絶対守護者の学園生活記
馬鹿の元に
魔族が襲来し、学園長の手によって魔物が送られたであろう第二訓練場に私はやってきた。
メンバーは私と、顔合わせのときに私の胸を馬鹿にしてくれたいけ好かないエルフであるアラン。それにリリィとルゥだ。
これは各大将が実力や相性などを考えたうえで決めた編成なんだけど、アランと一緒になるなんて……
だけど今はそんなことを気にしている暇はない。
第二訓練場に入ると中央のステージが強力な結界で囲まれていて、その中で黒龍が暴れまわっている。
「本当にアレを僕達でやるのか……?」
「怖いのかしら?」
「怖いに決まっているだろう! アレは魔物で最も恐れられているドラゴンだぞ! 学生が相手するようなものじゃない! あなたは怖くないのか!?」
「怖いに決まってるじゃない」
「それでも行くと言うのか!?」
「ええ、行くわよ。だって――」
すぐそこにいる魔物は、その一撃をまともにくらえば簡単に命を落とすであろう程の凶悪さ。そんなのと対峙して怖くないわけないじゃない。
でも
「あの馬鹿の元に、胸張って帰らないといけないから」
「……あの馬鹿?」
「あの馬鹿よ。変に責任感が強くて、英雄の息子として世界を救うなんて重大なことやらされて、それでも必死にそれをこなそうとして」
多分、私は今この状況に相応しくない、とびっきりの笑顔になっている気がする。
それだけアイツの事が好きなのだと思う。
「私の胸を好きって言ってくれる、素敵な旦那様よ!」
私は腰に差していた細剣を引き抜く。
「……羨ましいな、そこまで想われているというのは」
「覚悟は決まったかしら?」
「ああ、思う存分やらせてもらうとしよう」
「……私もやる。早く終わらせてレオ兄に褒めてもらう」
「ルゥも撫でてもらう」
皆やる気充分みたいね。
そして私達は同時に結界の中へと足を踏み入れた。
それと同時に私とルゥは強く踏み込んで黒龍へと迫る。
黒龍はかなり強靭な肉体をしており、私とルゥでは致命傷を与えるまではいかない。
だからリリィが全力の魔法を放つ準備が終わるまで引き付けるのが役目だ。アランにはリリィの護衛をしてもらいつつ、こっちの援護をしてもらう。
黒龍が私達の接近に気付いて巨大な尻尾を振り回してくる。
思ったより遅いそれを躱しながら、攻撃を加えていく。
鬱陶しそうに黒龍は翼をはためかせ、尻尾を振るう。
だがそれもすんなり回避する。
そして私たちに構っていると、遠くからアランの魔法が飛んでくる。
かなり効いているようで、黒龍が大きく叫ぶ。
このままいけば確実に倒せる……!
「おかしい!」
そんなことを思っていると、ルゥが動き回りながらも声を上げた。
「おかしいって何がよ!」
「いくらなんでも弱すぎる! これが国を脅かす魔物だとは思えない!」
確かにルゥの言うとおりね。
ドラゴンはそれだけの脅威と認定されているだけに、いくら選抜メンバーに選ばれた私達だからってこんなに楽に戦えるはずはない。
でもそうするとそんな黒龍達を連れてきた魔族の意図が見えない。
魔族以外を滅ぼそうとするなら最高戦力を持ってくるべきよね?
……考えても分からないわね。
「今考えても仕方ないわ! 倒すことだけに集中しましょう!」
どのみちこいつを倒さないことには変わらない。
そしてその後も地道に黒龍の体力を削っていき、時がついにきた。
「……皆、離れて」
リリィの準備が整ったようで、私とルゥは即座に後ろに飛びのいた。
黒龍は満身創痍のようで、その場を動けずにいる。
「……これで終わり」
リリィがそう呟くと、ステージを埋め尽くすほどの火球、水球、風刃、土弾が宙に現れた。
アレってたしかレオンがダルクさんと戦った時に使ってたやつよね?
兄の背を追いかける妹の姿に、ちょっとだけ微笑ましい気持ちになってしまう。
そしてそれらが全て黒龍へと飛んでいく。
燃やされ、吹き飛び、切り刻まれ、貫かれていく。
全てが終わると、そこには事切れたであろう黒龍の死体があった。
「さて、どこかおかしいところはないか探してみましょうか」
「解体、頑張る」
私とルゥは勝利の余韻に浸ることなく、黒龍が弱体化していた理由を探るべく死体に近付いて行った。
その時――
黒龍の死体が黒い炎によって燃え上がった。
そして燃え尽きた死体があった場所に、球状の黒い何かが浮かんでいた。
これは一体……?
メンバーは私と、顔合わせのときに私の胸を馬鹿にしてくれたいけ好かないエルフであるアラン。それにリリィとルゥだ。
これは各大将が実力や相性などを考えたうえで決めた編成なんだけど、アランと一緒になるなんて……
だけど今はそんなことを気にしている暇はない。
第二訓練場に入ると中央のステージが強力な結界で囲まれていて、その中で黒龍が暴れまわっている。
「本当にアレを僕達でやるのか……?」
「怖いのかしら?」
「怖いに決まっているだろう! アレは魔物で最も恐れられているドラゴンだぞ! 学生が相手するようなものじゃない! あなたは怖くないのか!?」
「怖いに決まってるじゃない」
「それでも行くと言うのか!?」
「ええ、行くわよ。だって――」
すぐそこにいる魔物は、その一撃をまともにくらえば簡単に命を落とすであろう程の凶悪さ。そんなのと対峙して怖くないわけないじゃない。
でも
「あの馬鹿の元に、胸張って帰らないといけないから」
「……あの馬鹿?」
「あの馬鹿よ。変に責任感が強くて、英雄の息子として世界を救うなんて重大なことやらされて、それでも必死にそれをこなそうとして」
多分、私は今この状況に相応しくない、とびっきりの笑顔になっている気がする。
それだけアイツの事が好きなのだと思う。
「私の胸を好きって言ってくれる、素敵な旦那様よ!」
私は腰に差していた細剣を引き抜く。
「……羨ましいな、そこまで想われているというのは」
「覚悟は決まったかしら?」
「ああ、思う存分やらせてもらうとしよう」
「……私もやる。早く終わらせてレオ兄に褒めてもらう」
「ルゥも撫でてもらう」
皆やる気充分みたいね。
そして私達は同時に結界の中へと足を踏み入れた。
それと同時に私とルゥは強く踏み込んで黒龍へと迫る。
黒龍はかなり強靭な肉体をしており、私とルゥでは致命傷を与えるまではいかない。
だからリリィが全力の魔法を放つ準備が終わるまで引き付けるのが役目だ。アランにはリリィの護衛をしてもらいつつ、こっちの援護をしてもらう。
黒龍が私達の接近に気付いて巨大な尻尾を振り回してくる。
思ったより遅いそれを躱しながら、攻撃を加えていく。
鬱陶しそうに黒龍は翼をはためかせ、尻尾を振るう。
だがそれもすんなり回避する。
そして私たちに構っていると、遠くからアランの魔法が飛んでくる。
かなり効いているようで、黒龍が大きく叫ぶ。
このままいけば確実に倒せる……!
「おかしい!」
そんなことを思っていると、ルゥが動き回りながらも声を上げた。
「おかしいって何がよ!」
「いくらなんでも弱すぎる! これが国を脅かす魔物だとは思えない!」
確かにルゥの言うとおりね。
ドラゴンはそれだけの脅威と認定されているだけに、いくら選抜メンバーに選ばれた私達だからってこんなに楽に戦えるはずはない。
でもそうするとそんな黒龍達を連れてきた魔族の意図が見えない。
魔族以外を滅ぼそうとするなら最高戦力を持ってくるべきよね?
……考えても分からないわね。
「今考えても仕方ないわ! 倒すことだけに集中しましょう!」
どのみちこいつを倒さないことには変わらない。
そしてその後も地道に黒龍の体力を削っていき、時がついにきた。
「……皆、離れて」
リリィの準備が整ったようで、私とルゥは即座に後ろに飛びのいた。
黒龍は満身創痍のようで、その場を動けずにいる。
「……これで終わり」
リリィがそう呟くと、ステージを埋め尽くすほどの火球、水球、風刃、土弾が宙に現れた。
アレってたしかレオンがダルクさんと戦った時に使ってたやつよね?
兄の背を追いかける妹の姿に、ちょっとだけ微笑ましい気持ちになってしまう。
そしてそれらが全て黒龍へと飛んでいく。
燃やされ、吹き飛び、切り刻まれ、貫かれていく。
全てが終わると、そこには事切れたであろう黒龍の死体があった。
「さて、どこかおかしいところはないか探してみましょうか」
「解体、頑張る」
私とルゥは勝利の余韻に浸ることなく、黒龍が弱体化していた理由を探るべく死体に近付いて行った。
その時――
黒龍の死体が黒い炎によって燃え上がった。
そして燃え尽きた死体があった場所に、球状の黒い何かが浮かんでいた。
これは一体……?
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コメント
ノベルバユーザー65475
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