イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

23

「じゃあー私は下の階だからぁー!」
 秋里実里は嬉しそうに走っていった。

「じゃあ、俺達も行こうぜ? 夏影」

「むっ……」
 夏影が顔を膨らませる。

「どうしたんだよ?」

「昨日の事忘れてる!」

昨日のこと……?
なんかあったっけ?
思い出せない。

「なんかあったっ……」
 夏影の目を見て察した。
これは正解を言わないと酷い仕打ちを受ける事になる。
でも、何も覚えてない……わけがない。
俺と夏影は昨日恋人になり、呼び方が変わったのだ。今まで碌に会話さえしてなかった俺達がそんな恋人同士になったのは色々とワケアリだ。

「覚えてるよ。三葉っっ……」

 何とも言えない変な気持ちになる。
言われた本人も顔を赤くしていた。

「な、なんか! 返事くらいしろよ!」

「え……えっっと……ありがとう。空……」
 まだお互いに馴れ合っていないこの関係を維持するのは難しそうだ。

そんな初心者カップルを楽しみながら、俺達は自分達の教室へと戻った。



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