イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

27

 ペロリとユカはデザート達を平らげた。
もう、女子が言う所の別腹というのはブラックホールでは無いのかと疑問に思ってしまう。
店を出た後、ユカが無理矢理俺の腕にくっついてきた。
「もう、離さないんだから。薫乃ちゃんの所に行くよ!」と言われ、謎のカップル状態が完成したというわけだ。ここでもしも夏影が前から登場となってしまえば、修羅場になると思うが、夏影は何かと忙しいと言っていたから会うことは無いだろう。ひとまず、安心だ。

「何、さっきから変な顔してるの?」

「なんでもねぇーよ」

「何よ! その言い方!」
 ユカは頬を膨らませていたけど、俺はその態度に返事を返すほど余裕は無かった。

あの日以来、まともに会話をしてなかった薫乃と会うという事が気がかりだからだ。
それと何故今更薫乃が俺と会いたいと言い出したのかも分からない。本当に謎が謎を呼んでいるという状態だ。
はぁーと溜め息が無意識に出た。

✢✢✢
 ユカが何かを言っていたが俺の耳には全く聞こえなかった。馬耳東風だった。
その後黙秘権と適当に頷き続けた俺とユカは薫乃が住んでいるマンションへと着いた。
そのまま中へ入ると石板が床にしかれていた。

「転んだら痛そうだな」

「そうね。それにホテルっぽいわ」
 言われてみればホテルっぽかった。
1階はホテルのロビーみたいにエレベーターと各部屋に繋がる電話ぐらいしか特筆すべきものは無かった。そして隠しカメラ作動中と書かれた紙切れが貼られている。高級ホテルですと言われれば「へぇ〜。そうなんですか」と納得してしまう程だ。

「俺マンションで暮らした事無いから良く分かんねぇーんだけど」

「まぁ、イケメン被りのヒキニートには無理よね」
 やれやれと言わんばかりに鼻で笑われた。

「おい、俺に変な属性を付けるな! 俺は一応、学生だ!」

「まぁまぁ、いいじゃない。ならニート予備軍ぐらいにしとく?」
 どうやら黙秘権を貫かれた事を根に持っているようだ。面倒くさい幼馴染属性をここぞと言わんばかりに使いやがって……。

「あぁ、そうだな。それでいいさ。で、後は頼む」
 運任せも良いとこ、俺はユカに全部任せた。
というか、本当にユカが分かるのか心配な所だがビッチだからこんなマンションの使い方も分かるだろう。というか、いつからビッチになったのだろう。多分だが、秋里実里のせいだ。

「任せなさい!」
 ドン! と胸を張り各部屋に繋がる電話を掛ける。

俺はユカが電話を掛けている間にどんな言葉を掛ければいいだろうかというドラマの台本的なものを作り、一人で悪戦苦闘していた。

2分後ーー。
話が終わったユカの「行くわよ」という合図と共にエレベーターに乗り、彼女の部屋へと向かった。307号室というのが薫乃の家らしい。
マンションってこんなにも広いんだなとか感心しているとユカが突然立ち止まり「ここよ」と言い放ち、インターホンを押す。
すると、「ガチャ」と鍵が開いた音がした。
俺達二人はお互いに「入っていいのか?」という表情で顔を見合わせつつも、「いいのだろう」という結論を下して中に入った。

「マンションなのに玄関が広い!」
 ユカはかなり驚いていた。
俺も驚きだった。マンションとは思えない程の広さだったからだ。しかし、不自然な点はこの家の主である薫乃がいないことだ。
そんな事を思っていると「パリン!」という皿が割れた様な音がした。
俺とユカが急いでそちらの方へ向かうと薫乃の姿があった。だけど彼女は以前と比べ物にならない程に肌白く、弱々しい姿になっていた。
興醒めだった。復讐相手がこんなにも弱っていては話にはならなかった。

ふ、ふざけるなよ。
俺の復讐はまだ終わってないんだぞ。

「運命って残酷よね」
 薫乃は俺の言葉を代弁しているかの様に言った。

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