外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん
50話 治療終了
「ぬぐぐぐ……」
「だ、大丈夫かダイゴロー? 無理はしなくていいんだぞ?」
「だ、大丈夫、後ちょっとだから……」
最期、指先の構造を再現できれば……まだ、まだ大丈夫だ!
俺は気を抜かず対側の構造を丁寧にイメージする。
左右の反転も慣れたもの。
今日で最期だ。
気力を振り絞る。
「……治療終了だ。これで、完治だ!」
俺は見事に型どられたワースの右手をそっと掴む。
「おお……おおおおおおおおおおお……!!!」
ワースは腕を掲げて泣いて喜んでいる。
本当に、良かった。
腕の治療は順調だった。しかし、手先へと進むほどにその構造は複雑を極めて遅々として進まなかった。それでも、丁寧に進んでいくしか無い、1日1mmでもいい、それが2mmになり3mmになり、着実に終わりに近づいていく。
そして、今日ようやく治療が終わった。
「ありがとう! ありがとう! ダイゴロー!!」
ワースの熱い抱擁を受ける。
なんというか、ワンコにじゃれられているみたいで非常に気分がいい。
村の皆も周りで涙ぐんでいる。
今ではすっかり村の様子も変わっている。
あ、賢い狼さんはあっさり討ち滅ぼしました。
鶏肉焼いたら無謀な特攻してきて罠で一網打尽でした。
季節は冬になろうとしていた。
はじめこの村へたどり着いた時は初夏だったが、すっかりここに腰を落ち着けてしまっている。
今では全員ログハウスで生活を行っている。
周囲の地図作りも始めており、そのおかげで様々な資源も発見できた。
ダンジョンも発見して魔石も安定供給出来るようになっている。
帝国の商人も懇意にしている。
魔物を倒して魔石を取り出すまでの時間で質が変わるらしく、見たこともない高品質だと喜ばれた。
その伝手でフェリカ王国への連絡もこの間、頼むことが出来た。
今頃皆どうしているんだろう……
「どうした、ダイゴローあまり飲んでないな?」
上機嫌のトットが隣りに座る。
今はワースの回復を祝ってとワースとスフィアの夫婦の契りを祝っている。
皆我が事のように嬉しそうに杯を交わしている。
バルドさんはきっと少しやけ酒も入ってるんだろうな……
花嫁でも有るスフィアさんはすっかり症状も軽くなり、美しい表情で幸せそうにワースの隣に座っている。
「いやー、なんかやりきった達成感で胸がいっぱいでさ」
「ホントに、ほんとに凄い男だよお前は……」
「いて、痛いって。俺はトットに感謝してるよ。
あの時、トットに会って本当に良かったよ」
男二人が涙目で乾杯する。たまにはいいよね。
「それで、どうするんだ? 村を出ていくのか?」
「……王国へ俺の無事は伝えられた。たぶん、予感と言うか確信だけど、俺の仲間は帝国へ来ちゃうと思うんだ。それまでに、出来ることはしておきたい……」
「……そうか、この村はお前には小さすぎるな。
それに、その力を俺たちが独占していいものではない。
……いつだ?」
「もう、準備は終わっている。明日にも……」
「だと思った。明日。森の外から一番近い村まで送ろう。いや、送らせてくれ。
そこは外との繋がりが太い。
ダイゴローの力があれば外とのパイプを作れるだろう」
「うん、ありがとう」
「よっし! そしたら今日は飲もう!!」
「ああ!!」
皆の祝福の輪に二人で飛び込んでいく。
その後の記憶は……ない……
「ぐあっ……ひう……」
とんでもない頭痛で意識を取り戻す……
「ぬうぐ……」
隣でトットもうめき声を上げている。
どこだ、家だな……床? なぜに床……
混乱している。
なんとか魔力を循環させてこの頭痛を押さえたいが、ぐにゃぐにゃしてうまくいかない……
「ネズラース……ここ、どこ……?」
「飲み過ぎだダイゴロー……ここはお前の家だ。
昨日あれほど飲み過ぎだと言ったのに、まだ飲むと家でトットと二人で……
酷い顔色だ、繋いでると私まで気分が悪くなる。
顔でも洗ってこい」
這いずるように椅子に掴まり立ち上がる。ああ、確かに家だ……
流しまで重い体と痛む頭を我慢して歩く、ズルズルと何かがくっついてくる。
我慢して振り返ると何故か俺は上半身素っ裸でパンツ一丁、上着とズボンをパンツに結びつけている。
何だこれ……?
「何だこれ……?」
ようやく流しに到着する。僅かな距離がまるで広大なダンジョンかのように辛い。
魔道具に魔力を流すと凄まじい勢いで水が放出された。
「ああ、調整が難しい……まぁいいや……」
そのまま水の中に頭を突っ込む。
かなり冷たいが、ちょうどいい。
頭が冷やされ少しマシになる、そのまま魔力循環を試みる。
「よし、さっきよりはマシだ……」
身体が暖かくなる感じがする。同時に頭痛が和らいでいく。
意識がさらにはっきりとしてくる。
そして室内の状態も把握できるようになる。
「どうなってんだこれ……」
あっちの部屋ではバルドとゴルデが転がっている。
トットは全裸で背中には手形が大量についている。
そして全員の服を繋いだ縄みたいなものが部屋に結ばれている。
「説明しないからな、馬鹿どもが」
ネズラースは呆れきっている。
フィーは自分のハンモックですやすやと寝息を立てている。
何があったんだ……
こんなわけで、旅立つつもりの1日は全員のお世話で過ぎ去ってしまうのでありました。
「だ、大丈夫かダイゴロー? 無理はしなくていいんだぞ?」
「だ、大丈夫、後ちょっとだから……」
最期、指先の構造を再現できれば……まだ、まだ大丈夫だ!
俺は気を抜かず対側の構造を丁寧にイメージする。
左右の反転も慣れたもの。
今日で最期だ。
気力を振り絞る。
「……治療終了だ。これで、完治だ!」
俺は見事に型どられたワースの右手をそっと掴む。
「おお……おおおおおおおおおおお……!!!」
ワースは腕を掲げて泣いて喜んでいる。
本当に、良かった。
腕の治療は順調だった。しかし、手先へと進むほどにその構造は複雑を極めて遅々として進まなかった。それでも、丁寧に進んでいくしか無い、1日1mmでもいい、それが2mmになり3mmになり、着実に終わりに近づいていく。
そして、今日ようやく治療が終わった。
「ありがとう! ありがとう! ダイゴロー!!」
ワースの熱い抱擁を受ける。
なんというか、ワンコにじゃれられているみたいで非常に気分がいい。
村の皆も周りで涙ぐんでいる。
今ではすっかり村の様子も変わっている。
あ、賢い狼さんはあっさり討ち滅ぼしました。
鶏肉焼いたら無謀な特攻してきて罠で一網打尽でした。
季節は冬になろうとしていた。
はじめこの村へたどり着いた時は初夏だったが、すっかりここに腰を落ち着けてしまっている。
今では全員ログハウスで生活を行っている。
周囲の地図作りも始めており、そのおかげで様々な資源も発見できた。
ダンジョンも発見して魔石も安定供給出来るようになっている。
帝国の商人も懇意にしている。
魔物を倒して魔石を取り出すまでの時間で質が変わるらしく、見たこともない高品質だと喜ばれた。
その伝手でフェリカ王国への連絡もこの間、頼むことが出来た。
今頃皆どうしているんだろう……
「どうした、ダイゴローあまり飲んでないな?」
上機嫌のトットが隣りに座る。
今はワースの回復を祝ってとワースとスフィアの夫婦の契りを祝っている。
皆我が事のように嬉しそうに杯を交わしている。
バルドさんはきっと少しやけ酒も入ってるんだろうな……
花嫁でも有るスフィアさんはすっかり症状も軽くなり、美しい表情で幸せそうにワースの隣に座っている。
「いやー、なんかやりきった達成感で胸がいっぱいでさ」
「ホントに、ほんとに凄い男だよお前は……」
「いて、痛いって。俺はトットに感謝してるよ。
あの時、トットに会って本当に良かったよ」
男二人が涙目で乾杯する。たまにはいいよね。
「それで、どうするんだ? 村を出ていくのか?」
「……王国へ俺の無事は伝えられた。たぶん、予感と言うか確信だけど、俺の仲間は帝国へ来ちゃうと思うんだ。それまでに、出来ることはしておきたい……」
「……そうか、この村はお前には小さすぎるな。
それに、その力を俺たちが独占していいものではない。
……いつだ?」
「もう、準備は終わっている。明日にも……」
「だと思った。明日。森の外から一番近い村まで送ろう。いや、送らせてくれ。
そこは外との繋がりが太い。
ダイゴローの力があれば外とのパイプを作れるだろう」
「うん、ありがとう」
「よっし! そしたら今日は飲もう!!」
「ああ!!」
皆の祝福の輪に二人で飛び込んでいく。
その後の記憶は……ない……
「ぐあっ……ひう……」
とんでもない頭痛で意識を取り戻す……
「ぬうぐ……」
隣でトットもうめき声を上げている。
どこだ、家だな……床? なぜに床……
混乱している。
なんとか魔力を循環させてこの頭痛を押さえたいが、ぐにゃぐにゃしてうまくいかない……
「ネズラース……ここ、どこ……?」
「飲み過ぎだダイゴロー……ここはお前の家だ。
昨日あれほど飲み過ぎだと言ったのに、まだ飲むと家でトットと二人で……
酷い顔色だ、繋いでると私まで気分が悪くなる。
顔でも洗ってこい」
這いずるように椅子に掴まり立ち上がる。ああ、確かに家だ……
流しまで重い体と痛む頭を我慢して歩く、ズルズルと何かがくっついてくる。
我慢して振り返ると何故か俺は上半身素っ裸でパンツ一丁、上着とズボンをパンツに結びつけている。
何だこれ……?
「何だこれ……?」
ようやく流しに到着する。僅かな距離がまるで広大なダンジョンかのように辛い。
魔道具に魔力を流すと凄まじい勢いで水が放出された。
「ああ、調整が難しい……まぁいいや……」
そのまま水の中に頭を突っ込む。
かなり冷たいが、ちょうどいい。
頭が冷やされ少しマシになる、そのまま魔力循環を試みる。
「よし、さっきよりはマシだ……」
身体が暖かくなる感じがする。同時に頭痛が和らいでいく。
意識がさらにはっきりとしてくる。
そして室内の状態も把握できるようになる。
「どうなってんだこれ……」
あっちの部屋ではバルドとゴルデが転がっている。
トットは全裸で背中には手形が大量についている。
そして全員の服を繋いだ縄みたいなものが部屋に結ばれている。
「説明しないからな、馬鹿どもが」
ネズラースは呆れきっている。
フィーは自分のハンモックですやすやと寝息を立てている。
何があったんだ……
こんなわけで、旅立つつもりの1日は全員のお世話で過ぎ去ってしまうのでありました。
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