絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

一時の平穏

 武闘大会が終わり、今日は数日の間眠っていた俺にとっては久しぶりの登校日だ。
 クーを孤児院へと送り届け、屋敷の皆と学園へと向かってるわけなんだが……

「キャー!『守護者』様よー! こっち向いてー!」
「よくやったぞ! 『守護者』様!」

 道行く人々が俺を見つけるたびにこんな声を上がるから恥ずかしくてしょうがない。
 『守護者』ってのは俺が魔族の襲撃から国を救ったってことでつけられたものだ。親父の『英雄』と同じようなものらしい。

「凄い人気じゃない、『守護者』様?」
「第一王女でもある私より人気ですね、『守護者』様?」

 俺の隣を歩いているカレンとシャルがニヤニヤしながら皮肉めいたことを言ってくる。
 そこで俺は仕返しの為にデコピンを発動!しかし二人は予知していたのか即座に顔を傾けて回避!ちくしょう!

 それはともかく、いつかこの盛り上がりも大人しくなることを祈るばかりだ。

※※※

「おはよう、『守護者』様! 今日もハーレム楽しんでるか? 氏ね!」

 教室に入って早々に変な奴が話しかけてきたのでデコピンで退治し、席に着く。
 当然のようにクラスメイト達はマルクのことはスルーしている。それに俺のことを気遣ってくれたのか、話しかけてこないのが正直助かる。もうずっとここにいようかな。

 しばらくミーナと談笑しているとヤンキー先生がドアを蹴破って入室してくる。朝のHRの時間だ。

「お前ら、そろそろ学園祭が始まるが何をやるか決まったのか?」

 ん?学園祭?

「メイド喫茶になりました!」

 いつの間にか復活していたマルクが元気よく答える。

「なあミーナ。もしかして俺がいない間に色々と進んでた感じ?」
「んっ……そ、そうだね。学園祭が近づいてきたからうちのクラスでは何をしようかって話になってて、マルクくんが中心になって男子の熱烈な希望によってメイド喫茶になったんだよね」
「そうか。俺は何をすればいいんだ?」
「レオンくんは戦って疲れてるだろうから特に仕事はないよ。皆も認めてくれたしね」

 うーん、俺的には別に気にしないでもらってもよかったんだけどな。まあ皆の好意は素直に受け取っておくか。

「ところでレオンくん。なんでさっきから僕の尻尾を触ってるのかな?」
「へ?」

 言われて気づいた。無意識にミーナの尻尾をもふっていた。
 この前皆の気持ちを聞いてからちょっと気が緩みつつあるのかもしれない。いかんな、しっかりしないと。

「すまん、ミーナ」
「別に嫌だったわけじゃないよ? でも出来ればその……帰ってからにしてほしいかな。僕ももっと触ってほしいし……」
「ミーナ……」

 もじもじしてるミーナ可愛すぎる。癒されるなぁ……

「……HR中だってのに、イチャイチャするとはいい度胸だな?」

 ……ごめんなさい、ヤンキー先生。

※※※

 あの後は特に何事もなく過ごし、時刻は既に午後十一時を回った。
 放課後はアリスとソフィ先輩と一緒にひたすら模擬戦をしたからか、疲れが溜まっており気持ちよく寝れそうだ。
 ベッドに横になると、案の定睡魔が襲ってきた。
 明日ももっと頑張って、強くなろう……。俺はそう思いながら眠りについた。


「ん……なんだ……?」

 急に腰の上あたりに重さを感じ、眠っていた意識を覚醒させていく。
 そして腰の方に視線を向かわせると

「こんばんは、レオンくん」
「お、お邪魔してます」

 とびっきりの笑顔で楽しそうに腰に乗っかっているシャルと、ベッドに腰かけているリーゼさんがいた。

「……何の御用でしょうか?」
「夜這いです!」

 本当に楽しそうですね、シャルさん。いやまあなんとなく分かってたけどさ。てかリーゼさんも……?
 とりあえずシャルに詳しいことを話してもらおう。

「シャル、説明」
「はい。いつでも歓迎って前から言ってたのにレオンくんが襲いに来る様子がなかったので、こちらから襲おうと思いまして。リーゼはなぜかレオンくんの部屋の前でうろうろしてたので道連r……手を貸してあげようと」
「把握」

 誤魔化しきれてないけどな?道連れって言おうとしてたよな?

「それで、リーゼさんは俺に何か用でもありました?」
「私と同じ目的みたいですよ?」

 リーゼさんに聞いたつもりがシャルが答えた。リーゼさんは顔を真っ赤にして俯いてしまっている。ああ、合ってるのか……

「というわけで、しましょうか」

 そう言ってシャルが着ているものを脱ぎ始め、下着だけになった。リーゼさんも覚束ない感じで脱いでいく。
 どちらも芸術的とまでいえるような完璧なプロポーション。そんな二人が今から俺とするのだ。
 前の俺だったら「本当に俺とでいいのか」なんてことを聞いていたのだろう。
 だが今は違う。

 皆の気持ちに正面からしっかりと向き合う。それが俺がするべきことだと教えてもらったから。

 俺は出来るだけ優しくすることを心の中で誓いながら、二人を招き入れた。

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