絶対守護者の学園生活記
顔合わせ
パーティ会場に入ると、既に他大陸の学園のメンバーは揃っていた。
大きな丸テーブルが四つあり、それぞれに学園毎に散らばっているようだ。
俺達は空いてるテーブルへと向かった。テーブルの上には豪華な食事が並べられている。
「ママ! これ食べていい!?」
「こらこら、もうちょっとだけ待て」
クーが早速それに興味を示したようで、ソフィ先輩に早く食べたいとねだっている。宥めているソフィ先輩は良いお母さんしていると思う。俺とシたからかは不明だが、武人気質の先輩は色気も兼ね備え始めたようで、エルフ族のテーブルからの熱い視線を感じる。なぜか俺のケツに視線を向けてるやつもいるが精神衛生上無視だ。
はしゃいでるクーは可愛いなぁとほんわかとした気持ちでいると、奥にある壇の上に王様が上がった。
「はい開始。適当に楽しんでくれ。俺も久しぶりに旧友たちと楽しんでくるわ」
気だるげにそう言って壇上から降り退室していく。
……軽すぎない?いや、王様には色々と準備を手伝ってもらったから疲れてるのは分かるけど公式な場のはずなんだから頑張ってくれ。
旧友というのは他大陸の王様であろう。楽しみすぎてあまり飲みすぎないように気を付けてほしい。
一応王様の宣言がなされたので、パーティが始まった。
各々飲み物が入ったグラスを片手に食事をしたり、他のテーブルに行き談笑をしたりするのがお決まりらしい。……まるで婚活パーティみたいだな。
うちのテーブルからはアリスとミーナが獣人国のテーブルへ、カレンとシャル、それにソフィ先輩はエルフ国のテーブルへと向かった。リリィも背があまり高くないのが特徴であるところにシンパシーを感じたのかドワーフ国のテーブルへ一人で向かった。昔は内気で人と関わるのが苦手だったリリィが積極的になってるのを見て、お兄ちゃん感動のあまり泣きそうだ。
リーゼさんは食べるのに夢中になっているクーを見てくれるようで、このまま残るという。
さて俺もとりあえずどこかに……まずは獣人国にするか。
獣人国のメンバーが集まるテーブルへ行くと見知った顔がいることに気付いた。
「ハンナじゃないか」
「ん? おお! レオンじゃねぇか!」
獣人国流の再会を祝う挨拶なのかは分からんが、獣人国の第一王女であるハンナが飛びついてきたので受け止めてやる。
「ハンナは武闘大会に出るのか?」
「おう! 俺は主将だ! そういうレオンは?」
「俺は補助メンバーだな」
「レオンより強いやつがいるってことか!?」
「あー……まぁ、そうだな」
「本当はレオンとまたやりたかったが、それはそれで楽しみだ!」
ハンナの目が輝いている……流石だな。
「俺とはまた今度機会があればな」
「そうか……私の結婚はまた今度だな……」
「結婚? どういうことだ」
「それは……その……」
ハンナが両手の人差し指をツンツンと合わせながらもじもじとし始めた。あれ?なんかデジャヴ……
「ハンナに代わって私が話そう」
「アリスか。何か知ってるのか?」
一向に話す気配のないハンナに代わって、近くにいたアリスが代わりに教えてくれるようだ。
「獣人国の王族の女の伴侶の条件として、自身より強き相手でなければならないという決まりがあるんだ。そして、相手を打ち負かすことが出来ればその者を伴侶として迎え入れる」
「……つまり、一度は俺に負けたハンナが再戦して勝ったら、俺はハンナの伴侶になるわけか。獣人国の人間じゃない俺には関係なくないか?」
「欲しければ力づくで手に入れて見せろ。それが父の言葉だ」
どうやらもじもじから復活したらしいハンナがアリスに続くようにして疑問に答えた。
うーん。獣人国の王族は脳筋がデフォなのか?
「まあ再びハンナと戦いさえしなければ何も起こるまい。王族だからといって命令に従う必要もないぞ。私が許可する」
「ほほう? 俺の征く道を邪魔しようというのか?」
「レオンは既に私の伴侶なのでな。思う存分邪魔させてもらおうじゃないか」
その時、アリスとハンナの間に火花が起きた!……ように見えた。
互いに睨み合って牽制している二人。
……さーて、同じテーブルにいるはずのミーナは何をしてるのかなっと。別に二人が怖いからって逃げたわけじゃないからね!勘違いしないでよね!
……これは誰得なんだろう。
それはともかくミーナはっと……
「だから! 犬っころ風情がこんなところにいるんじゃねぇ!」
「そんなこと関係ない! 僕にだって居場所はあるんだ!」
なんかこれまたデジャヴなんだが。
うん、今のミーナなら大丈夫だろうし俺は別のところに行こう。別に巻き込まれたら面倒臭そうだなって思ったわけじゃないんだから……もうやめよう。
というわけで次はエルフ国のテーブルへ足をはこ――
「レオンは妾の下僕になるのじゃ。ほほほほほほ」
「レオン君は私のものですからね? ふふふふふふ」
「母性の象徴でもある胸は大きな方がいいに決まっている! その点あなたは……」
「………殺す」
「あぁ、あなたはなんて美しいんだ。是非ともこの後僕と一緒にお茶でも……」
「遠慮する」
――ぶのは止めてドワーフ国のテーブルに行こう。
俺にはあんなカオス空間に近付く度胸はない。
そんなわけで来ましたるはドワーフ国のテーブル。
ほんとに皆小さいんだな……俺と同い年あたりだろうに小学生みたいな身長だ。
そしてそんな中に、同じような身長のリリィが混ざっているのを発見したが、どうやら誰かと話しているようだ。
あの子はもしかして……
「ルゥちゃんか?」
昔、親父に連れられて訪れた武器屋を経営していたドワーフのおっちゃんの孫娘であるルゥちゃんがいた。面影がというか、あのまま背だけ伸びた感じったので気付くことが出来た。
俺の呟きが聞こえたらしくルゥちゃんはこちらを振り向き、てててと駆け寄ってくる。
そして俺の目の前にやってきた。
「凄い人、また会えた」
「久しぶり、ルゥちゃん。なんでここに?」
「私も出るから。王女様としても、負けるわけにはいかない」
「……そうか」
なんかさらっと凄いことを言われた気がしたが気にしないことにしよう。
親睦を深めるためのパーティのはずなのに何故かそこら中でいがみ合いが発生してるし、いちいち何かを気にしてたら疲れちゃうからな。たとえルゥが王女様だったとかいう驚愕的事実が分かったところで俺はそう簡単に心が乱れたりはしないぞ。
「んっ」
ん?ルゥちゃんが俺に向かって頭を突き出してきた……って撫でろってことか、これ。
それでは遠慮なく……おお、これはまた良き心地で。
俺がそんな感じでなでなでタイムを満喫しているといつの間にかリリィもすぐ傍まで来ており、ルゥちゃんと同じく頭を突き出してくる。
当然撫でる。
するとリリィはルゥちゃんの方を向いた。
「……私の」
「ルゥに分けてくれたっていいはず」
そして二人はアリスとハンナのように睨み合って――ではなく見つめあっていた。
二人共感情表現が苦手なようで大体いつも無表情だもんね……
またしても居心地が悪くなってきたので、撫でるのをやめてその場からこっそりと離脱した。
なんかもうお腹いっぱいだ。元のテーブルに戻ってクーに癒されよう……
そして戻ったところ
「パパ! これすごく美味しいの! パパも食べるの!」
そう言ってニコニコ顔で一口サイズにされたケーキの刺さったフォークを俺にあーんしてくるクー。
もう!なんて可愛いんだうちの娘は!
そんなこんなで、和気藹々とするはずのパーティは波乱に満ちたものになったまま、終わりまで進むのであった。
大きな丸テーブルが四つあり、それぞれに学園毎に散らばっているようだ。
俺達は空いてるテーブルへと向かった。テーブルの上には豪華な食事が並べられている。
「ママ! これ食べていい!?」
「こらこら、もうちょっとだけ待て」
クーが早速それに興味を示したようで、ソフィ先輩に早く食べたいとねだっている。宥めているソフィ先輩は良いお母さんしていると思う。俺とシたからかは不明だが、武人気質の先輩は色気も兼ね備え始めたようで、エルフ族のテーブルからの熱い視線を感じる。なぜか俺のケツに視線を向けてるやつもいるが精神衛生上無視だ。
はしゃいでるクーは可愛いなぁとほんわかとした気持ちでいると、奥にある壇の上に王様が上がった。
「はい開始。適当に楽しんでくれ。俺も久しぶりに旧友たちと楽しんでくるわ」
気だるげにそう言って壇上から降り退室していく。
……軽すぎない?いや、王様には色々と準備を手伝ってもらったから疲れてるのは分かるけど公式な場のはずなんだから頑張ってくれ。
旧友というのは他大陸の王様であろう。楽しみすぎてあまり飲みすぎないように気を付けてほしい。
一応王様の宣言がなされたので、パーティが始まった。
各々飲み物が入ったグラスを片手に食事をしたり、他のテーブルに行き談笑をしたりするのがお決まりらしい。……まるで婚活パーティみたいだな。
うちのテーブルからはアリスとミーナが獣人国のテーブルへ、カレンとシャル、それにソフィ先輩はエルフ国のテーブルへと向かった。リリィも背があまり高くないのが特徴であるところにシンパシーを感じたのかドワーフ国のテーブルへ一人で向かった。昔は内気で人と関わるのが苦手だったリリィが積極的になってるのを見て、お兄ちゃん感動のあまり泣きそうだ。
リーゼさんは食べるのに夢中になっているクーを見てくれるようで、このまま残るという。
さて俺もとりあえずどこかに……まずは獣人国にするか。
獣人国のメンバーが集まるテーブルへ行くと見知った顔がいることに気付いた。
「ハンナじゃないか」
「ん? おお! レオンじゃねぇか!」
獣人国流の再会を祝う挨拶なのかは分からんが、獣人国の第一王女であるハンナが飛びついてきたので受け止めてやる。
「ハンナは武闘大会に出るのか?」
「おう! 俺は主将だ! そういうレオンは?」
「俺は補助メンバーだな」
「レオンより強いやつがいるってことか!?」
「あー……まぁ、そうだな」
「本当はレオンとまたやりたかったが、それはそれで楽しみだ!」
ハンナの目が輝いている……流石だな。
「俺とはまた今度機会があればな」
「そうか……私の結婚はまた今度だな……」
「結婚? どういうことだ」
「それは……その……」
ハンナが両手の人差し指をツンツンと合わせながらもじもじとし始めた。あれ?なんかデジャヴ……
「ハンナに代わって私が話そう」
「アリスか。何か知ってるのか?」
一向に話す気配のないハンナに代わって、近くにいたアリスが代わりに教えてくれるようだ。
「獣人国の王族の女の伴侶の条件として、自身より強き相手でなければならないという決まりがあるんだ。そして、相手を打ち負かすことが出来ればその者を伴侶として迎え入れる」
「……つまり、一度は俺に負けたハンナが再戦して勝ったら、俺はハンナの伴侶になるわけか。獣人国の人間じゃない俺には関係なくないか?」
「欲しければ力づくで手に入れて見せろ。それが父の言葉だ」
どうやらもじもじから復活したらしいハンナがアリスに続くようにして疑問に答えた。
うーん。獣人国の王族は脳筋がデフォなのか?
「まあ再びハンナと戦いさえしなければ何も起こるまい。王族だからといって命令に従う必要もないぞ。私が許可する」
「ほほう? 俺の征く道を邪魔しようというのか?」
「レオンは既に私の伴侶なのでな。思う存分邪魔させてもらおうじゃないか」
その時、アリスとハンナの間に火花が起きた!……ように見えた。
互いに睨み合って牽制している二人。
……さーて、同じテーブルにいるはずのミーナは何をしてるのかなっと。別に二人が怖いからって逃げたわけじゃないからね!勘違いしないでよね!
……これは誰得なんだろう。
それはともかくミーナはっと……
「だから! 犬っころ風情がこんなところにいるんじゃねぇ!」
「そんなこと関係ない! 僕にだって居場所はあるんだ!」
なんかこれまたデジャヴなんだが。
うん、今のミーナなら大丈夫だろうし俺は別のところに行こう。別に巻き込まれたら面倒臭そうだなって思ったわけじゃないんだから……もうやめよう。
というわけで次はエルフ国のテーブルへ足をはこ――
「レオンは妾の下僕になるのじゃ。ほほほほほほ」
「レオン君は私のものですからね? ふふふふふふ」
「母性の象徴でもある胸は大きな方がいいに決まっている! その点あなたは……」
「………殺す」
「あぁ、あなたはなんて美しいんだ。是非ともこの後僕と一緒にお茶でも……」
「遠慮する」
――ぶのは止めてドワーフ国のテーブルに行こう。
俺にはあんなカオス空間に近付く度胸はない。
そんなわけで来ましたるはドワーフ国のテーブル。
ほんとに皆小さいんだな……俺と同い年あたりだろうに小学生みたいな身長だ。
そしてそんな中に、同じような身長のリリィが混ざっているのを発見したが、どうやら誰かと話しているようだ。
あの子はもしかして……
「ルゥちゃんか?」
昔、親父に連れられて訪れた武器屋を経営していたドワーフのおっちゃんの孫娘であるルゥちゃんがいた。面影がというか、あのまま背だけ伸びた感じったので気付くことが出来た。
俺の呟きが聞こえたらしくルゥちゃんはこちらを振り向き、てててと駆け寄ってくる。
そして俺の目の前にやってきた。
「凄い人、また会えた」
「久しぶり、ルゥちゃん。なんでここに?」
「私も出るから。王女様としても、負けるわけにはいかない」
「……そうか」
なんかさらっと凄いことを言われた気がしたが気にしないことにしよう。
親睦を深めるためのパーティのはずなのに何故かそこら中でいがみ合いが発生してるし、いちいち何かを気にしてたら疲れちゃうからな。たとえルゥが王女様だったとかいう驚愕的事実が分かったところで俺はそう簡単に心が乱れたりはしないぞ。
「んっ」
ん?ルゥちゃんが俺に向かって頭を突き出してきた……って撫でろってことか、これ。
それでは遠慮なく……おお、これはまた良き心地で。
俺がそんな感じでなでなでタイムを満喫しているといつの間にかリリィもすぐ傍まで来ており、ルゥちゃんと同じく頭を突き出してくる。
当然撫でる。
するとリリィはルゥちゃんの方を向いた。
「……私の」
「ルゥに分けてくれたっていいはず」
そして二人はアリスとハンナのように睨み合って――ではなく見つめあっていた。
二人共感情表現が苦手なようで大体いつも無表情だもんね……
またしても居心地が悪くなってきたので、撫でるのをやめてその場からこっそりと離脱した。
なんかもうお腹いっぱいだ。元のテーブルに戻ってクーに癒されよう……
そして戻ったところ
「パパ! これすごく美味しいの! パパも食べるの!」
そう言ってニコニコ顔で一口サイズにされたケーキの刺さったフォークを俺にあーんしてくるクー。
もう!なんて可愛いんだうちの娘は!
そんなこんなで、和気藹々とするはずのパーティは波乱に満ちたものになったまま、終わりまで進むのであった。
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