絶対守護者の学園生活記
親子漫才
「はぁ……」
「どうした息子よ。そんなに溜息ばかりついてると幸せに逃げられるぞ」
「誰かさんが来たせいで既に逃げられたよ……」
「なんだと? そいつは酷い奴だな」
「あんただよ!」
「おいおい、俺はお前をそんなこと言う子に育てた覚えはないぞ?」
「うぜぇ……」
ああこのなんか掴めない感じ。こいつは間違いなくクソ親父だ。
「親子漫才を見せてもらったところで、今回の実技の授業は終わりだ。各自教室に戻れ。レオン、久しぶりの親との再開だ。少しだけ時間を取るから話してきていいぞ」
要らない気遣いしやがって……。てか何が親子漫才だ。
他の生徒は俺の班の奴らを除いて教室へと戻っていく。何でこいつら残ってんだ?
「レオン、この子達は?」
「あぁ、紹介するよ」
そして互いの紹介を済ませる。マルクがやたらユフィさんを見ているが人妻だぞ? お前ロリコンじゃないのか? 聞くと怒りそうなので聞かないが。
「ほーん、この子がカレンちゃんとリリィちゃんか」
ダルクさんがカレンとリリィをじーっと見つめる。そういや俺の記憶を覗いたから二人のことは最初から知ってるんだよな。
見つめられてる二人は緊張した面持ちをしている。
しばらくすると今度は俺を見る。
「んで、どっちがレオンの彼女だ? もしかして二人共? もしくは大穴でミーナちゃん?」
「はぁ!?」
こいつ、とんでもない爆弾投下しやがった!
ほら見ろ、カレンとリリィの顔がリンゴ並みに真っ赤になっているじゃないか! そして俺の居心地がかなり悪い! カレンよ、こっちをチラチラ見るのはやめてくれ、心臓に悪い。ミーナは呆れ笑いをしている。
「何を言ってるんですか、ダルクさん」
おぉ!マルクが珍しくフォローを入れてくれようとしてくれてる! お前はやれば出来る奴だと思ってたぞ!
「俺の予想だと恐らく、本命はアリス先輩かと」
おおおおぉぉい!? お前が何を言ってるんだ!?
「ほう……お前、色々と知ってそうだな。詳しく聞かせてもらおうか」
「もちろんです。俺もレオンには色々と世話になってるんでね。ここで発散させてもらいますよ」
マルクの野郎、可愛い子にうつつを抜かそうとする度に俺が許嫁の名前を出して止めてることを根に持ってやがる! すっごく悪い顔してるぞ今の顔。
マルクとダルクさんは詳しく話をする為に離れていってしまう。マルクは教室に戻らなくていいのだろうか。怒られても俺は知らん。
「……カレンは本気、リリィはどっちか分かってない、ミーナは微妙」
「? どうしたんだ、母さん?」
「……なんでもない」
なんというかユフィさんは澄んだ声をしているのでよく通るのだが、声量がそんなに大きくないのでたまに聞き逃してしまう。
「そっちは何事も無かった?」
「……一応、あるにはある」
「なんだ?」
「……この子」
そう言ってユフィさんはお腹を撫でる。見た目は全然変わってないが、もしかして。
「子供が出来たのか?」
「……うん」
嬉しそうに、ふっと微笑みながら頷くユフィさん。
うおおぉぉぉマジか!これはめでたい!
「おめでとう母さん!」
「おめでとうございます!」
「……おめでとう、ございます」
「……ありがとう」
見た目じゃ全然分からないが、恐らく魔法で確かめたのだろう。生まれるとしたら今が四月だから来年の一月か二月あたりか?
「……出来るなら、女の子がいい」
「どうしてだ?」
「……レオンに嫁がせられるから」
「ぶっ!」
思わず噴き出してしまう。なんだこの夫婦は。爆弾発言の資格でも持ってるのだろうか?
「流石に義理でも妹と結婚はちょっと……」
「……むしろ義理だからこそ。そもそも愛さえあれば妹でも関係ない」
どこぞのラノベのタイトルみたいな事を言い始めたよこの人。リリィの前でこんな会話したくないんだが。
「……だから、もし迷ってるなら、決断はちゃんとした方がいい」
「誰に言ってるんだ?」
「……内緒」
たまに分からない行動をするなこの人は……。
そろそろ教室に戻った方がいいだろう。マルクはまだダルクさんと話をしている。てか肩を組んで話し合っているぞあの二人。名前も一文字違いだし相性がいいのだろうか? 
「んじゃ俺達は戻るわ。またな母さん」
「……ん。また、野外実習で」
簡単に別れの挨拶を済ませ教室へと戻る。マルクは置いてきた。
それにしても、俺に弟か妹が出来るのか。
絶対に甘やかしてしまう自信がある。
だって可愛いは正義なんだもん!
俺はそんなことを考えながら教室に戻っていった。
※※※
最近、カレンが変わった。お兄ちゃんに恋をしたのだろう。長年付き合ってきたからこそ分かる変化だった。
恋。それは私には分からない感情だ。そもそも私には男の人の知りあいがほとんどいない。
街中を歩いていると、不愉快な視線を向けられるせいもあってむしろ男の人は苦手だ。だから思い浮かぶのは主にお兄ちゃんのことになる。
レオンお兄ちゃん――私が幼いころから相手をしてくれた。内気な私はお兄ちゃんに常について回っていたが、お兄ちゃんは嫌な顔一つせずに許してくれていた。妹として可愛がってくれた。
そんなお兄ちゃんがいなくなってしまったと聞いて、凄く悲しかったのを覚えている。それと一緒に、戻ってきてくれた時の感動も。そしてその後もお兄ちゃんの言動で一喜一憂することが多々あった。
もしかしてこれが好きという気持ちの表れなのだろうか。だとしても、この好きはどっちの好きなのだろう。『兄として』の好きなのか、『男として』の好きなのか。私には分からなかった。
そんな中、今度の野外実習の付き添いとしてくるユフィという人の発言が頭に残った。
「……だから、もし迷ってるなら、決断はちゃんとした方がいい」
迷ってるなら――
それはまさに私の今の現状であろう。
恐らくだが、アリスもお兄ちゃんに恋をしている。
つまり、早くしないとカレンかアリスにお兄ちゃんを取られることになるであろう。
お兄ちゃんを『男として』好きなら、まずいことである。だが、『兄として』好きなら、それは喜ぶべきことである。
今の私は、どうしたらいいのかさっぱり分からない。
いつか、この気持ちに決断を下せる日が来るのだろうか?
私の頭の中は、しばらくはそんなことでいっぱいなのであった。
「どうした息子よ。そんなに溜息ばかりついてると幸せに逃げられるぞ」
「誰かさんが来たせいで既に逃げられたよ……」
「なんだと? そいつは酷い奴だな」
「あんただよ!」
「おいおい、俺はお前をそんなこと言う子に育てた覚えはないぞ?」
「うぜぇ……」
ああこのなんか掴めない感じ。こいつは間違いなくクソ親父だ。
「親子漫才を見せてもらったところで、今回の実技の授業は終わりだ。各自教室に戻れ。レオン、久しぶりの親との再開だ。少しだけ時間を取るから話してきていいぞ」
要らない気遣いしやがって……。てか何が親子漫才だ。
他の生徒は俺の班の奴らを除いて教室へと戻っていく。何でこいつら残ってんだ?
「レオン、この子達は?」
「あぁ、紹介するよ」
そして互いの紹介を済ませる。マルクがやたらユフィさんを見ているが人妻だぞ? お前ロリコンじゃないのか? 聞くと怒りそうなので聞かないが。
「ほーん、この子がカレンちゃんとリリィちゃんか」
ダルクさんがカレンとリリィをじーっと見つめる。そういや俺の記憶を覗いたから二人のことは最初から知ってるんだよな。
見つめられてる二人は緊張した面持ちをしている。
しばらくすると今度は俺を見る。
「んで、どっちがレオンの彼女だ? もしかして二人共? もしくは大穴でミーナちゃん?」
「はぁ!?」
こいつ、とんでもない爆弾投下しやがった!
ほら見ろ、カレンとリリィの顔がリンゴ並みに真っ赤になっているじゃないか! そして俺の居心地がかなり悪い! カレンよ、こっちをチラチラ見るのはやめてくれ、心臓に悪い。ミーナは呆れ笑いをしている。
「何を言ってるんですか、ダルクさん」
おぉ!マルクが珍しくフォローを入れてくれようとしてくれてる! お前はやれば出来る奴だと思ってたぞ!
「俺の予想だと恐らく、本命はアリス先輩かと」
おおおおぉぉい!? お前が何を言ってるんだ!?
「ほう……お前、色々と知ってそうだな。詳しく聞かせてもらおうか」
「もちろんです。俺もレオンには色々と世話になってるんでね。ここで発散させてもらいますよ」
マルクの野郎、可愛い子にうつつを抜かそうとする度に俺が許嫁の名前を出して止めてることを根に持ってやがる! すっごく悪い顔してるぞ今の顔。
マルクとダルクさんは詳しく話をする為に離れていってしまう。マルクは教室に戻らなくていいのだろうか。怒られても俺は知らん。
「……カレンは本気、リリィはどっちか分かってない、ミーナは微妙」
「? どうしたんだ、母さん?」
「……なんでもない」
なんというかユフィさんは澄んだ声をしているのでよく通るのだが、声量がそんなに大きくないのでたまに聞き逃してしまう。
「そっちは何事も無かった?」
「……一応、あるにはある」
「なんだ?」
「……この子」
そう言ってユフィさんはお腹を撫でる。見た目は全然変わってないが、もしかして。
「子供が出来たのか?」
「……うん」
嬉しそうに、ふっと微笑みながら頷くユフィさん。
うおおぉぉぉマジか!これはめでたい!
「おめでとう母さん!」
「おめでとうございます!」
「……おめでとう、ございます」
「……ありがとう」
見た目じゃ全然分からないが、恐らく魔法で確かめたのだろう。生まれるとしたら今が四月だから来年の一月か二月あたりか?
「……出来るなら、女の子がいい」
「どうしてだ?」
「……レオンに嫁がせられるから」
「ぶっ!」
思わず噴き出してしまう。なんだこの夫婦は。爆弾発言の資格でも持ってるのだろうか?
「流石に義理でも妹と結婚はちょっと……」
「……むしろ義理だからこそ。そもそも愛さえあれば妹でも関係ない」
どこぞのラノベのタイトルみたいな事を言い始めたよこの人。リリィの前でこんな会話したくないんだが。
「……だから、もし迷ってるなら、決断はちゃんとした方がいい」
「誰に言ってるんだ?」
「……内緒」
たまに分からない行動をするなこの人は……。
そろそろ教室に戻った方がいいだろう。マルクはまだダルクさんと話をしている。てか肩を組んで話し合っているぞあの二人。名前も一文字違いだし相性がいいのだろうか? 
「んじゃ俺達は戻るわ。またな母さん」
「……ん。また、野外実習で」
簡単に別れの挨拶を済ませ教室へと戻る。マルクは置いてきた。
それにしても、俺に弟か妹が出来るのか。
絶対に甘やかしてしまう自信がある。
だって可愛いは正義なんだもん!
俺はそんなことを考えながら教室に戻っていった。
※※※
最近、カレンが変わった。お兄ちゃんに恋をしたのだろう。長年付き合ってきたからこそ分かる変化だった。
恋。それは私には分からない感情だ。そもそも私には男の人の知りあいがほとんどいない。
街中を歩いていると、不愉快な視線を向けられるせいもあってむしろ男の人は苦手だ。だから思い浮かぶのは主にお兄ちゃんのことになる。
レオンお兄ちゃん――私が幼いころから相手をしてくれた。内気な私はお兄ちゃんに常について回っていたが、お兄ちゃんは嫌な顔一つせずに許してくれていた。妹として可愛がってくれた。
そんなお兄ちゃんがいなくなってしまったと聞いて、凄く悲しかったのを覚えている。それと一緒に、戻ってきてくれた時の感動も。そしてその後もお兄ちゃんの言動で一喜一憂することが多々あった。
もしかしてこれが好きという気持ちの表れなのだろうか。だとしても、この好きはどっちの好きなのだろう。『兄として』の好きなのか、『男として』の好きなのか。私には分からなかった。
そんな中、今度の野外実習の付き添いとしてくるユフィという人の発言が頭に残った。
「……だから、もし迷ってるなら、決断はちゃんとした方がいい」
迷ってるなら――
それはまさに私の今の現状であろう。
恐らくだが、アリスもお兄ちゃんに恋をしている。
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