負け組だった俺と制限されたチートスキル
第五十八話 ミイラ取りをミイラにする
「なっ……!」
俺の目の前が急に拓けた。いや比喩でも何でもなく言葉の通り、目の前に景色が広がったのだ。
何かアクションが起こるだろうと予想していた俺も、流石にこの状況は驚きだった。精々誰かが乱入してくる程度だと高を括っていたんだが、俺もまだまだ発想力が足りないな。
しかもだ。その拓けた先の光景に無数のエルフ族がいたのだから二重の驚きだった。
皆が俺を見上げて唖然としている。いや正確に言えばその視線は俺のすぐ隣にいるエルフィーナに向けられているのか。
そりゃあそうだ、何せ彼女は彼らエルフ達のお姫様であり、かつ行方不明となっていたのだから注目が集まらない方がおかしい。
「ま、魔人だと!? またしても姫様を攫いに来たのか!」
その内の一人、何だか一人だけ高い位置にいるエルフが俺を見てそう声を上げた。
その声、その顔、どこかで見た覚えがある。
そうか、リーンドか。
このままでは面倒なことになることは直感で分かった。リーンドのことだ、恐らくこうなるように仕向けたのだろう。
俺がエルフィーナの小屋へと落ちるように仕向けたのも奴なのだ。
まんまと嵌められた。
俺一人では到底見抜けなかっただろう。
そう一人なら。
俺はエルフィーナと視線を交わした。
俺は知っていた。
リーンドがこの場に介入してくることは。
何故ならエルフィーナから聞いたのだ。
あの手を触れていた時に。
彼女曰くこれもまた言霊の応用らしく、実質心の中での会話が出来ていた。
だからこそこの部屋を盗聴していたリーンドの監視を抜け、真実を知れたという訳だ。
後は手はず通りにエルフィーナがリーンドを止める。
「お待ちなさい」
その一言でざわついていた場内が静まったのだから、本当にお姫様という存在が彼らにとって大切なものだと言うことが伝わってくる。
生憎とその威光を利用しようとした輩もいたみたいだがな。
それからリーンドとエルフィーナは一対一の抗弁を行った。
何だかエルフ族には魔人に対して凄い偏見を持っていることがここで判明したのだが、残念ながら俺は純粋な魔人じゃないし、万能ではない。
しかし驚いた。
エルフィーナのあの眼はエルフ族全てを黙らせてしまえるほどの信頼があったことに。
見ろ、あのリーンドさえ反論できていない。
だがそれで終わるリーンドではないだろう。むしろエルフィーナが反論してくることさえも予想していそうだ。
「お言葉ですがエルフィーナ様、あなた様の力はその真理を見る《・・》眼でございます」
「だからどうしたというのですか?」
「だからといって本音を聞き分ける力ではないではありませんか」
「そうですね」
「ならば、その主張は筋が通っておりませぬ。私共は知っております、あなた様の目は真理を見ることは出来ても心理は見抜けないことを」
やはりごまかせなかったか。
リーンドの言うことはもっともだ。
エルフ族の皆はエルフィーナに対する信頼、信仰によってエルフィーナの言葉を鵜呑みにしてしまっていたが、そもそもエルフィーナが魔人の力によって惑わされていたのではなく、魔人の言葉によって騙されているならば、眼の力は関係ないのだ。何せ、エルフィーナの真眼にそのような力はないのだから。
「確かにそうですね」
エルフィーナ淡々と告げた。
彼女も見抜かれると思っていたのだろう。
「どうしてそこまで魔人の味方をなさるのですか? 何か弱みを握られているのではないんですか?」
それを機にリーンドが言葉を畳み掛けてきた。
しかもそれはエルフィーナに向けているように見えて、この場に集まった民衆に対して言っているのだから性質が悪い。
「私にはそれは分かりません」
エルフィーナのその一言に会場がざわめき、リーンドの口元には薄い笑みが浮かんだ。
「ようやくお分かりいただけましたか、では早速その魔人族の身柄をこちらへお渡しください」
「……いえ、私の出番は終わりましたが、まだ話すべき相手が残っているのではないですか?」
「それはどういう」
惚けた振りをしているのはすぐに分かった。
その会話の流れ、この場からしてその相手とは一人しかいない。
「いるではありませんか、リーンド様が先ほどから身柄を拘束させろとおっしゃっている容疑者が」
「……彼と話すことに何のメリットがあるというのですか?」
「何を言っているのですか? 事件とは最終的に容疑者の言い分を聞いてから解決するものではありませんか」
もっともらしいことをエルフィーナは言っているが、それは別にここでなくても構わないことだった。
尋問を公の場で行うなんて、エルフ族という俺の理解の及ばない他種族とはいえやらないはずだ。
「……分かりました、では言い分を聞きましょうか、魔人族のお方」
リーンドはエルフィーナの態度を見て諦めたように呟いた。
恐らく彼女の性格を知っているからこその答えなのだろう。それと民衆の声、目のせいでもあるかもしれない。
「話と言われてもな……」
なんてお姫様から指名を受けた俺は、正直戸惑っていた。
確かにリーンドと話すことになるのは想定内だが、いかんせん流れが芳しくない。さっきのリーンドの追及によって民衆の心は反魔人族に傾いているからだ。
「ではこちらから質問しましょうか、何故あなたはエルフィーナ様の部屋にいたのですか?」
いきなり直球の質問。
困った。
俺にはまともな答えなどない。
正直に話すなら、偶然落ちたから。だがそんなことを言って信じる奴などどこにもいないだろうな。
だからといって嘘を吐くのも気が引けた。
バレれば有罪確定であるし、ましてや相手はあのリーンドだ。あの手この手で揺さぶりをかけてくる。そうなればボロを出すのは備えのない俺に決まっている。
まあ勝算、いや結末は見えているんだが。
「偶然落ちたからだな」
結局正直に言う俺。
リーンドは目を丸くする演技をして追求する。
「偶然ですか? あの小屋に偶然落ちたとおっしゃるのですか?」
「ああ、嘘じゃない」
だが誰も信じてはくれない。
皆、俺の目を猜疑の目で見ていた。
唯一リフリードだけは違ったようなので安心する。ついでに言えばリーフはこの場にいなかった。
「呆れましたよ、そのような嘘が通用するとでも思っているのですか?」
「嘘じゃないんだがな」
そんな討論、何の意味もない。
結局はリーンドが勝つ、そうなっている。
エルフィーナからの耳打ち。
「準備はいいですか?」
「ああ」
すかさず【強化】をエルフィーナへ施す。
これは勇人が俺にやったことと同じだ。このスキルは他人にも影響を与えることが出来る。
初めてだったが成功したようだ。
「魔人! 姫様を誑かすような真似はやめろ!」
「ひどい言い草だな」
「いいから離れろ!」
怒声を上げ、口調を乱すリーンドに憐れみの目を向ける。
当然離れることはしない。
「離れる代わりにこちらからも質問いいか? ずっとそっちが質問っていうのもフェアじゃないもんな【偽】」
「……何だ」
訝しむような視線。
ついでに場内もざわめいた。
「どうしてエルフィーナを幽閉した?」
「……魔人、今度は民衆を嵌める気か?」
「さあどうだろう、でもリーンド様が出来たんだったら俺にも出来そうかな?」
「先ほどからワケのわからないことを……! 【偽】」
怒りに身を震わせるリーンド。
動揺する会場。
目を閉じるエルフィーナ。
状況についていけないミリル。
そして気取った態度に徹した俺。
それが今の状況だ。
「あれおかしいな、姫様からはそう聞いたんですけど……」
「いい加減にしてもらおうか魔人の男、それ以上私を侮辱するような発言をするなら――」
「――そろそろ気付いたらどうだ?」
最後の忠告。
まあ慈悲とでも思ってくれ。
ただし手加減はしないが。
「またワケのわからないことを……!」
「いやいや、俺はほとんど嘘は言ってないんですけどねぇ。むしろリーンド様、あなたの方が嘘ばっかりじゃないですかー」
「私は嘘などついていない【偽】」
「今も嘘じゃないですか、相変わらず腹黒ですね」
ニコッと笑みをリーンドへ向ける。
そろそろ気付いても良い頃だが、頭に血が上っているからだろうか、全く気付く様子がない。
「もううんざりだ、私がエルフィーナ様を攫う? そんな馬鹿な話を誰が信じるというんだ?【偽】」
「俺は信じるけど」
「黙れ魔人!」
「黙ってもいいんですか?」
「貴様……!」
そろそろ煽るのも止めておこうか。
ミリル、エルフィーナ、民衆にドン引かれる。
「分かりました、では最後にいくつか言わせて貰いますね」
大きく息を吐く。
リーンドは何も言ってこない。
「俺はエルフィーナ様を惑わせていない」
まず一つ。
「俺はリーンド様が大好きです【偽】」
気持ち悪い。
「俺はエルフィーナ様から聞きました。リーンド様に幽閉されたと」
「貴様……まだ言うか」
さて最後だ。
「リーンド様、これまでの姫様誘拐事件、いえそれだけじゃなく最近起こった事件は全てあなたが黒幕ですよね?」
俺はこの里に最近来たため、誘拐事件以外の事件は一つしか知らない。
それは勇者たちによるエルフ族領域への侵犯行為。そしてそれに伴うエルフ戦士の死傷事件だ。
俺はこの事件もリーンドが仕組んだことだと思っている。
勇人が言った「許可を取った」という言葉と、リーフの叔父である、つまりリフリードの兄妹がその場に居合わせたこと。
その全てが偶然ではなく、自分の権力確保のために行った行為だとしたら?
ありえない話ではない。
リフリードの身内を消すことは、リフリードの支援者を減らしたことに繋がるのだから。
「もういい、貴様の詭弁は聞き飽きた【偽】」
「確かにもういい、俺も皆もお前の嘘には聞き飽きたからな」
俺はざわつくエルフ達を見下ろし、口角を上げてそう呟いた。
俺の目の前が急に拓けた。いや比喩でも何でもなく言葉の通り、目の前に景色が広がったのだ。
何かアクションが起こるだろうと予想していた俺も、流石にこの状況は驚きだった。精々誰かが乱入してくる程度だと高を括っていたんだが、俺もまだまだ発想力が足りないな。
しかもだ。その拓けた先の光景に無数のエルフ族がいたのだから二重の驚きだった。
皆が俺を見上げて唖然としている。いや正確に言えばその視線は俺のすぐ隣にいるエルフィーナに向けられているのか。
そりゃあそうだ、何せ彼女は彼らエルフ達のお姫様であり、かつ行方不明となっていたのだから注目が集まらない方がおかしい。
「ま、魔人だと!? またしても姫様を攫いに来たのか!」
その内の一人、何だか一人だけ高い位置にいるエルフが俺を見てそう声を上げた。
その声、その顔、どこかで見た覚えがある。
そうか、リーンドか。
このままでは面倒なことになることは直感で分かった。リーンドのことだ、恐らくこうなるように仕向けたのだろう。
俺がエルフィーナの小屋へと落ちるように仕向けたのも奴なのだ。
まんまと嵌められた。
俺一人では到底見抜けなかっただろう。
そう一人なら。
俺はエルフィーナと視線を交わした。
俺は知っていた。
リーンドがこの場に介入してくることは。
何故ならエルフィーナから聞いたのだ。
あの手を触れていた時に。
彼女曰くこれもまた言霊の応用らしく、実質心の中での会話が出来ていた。
だからこそこの部屋を盗聴していたリーンドの監視を抜け、真実を知れたという訳だ。
後は手はず通りにエルフィーナがリーンドを止める。
「お待ちなさい」
その一言でざわついていた場内が静まったのだから、本当にお姫様という存在が彼らにとって大切なものだと言うことが伝わってくる。
生憎とその威光を利用しようとした輩もいたみたいだがな。
それからリーンドとエルフィーナは一対一の抗弁を行った。
何だかエルフ族には魔人に対して凄い偏見を持っていることがここで判明したのだが、残念ながら俺は純粋な魔人じゃないし、万能ではない。
しかし驚いた。
エルフィーナのあの眼はエルフ族全てを黙らせてしまえるほどの信頼があったことに。
見ろ、あのリーンドさえ反論できていない。
だがそれで終わるリーンドではないだろう。むしろエルフィーナが反論してくることさえも予想していそうだ。
「お言葉ですがエルフィーナ様、あなた様の力はその真理を見る《・・》眼でございます」
「だからどうしたというのですか?」
「だからといって本音を聞き分ける力ではないではありませんか」
「そうですね」
「ならば、その主張は筋が通っておりませぬ。私共は知っております、あなた様の目は真理を見ることは出来ても心理は見抜けないことを」
やはりごまかせなかったか。
リーンドの言うことはもっともだ。
エルフ族の皆はエルフィーナに対する信頼、信仰によってエルフィーナの言葉を鵜呑みにしてしまっていたが、そもそもエルフィーナが魔人の力によって惑わされていたのではなく、魔人の言葉によって騙されているならば、眼の力は関係ないのだ。何せ、エルフィーナの真眼にそのような力はないのだから。
「確かにそうですね」
エルフィーナ淡々と告げた。
彼女も見抜かれると思っていたのだろう。
「どうしてそこまで魔人の味方をなさるのですか? 何か弱みを握られているのではないんですか?」
それを機にリーンドが言葉を畳み掛けてきた。
しかもそれはエルフィーナに向けているように見えて、この場に集まった民衆に対して言っているのだから性質が悪い。
「私にはそれは分かりません」
エルフィーナのその一言に会場がざわめき、リーンドの口元には薄い笑みが浮かんだ。
「ようやくお分かりいただけましたか、では早速その魔人族の身柄をこちらへお渡しください」
「……いえ、私の出番は終わりましたが、まだ話すべき相手が残っているのではないですか?」
「それはどういう」
惚けた振りをしているのはすぐに分かった。
その会話の流れ、この場からしてその相手とは一人しかいない。
「いるではありませんか、リーンド様が先ほどから身柄を拘束させろとおっしゃっている容疑者が」
「……彼と話すことに何のメリットがあるというのですか?」
「何を言っているのですか? 事件とは最終的に容疑者の言い分を聞いてから解決するものではありませんか」
もっともらしいことをエルフィーナは言っているが、それは別にここでなくても構わないことだった。
尋問を公の場で行うなんて、エルフ族という俺の理解の及ばない他種族とはいえやらないはずだ。
「……分かりました、では言い分を聞きましょうか、魔人族のお方」
リーンドはエルフィーナの態度を見て諦めたように呟いた。
恐らく彼女の性格を知っているからこその答えなのだろう。それと民衆の声、目のせいでもあるかもしれない。
「話と言われてもな……」
なんてお姫様から指名を受けた俺は、正直戸惑っていた。
確かにリーンドと話すことになるのは想定内だが、いかんせん流れが芳しくない。さっきのリーンドの追及によって民衆の心は反魔人族に傾いているからだ。
「ではこちらから質問しましょうか、何故あなたはエルフィーナ様の部屋にいたのですか?」
いきなり直球の質問。
困った。
俺にはまともな答えなどない。
正直に話すなら、偶然落ちたから。だがそんなことを言って信じる奴などどこにもいないだろうな。
だからといって嘘を吐くのも気が引けた。
バレれば有罪確定であるし、ましてや相手はあのリーンドだ。あの手この手で揺さぶりをかけてくる。そうなればボロを出すのは備えのない俺に決まっている。
まあ勝算、いや結末は見えているんだが。
「偶然落ちたからだな」
結局正直に言う俺。
リーンドは目を丸くする演技をして追求する。
「偶然ですか? あの小屋に偶然落ちたとおっしゃるのですか?」
「ああ、嘘じゃない」
だが誰も信じてはくれない。
皆、俺の目を猜疑の目で見ていた。
唯一リフリードだけは違ったようなので安心する。ついでに言えばリーフはこの場にいなかった。
「呆れましたよ、そのような嘘が通用するとでも思っているのですか?」
「嘘じゃないんだがな」
そんな討論、何の意味もない。
結局はリーンドが勝つ、そうなっている。
エルフィーナからの耳打ち。
「準備はいいですか?」
「ああ」
すかさず【強化】をエルフィーナへ施す。
これは勇人が俺にやったことと同じだ。このスキルは他人にも影響を与えることが出来る。
初めてだったが成功したようだ。
「魔人! 姫様を誑かすような真似はやめろ!」
「ひどい言い草だな」
「いいから離れろ!」
怒声を上げ、口調を乱すリーンドに憐れみの目を向ける。
当然離れることはしない。
「離れる代わりにこちらからも質問いいか? ずっとそっちが質問っていうのもフェアじゃないもんな【偽】」
「……何だ」
訝しむような視線。
ついでに場内もざわめいた。
「どうしてエルフィーナを幽閉した?」
「……魔人、今度は民衆を嵌める気か?」
「さあどうだろう、でもリーンド様が出来たんだったら俺にも出来そうかな?」
「先ほどからワケのわからないことを……! 【偽】」
怒りに身を震わせるリーンド。
動揺する会場。
目を閉じるエルフィーナ。
状況についていけないミリル。
そして気取った態度に徹した俺。
それが今の状況だ。
「あれおかしいな、姫様からはそう聞いたんですけど……」
「いい加減にしてもらおうか魔人の男、それ以上私を侮辱するような発言をするなら――」
「――そろそろ気付いたらどうだ?」
最後の忠告。
まあ慈悲とでも思ってくれ。
ただし手加減はしないが。
「またワケのわからないことを……!」
「いやいや、俺はほとんど嘘は言ってないんですけどねぇ。むしろリーンド様、あなたの方が嘘ばっかりじゃないですかー」
「私は嘘などついていない【偽】」
「今も嘘じゃないですか、相変わらず腹黒ですね」
ニコッと笑みをリーンドへ向ける。
そろそろ気付いても良い頃だが、頭に血が上っているからだろうか、全く気付く様子がない。
「もううんざりだ、私がエルフィーナ様を攫う? そんな馬鹿な話を誰が信じるというんだ?【偽】」
「俺は信じるけど」
「黙れ魔人!」
「黙ってもいいんですか?」
「貴様……!」
そろそろ煽るのも止めておこうか。
ミリル、エルフィーナ、民衆にドン引かれる。
「分かりました、では最後にいくつか言わせて貰いますね」
大きく息を吐く。
リーンドは何も言ってこない。
「俺はエルフィーナ様を惑わせていない」
まず一つ。
「俺はリーンド様が大好きです【偽】」
気持ち悪い。
「俺はエルフィーナ様から聞きました。リーンド様に幽閉されたと」
「貴様……まだ言うか」
さて最後だ。
「リーンド様、これまでの姫様誘拐事件、いえそれだけじゃなく最近起こった事件は全てあなたが黒幕ですよね?」
俺はこの里に最近来たため、誘拐事件以外の事件は一つしか知らない。
それは勇者たちによるエルフ族領域への侵犯行為。そしてそれに伴うエルフ戦士の死傷事件だ。
俺はこの事件もリーンドが仕組んだことだと思っている。
勇人が言った「許可を取った」という言葉と、リーフの叔父である、つまりリフリードの兄妹がその場に居合わせたこと。
その全てが偶然ではなく、自分の権力確保のために行った行為だとしたら?
ありえない話ではない。
リフリードの身内を消すことは、リフリードの支援者を減らしたことに繋がるのだから。
「もういい、貴様の詭弁は聞き飽きた【偽】」
「確かにもういい、俺も皆もお前の嘘には聞き飽きたからな」
俺はざわつくエルフ達を見下ろし、口角を上げてそう呟いた。
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