絶対守護者の学園生活記

若鷺(わかさぎ)

アリスの告白

 あれから数日が経ち、場所は王城の客間。
 そこで俺はアリスとテーブルを挟んで向かい合ってソファに座っていた。
 これから俺はアリスに、俺のことをどう思っているか聞く。
 ……どうとも思ってないと言われたらショックで立ち直れなくなりそうで、正直帰りたい気持ちで一杯だったりする。
 でもこの前の王様は、王としての顔ではなく、娘の幸せを願う一人の父親の顔をしていた。
 俺はその気持ちに答えたい。だから真摯に向き合う。

「……父上から話は聞いた。そ、その、私とレオンで、こ、婚約関係を結ばないか、と」


 動揺のあまり、ぎこちない喋り方をするアリス。顔が恥ずかしさのあまりに真っ赤だぞ。まあ内容が内容だしな。

「ああ。親の目からアリスは俺に好意を持っているように見えてるらしいぞ」
「そ、そうだったのか……」

 親に隠し事は出来ないものだもんな。

「だからこそ確認したい」

 まどろっこしい前座などはいらない。最初からクライマックスだ。
 ……本当はこの空気に耐えられなくなりそうだからだ。

「アリスは俺のことを、どう思っている?」
「! そうか、そうだよな……」

 王様の方針を知っているアリスならもちろん気付いたであろう。王様は娘の真の幸せを願っているが、それは周りのお偉い様方には良く思われていない。それでもあの王様なら、無理な婚約はさせない。
 そして、そんな王様が今回俺との婚約を結ばせるのも無理矢理ではない、同意の上でと考えるのは当たり前だろう。

「その、レオンは私の事をどう思ってるんだ?」

 少し俯きながらも上目遣いでそう問いかけてくるアリス。
 俺の気持ち、か……。
 はぐらかす訳にはいかないよな。

「正直、俺で本当にいいのかと思ってる。そりゃアリスの婚約者になれるとなれば俺だって嬉しい。でも、その……」

 俺は、幸せを求めてもいいのだろうか?
 俺は村の生き残りだ。
 村にはカレンの親代わりの人も、リリィと俺の両親だっていたんだ。カレンとリリィは俺のことを責めることはなかった。アリスも俺は気にしなくていいと言っていた。
 それでも、心のどこかで俺は。

「……はぁ。お前はなんというか、面倒臭いな」
「なんだ急に」
「いいか、私の気持ちを伝える」

 アリスがこちらを見据え、真剣な面持ちをしている。

「私は、ずっと前からお前のことが好きだ」

 衝撃だった。こんな俺のことが、好き? ずっと前から?

「ずっと前からってのは、えーと……」
「村で初めて会ってからだ」

 そんなに前から?

「村で初めて会ったお前は私が王女だと知っても、普通の女の子として接してくれた。お前が子供達に好かれていると聞いて、優しい心を持っていると知った。自分の弱さを認め、それでも諦めない強さを持っていた」

アリスが次々と話し始める。

「そして村が消えて、レオンとはもう会えないんだと考えた瞬間に私は気付いたんだ」

アリスは自身の手を胸に当てて――

「ああ、私はレオンに恋をしていたんだ、と」

とても綺麗な微笑みを浮かべながら、そう言った。

「レオンにもう会えないと悟った私は、この気持ちを忘れるために必死で鍛錬に取り組んだんだぞ? そのおかげかここまで強くなれた。」

 アリスが強さを求めていた理由は、あくまでも姉への想いからだったはず。でも、今ある力はそれだけではない。俺が関係している。

「だから、お前と再会出来た時は本当に嬉しかった。しかも、私を助けてくれた。溢れ出る感情が抑えきれなかったんだ」

 俺がアリスを魔物から助け、そこで五年ぶりになるであろう再会を果たした。

「それに、キスも嫌ではなかった。むしろレオンで良かったと思っている」

 その時、その場の空気に流され、俺とアリスはキスをしてしまった。

「結局、私はこの気持ちを忘れることなんて出来ていなかった。むしろさらに思いが大きくなるばかりだった。だから」

 自然と、アリスと目が合う。その瞳から、疑いようのない本気という感情が伝わってきた。

「私と、結婚して下さい」

 立ち上がり頭を下げるアリス。

「……普通は逆じゃないか? それに結婚じゃなくて婚約だぞ」
「なっ……わ、分かっている!」

 さっきまでの真剣な表情はどこへやら、慌てふためくアリス。
 そんなアリスを見て、俺はこの人と一緒に生きたいと思った。
 ……俺もアリスが好きだ。そう気付けた。いや、気付かされた。

 その直後、頭の中で声が響いた。

「レオン、孫の姿は見せてくれよ!」
「お孫さんの顔はどんな感じかしら~」

 この声は。
 忘れることのないであろうこの声は。
 レオナードとリン。ボーン村の、俺の本当の両親の声。
 考えられるとしたら加護の力か?
 原因は分からない。でも。

 あの二人なら、そう言いそうだな。
 そう思った。
 だから俺は。

「俺もアリスのことが好きだ。俺と付き合ってください!」

 立ち上がり、頭を下げて手を差し出す。
 そして、返事を待つ。先にアリスに言われてしまったが、やっぱり男から言わないとな。

 チラッと反応を窺うと、アリスはハッと目を見開いて驚きの表情をしていたが、しばらくして答えた。

「……はい、私もあなたのことが好きです。こんな私でよければ」

 俺が差し出した手を両手で包み込んだアリスは、長い間募らせてきた想いが実ったからか、涙を流して微笑んでいた。
 それは今まで見てきた中で、一番だと思えるくらいに綺麗で。

 こうしてお互いの気持ちを確認しあった俺達は、結果を王様へと報告した。
 幸せそうなアリスの様子を見た王様は、とても柔らかな表情をしていた。




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コメント

  • ノベルバユーザー438963

    まじでこのラノベ好き、悲しい時は悲しくなるし感動させるのが上手すぎる

    1
  • 異世界の白猫

    ん、リア充はとりま爆発しろ

    6
  • 神無木雷兎

    ん。いい話。

    9
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