外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん

穴の空いた靴下

66話 扉の向こう

 重厚な扉に手をかけるがびくともしない。
 押し開き、引き開き、まさかの横開きに上開き。
 すべて試してみたが動く気配はない。
 扉の構造をよく観察すると引いて開くはずなのだが……

「ダメだね、まったく動く気配もない……」

「ダイゴローでもだめかぁ……まぁ細くなってパワー自体は落ちているだろうからなぁ……
 俺達の方でもいろいろと開けようと試したんだが……」

「ん……? これ随分魔力が通りやすいね……」

 診察で扉の構造を把握できないかとやってみると、妙に魔力の通りがいい。

「オリハルコンと言えばその硬度も然ることながら、何と言っても最高級の魔力触媒ニャ!」

「そう、ほんのひとかけらでも従来の魔道具の性能を飛躍的に向上させるために、高値で売れる!
 つまり、この扉をもし外せるなら!!」

 キンドゥは興奮している。

「うーん……すっごい酷いこと言っていいかな?」

「なんだ?」

「この扉さ……今調べたら外壁に設置されていて、その外壁はただの石なんだよね……
 外壁壊せば外せるんじゃない?」

「な、何という……鍵付きの扉の概念をぶち壊す……」

「罠とかも仕掛けられてなさそうだし……」

「え? ダイゴローちゃんそんなことまでわかるの?
 そしたらレンジャーの仕事なくなっちゃうじゃん……」

「やっぱダイゴローは一家に一台だな!」

 診察魔法の応用で扉への外部からの魔法などを介したトラップがないことはわかった。
 あとは人海戦術で扉を周囲から引き剥がす。

「あー、なんか精霊がやるやるって言ってる。ダイゴロー頼む」

 マジさんに魔力を流し、マジさんは地の精霊に語りかける。
 パキン。というあっさりとした高い音がしたと思ったら、扉がこちら側に倒れてくる。

「うおおおお! ぬぐ! お、重い!!」

 マジさんをかばう形で扉を支えたけど、まぁ重い!
 急いでマジさんにどいてもらってみんなの力を借りて扉を地面に降ろす……血管切れそうだった……

「で、でかい! これだけのオリハルコン! ふ、フアーーー!」

 キンドゥの興奮が止まらない。

「キンドゥ様、落ち着いてください!」

 部下たちにも窘められる。

「それにしてもどう運ぶんだこれ……地上に上げるだけでも大変だろ……」

「ああ、はずせれば運ぶのはいろんな魔道具あるからな。転移で飛ばしてもいいわけだから」

「ああ、なるほど……」

 転移魔法利用すれば壁に穴開けたり出来るんじゃないか……とか、考えたけど。なんか、いろいろありそうだから胸にしまっておく。

「内部は、結構しっかりとした作りですね……」

 ムラマサがぽっかりと開いた通路を調べていた。

「流石に壁面全部オリハルコンじゃないみたいだな……」

 キンドゥが少し寂しそうだ。あまり大量に見つかると価値が下がるぞキンドゥ……

「それじゃぁ、進みますか!」

 降りてくる時と同じようにシャドーを斥候代わりに先行させて慎重に通路へと侵入する。

「俺の診察による罠感知は非効率なのでルペルさん「ちゃん」ルペルちゃんにお願い致します」

「うむ。よきにはからえ」

 扉から続く通路はところどころに燭台があって、使用されていた時はそこに火が灯っていたんだろう。
 せっかくなので一つ一つホコリを払い、明かりをともしながら進んでいく。
 炎のゆらめきに揺れる通路の道は幻想的だが、薄気味悪さも醸し出している。
 メイン光源は光の精霊を用いいてるので煌々と明るいが、ふと振り返ると帰り道が無くなっていかと不安にもなる。

「結構長いな……」

「今のところ罠も分岐もないです」

「生物の気配もないな」

 ネズラースの探査でもこの道はしばらく続き、そして魔物などの気配もない。

「お、やっと変化があるか。どうやらこの先に階段があるみたいだ」

 マジさんが先行しているシャドーからの情報を伝えてくれた。
 結局罠も敵もあわずに階段まで来ることが出来た。

「階段も朽ちていないな……壁もそうだが、ただの石に見えるが、実は違うのか……?」

 キンドゥが不思議そうに壁や床の材質を回収している。
 階段は螺旋状に下がっている。
 シャードーを先行させたが下までは特になにもないみたいだ。

「それじゃぁ、降りますか」

 慎重に階段を降りていく、グルグルと長く続く階段は少し気持ち悪くなる……

「ここが目的地かな……」

 最深部、暫く進むと行き止まりに扉がある。
 オリハルコン製ではないが、この時代では珍しい鉄扉だ。
 少し押すと動く気配がする。

「開けていいか?」

「ああ」

 キンドゥに確認しながら扉を押し込む、最初は抵抗があったが、すぐに扉がぎぎぎと音を立てながら開かれる。

「なんだ……ここは……」

 ドクリ。俺の心臓が一つ大きく動いたような気がした。
 試験管というか、筒状の設備がずらりといくつも並んでいる。
 中身はホコリにまみれてよく見えない……

「キンドゥ、気をつけろ……嫌な予感がする……」

「どうしたのニャ? ダイゴロー真っ青ニャ……」

「俺の中の記憶が警鐘を鳴らしている……ここは、多分ろくでもない場所だ……」

 震える手で一つの試験管のホコリを払う、薄暗くてよく見えない内部に光を当てる……

「うっ……」「きゃっ!」「なんニャコレ!?」

 フィーが悲鳴を上げてしまうのも無理はない。
 試験管の中に浮いていたのは異形の生物だった。なんの動物かもわからない、不均衡に混じり合った物体に近い……

「設備が……生きているな……」

 内部に満たされた溶液は腐ったりしておらず、この異形の物体も……生きている……

「何かわかるのかダイゴロー?」

 キンドゥは非常に厳しい表情を浮かべている。うっすらとどういうことか分かっているんだともう。

「たぶん、ここでは生物を『混ぜている』 実験しているんだと思う」

 遺伝子に関することはあまり詳しく広めていない、デリケートな問題を含むからだ。
 高い知識を手に入れてからゆっくりと広めていったほうがいい判断したからだ。
 ここに居る生物は、遺伝子操作された動物や人、獣人などなんだろう……

「なんでこんなものが……」

「ダイゴロー、これ……魔物だニャ……」

 奥に行くほど異形が酷くなる。そして、あるところを境に魔物が混じり始めてくる。

「人工的に魔物を作っているのか……」

 キンドゥがおそらく正解であろう言葉を放つと、全員言葉を失ってしまった。

「外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く