絶対守護者の学園生活記
閑話 リリィとクーのおつかい 後編
「……行くよ、クー」
「しゅっぱーつ!」
買い物用の袋を手に、ふんすと気合を入れるリリィと元気よく声を上げるクー。二人は手を繋いで歩き出した。
なんだか見ていて凄く微笑ましい光景だ。
俺と同じく、聴力を強化して二人の言葉を聞いていたソフィ先輩も優しさを感じさせるような笑みを浮かべている。
「本当に親バカだね、二人共……」
俺とソフィ先輩の様子を見ていたミーナが呆れたように呟いた。
そんなことを言われ、現状を確認してみる。
クーとリリィの二人が心配で物陰に隠れながら後ろをこっそりとついていく親バカ二人とシスコンでもある俺。そしてカレンに「ツッコミ役がいないとあの二人は暴走するから」と言われ、ギルドには行かずに監視役としてついてきたらしいミーナ。……暴走する二人って俺たちのこと?流石にするわけないだろ。
それはともかく
「特におかしなことはしてないな、俺達」
「ストーカーじみたことしてるでしょ……」
またしても呆れたようにミーナに言われた。
ストーカーじゃないぞ、心配だから見守ってるだけだ。
「えぅ!」
そんな話をしているとクーの小さな悲鳴が聞こえた。どうやらはしゃぎすぎたあまり転んでしまったようだ。
早く行かなければ!
とっさに反応して走り出そうとした俺だったがミーナに腰に抱き着かれて動きを止めた。
「放してくれ! クーが! クーが!」
「レオン君が出ていったらクーちゃんの気持ちが台無しになっちゃうでしょ! 我慢してよ!」
「はっ! ……すまん、どうにかしてたみたいだ」
「落ち着いたみたいだね。……カレンちゃんの心配が的中したね」
俺とソフィ先輩に褒めてもらいたくておつかいに行っているのに俺が出てったら全てが台無しになつてしまうもんな。
落ち着け、俺。
よく見たらソフィ先輩を自身の頬を思いっきり抓って堪えているようだ。抓ったところが真っ赤になってるけど大丈夫だろうか。
心を落ち着かせ、再びリリィとクーの監視に戻ると、心暖まる光景が広がっていた。
「……いたいのいたいの、とんでけ」
「ん……んふ、えへへ~」
リリィがクーの頭を撫でつつ、あやしていたのだ。撫でられているクーには笑顔が戻っていた。
これには流石にミーナも感動しており、親組とミーナで少し泣いた。
そんなことがありつつも、おつかいが始まった。
最初に二人が辿りついたのは精肉店だ。
「いらっしゃい! 嬢ちゃん達、何が欲しいんだい?」
気前の良さそうなおっちゃんに話しかけれ、メモを見ながらも次々と品物を注文するリリィ。時折クーも、これ!と指を指して手伝っている。
……頼みすぎじゃない?そんなにメモに書いてあったっけ?
そんな疑問はともかく、精肉店を出た二人が次に向かったのは魚屋だ。
そこでも買いすぎじゃないか?と思うほど買い込んでいたが、他には特に問題もなく用を済ませた。
次はたしか八百屋だったはずだ。
八百屋は冒険者ギルドの前を通った先にある。なのでそこを二人が通ろうとした時、ギルド入口の扉が開いた。
そこから出てきたのは、いかにも柄の悪そうな男二人組。
そんな二人組がニヤッと笑うと、リリィ達へと近付いていく。
「君達迷子? よければ僕達が案内してあげるよ」
「そうそう、女の子二人で歩くのは少し危ないよ?」
……何か企んでるのが丸分かりではあるが、我慢だ俺。
男達に話しかけられ、クーは怯えてしまいリリィの背に隠れている。
「……別にいいです。それでは」
そう言ってリリィはクーの手を引いて立ち去ろうとするが、男達がそれを遮った。
「少しぐらいいいだろ? 俺達と楽しいことしようぜ?」
「……さっきまで僕って言ってたし、楽しい事じゃなくて案内だって言ってた」
「っ! いいから俺達に従えばいいんだよ!」
怒鳴るようにして一人の男がリリィへと腕を伸ばす、が……
「リリィお姉ちゃんに触らないで」
リリィに触れるより前に、男二人の首元にクーの大剣が突きつけられていた。
幼女が発したとは思えないほどの冷たい声と、少しでも動けば死が待っているという状況に、尻餅をつく男達。
そしてそんな事が起きれば騒ぎになるわけで、周りには野次馬が集まっていた。
「なんの騒ぎですか!」
騒ぎを聞きつけて、バン!とギルドの扉を開けてリーフェさんが姿を現した。
男達は怯えてて喋れないだろうし、リリィとクーも説明が上手いわけではない。
流石にここは俺の出番だろう。
体内にある魔力を外に放出し、リーフェさんに届くように伸ばしていく。エルフであるリーフェさんなら気付いてくれるであろう。
だが俺は忘れてしまっていた。
クーもエルフであるということに。
いち早く俺の魔力に気づいたクーが、こっちに顔を向けた。そしてパァっと満面の笑みになる。
「パパー!」
大剣を素早く異空間に収納し、すててててと走ってくるクー。そしてそのまま俺に向かってダイブしてきたのでしっかりと受け止めてやる。
「こわかったの~」
いや、めっちゃ幸せそうな顔してるんだが。それに男達を脅してたじゃないですか。
将来、クーが悪女になりそうでパパは心配になっちゃうよ。
「え、レオン君? ていうかパパ?どうなってるの?」
あー……リーフェさんが混乱しておられる。
クーを一旦ソフィ先輩に任せて、俺はリーフェさんにこれまでの経緯とクーについて説明をした。
「そっか……実の娘って訳じゃなかったのね……」
安心したように呟いているが、気にするところはそこだけではない気がする。
俺達から事情は聞いたので、リーフェさんは次に男達から事情を聞こうとしていた。
それをぼーっと眺めていた時、袖をクイッと引っ張られた。
「リリィか、どうした?」
「……ごめんなさい」
「なにがだ?」
「……レオ兄達にクーを任されたのに、逆に私が助けられたから……」
あぁ……そんなことを心配してるのか。
でも俺は見逃さなかったからな?
「リリィだって、魔法を使おうとしただろ? でも加減が上手く出来そうになかったから躊躇っただけで」
男がリリィに手を伸ばした時、リリィの魔力に動きがあったのを俺は感じ取っていた。しかし、元々加減が苦手なリリィは、一瞬ではあるが躊躇ってしまっていたのだ。
俺はそっとリリィを抱きしめてやる。
「リリィはしっかりとお姉さんしてたぞ。クーだってそれを分かってるはずだ。だから気にするな」
さらさらの銀髪を梳かすようにしながら頭を撫でて、少しでもリリィの頑張りを認める。
兄として、そして実際に二人のおつかいを見てきたうえでの本心を伝えた。
するとリリィも俺と同じようにしてぎゅーと抱きしめ返してくる。
「ほら、まだおつかいは途中だろ? お姉さんとしてしっかりリードしてやれ」
「……うん!」
俺の言葉に、綺麗な笑みを見せ頷いたリリィはクーの元へと向かい、再び手を繋いでおつかいを再開した。
今度は俺達もこっそりとではなく、堂々と後ろから二人の様子を見守ったのであった。
そんなおつかいも終わり、屋敷に辿り着いたわけだが……
なぜかメモに書いてあった量の二倍以上の食料が買いこまれており、それを見たカレンは怒る寸前なのか頬がピクピクとしていた。
俺はカレンを抑えつつ、二人になんでこんなに買ったのかと聞いたところ返ってきた答えが
「……これだけ買えばレオ兄達もお腹いっぱい食べれるし、お店の人も喜んでくれると思って」
「みーんな、しあわせなの!」
このあとめちゃくちゃ二人を愛でた。
「しゅっぱーつ!」
買い物用の袋を手に、ふんすと気合を入れるリリィと元気よく声を上げるクー。二人は手を繋いで歩き出した。
なんだか見ていて凄く微笑ましい光景だ。
俺と同じく、聴力を強化して二人の言葉を聞いていたソフィ先輩も優しさを感じさせるような笑みを浮かべている。
「本当に親バカだね、二人共……」
俺とソフィ先輩の様子を見ていたミーナが呆れたように呟いた。
そんなことを言われ、現状を確認してみる。
クーとリリィの二人が心配で物陰に隠れながら後ろをこっそりとついていく親バカ二人とシスコンでもある俺。そしてカレンに「ツッコミ役がいないとあの二人は暴走するから」と言われ、ギルドには行かずに監視役としてついてきたらしいミーナ。……暴走する二人って俺たちのこと?流石にするわけないだろ。
それはともかく
「特におかしなことはしてないな、俺達」
「ストーカーじみたことしてるでしょ……」
またしても呆れたようにミーナに言われた。
ストーカーじゃないぞ、心配だから見守ってるだけだ。
「えぅ!」
そんな話をしているとクーの小さな悲鳴が聞こえた。どうやらはしゃぎすぎたあまり転んでしまったようだ。
早く行かなければ!
とっさに反応して走り出そうとした俺だったがミーナに腰に抱き着かれて動きを止めた。
「放してくれ! クーが! クーが!」
「レオン君が出ていったらクーちゃんの気持ちが台無しになっちゃうでしょ! 我慢してよ!」
「はっ! ……すまん、どうにかしてたみたいだ」
「落ち着いたみたいだね。……カレンちゃんの心配が的中したね」
俺とソフィ先輩に褒めてもらいたくておつかいに行っているのに俺が出てったら全てが台無しになつてしまうもんな。
落ち着け、俺。
よく見たらソフィ先輩を自身の頬を思いっきり抓って堪えているようだ。抓ったところが真っ赤になってるけど大丈夫だろうか。
心を落ち着かせ、再びリリィとクーの監視に戻ると、心暖まる光景が広がっていた。
「……いたいのいたいの、とんでけ」
「ん……んふ、えへへ~」
リリィがクーの頭を撫でつつ、あやしていたのだ。撫でられているクーには笑顔が戻っていた。
これには流石にミーナも感動しており、親組とミーナで少し泣いた。
そんなことがありつつも、おつかいが始まった。
最初に二人が辿りついたのは精肉店だ。
「いらっしゃい! 嬢ちゃん達、何が欲しいんだい?」
気前の良さそうなおっちゃんに話しかけれ、メモを見ながらも次々と品物を注文するリリィ。時折クーも、これ!と指を指して手伝っている。
……頼みすぎじゃない?そんなにメモに書いてあったっけ?
そんな疑問はともかく、精肉店を出た二人が次に向かったのは魚屋だ。
そこでも買いすぎじゃないか?と思うほど買い込んでいたが、他には特に問題もなく用を済ませた。
次はたしか八百屋だったはずだ。
八百屋は冒険者ギルドの前を通った先にある。なのでそこを二人が通ろうとした時、ギルド入口の扉が開いた。
そこから出てきたのは、いかにも柄の悪そうな男二人組。
そんな二人組がニヤッと笑うと、リリィ達へと近付いていく。
「君達迷子? よければ僕達が案内してあげるよ」
「そうそう、女の子二人で歩くのは少し危ないよ?」
……何か企んでるのが丸分かりではあるが、我慢だ俺。
男達に話しかけられ、クーは怯えてしまいリリィの背に隠れている。
「……別にいいです。それでは」
そう言ってリリィはクーの手を引いて立ち去ろうとするが、男達がそれを遮った。
「少しぐらいいいだろ? 俺達と楽しいことしようぜ?」
「……さっきまで僕って言ってたし、楽しい事じゃなくて案内だって言ってた」
「っ! いいから俺達に従えばいいんだよ!」
怒鳴るようにして一人の男がリリィへと腕を伸ばす、が……
「リリィお姉ちゃんに触らないで」
リリィに触れるより前に、男二人の首元にクーの大剣が突きつけられていた。
幼女が発したとは思えないほどの冷たい声と、少しでも動けば死が待っているという状況に、尻餅をつく男達。
そしてそんな事が起きれば騒ぎになるわけで、周りには野次馬が集まっていた。
「なんの騒ぎですか!」
騒ぎを聞きつけて、バン!とギルドの扉を開けてリーフェさんが姿を現した。
男達は怯えてて喋れないだろうし、リリィとクーも説明が上手いわけではない。
流石にここは俺の出番だろう。
体内にある魔力を外に放出し、リーフェさんに届くように伸ばしていく。エルフであるリーフェさんなら気付いてくれるであろう。
だが俺は忘れてしまっていた。
クーもエルフであるということに。
いち早く俺の魔力に気づいたクーが、こっちに顔を向けた。そしてパァっと満面の笑みになる。
「パパー!」
大剣を素早く異空間に収納し、すててててと走ってくるクー。そしてそのまま俺に向かってダイブしてきたのでしっかりと受け止めてやる。
「こわかったの~」
いや、めっちゃ幸せそうな顔してるんだが。それに男達を脅してたじゃないですか。
将来、クーが悪女になりそうでパパは心配になっちゃうよ。
「え、レオン君? ていうかパパ?どうなってるの?」
あー……リーフェさんが混乱しておられる。
クーを一旦ソフィ先輩に任せて、俺はリーフェさんにこれまでの経緯とクーについて説明をした。
「そっか……実の娘って訳じゃなかったのね……」
安心したように呟いているが、気にするところはそこだけではない気がする。
俺達から事情は聞いたので、リーフェさんは次に男達から事情を聞こうとしていた。
それをぼーっと眺めていた時、袖をクイッと引っ張られた。
「リリィか、どうした?」
「……ごめんなさい」
「なにがだ?」
「……レオ兄達にクーを任されたのに、逆に私が助けられたから……」
あぁ……そんなことを心配してるのか。
でも俺は見逃さなかったからな?
「リリィだって、魔法を使おうとしただろ? でも加減が上手く出来そうになかったから躊躇っただけで」
男がリリィに手を伸ばした時、リリィの魔力に動きがあったのを俺は感じ取っていた。しかし、元々加減が苦手なリリィは、一瞬ではあるが躊躇ってしまっていたのだ。
俺はそっとリリィを抱きしめてやる。
「リリィはしっかりとお姉さんしてたぞ。クーだってそれを分かってるはずだ。だから気にするな」
さらさらの銀髪を梳かすようにしながら頭を撫でて、少しでもリリィの頑張りを認める。
兄として、そして実際に二人のおつかいを見てきたうえでの本心を伝えた。
するとリリィも俺と同じようにしてぎゅーと抱きしめ返してくる。
「ほら、まだおつかいは途中だろ? お姉さんとしてしっかりリードしてやれ」
「……うん!」
俺の言葉に、綺麗な笑みを見せ頷いたリリィはクーの元へと向かい、再び手を繋いでおつかいを再開した。
今度は俺達もこっそりとではなく、堂々と後ろから二人の様子を見守ったのであった。
そんなおつかいも終わり、屋敷に辿り着いたわけだが……
なぜかメモに書いてあった量の二倍以上の食料が買いこまれており、それを見たカレンは怒る寸前なのか頬がピクピクとしていた。
俺はカレンを抑えつつ、二人になんでこんなに買ったのかと聞いたところ返ってきた答えが
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