外道魔術師転生から始まる異世界動物のお医者さん

穴の空いた靴下

4話 ララの村

 ユキミは村の外で突然の爆発音と瀑布のような音に驚いてバウとの話を中断して駆けつけてくれたそうだ。
 お陰でその後に現れた自警団の獣人の方々の説明がものすごく大変だったともう一度怒られた。

「おいバウ! 本当に大丈夫なんだろうな!?
 こいつ、あのベグラースなんだろ!?」

 今はその自警団を含めたたくさんの獣人さんに囲まれています。
 もちろん敵意むき出しです。
 問答無用に弓矢を射掛けられなかったのはユキミさんのお陰です。本当に有難うございます。

「大丈夫だ。ララは、こい……このダイゴローが助けてくれた。
 この目で見た。間違いない」

 娘が助かったことに思わず顔が溶けそうに緩むが、俺のことを見るとやはり硬い表情になる。
 見た目はワンコな皆さんにここまで侮蔑の目で見られると少し泣きたくなります。

「体はベグラースだし、呪いによって皆が嫌悪感を覚えるのは仕方ないニャ。
 でも、中身はダイゴローって言う動物を愛している人族なの。
 これは獣神アラセス様の名にかけて事実ニャ」

 後で聞いた話では神の名にかけて発言をして虚偽を話すことは獣人にはそうそう出来ないそうです。
 全部ユキミさんが取り持ってくれています。
 本当に役立たずで重ねて泣きたくなってきます。
 こっそり周囲を見回すと、いろんな犬型の獣人がいる。
 チワワっぽい人は自警団の隊長らしいドーベルマンっぽい人の影からこっちを見ている。
 目が合ったので手を振ったら恐怖から気絶してしまったらしく、また大騒ぎになってユキミさんに怒られました。

 そんなこんなで、なんとか村の中へ入れてもらって自警団の詰め所にて取調べを、いや、話し合いなんだけど、相手方の緊張と猜疑心全開でほぼ取り調べだ。

「そういえばララちゃんは……?」

「……腹一杯になって寝ている。ほんとに穏やかに、そして、あんなに美味しそうに食べるララの……うっ……ララのぉ、姿を……うっ……見たのは……はじめてだ……ありがとう……」

 その言葉を聞いているだけで俺まで泣きそうになってしまった。
 周囲でも何人か鼻をすすっている。

「し、しかし……まだわからんぞ! そうやって中に入って俺らを実験台にするつもりかもしれない!」

 フレンチブルドッグに似た獣人がまだ信用出来ないと声を上げる。
 周囲の獣人もそうだそうだとその声に同調する。
 隊長と思われるドーベルマン風の人が手を上げると皆静かになる。

「お前らもあの変わり果てた森を見ただろう。
 こい……この方が本気を出せばそんな策を使わずとも俺たちなんてどうとでも出来る。
 それに、あのララの病を治した。
 俺も見たが……あの『死の黄肌』が亡くなっていた。
 いままであれが出て助かったものはほとんどおらん、それが全てだろう」

 ん? 今の会話気になるぞ……

「あのー……」

「なんだ?」

「その死の黄肌っていうのは肌とか目が黄色くなることですか?」

「ああ、そうだ。この村には昔から時折その呪いにかかり若くして亡くなる子がいる。
 たまに年を取ってからなるやつもいるがな……」

「……お願いがあるのですが、私にこの村の方々を診察させてくれませんか?」

 場が再び騒然となってしまう。それが狙いだったのか!? と大騒ぎだ。
 再び隊長さんが立ち上がると俺を見下ろしながら告げてくる。

「ララの治療の時、何かしたらいつでも殺せるようにしていたと聞いた。
 同じ条件でいいのなら考えよう」

「構いません」

 俺は迷うこと無く答える。
 何かするつもりなんて無いんだから殺されるはずがない。
 ただその前にユキミに聞かないといけないことがある。
 診察の準備に獣人の方々が村へと出ていき、俺とユキミは詰め所に残される。
 診察はここで行われることになった。

「なぁ、ユキミ。
 さっき俺魔法を使ったら、なんていうか調整ができなかったんだけど……
 治療中はもっとこう思い通りに動くというか……」

「あ……ごめんニャ。説明忘れてたニャー……
 ダイゴローの魔法、ベグラースの力なんだけど、とてつもない力を持っているニャ、それにダイゴローは魔法がない世界に生きていいた人間ニャ」

「うん、ただ知識は融合されてるからそれで使えるのかなーって……」

「違うニャ、実際には私が近くで魔法のコントロールの補助を行っているニャ。
 私はダイゴローとラインが繋がっていて、簡単に言えばダイゴローが使用したいように魔法を具現化するお手伝いをしている。そう考えてほしいニャ。
 だから私がいない時に魔法を使うと、そのうち慣れるかもしれないけど今は暴走するニャ、事実したニャ」

「はい、その節はご迷惑をおかけしました……」

「ただ、私はダイゴローの願望を魔法として扱う形に整えるだけで、その処理や発動はダイゴローの中の魔力回路で行うにゃ。あまりに複雑なことをするとこないだみたいな事になるニャ。
 あの時のダイゴローから送られる要望は膨大だったニャ」

「つまり、今俺の記憶にある魔法以外にも自分でイメージできれば魔法として使えるってことだよね?」

「原則そうなるニャ、魔法は理解と想像と魔力の賜物ニャ。
 火というものがどういうものかをしっかりと理解していなければきちんとした火は出ないにゃ。
 逆を言えば理解が深ければ深いほど威力も精度も上がるニャ」

 なるほど。だから生前(?)に使用していた手術器具のような魔法も実現できたわけだ……
 つまり、この村に存在する死の黄肌……俺の想像通りだったら魔法でなんとか出来るな……
 もともとは隠れたシャント患者を探すつもりだったけど……

「ありがとうユキミ!
 ちょっと診療大変になったかもだけど、よろしくね!」

「任せるのニャ!」

 俺はまたワクワクしていた。
 以前にも出来なかった新しい獣医療が、自分の手によって作り出される可能性に……!




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