外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん

穴の空いた靴下

14話 はじめての飲み会

 教会から少し離れたところにある飲食店。
 比較的魔物による被害も少なく、俺がダンジョンを浄化して地上の魔物の勢いが衰え、冒険者たちの討伐が始まってすぐに、ここの店主は復旧準備をはじめてフィンラントの街で最初に営業を再開した根性のお店だ。
 教会での祭りにも酒や飲み物を提供したりもしてくれて、営利目的というよりも皆の笑顔が早く見たいっていう気のいい店長だそうだ。
 マスタフさんはこの店の馴染客で自分のことのようにその店長のことを褒めている。

 俺は今、猛烈に感動している!
 たくさんの人に囲まれながら、一緒に食事を共にして、酒を飲み交わしている!
 これが、これが噂の飲み会!
 伝説の飲み会と言うものか!
 まだ料理といえるような物が出せる状態ではないらしく、キャベツみたいな物の酢漬けと燻製肉というおつまみだけど、そんなことが関係ないくらい楽しい!
 人との触れ合い最高!
 あー異世界に来てよかった---!!

「なんだ、ダイゴロー殿はまた涙ぐんでいるのか?」

 ウォーさんに怪訝な顔をされてしまった。いけないいけない。

「いや、なんか人々の楽しそうな姿を見ていたらつい涙腺が……」

 うんうんわかるぞ、みたいな表情をされてしまった。
 本当はただ自分が嬉しかっただけです!

「それにしても……ダイゴローは凄いな! 
 まさかダンジョン攻略を、ソロで……ソロでやったんだよなぁ?
 いや、地図も完成していたから、事実なんだが……
 その、現実離れしすぎた話でなぁ……」

「ダイゴロー殿その節は大変失礼した……」

 ラットンさんがまた深々と頭を下げる。

「もう平気ですよ、あれは仕方がないんですよ……」

「ベグラースか……頭のおかしい魔術師とは聞いている。その身体にダイゴロー殿がねぇ……」

「べグラースは憎むべき敵! しかし、ダイゴロー殿には何の罪もない……」

「大丈夫、頑張ればいつの日かこの呪いも解けるそうなので頑張ります!」

「ううむ、そのような大願があるのなら仕方ないな。本当はダイゴロー殿をパーティに誘おうと思ったのだが……」

「すみません……」

「いやいや、まぁ、ダイゴロー殿と我々では実力が違いすぎるし、土台無理な話だったな!」

 皆と談笑しながら飲んだり食事ってこんなに楽しいんだ!
 俺は再び涙が出そうになるのをごまかすためにぐいっとエールを飲み干す。

「おお! いける口じゃなダイゴロー殿!
 店主こっちにエールを……4つじゃ!」

「それにしても……ダイゴロー殿……私も最期まで確認したわけじゃないけど、あの宝、ヤバイわね」

 カレナさんがずいっと顔を近づけてくる。

「おお! それよ、それ! ダイゴロー殿ダンジョンの宝と言うやつはどんなものが入っているんだ?」

 周囲の喧騒もピタリと止む。
 皆、冒険者だし気になる話なんだろう……

「少なくともエンチャント付きのAAAトリプルエーは間違いなかったわ……」

 カレナさんの発言に周囲が爆発したように騒ぎ出す!

「まじかー!!! 貴族にだって成れるじゃねぇか!!」

「そ、そんなもの見たこともねぇ!!」

 そして次の言葉を待つように静かになる。

「いやー、自分は綺麗だなーってくらいしかわからなくて……」

 はぁぁぁぁぁっとため息がつかれる。
 いや、それでもすげーぞ! やっぱりダンジョンだなダンジョン! つぎの満月が過ぎたらまた篭もるぞー!
 などと、周囲の喧騒はまた復活する。

「そんな宝の権利者、しかもたった一人でか……」

 いつも冷静なセレナさんが少し緩んだ表情で妄想している。

「ダイゴロー殿は鑑定が終わったら気をつけたほうがいい……と言っても、一人で中級ダンジョン制覇するような人に何かするような人間もおらんか!」

「ソレもそうだな! がっはっはっは!!」

 酒も進んで皆楽しそうだ!
 人も獣人も皆笑顔だ! なんて楽しい!

「お楽しみのところ失礼するニャ!」

 ふわりとユキミが俺の肩に降り立つ。

「ま、まさか、帰宅?」

「まだニャ、でもちょっと話があるニャ。
 静かなところへ行くニャ」

「おお、ユキミ殿! それなら二階を使うといい、店長! 二階の部屋ちょっと借りるぞー!」

 慌ただしく接客をしている店長がOKと答える。

「ありがとうニャ、話が終わったら戻ってくるニャ!
 さ、ダイゴロー移動するニャ!」

 俺はユキミに促されて席を立ち、二階の個室へと向かう。
 途中たくさんの冒険者から握手を求められる。
 はぁ、人からこんなにちやほやされる日が来るなんて!!

 俺は有頂天な気持ちで個室へと入る。
 ユキミは俺の肩からふわりと降りて椅子に座ると人の姿に戻る。
 相変わらず美しい。
 少し酔っているからそんな美しい女性を見て頬が熱くなる。

「あのー、ユキミさん。猫の姿のままじゃだめなのかな?
 ちょっとその……照れてしまって……」

「うーん……よし、わかったニャ」

 そう言うと元の猫の姿へと変身する。
 うん、かわいい。

「それで話って」

「まずは、べグラースの廃棄物置き場からニャ。
 きちんと内部の洗浄を行って、丁寧に浄化しておいたニャ」

「ってことはまたユキミさん魔法を使えるようになったんだね!」

「それがもう一つの話ニャ、正確にはまだ権限は復活してないニャ……
 アラセス様と交信ができないのニャ……
 その代わりラーニャ様と交信してしたんだけど……」


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【け、権限を越えた? い、一体何をしたんですか!?】

『ダイゴローの力が想像以上に暴走しまして、コントロールする暇もなく発動してしまい……
 街を護るために時間停止と絶対魔法防御を……30枚位……』

【じ、時間停止……さらに……そ、それは軽く越えますね……
 時間停止だけでも神の領域に近いですから……】

『ただ、街と多くの命を救うために仕方がなかったもので……』

【はい、確かめました。ユキミ、よくやりました。
 あの状況ならあれが最善でしょう】

『ありがとうございます。つきましては権限の回復を……』

【……それが……神界にアセルス様のお姿が見えないのです……】

『なんと……』

【まぁ、もともとそういう方なのでフラッといなくなることもあったんですが、問題は権限の復帰はアセルス様が実行権をお持ちなので……私ではまるで神格が劣りますから……】

『それでアセルス様はいつお戻りに……?』

【明日かもしれないし……数千年先かもしれないし……】

『そ、それではダイゴローが補助を受けられないことに……!』

【と、とりあえず。人化した時ならほんの少し私の力でも力を与えられます!】

『良かった……安心しました……』

【ただ、貴方の力はほとんど停止したままになります。
 人化すればダイゴローの魔力の補助と、プリースト……アークビショップ……くらいの魔法なら、なんとか?】

『ダイゴローの魔力の補助が出来るなら何もないよりは……』

【た、ただあのこないだの解析みたいな膨大な物は無理だよ?
 ウィザード……ソーサラーくらいの魔法までかなぁ……】

『とりあえずそれでなんとか出来るまでしてみます。幸運にもダイゴローは魔法を使わずに戦える力がありますから』

【こちらでもアラセス様に連絡取るよう頑張ってみる。ごめんねユキミちゃん頑張って!】

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「ラーニャ様メッチャいい人、って言うか女神様ですね……」

「そうね、出来る限りは対応してくださったニャ!
 と、言うことで、私、猫の姿は封印ニャ!」

「え? ちょ……」

 俺が止める間もなくユキミさんは人化した姿になる。

「これならダイゴローも魔法が使えるようになるニャ!」

「夜はにゃんこの姿とか?」

「だめニャ! 今回の件で懲りたニャ!
 一瞬で対応できないと世界が危ないニャ、次猫化するのはアラセス様に権限を回復してもらった後ニャ!」

「そ、そんなーーー!!!」

 俺の雄叫びが部屋に木霊する……

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