外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん
20話 村作り
俺もユキミを手伝うために外に出る。
ユキミはすでに周囲の木々を風魔法で伐採してくれている。
一部はさらに板状にカットしていく。
木材同士の接合は噛み合うようにカットしてつなげるという釘を使わない接合方法を利用する。
図書館の住人だったこところに色々と読んでおいたことが役に立った。
「よし、あとは組み合わせていくだけだ」
丸太を組み合わせながら積み上げていく。今作ろうとしているものはログハウスだ。
まずは清潔な住居を作ってあげないと、よいしょよいしょと丸太を組み上げていく。
基礎はないが床材の下には空間を作って念のための川の増水でも対応できるようにしておく。
「作ったことはなかったけど、楽しいなログハウス作り」
「丸太を素手で振り回すお主だから楽しいのでは?」
「ダイゴロー出来たのニャー」
「おお、スッキリしたねーありがとー! そしたら川の方よろしく~」
「分かったニャー」
食料の安定供給には農業と家畜なんだけど、そんなにすぐに何とかできるものじゃないし……
となれば小川が有ることを最大限に利用して川魚を得る方法を作ればいい。
小川から支流を作って、そこに籠によるトラップを作る。
「なんかキャンプみたいでワクワクしてきた」
黙々とログハウス作りながら将来の構図を思い浮かべてニヤニヤしてしまう。
ユキミの魔法は本当に助かる。
というか、魔法便利過ぎる。
べグラースの館を作り変えるのも一瞬だったからなぁ……
建築魔法や構造変化魔法は消費魔力が非常に多いのと、しばらくその物に魔力が停滞して空気中の循環魔力に還元されにくい、つまり魔力の回復が遅くなってしまうので迂闊にユキミに使わせるわけに行かない。
前のユキミはほぼ無尽蔵に魔力があったが、今のユキミは普通の人からすれば異質なほどの魔力量を持っているとはいえ、何かあった時に困ってしまう。
「ダイゴロー切ったよー」
川からの水路を風の刃で切り出す。
後は俺がその切り出した土を持ち上げてそのまま村を囲う土壁に積み上げていく。
「結構重いな……」
地面に下ろすとドーーーーンと地響きが起きる。
「な、何が起きた!? ……って何が起きたーーーー!?」
小屋から出てきたバルトが周囲の変化に驚いている。
少し森を切り開いて、ログハウスを建てて、川の支流を作っただけだけど……
「ちょっと開拓を……」
「ちょっとって、出ていってまだ数時間しか立ってないぞ!
あ、あと母さんが食欲出てくれたよ。あんがとよ!」
つ、ツンデレ! かわええ!
「良かったよかった。もうすぐ内部の家具も作るからもうちょっとだけ待っててね」
ユキミが切り出してくれた木材を組み合わせれば、机に椅子、タンスにベッドが次々と出来上がる。
ログハウスの中は自然の香りがいっぱいだが、このままじゃダメだ。
扉と窓、と言ってもガラスはないから開けたら何もないけど、をしっかりと閉めて、剥いだ木の皮を利用して燻蒸する。 一緒に木製家具も突っ込んでおけば天然の防虫、防菌効果が期待できる。
「その間に、こっちを作ろう!」
木の柵で囲んだエリアを木製の桑で耕していく。
サクサクと気持ちよく耕せる。俺が使える数少ない魔法『強化』だ。
手に持ったものに直接魔力を巡らせて文字通り強化する。
魔力量は少なくない俺はなぜか外部に魔力を放つことが苦手で、ほとんどの魔法は使えなかった。
基本的に触れているものの状態を把握する『診察』(自分でそう名付けた)
自分の身体能力を高める『自己強化』
自分の触れているものを強くする『強化』
この三個の魔法はなんとか物にできた。
診察だけはかなりの精度で実現できたのは僥倖だった。
「……」
バルトに続いて出てきた兄弟たちも口をあんぐり開けて驚いている。
すごーいすごーいと走り回る獣人の姿は微笑ましい。
「ただいまニャ、周囲から集めてきたニャ」
ユキミは木材の皮で組んだ編み籠にたくさんの食材を背負って帰ってきた。
ユキミに頼んだのは魔法『探査』による食べられる食物の回収。
これを畑で増やしていく。
これが育ってくれば食料供給はかなり安定してくるだろう。
もちろん一部はしばらくの食材となる。
「あとあっちに岩場があったから加工して材料は置いてあるにゃ」
「ありがとう!」
「皆のためニャ!」
なんだかんだ人助けのためには助力を惜しまないユキミは素敵だ。
頭の上でネズラースもほほう……と感心している。
すぐに石場へ向かってユキミが加工してくれた材料を担いで持って帰る。
何度か往復して全て村予定地に運び込む。
「お、燻蒸の方も終わったね。流石にここはユキミに魔法でやってもらわないとね」
燻蒸終わった室内や家具を魔法で洗浄してもらう。
運んだ石で簡単な台所やお風呂を用意する。
まぁ、風呂と言っても水をためていく桶で身体が拭けると言ったレベルだが……
水や火を使うところは流石に木製では難しい。
これで家は準備OKだ。
布団なんて上等なものはないが、蔦を火魔法で乾燥させて編み込んで作った。
筵だね。重ねれば寝れなくはない。
裁縫的な物は縫合の特訓のついでにいろいろやってみた経験が生きた。
「さぁ、お母さんを連れておいで!」
子どもたちはまだ俺に対する嫌悪感は有るものの、あまりのことにたいそう嬉しそうに母親を呼びに行く。
久しぶりの満腹に眠そうだったお母さんも突然出現したログハウスに眠気はどこかにふっとんだ様子だ。
「さて、あなた達の『病付き』というものが何なのかご説明していきます」
すでに俺は普通に話している。
ちゃんと話を聞いてくれる様になったからだ。
「あなた達はウイルスと言うものにかかっています」
「ういるす……?」
よく猫カゼなどと俗称で呼ばれる病気が今回の原因と考えられた。
本当は人で言うカゼとは異なり、複数の原因が考えられる。
ヘルペスウイルスやカリシウイルス、それとクラミジアが原因になっていることが多い。
そのなかでもヘルペスウイルスは持続感染と呼ばれる状態になり、生涯に渡り感染者の体内に住み続けることが知られている。
あとユキミは存在がホムンクルスに近いので力を奪われたとしても素材は一級品。
病気とは無縁の身体なのだ。
基本的には対処療法と呼ばれる、現在出ている症状を抑える治療が中心となる。
そして、症状が改善したら次に再発防止だ。
健康状態を高く維持することで再発を起こしにくい身体を作っていくのだ。
具体名を上げても難しい防疫の話をしても理解はされないだろうから、俺は出来る限り優しい言葉を使って説明していくことを心がける。
「小さな小さな物で目には見えません。ただ、体が弱ったりした時に悪さをして、一番の問題は完全に治すことが非常に難しいのです」
「やはり……私達もいずれ……」
「ただ、この病気は体調が悪いと悪さをしてきますが、体調を良く維持していけばあまり症状を出さないでコントロールすることが可能です。
具体的には清潔な生活環境、きちんとした栄養状態です。
生活環境は、この家があれば以前よりも格段に改善すると思います。
栄養に関してはすぐには難しいですが、畑などが軌道に乗ってくれば改善すると思います」
皆の目に希望の光が灯っていく。
「ただ、もちろんこの病気は伝染ります。
でもかかっている人同士なら気にすることはないので、もし、『病付き』といって追放された人を見つけたらできればここで一緒に生活をして欲しい。
人がいればそれだけ出来ることも増えます。
健康な生活を続ければ、いつかこの病気を克服できるかもしれません。
この知識を正しく皆に伝えてください。
あと、薬と目薬もしばらく全員やってくださいね」
俺は全員分の薬を用意する。
ちゃんと飲みやすいようにフレーバーをつけている。
この世界の獣人は日本で相手をしていた動物よりは言うことを聞いてくれるが、まぁ美味しいに越したことはない。
それから病気の詳しい情報をまとめた物を木の皮に焼き付けて書類とする。
正しい知識さえあれば、『病付き』などと言われて放り出されることも減るだろう。
「おにーちゃん! 外の池に魚がいる!」
外の罠も順調に稼働しているようだ。
できればここが『病付き』なんて呼ばれている人達の憩いの場になって欲しい。
俺がそんなことを思っていると、体の内側が暖かくなるのを感じる。
「ダイゴローが光っているニャ!」
その光は淡く弱い光ですぐに収まってしまったが、どうやらこの村での仕事が完遂した合図のようだった。
兄弟たちが満面の笑みで飛びついてきてくれたことで、俺はそう確信したのだった。
ユキミはすでに周囲の木々を風魔法で伐採してくれている。
一部はさらに板状にカットしていく。
木材同士の接合は噛み合うようにカットしてつなげるという釘を使わない接合方法を利用する。
図書館の住人だったこところに色々と読んでおいたことが役に立った。
「よし、あとは組み合わせていくだけだ」
丸太を組み合わせながら積み上げていく。今作ろうとしているものはログハウスだ。
まずは清潔な住居を作ってあげないと、よいしょよいしょと丸太を組み上げていく。
基礎はないが床材の下には空間を作って念のための川の増水でも対応できるようにしておく。
「作ったことはなかったけど、楽しいなログハウス作り」
「丸太を素手で振り回すお主だから楽しいのでは?」
「ダイゴロー出来たのニャー」
「おお、スッキリしたねーありがとー! そしたら川の方よろしく~」
「分かったニャー」
食料の安定供給には農業と家畜なんだけど、そんなにすぐに何とかできるものじゃないし……
となれば小川が有ることを最大限に利用して川魚を得る方法を作ればいい。
小川から支流を作って、そこに籠によるトラップを作る。
「なんかキャンプみたいでワクワクしてきた」
黙々とログハウス作りながら将来の構図を思い浮かべてニヤニヤしてしまう。
ユキミの魔法は本当に助かる。
というか、魔法便利過ぎる。
べグラースの館を作り変えるのも一瞬だったからなぁ……
建築魔法や構造変化魔法は消費魔力が非常に多いのと、しばらくその物に魔力が停滞して空気中の循環魔力に還元されにくい、つまり魔力の回復が遅くなってしまうので迂闊にユキミに使わせるわけに行かない。
前のユキミはほぼ無尽蔵に魔力があったが、今のユキミは普通の人からすれば異質なほどの魔力量を持っているとはいえ、何かあった時に困ってしまう。
「ダイゴロー切ったよー」
川からの水路を風の刃で切り出す。
後は俺がその切り出した土を持ち上げてそのまま村を囲う土壁に積み上げていく。
「結構重いな……」
地面に下ろすとドーーーーンと地響きが起きる。
「な、何が起きた!? ……って何が起きたーーーー!?」
小屋から出てきたバルトが周囲の変化に驚いている。
少し森を切り開いて、ログハウスを建てて、川の支流を作っただけだけど……
「ちょっと開拓を……」
「ちょっとって、出ていってまだ数時間しか立ってないぞ!
あ、あと母さんが食欲出てくれたよ。あんがとよ!」
つ、ツンデレ! かわええ!
「良かったよかった。もうすぐ内部の家具も作るからもうちょっとだけ待っててね」
ユキミが切り出してくれた木材を組み合わせれば、机に椅子、タンスにベッドが次々と出来上がる。
ログハウスの中は自然の香りがいっぱいだが、このままじゃダメだ。
扉と窓、と言ってもガラスはないから開けたら何もないけど、をしっかりと閉めて、剥いだ木の皮を利用して燻蒸する。 一緒に木製家具も突っ込んでおけば天然の防虫、防菌効果が期待できる。
「その間に、こっちを作ろう!」
木の柵で囲んだエリアを木製の桑で耕していく。
サクサクと気持ちよく耕せる。俺が使える数少ない魔法『強化』だ。
手に持ったものに直接魔力を巡らせて文字通り強化する。
魔力量は少なくない俺はなぜか外部に魔力を放つことが苦手で、ほとんどの魔法は使えなかった。
基本的に触れているものの状態を把握する『診察』(自分でそう名付けた)
自分の身体能力を高める『自己強化』
自分の触れているものを強くする『強化』
この三個の魔法はなんとか物にできた。
診察だけはかなりの精度で実現できたのは僥倖だった。
「……」
バルトに続いて出てきた兄弟たちも口をあんぐり開けて驚いている。
すごーいすごーいと走り回る獣人の姿は微笑ましい。
「ただいまニャ、周囲から集めてきたニャ」
ユキミは木材の皮で組んだ編み籠にたくさんの食材を背負って帰ってきた。
ユキミに頼んだのは魔法『探査』による食べられる食物の回収。
これを畑で増やしていく。
これが育ってくれば食料供給はかなり安定してくるだろう。
もちろん一部はしばらくの食材となる。
「あとあっちに岩場があったから加工して材料は置いてあるにゃ」
「ありがとう!」
「皆のためニャ!」
なんだかんだ人助けのためには助力を惜しまないユキミは素敵だ。
頭の上でネズラースもほほう……と感心している。
すぐに石場へ向かってユキミが加工してくれた材料を担いで持って帰る。
何度か往復して全て村予定地に運び込む。
「お、燻蒸の方も終わったね。流石にここはユキミに魔法でやってもらわないとね」
燻蒸終わった室内や家具を魔法で洗浄してもらう。
運んだ石で簡単な台所やお風呂を用意する。
まぁ、風呂と言っても水をためていく桶で身体が拭けると言ったレベルだが……
水や火を使うところは流石に木製では難しい。
これで家は準備OKだ。
布団なんて上等なものはないが、蔦を火魔法で乾燥させて編み込んで作った。
筵だね。重ねれば寝れなくはない。
裁縫的な物は縫合の特訓のついでにいろいろやってみた経験が生きた。
「さぁ、お母さんを連れておいで!」
子どもたちはまだ俺に対する嫌悪感は有るものの、あまりのことにたいそう嬉しそうに母親を呼びに行く。
久しぶりの満腹に眠そうだったお母さんも突然出現したログハウスに眠気はどこかにふっとんだ様子だ。
「さて、あなた達の『病付き』というものが何なのかご説明していきます」
すでに俺は普通に話している。
ちゃんと話を聞いてくれる様になったからだ。
「あなた達はウイルスと言うものにかかっています」
「ういるす……?」
よく猫カゼなどと俗称で呼ばれる病気が今回の原因と考えられた。
本当は人で言うカゼとは異なり、複数の原因が考えられる。
ヘルペスウイルスやカリシウイルス、それとクラミジアが原因になっていることが多い。
そのなかでもヘルペスウイルスは持続感染と呼ばれる状態になり、生涯に渡り感染者の体内に住み続けることが知られている。
あとユキミは存在がホムンクルスに近いので力を奪われたとしても素材は一級品。
病気とは無縁の身体なのだ。
基本的には対処療法と呼ばれる、現在出ている症状を抑える治療が中心となる。
そして、症状が改善したら次に再発防止だ。
健康状態を高く維持することで再発を起こしにくい身体を作っていくのだ。
具体名を上げても難しい防疫の話をしても理解はされないだろうから、俺は出来る限り優しい言葉を使って説明していくことを心がける。
「小さな小さな物で目には見えません。ただ、体が弱ったりした時に悪さをして、一番の問題は完全に治すことが非常に難しいのです」
「やはり……私達もいずれ……」
「ただ、この病気は体調が悪いと悪さをしてきますが、体調を良く維持していけばあまり症状を出さないでコントロールすることが可能です。
具体的には清潔な生活環境、きちんとした栄養状態です。
生活環境は、この家があれば以前よりも格段に改善すると思います。
栄養に関してはすぐには難しいですが、畑などが軌道に乗ってくれば改善すると思います」
皆の目に希望の光が灯っていく。
「ただ、もちろんこの病気は伝染ります。
でもかかっている人同士なら気にすることはないので、もし、『病付き』といって追放された人を見つけたらできればここで一緒に生活をして欲しい。
人がいればそれだけ出来ることも増えます。
健康な生活を続ければ、いつかこの病気を克服できるかもしれません。
この知識を正しく皆に伝えてください。
あと、薬と目薬もしばらく全員やってくださいね」
俺は全員分の薬を用意する。
ちゃんと飲みやすいようにフレーバーをつけている。
この世界の獣人は日本で相手をしていた動物よりは言うことを聞いてくれるが、まぁ美味しいに越したことはない。
それから病気の詳しい情報をまとめた物を木の皮に焼き付けて書類とする。
正しい知識さえあれば、『病付き』などと言われて放り出されることも減るだろう。
「おにーちゃん! 外の池に魚がいる!」
外の罠も順調に稼働しているようだ。
できればここが『病付き』なんて呼ばれている人達の憩いの場になって欲しい。
俺がそんなことを思っていると、体の内側が暖かくなるのを感じる。
「ダイゴローが光っているニャ!」
その光は淡く弱い光ですぐに収まってしまったが、どうやらこの村での仕事が完遂した合図のようだった。
兄弟たちが満面の笑みで飛びついてきてくれたことで、俺はそう確信したのだった。
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