本はなんでも『絶対守護者』である俺の人生譚を記した本らしい。といっても子供向けの絵本にするらしく俺が学園に入ってからの内容だけになるようだ。その為に聞き取りをされたが自分の過去を語るというのは結構恥ずかしかった。
 本のタイトルは……なんだっけ?

 そして今日も学園に通い、放課後に騎士団の仕事をこなして疲れた体を引きずりながら屋敷へと戻る。俺が護ることの出来た大切な場所へ。
 扉を開けて中に入ると、いい香りが漂ってくる。夕御飯の匂いかな。ダイニングルームへと入ると、皆が揃っていた。

「「「おかえりなさい!」」」

 疲れた体にかけられる愛しの人達の声で、元気が湧いてくる。胸の奥が熱くなり、なぜか出そうになった涙を堪える。
 俺が力を手に入れてまで、命を懸けてまで護りたかった光景が目の前に広がっていた。何度見ても感動してしまう俺は案外ロマンチストだったりするのかもしれない。

 その時ふっと、頭の中に降りてくるものがあった。そうだ、本に書く最後の一文はこれにしよう。

《俺は護るべき者の為に戦い続ける。それが『絶対守護者』としての、俺の使命だから》

 例えどんなことが起きようとも、俺は立ち向かう。その先にある、皆の笑顔のために。
 そんなことを考えながら、俺は口を開いた。

「ただいま、皆」


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