絶対守護者の学園生活記
造られた存在
なんでこんなところにソフィ先輩が? それにその死体は……
「レオン、か」
「っ!」
俺の名前を言いつつ、ソフィ先輩がこちらを向くが、普段との違いに思わず息を呑む。
ソフィ先輩の目から、表情から、声から、何の感情も感じられない。まるで機械のようだと思わずにはいられないほどだ。それほどまでに、ソフィ先輩からは何も感じられなかった。
「ソフィ先輩……何があったんですか?」
「……ねぇ、レオン君」
俺の問いかけには答えず、ソフィ先輩が俺を呼ぶ。しかも、全く言われたことのない呼び方で。そして喋り方まで変えて。
「なんですか?」
「お願いがあるの。私を――」
自然と見つめ合うかたちとなり、言葉が紡がれる。
「――殺して」
何を、言ってるんだ? 殺す? 俺が、ソフィ先輩を?
「嫌です。俺にはそんなこと出来ません」
「お願い、私を殺して。私にはもう生きる理由もない。私は生きていてはいけない存在だから」
生きていてはいけない存在? それってどういう……
「私は造られた存在。目的を果たす為に生きてきただけ。もう目的は果たせた。だから、私に生きる意味は無い。私はこの世に存在してはいけないから」
ソフィ先輩が淡々と語り続ける。その内容は驚愕に値するものであったが、それよりも俺には気になることがあった。
「もう、未練はないってことですか?」
「ない。だから早く殺して」
ないんだろ? 生きる意味も、目的も、未練も。
ならなぜ? なんで……
なんで泣いてるんだよっ!
「ソフィ先輩!」
俺は先輩の前まで近寄り、両肩に手を置く。
「なんでソフィ先輩は強さを求めてたんですか?」
「……復讐のため」
「復讐のため、ですか。その割には鍛錬の時なんかは楽しそうでしたよ、ソフィ先輩」
「……楽し、そう?」
「自分の実力が上がって喜んだり、アリスに惜敗して悔しんで、勝つためには何をすればいいのか模索して、そんなソフィ先輩は、いつも楽しそうでした」
「……違う。それは」
「違いません!」
毎朝の鍛錬は俺にとっても大切な時間であった。互いが切磋琢磨して己を高めあった。そこにはいつも、復讐のためとは感じさせない、ただただ純粋に上を目指しているソフィ先輩の姿があった。
「知ってますかソフィ先輩。アリスにも弱点ってあるんですよ?」
「……そんなの、ない」
俺の言葉に否定の意を示す。何回も手合わせしたからこそだろう。
「実はあるんですよ。ほんっっっとに少しの違いなんですけど、攻めようとする瞬間に剣を握る手に少しだけ力が入るんですよ。これを知ってれば戦いが有利になると思いませんか?」
「……対策は、出来るだろうな」
「でしょ?」
「しかし、アリスならその癖もすぐに修正してしまうだろう」
「それもそうですね……ならこういうのはどうですか?」
俺はソフィ先輩に考えつく限りのアリス対策を話す。それに対して、ソフィ先輩も色々な意見を出す。口調も戻っている。
……やっぱりな。
「ソフィ先輩気付いてます? 今の先輩、すっごく生き生きしてますよ?」
「えっ……」
「ほら、やっぱり未練あったじゃないですか。もっと戦っていたいんでしょう? アリスに勝ちたいんでしょう? それに俺にだって」
「それは……」
俺はソフィ先輩の目から流れる涙をそっと指でそっと拭った。
「生きる目的、出来ましたね」
生きる目的が戦うことというのはどうなんだと思うかもしれない。それでも、ソフィ先輩にはまだまだ先があるんだ。こんなところで終わって欲しくない。
「造られた存在だなんだとか、どうだっていいんです。今までソフィ先輩を見ていて、そこにいたのは一人の女の子ですよ。ただ少し戦闘狂なところがあって、武人気質のね」
「レ、レオン……」
「だから、よければ先輩のことをもっと教えてくれませんか?」
この出来事も、ソフィ先輩が言い出したことも、全ては過去になにかあっての事だろう。
だからこそ、聞きたい。聞いた上で、支えになってあげたい。
「………私は――」
そしてソフィ先輩は、語り始めた。
「レオン、か」
「っ!」
俺の名前を言いつつ、ソフィ先輩がこちらを向くが、普段との違いに思わず息を呑む。
ソフィ先輩の目から、表情から、声から、何の感情も感じられない。まるで機械のようだと思わずにはいられないほどだ。それほどまでに、ソフィ先輩からは何も感じられなかった。
「ソフィ先輩……何があったんですか?」
「……ねぇ、レオン君」
俺の問いかけには答えず、ソフィ先輩が俺を呼ぶ。しかも、全く言われたことのない呼び方で。そして喋り方まで変えて。
「なんですか?」
「お願いがあるの。私を――」
自然と見つめ合うかたちとなり、言葉が紡がれる。
「――殺して」
何を、言ってるんだ? 殺す? 俺が、ソフィ先輩を?
「嫌です。俺にはそんなこと出来ません」
「お願い、私を殺して。私にはもう生きる理由もない。私は生きていてはいけない存在だから」
生きていてはいけない存在? それってどういう……
「私は造られた存在。目的を果たす為に生きてきただけ。もう目的は果たせた。だから、私に生きる意味は無い。私はこの世に存在してはいけないから」
ソフィ先輩が淡々と語り続ける。その内容は驚愕に値するものであったが、それよりも俺には気になることがあった。
「もう、未練はないってことですか?」
「ない。だから早く殺して」
ないんだろ? 生きる意味も、目的も、未練も。
ならなぜ? なんで……
なんで泣いてるんだよっ!
「ソフィ先輩!」
俺は先輩の前まで近寄り、両肩に手を置く。
「なんでソフィ先輩は強さを求めてたんですか?」
「……復讐のため」
「復讐のため、ですか。その割には鍛錬の時なんかは楽しそうでしたよ、ソフィ先輩」
「……楽し、そう?」
「自分の実力が上がって喜んだり、アリスに惜敗して悔しんで、勝つためには何をすればいいのか模索して、そんなソフィ先輩は、いつも楽しそうでした」
「……違う。それは」
「違いません!」
毎朝の鍛錬は俺にとっても大切な時間であった。互いが切磋琢磨して己を高めあった。そこにはいつも、復讐のためとは感じさせない、ただただ純粋に上を目指しているソフィ先輩の姿があった。
「知ってますかソフィ先輩。アリスにも弱点ってあるんですよ?」
「……そんなの、ない」
俺の言葉に否定の意を示す。何回も手合わせしたからこそだろう。
「実はあるんですよ。ほんっっっとに少しの違いなんですけど、攻めようとする瞬間に剣を握る手に少しだけ力が入るんですよ。これを知ってれば戦いが有利になると思いませんか?」
「……対策は、出来るだろうな」
「でしょ?」
「しかし、アリスならその癖もすぐに修正してしまうだろう」
「それもそうですね……ならこういうのはどうですか?」
俺はソフィ先輩に考えつく限りのアリス対策を話す。それに対して、ソフィ先輩も色々な意見を出す。口調も戻っている。
……やっぱりな。
「ソフィ先輩気付いてます? 今の先輩、すっごく生き生きしてますよ?」
「えっ……」
「ほら、やっぱり未練あったじゃないですか。もっと戦っていたいんでしょう? アリスに勝ちたいんでしょう? それに俺にだって」
「それは……」
俺はソフィ先輩の目から流れる涙をそっと指でそっと拭った。
「生きる目的、出来ましたね」
生きる目的が戦うことというのはどうなんだと思うかもしれない。それでも、ソフィ先輩にはまだまだ先があるんだ。こんなところで終わって欲しくない。
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