外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん

穴の空いた靴下

42話 呪いの説明と川魚

 実は、動物や獣人に対する呪いにはルールが有る。
 まず、例えば訓練などの場合。
 つまり、お互いに了承があった上での相手への攻撃行為。
 これはセーフだ。
 もう一つが明確な殺意が向けられている時、要は敵として現れた場合。
 この場合、気絶させるなどの行為はセーフだ。
 ただ、怪我をさせると気持ち悪くなる。
 多分命を奪ってしまうとものすごい不快感に襲われると思う。
 ちょっと容認される感じになる。
 最期が、食料としての殺傷だ。
 これは、難しいんだけど、例えば卵は割れる。
 でも鶏を〆ると気分が悪くなる。
 鶏肉を買ってきて調理は平気。
 サカナも釣れる。
 でも捌くのは気分が悪くなる。
 死んだサカナを買ってきて捌くのは平気。
 多少ハードルを下げてくれるけど、厳密には許されていない。そんな感じだ。
 それを言ったら狼を食べるつもりで攻撃すれば軽くなるか? というとそうではない、一度襲ってきたのをなら食べればいいかと反撃したら酷いことになった……
 正直細かいことはわかっていない。
 それでも、抜け道も有る。
 釣ったサカナを死ぬまで放置すると、捌ける。
 もしくは殺すのを別の人にやってもらえば捌けるのだ。

「偽善的で……嫌なんだけど仕方ない。
 ネズラース。お願いします」

 小川があったので罠を仕掛けて川魚を手に入れた。
 そして、風の魔石を使った魔道具で、首を落とし、俺がさばいている。
 風の魔石の起動をネズラースにやってもらう。
 そうすると俺は気分が悪くならずにサカナを捌けるのだ……

「その分食材には心からの感謝を……」

 内臓を取り除き、手開きして薄く塩を塗って焼いた。
 それだけだが、どうしようもないほどに美味しかった。
 内臓は野草と一緒に炒めて食べる。苦味が少しあるが濃厚な味わいが身体に栄養を与えてくれているような気持ちになる。
 キノコ一つとっても生きている植物を頂いて身体への糧としている。
 ミミズだってそうだ。
 すべての食材への感謝の気持ちを持つようになっていた。

「やばいなぁ……塩がない」

 物資が残っていただけでも幸運だったけど、はじけ飛んで回収できたものも段々と無くなってきている。
 今はたくさんの食材が手に入るからそこまで重要性は高くない。栄養学的には。
 ただ、美味しく食べたいという人間の欲求は生きる糧となる。
 食事を終えてまた歩き始める。
 山ほど険しくないが、なだらかな丘陵に木々が生い茂っている。
 鬱蒼とした植物を簡単に通過できるように、木と石で加工した鉈のような道具で切り開きながら進んでいく。
 しばらくすると上り坂がなだらかになり、そして下りになる。

「このあたりが頂上か、もう一度上から見てみよう」

 俺は近くの手頃な木に登り始める。
 スルスルとあっという間に頂上まで到達する。
 高台状の木の上で更に周囲の状況がつかみやすい。

「太陽の動きから、こっちがフェリカの方向だと思うけど、全部森だなぁ……」

「ダイゴローあっちを見ろ、森が途切れている。お前ならもう少し見えるんじゃないか?」

 ネズラースの言われた方向、確かに森が終わっている。
 更に目を凝らし魔力を集中させる。
 まるで望遠鏡でも見ているように途切れた先の草原が見える。
 そこにははっきりと道が存在する。
 街は……見えないが、人の手がはいった道路の存在を確かめられたのは何よりも僥倖だった!

「道が見える! この方向だ! 距離はかなりあるけど、この方向に進めば道に出られる!」

 再び見えた希望の光。
 俺の胸を再び高鳴らせる。

 ヤブをかき分けてある程度整備した獣道を作るのには理由もある。
 道に迷わないためだ。
 時々振り返って方向が大きくズレていないかを確かめながら進む。
 もちろんその分進行速度はゆっくりだ。
 日が傾き始めたら明るい内に寝る準備をしないといけない。
 周囲の藪や枝を組み合わせて簡易テントを作る。
 地面に直接練ることに慣れている俺にとって、枯れ葉や木々によるクッションは上等なベッドのようなものだ。
 日が暮れてから早朝まで結構冷え込むのでテント内でお湯を沸かして暖を取る。
 空焚きでボヤ騒ぎになってからはこの方法を取っている。
 魔石を使った暖房装置を作るには手持ちの道具では難しい。
 出力の調整には高級な触媒が必要になってしまう。
 テントで覆われているだけでもかなり防寒になっているので、なんの文句もないんだが、スチーム暖房機が有るとなお素晴らしい。

「さーて、今日も歩きますかぁ……」

 テントからのそのそと這い出す。
 このテントのいいところは使い終わったら倒しておけばいい、後片付けは必要ない。
 紐とか使えるものは何度も使うために回収する。
 今日も荷をまとめて歩き出す。
 もう2週間ほど、道を発見してからあるき続けている。
 風景は変わらないが、何度か木に登って確かめているが、確実に近づいている。
 オレの心は、全く折れることはなく、むしろ明確に目的地に近づいているという事実がやる気を溢れさせる。
 食料も、主食はキノコが多いが、川があれば魚やカニ、こないだは鳥の巣があり卵をありがたく頂いた。
 そして、風の魔石を利用して切断機を利用することでキジに似た鳥もいただくことが出来た。
 思い出してもよだれが溢れてくる。
 例の威圧を用いて気絶させ、そしてネズラースに首を刈ってもらった。
 ああ、美味しかったなぁ……
 フィーもヤバイくらい野生に戻っていたなぁ……
 塩があればもっと美味しかったんだろうけど、それでもあの脂肪が焼けて油になった鶏油はたまらなかったなぁ……キノコとあえて……ああ、美味しかったなぁ……

「ダイゴローお楽しみのところわるいが前方で闘いの気配だ!」

「おっとジュルッ、危ない! ありがとうネズラース!」

 溢れそうになる唾液をすすって前方の気配を探る。

「声!?」

 俺は走り出していた。
 声の主が助けを求めていたからだ! 


 


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