外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん
37話 足元注意
「この距離をあれを引いて、あの早さで帰って来たのか?
ダイゴロー……お前はやっぱり人間じゃなくて大猿族の上位種族なんじゃないか?」
整備された道を歩きながらキンドゥが大変失礼なことを言ってくる。
「キンドゥに連れまわされるようになってから本格的な訓練もしてるから、たぶんそのせいだよ」
「はーっはっは! ダイゴロー! 訓練であれを引けたら苦労しないぜ!」
「ダイゴローちゃんの戦い方も、ほんと恐ろしいわよねー敵としては会いたくないわ。
ほんと味方でよかった!」
「仕方ないニャ、普通の獣人や動物はダイゴローは傷つけることができないニャ!
保定して無力化させるのも、解釈的な抜け道なのニャ」
そう、俺は普通に暮らしている野生の動物や獣人には無力なのだ。
一応、二日酔いを1000倍くらい酷くしたような体調不良を我慢すれば攻撃できなくもないけど……
そのせいで威嚇で引かせるのがほとんどだ。
皆も理解してくれている。
魔物は問題ないし、ダンジョン内の生物は多くはダンジョンが作り出した人工(?)的な生物なので体調不良にはならない。
最初見分け方知らなくて、迷い込んだ動物に攻撃してしまって酷い目にあった。
作られた生物は威嚇で追い払えない、それに気が付いてからはとりあえず怪しいのは威嚇することにしている。
「しかし、確かに妙だな……生物の気配が少なすぎる……」
神殿に近づいていくほど、周囲から生物の気配が少なくなっている。
昨日は気が付かなかったが、キンドゥの言葉で注意してみると確かにその通りだ。
「やっぱり神殿に何かあるのかな?」
「おっと、見えて来たな。ふむふむ、確かに邪悪な雰囲気は感じない造りだな」
キンドゥは注意深く柱や床などを調べている。
こう見えてかなり考古学の知識は深い。
「……なんだか、変だなここは。
建築様式は数億年前なのに、風化具合が数百年程度……
古き神を古代様式の神殿で祀ったのか……」
ぶつぶつと情報をまとめながら調査を続けているキンドゥ、ルぺルちゃんは周囲の石像などをみて価値などを確かめている。
「うーん、確かに変だなここ、精霊が極端に少ない……普通こんな森の中で神殿でさらに人の手も入らないでいたのなら精霊で溢れそうなもんだが……確かにここは何かあるな、しかも悪い方の何かが……」
マジさんもこの場の異常さを感じ取っているようだった。
「キンドゥ、やっぱりこのダンジョンはやめておいた方が……なんだ!?」
ズズズズズズズズズズっと地面が振動している。
振動はどんどん大きくなりドドドドと揺れ始める。
「地震か!? みんな開けた場所に集まれ!」
全員がすぐに周りに建築物のない場所へ移動する。
崩れかけた柱や壁が崩れ落ちている。
敷材がめくれ上がり、わずかに残った石像なども落下して粉々に砕け散っている。
「俺がこっちに来てこの世界に地震なんてなかったのに……」
「ダイゴローさっきからジシンってなんだ?」
「こういう地面全体が揺れる現象のことだよ、この世界にはないのか?」
「ああ、大昔に大地の怒りと呼ばれたものはあるが、こんな揺れるのは俺も体験したことはない……」
揺れはだんだんとおさまってきているが未だに微震が続いている。
その時。
ぴしり
なぜかその小さな音を聞いたとき背筋がぞくりとした。
「やばっ……!」
咄嗟にキンドゥたちを森の側に弾き飛ばした。
直観的に木々が生い茂るところなら大丈夫だと思ったんだと思う。
驚いた顔で宙を舞うキンドゥ、ルペル、マジ、そしてユキミ。
次の瞬間、足元の地面が崩れ落ちた。
自分も飛ぼうと力を加えた瞬間だった。
ごめん、ネズラース……お前を投げられなかった……
俺は落下しながらそんなことを考えていた。
「ダイゴロー!!!」
「やめろユキミ!!」
「話すニャ!! ダイゴロー!! ダイゴロー……」
ユキミの叫び声が急速に遠くなっていく。
自由落下でかなりの距離を落ちている。
たぶん一瞬なんだが、妙に引き延ばされているように感じた。
これは、走馬燈なのか……?
俺はそう考えた瞬間、
ドボーン!
全身が水の中に落ちた感覚がする。
しかも流れが速くかき混ぜられるようにどっちが上か下かわからない、腕を動かし一瞬の推進力を生み流れに沿って加速する。その一瞬で近くに流れていた木に必死に捕まる!
「ぶはっ!! 無事かネズラース!!」
「……ああ、大丈夫だ!」
よかった頭上からの声に安堵する。
しかし、現状は非常にヤバイ、なんとか浮いている木にしがみついているが、この濁流は高速で流れている。
「嫌な音がするな……」
そう、進んでいる先から……ドドドドッドドと不吉な音がする。
「しっかりつかまってろよ!!」
俺は片腕で一気に身体を木の上に持ち上げる。
もう眼前に滝が迫っている!
そう思った時には木と一緒に空中に吐き出される。
「落ちたら死ぬな……」
複数の濁流が遥か下に流れ込んでいる。
妙に冷静に現状を分析する。それと同時に最後のチャンスも発見できたのは幸運だ。
「ううううおおおお!!!!」
落下する木の上を走る。そして思いっきり飛ぶ!
木が一本大きな質量であってくれたことで空中での跳躍を可能にしてくれた。
俺の身体が壁面に空いていた通路のようなところへたたきつけられるように飛び込む!
「ぐあ!!」
激しくそこら中をピンボールみたいにぶつかりながら、ようやく運動エネルギーは消耗してくれた。
一か八かの賭けだったが、どうやらその賭けには勝ったみたいだ。
「ね、ネズラース……生きてるか……」
「ああ……少し酔ったが、お前ほどボロボロじゃない……」
よく見ると俺の身体は血だらけだった。
岩肌で皮膚がこすれ、左肩は外れている。
右足も折れているな、まがっちゃいけない方向に曲がっている。
「アイテムボックスも……だめだな、完全にいかれてしまった……」
絶望にも似た気分だったが、俺は、多くの物資を病院に置いて来ていたことにホッとしていた。
「ここは、どこなんだ?」
「わからん、流れもかなりの速度だった。ダイゴロー……ボックスを投げろ!」
「え!?」
反射的にアイテムボックスを引きちぎって投げる。
落下したボックスが爆発した。
そこまで激しくはないが、危なかった……
「助かったよ……、さて、なんとか動けるようにしないと……ふーーーー」
ごりっ
俺は壁に肩を押し付けて脱臼をはめる。
まぁ、鍛錬中に何回かやったことはある。
問題は足だ。
「ダイゴローアイテムボックスが一部道具を吐き出してるようだぞ」
「おお、地獄に仏……」
一歩動かすごとに激痛に襲われるが、片足で爆発後に近づく。
確かに一部のアイテムがボロボロではあるが排出されている。
ありがたいことに一部衣料品も吐き出されている。
適当に木材の破片と包帯を利用して足を固定する。
無理やり伸ばして少しでも正しい位置にしたときは気絶しそうなほどの激痛だったが、固定したおかげでだいぶ楽になる。
あとは魔力を体内に循環させて自然治癒力を高めて治すしかない。
ほとんどの物資はダメになっていたが、最高の幸運は一部の食料が無事だったことだ。
「これを利用して、脱出するしかないな……」
慎重に荷を整理して、確認する。
ここにあるものが俺の生命線だ。
手術用の布を風呂敷代わりに縫い合わせて荷運びようの袋にする。
蜘蛛の糸に魔力を通して縫えば、かなり頑丈な袋になってくれるだろう。
非ステロイド系の痛み止めが一部無事だったので服用する。
骨折の治癒を遅らせる可能性はあるが、急性の痛みがきつすぎる。
それに魔力循環による自己治癒力の向上のほうがデメリットに打ち勝つだろう……
飲み水は輸液用の生理食塩水が多少あるので少量口に含む。
「私もできる限り協力する。とりあえず休め」
こうして俺は、落下した謎の場所で初めての睡眠をとる。
絶対に生きて地上に戻るんだ!
ダイゴロー……お前はやっぱり人間じゃなくて大猿族の上位種族なんじゃないか?」
整備された道を歩きながらキンドゥが大変失礼なことを言ってくる。
「キンドゥに連れまわされるようになってから本格的な訓練もしてるから、たぶんそのせいだよ」
「はーっはっは! ダイゴロー! 訓練であれを引けたら苦労しないぜ!」
「ダイゴローちゃんの戦い方も、ほんと恐ろしいわよねー敵としては会いたくないわ。
ほんと味方でよかった!」
「仕方ないニャ、普通の獣人や動物はダイゴローは傷つけることができないニャ!
保定して無力化させるのも、解釈的な抜け道なのニャ」
そう、俺は普通に暮らしている野生の動物や獣人には無力なのだ。
一応、二日酔いを1000倍くらい酷くしたような体調不良を我慢すれば攻撃できなくもないけど……
そのせいで威嚇で引かせるのがほとんどだ。
皆も理解してくれている。
魔物は問題ないし、ダンジョン内の生物は多くはダンジョンが作り出した人工(?)的な生物なので体調不良にはならない。
最初見分け方知らなくて、迷い込んだ動物に攻撃してしまって酷い目にあった。
作られた生物は威嚇で追い払えない、それに気が付いてからはとりあえず怪しいのは威嚇することにしている。
「しかし、確かに妙だな……生物の気配が少なすぎる……」
神殿に近づいていくほど、周囲から生物の気配が少なくなっている。
昨日は気が付かなかったが、キンドゥの言葉で注意してみると確かにその通りだ。
「やっぱり神殿に何かあるのかな?」
「おっと、見えて来たな。ふむふむ、確かに邪悪な雰囲気は感じない造りだな」
キンドゥは注意深く柱や床などを調べている。
こう見えてかなり考古学の知識は深い。
「……なんだか、変だなここは。
建築様式は数億年前なのに、風化具合が数百年程度……
古き神を古代様式の神殿で祀ったのか……」
ぶつぶつと情報をまとめながら調査を続けているキンドゥ、ルぺルちゃんは周囲の石像などをみて価値などを確かめている。
「うーん、確かに変だなここ、精霊が極端に少ない……普通こんな森の中で神殿でさらに人の手も入らないでいたのなら精霊で溢れそうなもんだが……確かにここは何かあるな、しかも悪い方の何かが……」
マジさんもこの場の異常さを感じ取っているようだった。
「キンドゥ、やっぱりこのダンジョンはやめておいた方が……なんだ!?」
ズズズズズズズズズズっと地面が振動している。
振動はどんどん大きくなりドドドドと揺れ始める。
「地震か!? みんな開けた場所に集まれ!」
全員がすぐに周りに建築物のない場所へ移動する。
崩れかけた柱や壁が崩れ落ちている。
敷材がめくれ上がり、わずかに残った石像なども落下して粉々に砕け散っている。
「俺がこっちに来てこの世界に地震なんてなかったのに……」
「ダイゴローさっきからジシンってなんだ?」
「こういう地面全体が揺れる現象のことだよ、この世界にはないのか?」
「ああ、大昔に大地の怒りと呼ばれたものはあるが、こんな揺れるのは俺も体験したことはない……」
揺れはだんだんとおさまってきているが未だに微震が続いている。
その時。
ぴしり
なぜかその小さな音を聞いたとき背筋がぞくりとした。
「やばっ……!」
咄嗟にキンドゥたちを森の側に弾き飛ばした。
直観的に木々が生い茂るところなら大丈夫だと思ったんだと思う。
驚いた顔で宙を舞うキンドゥ、ルペル、マジ、そしてユキミ。
次の瞬間、足元の地面が崩れ落ちた。
自分も飛ぼうと力を加えた瞬間だった。
ごめん、ネズラース……お前を投げられなかった……
俺は落下しながらそんなことを考えていた。
「ダイゴロー!!!」
「やめろユキミ!!」
「話すニャ!! ダイゴロー!! ダイゴロー……」
ユキミの叫び声が急速に遠くなっていく。
自由落下でかなりの距離を落ちている。
たぶん一瞬なんだが、妙に引き延ばされているように感じた。
これは、走馬燈なのか……?
俺はそう考えた瞬間、
ドボーン!
全身が水の中に落ちた感覚がする。
しかも流れが速くかき混ぜられるようにどっちが上か下かわからない、腕を動かし一瞬の推進力を生み流れに沿って加速する。その一瞬で近くに流れていた木に必死に捕まる!
「ぶはっ!! 無事かネズラース!!」
「……ああ、大丈夫だ!」
よかった頭上からの声に安堵する。
しかし、現状は非常にヤバイ、なんとか浮いている木にしがみついているが、この濁流は高速で流れている。
「嫌な音がするな……」
そう、進んでいる先から……ドドドドッドドと不吉な音がする。
「しっかりつかまってろよ!!」
俺は片腕で一気に身体を木の上に持ち上げる。
もう眼前に滝が迫っている!
そう思った時には木と一緒に空中に吐き出される。
「落ちたら死ぬな……」
複数の濁流が遥か下に流れ込んでいる。
妙に冷静に現状を分析する。それと同時に最後のチャンスも発見できたのは幸運だ。
「ううううおおおお!!!!」
落下する木の上を走る。そして思いっきり飛ぶ!
木が一本大きな質量であってくれたことで空中での跳躍を可能にしてくれた。
俺の身体が壁面に空いていた通路のようなところへたたきつけられるように飛び込む!
「ぐあ!!」
激しくそこら中をピンボールみたいにぶつかりながら、ようやく運動エネルギーは消耗してくれた。
一か八かの賭けだったが、どうやらその賭けには勝ったみたいだ。
「ね、ネズラース……生きてるか……」
「ああ……少し酔ったが、お前ほどボロボロじゃない……」
よく見ると俺の身体は血だらけだった。
岩肌で皮膚がこすれ、左肩は外れている。
右足も折れているな、まがっちゃいけない方向に曲がっている。
「アイテムボックスも……だめだな、完全にいかれてしまった……」
絶望にも似た気分だったが、俺は、多くの物資を病院に置いて来ていたことにホッとしていた。
「ここは、どこなんだ?」
「わからん、流れもかなりの速度だった。ダイゴロー……ボックスを投げろ!」
「え!?」
反射的にアイテムボックスを引きちぎって投げる。
落下したボックスが爆発した。
そこまで激しくはないが、危なかった……
「助かったよ……、さて、なんとか動けるようにしないと……ふーーーー」
ごりっ
俺は壁に肩を押し付けて脱臼をはめる。
まぁ、鍛錬中に何回かやったことはある。
問題は足だ。
「ダイゴローアイテムボックスが一部道具を吐き出してるようだぞ」
「おお、地獄に仏……」
一歩動かすごとに激痛に襲われるが、片足で爆発後に近づく。
確かに一部のアイテムがボロボロではあるが排出されている。
ありがたいことに一部衣料品も吐き出されている。
適当に木材の破片と包帯を利用して足を固定する。
無理やり伸ばして少しでも正しい位置にしたときは気絶しそうなほどの激痛だったが、固定したおかげでだいぶ楽になる。
あとは魔力を体内に循環させて自然治癒力を高めて治すしかない。
ほとんどの物資はダメになっていたが、最高の幸運は一部の食料が無事だったことだ。
「これを利用して、脱出するしかないな……」
慎重に荷を整理して、確認する。
ここにあるものが俺の生命線だ。
手術用の布を風呂敷代わりに縫い合わせて荷運びようの袋にする。
蜘蛛の糸に魔力を通して縫えば、かなり頑丈な袋になってくれるだろう。
非ステロイド系の痛み止めが一部無事だったので服用する。
骨折の治癒を遅らせる可能性はあるが、急性の痛みがきつすぎる。
それに魔力循環による自己治癒力の向上のほうがデメリットに打ち勝つだろう……
飲み水は輸液用の生理食塩水が多少あるので少量口に含む。
「私もできる限り協力する。とりあえず休め」
こうして俺は、落下した謎の場所で初めての睡眠をとる。
絶対に生きて地上に戻るんだ!
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