終わりゆく世界の代英雄
銃使いの少女
銃使いの少女、アデルータは思う。
自分は孤独なのだと...
私は小さい頃親に捨てられた。3歳の頃だろうか...それは雨の降っている日だった。産まれた場所は今居る〈オルティネシア王国〉よりも南に存在している小さな村で、私は3歳までそこで育った。父親は居なかった。でも不満は無かった。なぜなら母親が優しかったからだ。私が笑えば母も笑ってくれた。
でも今思えばあれは愛想笑いだったんだと思う...母が毎晩泣いていることを知っていた。机に顔を伏せて、愚痴を言いながら泣いていた。それでも私の前では笑顔だった。母の作るご飯は美味しくて大好きだった。
ある日、旅行だと言って馬車に乗った。産まれて初めての馬車に揺られながら、あまりの気持ちよさに眠ってしまった。
そして〈オルティネシア王国〉に着いた。母と手を繋ぎながら国を見て回った。ふたり部屋の宿を取り、美味しい夕食を食べた。その日は疲れて早く眠ってしまった事を覚えている。
そして次の日、雨が降った。それでも私と母は外に出た。そして少し歩いて人気の無い路地に入った。そして母はこう言った。
「ごめんなさい。もう疲れてしまったの」
そして私は捨てられた。涙が止まらなかった。遠ざかる母の背中を眺めながら私は必死に母を呼んだ。
母は振り向きもしなかった。その時私は気付いた。
「私は・・・愛されてなど無かった」
私を拾ってくれたのは優しい老人だった。
「可哀想な子だ」
そう言って私を優しく抱きしめてくれた。
その後で母の乗った馬車が魔獣に襲われた事を知った。母は死んだのだ。
母の馬車を襲った魔獣の名は〈ギガントサウルス〉。この時は興味など無かった。
私を拾ってけれた老人は銃を使う傭兵だった。老人の名前はロン。私はロン爺と呼んだ。
ロン爺は何でも買ってくれた。美味しいご飯、可愛い服。 
そしてあっという間に8年が過ぎた。その頃の朝食はパンを店で買って食べた。昼ご飯は特別決まってなかった。夕飯は私が用意した。ロン爺は毎日「美味しい」と言ってくれた。その言葉は私にとって何よりも嬉しいものだった。
ある日―
「ねぇロン爺」
「なんだい?アデルータ」
「私も傭兵やりたい。だから私に銃の使い方を教えて」
「本気なのか?傭兵は危険な仕事だ」
「うん。私ね早く強くなってロン爺を助けれるようになりたい」
それから私はロン爺に銃の使い方を習った。
毎日大変だったが物凄く充実していた。傭兵ギルドに出入りしている内に他の傭兵の人達とも仲良くなった。経験者から傭兵として大切なことを教えてもらった。その時傭兵ギルドの隊長をしていた大剣使いの大男の傭兵バーテルさんとも仲良くなり、その娘であるエリナとも仲良くなり、一緒に買い物をしたり時には国を出て平原で魔獣を狩ったりした。
ロン爺は厳しかった。銃の扱い方を何回も間違えて怒られた。でも全ては私が死ぬことが無い為だ。それもロン爺の優しさだったのだろう。
銃使いとしてのノウハウを叩き込まれて1年が経過した。
「そっちに逃げたぞー」
1人の男性がアデルータに向かって合図を出す。
エールラビット
 小さな翼が背中に生えた兎。小型魔獣。
男性の斬撃をジャンプして避けたエールラビットがアデルータに対して体当たりをしようと走って来る。アデルータは冷静に銃を構える。そして狙いを定めて引金を引く。
ドン!銃声が鳴り響いて、銃弾が発射されてエールラビットの皮膚を貫通する。エールラビットの体から血が溢れ出て崩れる。
「ナイス」
男性とチームメンバーが駆け寄ってくる。
「いえ」
アデルータは短く答える。
私は傭兵として、銃使いとして1人前になったと思っていた。
アデルータは特別に誰ともチームを組まなかった。ロン爺の収入でその日のやり繰りは出来る。アデルータは他の傭兵達の依頼に銃で後方から支援する[サポーター]としてチームに参加する傭兵の傭兵として活躍していた。
エリナはアデルータにとってかけがえのない大切な存在になっていた。エリナだけには自分が捨て子であることなど自分の過去について話した。エリナは自分の父親の跡を継いでオルティネシア王国の傭兵ギルドの隊長となった。
そしてアデルータはロン爺に恩返しをする為に腕時計をプレゼントするべくお金を貯金していた。目標金額達成の為にエリナは協力してくれた。エリナは鎌使いで前衛、アデルータは後衛として依頼をこなした。
1ヶ月後ロン爺に少し高級な腕時計をプレゼントした。この日、ロン爺は傭兵を引退した。
3ヶ月後―
ロン爺に傭兵としての依頼が来た。ロン爺は引退していたが、現役の頃は凄腕の傭兵だった。依頼の内容は〈グロース森林〉の突破だった。この季節に〈オルティネシア王国〉から〈グロース森林〉を突破するのは危険だった。理由はギガントサウルスの存在。だが、とある商業人がどうしても次の街に最短で行かなければならない理由が出来たらしい。
その依頼にアデルータも同行する事にした。理由なんとなくだった。何故か嫌な予感がしたのだ。9年前に母親を殺した魔獣だからだろうか...
ロン爺と共に商業人の馬車に乗って〈グロース森林〉に向かった。アデルータは火属性の魔法。対するギガントサウルスも火属性だから良い相手とは言えない。
そして馬車が〈グロース森林〉に入る。アデルータの【レーダーの加護】が反応した。
【レーダーの加護】:敵の接近を察知出来る。
加護とは経験などの一定の条件で得る事が出来るスキルだ。人の意思に関係なく発動する。
「恐らく近くにギガントサウルスがいます」
アデルータが口を開いた瞬間、魔獣の咆哮が森全体に響く。
グワァァァァァァァァァァ
「馬車を止めてください」
ロン爺がそう言って馬車から降りる。アデルータも馬車から降りて辺りを警戒する。
バキバキ
木が倒れる音がして大地が震動する。
――音が近づいて来る――
そしてギガントサウルスが姿を現した。
デカイ。人間の10倍は有るだろうか...
  グワァァァァァァァァァァ
ギガントサウルスが再び咆哮して突撃してくる。
ロン爺とアデルータはそれぞれ横に飛んで避ける。そして銃を構える。
ドン!銃弾はギガントサウルスの体を貫く。
――何時間経過したのだろう...
まるでダメージを感じられない。
こんなに魔獣に勝てるだろうか...
そんな不安を頭の中から追い出して集中する。もう薬草も使い切ってしまった。残りの銃弾も少ない。銃口の銃弾に火属性の力を込めて引金を引く。
ドン!火属性を纏った銃弾がギガントサウルスを貫く。少量の血が飛び散る。
ダメだ
そう思い銃を下ろす。ギガントサウルスがアデルータ目掛けて走ってくる。ロン爺が銃弾を発射させるが、ロン爺を無視してアデルータに体当たりで襲いかかる。アデルータは避けようとするが足がもつれて動けなかった。ギガントサウルスの体当たりを無防備で喰らい数メートル吹き飛ばされる。
「くっ!」
体が地面に着いて、立ち上がろうとするが体に力が入らない。ギガントサウルスが大きな足音を立てながら近づいてくる。そしてほんの寸前で立ち止まる。ギガントサウルスは口から赤い光が溢れる。そして口を勢いよく開いて、大量の炎を吹いた。
...このまま死ぬのかな...
死を感じて目から涙がこぼれる。だがアデルータと炎の間に走り込んで来た影があった。――ロン爺だ。ロン爺は銃を投げ捨てて両手を広げてアデルータを庇った。
「ロン爺ー!」
アデルータは叫ぶ。
「アデルータ・・・にげろ・・・・・・・・・商業人さんたの・・・みます」
ロン爺はそれだけ言うと前に体重をかける。商業人が走り寄ってきてアデルータを抱える。
「離して!」
アデルータが反抗するが商業人はアデルータを馬車まで運んで無理やり乗せた。
商業人も馬車に乗り、馬を走らせた。
「ロン爺ー!」
アデルータは両眼から涙を流し叫んだ。
それから数時間後――
ロン爺と思われる死体が〈グロース森林〉の中で見つかった。黒焦げになった死体の左腕には溶けかけた腕時計が付けられていた。
その日以来アデルータは自室に閉じこもった。
自室に閉じこもってから10日後、アデルータは自分の愛銃を片手にロン爺の写真を見つめて決意した。
「私がアイツを殺す」
アデルータは部屋を出た。それまで[サポーター]として依頼に参加していたがその日以来アデルータがチームに参加する事は無くなった。
ソロ傭兵として危険な依頼を受け続けた。
ウーキパの討伐など、毎日〈グロース森林〉に出かけた。そして毎年この時期になると『ギガントサウルス討伐』の依頼を受ける。
1年めは失敗した。2年めは他の傭兵団に邪魔された。
「アイツ銃使いでソロなんだろ」
「毎日無茶な依頼を受けてるよ」
アデルータは傭兵達の中ではちょっとした有名人になっていた。それも悪い方向で。
「お前、俺の女にならねえ?」
そんな事を言われた時もあった。悪い噂はどんどん広まっていった。エリナは優しく接して来てくれた。
「アデルータ・・・私も協力するから一緒にギガントサウルスを討伐しようよ。貴女がそんなに背負い込むことは無いわ」
その言葉にイラついた。
「貴女に私の何が分かるの!?」
そう叫んでエリナを突き飛ばした。噂はもっと広まった。それでもエリナは優しかった。
私が弱かったせいでロン爺は死んだ...
これは報い...私への罰...
私が1人でやらないと意味が無い...
そして去年も失敗した。
それからアデルータは更に危険な依頼にソロで受けるようになった。
もっと強くならなきゃ...私がやらないと...
1人で盗賊のアジトに侵入して盗賊を捕らえた。沢山人も殺めた。
そして今年もこの時期が来た。ロン爺の命日...
今年は逃げない。アイツが死ぬか、私が死ぬか...
アデルータはそう決意して『ギガントサウルス討伐』の依頼をカウンターに出した。
「気を付けてね。アデルータ」
エリナにそう言われて送り出された。
ごめん...もしかしたら私は貴女に謝る事が出来ないかもしれない。死ぬのは怖くない。
  心の中でエリナに謝った。
必ず今年で決着を付ける。
アデルータは〈グロース森林〉を目指して〈オルティネシア王国〉を出た。
自分は孤独なのだと...
私は小さい頃親に捨てられた。3歳の頃だろうか...それは雨の降っている日だった。産まれた場所は今居る〈オルティネシア王国〉よりも南に存在している小さな村で、私は3歳までそこで育った。父親は居なかった。でも不満は無かった。なぜなら母親が優しかったからだ。私が笑えば母も笑ってくれた。
でも今思えばあれは愛想笑いだったんだと思う...母が毎晩泣いていることを知っていた。机に顔を伏せて、愚痴を言いながら泣いていた。それでも私の前では笑顔だった。母の作るご飯は美味しくて大好きだった。
ある日、旅行だと言って馬車に乗った。産まれて初めての馬車に揺られながら、あまりの気持ちよさに眠ってしまった。
そして〈オルティネシア王国〉に着いた。母と手を繋ぎながら国を見て回った。ふたり部屋の宿を取り、美味しい夕食を食べた。その日は疲れて早く眠ってしまった事を覚えている。
そして次の日、雨が降った。それでも私と母は外に出た。そして少し歩いて人気の無い路地に入った。そして母はこう言った。
「ごめんなさい。もう疲れてしまったの」
そして私は捨てられた。涙が止まらなかった。遠ざかる母の背中を眺めながら私は必死に母を呼んだ。
母は振り向きもしなかった。その時私は気付いた。
「私は・・・愛されてなど無かった」
私を拾ってくれたのは優しい老人だった。
「可哀想な子だ」
そう言って私を優しく抱きしめてくれた。
その後で母の乗った馬車が魔獣に襲われた事を知った。母は死んだのだ。
母の馬車を襲った魔獣の名は〈ギガントサウルス〉。この時は興味など無かった。
私を拾ってけれた老人は銃を使う傭兵だった。老人の名前はロン。私はロン爺と呼んだ。
ロン爺は何でも買ってくれた。美味しいご飯、可愛い服。 
そしてあっという間に8年が過ぎた。その頃の朝食はパンを店で買って食べた。昼ご飯は特別決まってなかった。夕飯は私が用意した。ロン爺は毎日「美味しい」と言ってくれた。その言葉は私にとって何よりも嬉しいものだった。
ある日―
「ねぇロン爺」
「なんだい?アデルータ」
「私も傭兵やりたい。だから私に銃の使い方を教えて」
「本気なのか?傭兵は危険な仕事だ」
「うん。私ね早く強くなってロン爺を助けれるようになりたい」
それから私はロン爺に銃の使い方を習った。
毎日大変だったが物凄く充実していた。傭兵ギルドに出入りしている内に他の傭兵の人達とも仲良くなった。経験者から傭兵として大切なことを教えてもらった。その時傭兵ギルドの隊長をしていた大剣使いの大男の傭兵バーテルさんとも仲良くなり、その娘であるエリナとも仲良くなり、一緒に買い物をしたり時には国を出て平原で魔獣を狩ったりした。
ロン爺は厳しかった。銃の扱い方を何回も間違えて怒られた。でも全ては私が死ぬことが無い為だ。それもロン爺の優しさだったのだろう。
銃使いとしてのノウハウを叩き込まれて1年が経過した。
「そっちに逃げたぞー」
1人の男性がアデルータに向かって合図を出す。
エールラビット
 小さな翼が背中に生えた兎。小型魔獣。
男性の斬撃をジャンプして避けたエールラビットがアデルータに対して体当たりをしようと走って来る。アデルータは冷静に銃を構える。そして狙いを定めて引金を引く。
ドン!銃声が鳴り響いて、銃弾が発射されてエールラビットの皮膚を貫通する。エールラビットの体から血が溢れ出て崩れる。
「ナイス」
男性とチームメンバーが駆け寄ってくる。
「いえ」
アデルータは短く答える。
私は傭兵として、銃使いとして1人前になったと思っていた。
アデルータは特別に誰ともチームを組まなかった。ロン爺の収入でその日のやり繰りは出来る。アデルータは他の傭兵達の依頼に銃で後方から支援する[サポーター]としてチームに参加する傭兵の傭兵として活躍していた。
エリナはアデルータにとってかけがえのない大切な存在になっていた。エリナだけには自分が捨て子であることなど自分の過去について話した。エリナは自分の父親の跡を継いでオルティネシア王国の傭兵ギルドの隊長となった。
そしてアデルータはロン爺に恩返しをする為に腕時計をプレゼントするべくお金を貯金していた。目標金額達成の為にエリナは協力してくれた。エリナは鎌使いで前衛、アデルータは後衛として依頼をこなした。
1ヶ月後ロン爺に少し高級な腕時計をプレゼントした。この日、ロン爺は傭兵を引退した。
3ヶ月後―
ロン爺に傭兵としての依頼が来た。ロン爺は引退していたが、現役の頃は凄腕の傭兵だった。依頼の内容は〈グロース森林〉の突破だった。この季節に〈オルティネシア王国〉から〈グロース森林〉を突破するのは危険だった。理由はギガントサウルスの存在。だが、とある商業人がどうしても次の街に最短で行かなければならない理由が出来たらしい。
その依頼にアデルータも同行する事にした。理由なんとなくだった。何故か嫌な予感がしたのだ。9年前に母親を殺した魔獣だからだろうか...
ロン爺と共に商業人の馬車に乗って〈グロース森林〉に向かった。アデルータは火属性の魔法。対するギガントサウルスも火属性だから良い相手とは言えない。
そして馬車が〈グロース森林〉に入る。アデルータの【レーダーの加護】が反応した。
【レーダーの加護】:敵の接近を察知出来る。
加護とは経験などの一定の条件で得る事が出来るスキルだ。人の意思に関係なく発動する。
「恐らく近くにギガントサウルスがいます」
アデルータが口を開いた瞬間、魔獣の咆哮が森全体に響く。
グワァァァァァァァァァァ
「馬車を止めてください」
ロン爺がそう言って馬車から降りる。アデルータも馬車から降りて辺りを警戒する。
バキバキ
木が倒れる音がして大地が震動する。
――音が近づいて来る――
そしてギガントサウルスが姿を現した。
デカイ。人間の10倍は有るだろうか...
  グワァァァァァァァァァァ
ギガントサウルスが再び咆哮して突撃してくる。
ロン爺とアデルータはそれぞれ横に飛んで避ける。そして銃を構える。
ドン!銃弾はギガントサウルスの体を貫く。
――何時間経過したのだろう...
まるでダメージを感じられない。
こんなに魔獣に勝てるだろうか...
そんな不安を頭の中から追い出して集中する。もう薬草も使い切ってしまった。残りの銃弾も少ない。銃口の銃弾に火属性の力を込めて引金を引く。
ドン!火属性を纏った銃弾がギガントサウルスを貫く。少量の血が飛び散る。
ダメだ
そう思い銃を下ろす。ギガントサウルスがアデルータ目掛けて走ってくる。ロン爺が銃弾を発射させるが、ロン爺を無視してアデルータに体当たりで襲いかかる。アデルータは避けようとするが足がもつれて動けなかった。ギガントサウルスの体当たりを無防備で喰らい数メートル吹き飛ばされる。
「くっ!」
体が地面に着いて、立ち上がろうとするが体に力が入らない。ギガントサウルスが大きな足音を立てながら近づいてくる。そしてほんの寸前で立ち止まる。ギガントサウルスは口から赤い光が溢れる。そして口を勢いよく開いて、大量の炎を吹いた。
...このまま死ぬのかな...
死を感じて目から涙がこぼれる。だがアデルータと炎の間に走り込んで来た影があった。――ロン爺だ。ロン爺は銃を投げ捨てて両手を広げてアデルータを庇った。
「ロン爺ー!」
アデルータは叫ぶ。
「アデルータ・・・にげろ・・・・・・・・・商業人さんたの・・・みます」
ロン爺はそれだけ言うと前に体重をかける。商業人が走り寄ってきてアデルータを抱える。
「離して!」
アデルータが反抗するが商業人はアデルータを馬車まで運んで無理やり乗せた。
商業人も馬車に乗り、馬を走らせた。
「ロン爺ー!」
アデルータは両眼から涙を流し叫んだ。
それから数時間後――
ロン爺と思われる死体が〈グロース森林〉の中で見つかった。黒焦げになった死体の左腕には溶けかけた腕時計が付けられていた。
その日以来アデルータは自室に閉じこもった。
自室に閉じこもってから10日後、アデルータは自分の愛銃を片手にロン爺の写真を見つめて決意した。
「私がアイツを殺す」
アデルータは部屋を出た。それまで[サポーター]として依頼に参加していたがその日以来アデルータがチームに参加する事は無くなった。
ソロ傭兵として危険な依頼を受け続けた。
ウーキパの討伐など、毎日〈グロース森林〉に出かけた。そして毎年この時期になると『ギガントサウルス討伐』の依頼を受ける。
1年めは失敗した。2年めは他の傭兵団に邪魔された。
「アイツ銃使いでソロなんだろ」
「毎日無茶な依頼を受けてるよ」
アデルータは傭兵達の中ではちょっとした有名人になっていた。それも悪い方向で。
「お前、俺の女にならねえ?」
そんな事を言われた時もあった。悪い噂はどんどん広まっていった。エリナは優しく接して来てくれた。
「アデルータ・・・私も協力するから一緒にギガントサウルスを討伐しようよ。貴女がそんなに背負い込むことは無いわ」
その言葉にイラついた。
「貴女に私の何が分かるの!?」
そう叫んでエリナを突き飛ばした。噂はもっと広まった。それでもエリナは優しかった。
私が弱かったせいでロン爺は死んだ...
これは報い...私への罰...
私が1人でやらないと意味が無い...
そして去年も失敗した。
それからアデルータは更に危険な依頼にソロで受けるようになった。
もっと強くならなきゃ...私がやらないと...
1人で盗賊のアジトに侵入して盗賊を捕らえた。沢山人も殺めた。
そして今年もこの時期が来た。ロン爺の命日...
今年は逃げない。アイツが死ぬか、私が死ぬか...
アデルータはそう決意して『ギガントサウルス討伐』の依頼をカウンターに出した。
「気を付けてね。アデルータ」
エリナにそう言われて送り出された。
ごめん...もしかしたら私は貴女に謝る事が出来ないかもしれない。死ぬのは怖くない。
  心の中でエリナに謝った。
必ず今年で決着を付ける。
アデルータは〈グロース森林〉を目指して〈オルティネシア王国〉を出た。
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