イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

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 俺が通っているこの早慶高校は中高私立一貫の進学校として有名な高校だ。自称進学校であり、他称超難関進学校であるという謙虚な高校でもある。そんな高校には勿論さまざまな人間がいるわけだけど、この高校は勉強だけでここに来たっていうのが全体の8割で残りの2割は才能で入ってきてる人もいる。俗に言う、スポーツ推薦とかそんな類。まぁ、そういうわけでこのこの高校は勉強以外もトップレベルの学校なのだ。まぁ、俺はこの早慶高校が創立以来初めての『全教科満点合格』という偉業を成し遂げ、全校生徒の前で新入生挨拶を読んだりもした。それで俺が何を言いたいのか……っていうと俺は学校なので有名人なのであった。

「ねぇー、あれって2年生主席の秋月君じゃない?」
「そ、そうよそうよ。あれが秋月君よ。本当にカッコイイわ。ルックスも良いし頭も良いし。おまけにスポーツも万能って聞いたことがあるわ。天は二物を与えずとか言うけどあれは反則よね」

 女子達の黄色い歓声。
犬も歩けば棒に当たるとか言うけど、俺が歩けば恋に落ちると言っても過言では無いみたいだ。まぁ、そんな最強な俺(自分で最強っていうのは本当にイタイと思うけれど)だが俺だって失敗を何回も何回もしてきた。
そして失敗を糧にここまでやってきたわけだ。
勿論さっき、冗談がまじい様な秋月流ことわざを言ってみたけれど俺に恋に落ちなかった女子ヒトもいた。

「でも、なんで……梅雨桜先生に色々と言われてるのかな?」

「勿論、決まってるじゃない。秋月君は先生に頼りにさせてるのよ」

「あ、そっか!?」
 女子生徒達は俺への好感度を更に上昇してくれていた。しかしそれは真っ赤な嘘だ。
俺は先生に頼りにされているという点では当たっているかもしれないが、十中八九は頼りよりも利用されているだけなのであった。
勿論それには気づいているが、俺もそこに行きたいという気持ちがあるので逃げ出せなかったのだ。

「ねぇ〜余所見ばっかりしてないで話ちゃんと聞いてるの?」
 梅雨桜先生は職員室の回転する椅子に座っていた。そして俺の態度に苛ついたのか椅子を回転させ、立っている俺の方へ身体を向けた。
俺の目線は勿論先生の胸にイク。
変態高校生とか言われるかもしれないけど、健全な男子高校生にあんなものを見せるからイケないのだという謎理論を展開させ、一人納得した。先生は馬鹿なのか、それとも気にしていないのか自分の胸を俺から見られているとはつゆ知らず、俺にブツブツと言い始めた。
先に言っておくが、これは説教では無い。
どちらかと言えば、俺を説得させていたのであった。
「お願いだ。この通りだ。何でもする。だから、買いに行ってきてくれ。私はその日……残業になってしまったんだ」
 先生が楽しみにしていた『魔女っ子ルルルン』というアニメのイベントに参加できなくなったのだ。

「でも先生? 自業自得じゃないですか? 数学教師なのになぜ早めに定期考査テストの丸付けをしなかったんですか?」
 先にも後にもこの高校は超難関高校だ。
それが何を表しているのかというと、テストの問題が限りなく難しいのである。テストを作るのは簡単(国公立大や私立上位大の過去問から抜粋)らしいのだが、丸付けがメンドイ。
それは証明問題などが多いため、一人一人のテストを採点するのに時間を割くかららしい。
自分が採点者としての立場では無いので何とも言えないのが事実だ。

「もうぉ〜それぐらい分かってるわよ! だけど休みの日ぐらいは睡眠とアニメ三昧ぐらいしてもいいでしょ?」

「まぁ、確かにそうですけど……先生って深夜アニメもリアルタイム派でしたよね?」

「ふふっ、勿論よ! リアルタイムで見てTwitterで実況するのが楽しいんじゃないの!」

「はぁ……そうですか」
 ネットの友達か。いいなぁ〜。
俺も作るか。
でも現実世界にすら、友達はいないのに無理だろ。やっぱり、俺の先生は俺より上手うわてだった。

「先生、今日が何曜日かご存知ですか?」

「私を馬鹿にしないでくれる? 毎朝カレンダーを見て確認するほど、曜日には口うるさいのよ。馬鹿にしないで?」
 この人の場合、カレンダーの曜日を確認して今日のアニメは〜とか考えているに違いない。
っていうか深夜アニメを見てでも朝は早いというのに頑張る人だ。体調を壊さないか心配だ。

「今日は木曜日よね?」

「正解です。じゃあ、先生やれますよね? 残り5クラス分ぐらい」

「む、無理無理。私にとって花の金曜日は普通業務しかしないの。それに土曜日は色々とすることがあるし。それで残るは日曜日だけど、私にとっての休日だから無理。残るは今日一日しかないじゃない? 無理よ」

「はぁ……先生、分かりました。引き受けましょう。今回は俺の負けです」

「案外、あっさりと受けてくれるのね。安心したわ」

「えっ? 何言ってるんですか? 誰も無償で引き受けるとは言ってませんよ?」

「な、貴方もしかして……私に何をさせる気?」
そう言って、胸元を隠した。

「しねぇーよ」

「それはそれで困るんですけど……それと教師にタメ口を聞くな!」
 ボコんと頭を殴られた。
もう、これは親に報告して学校を訴えてやる!
まぁ、嘘だけど。
これも愛のムチみたいなものなのだろう。

「私ってそんなにも魅力が無いか?」
 まじまじと先生に見つめられる。
先生はどちらかとは言わず、ルックスだけを見るのなら美人だ。
だけど生活習慣とかを見るとモテナイ要素ばっかり過ぎる。それがあまりにも見た目のギャップと差が開きすぎて残念過ぎる。
例えば、頭の良さそうな眼鏡ガリ勉君みたいなキャラが実は馬鹿だったという具合に残念だ。
俺の語彙力と表現力ではこれぐらいの例しかあげられない。でもかなり分かりやすい気がする。

「先生は可愛いです。ってか、綺麗だしかっこいいです。まぁ、憧れはしませんけど。だから俺からのアドバイスはプライベートと仕事の両立は大切だと思いますが、少しはゆとりを持ったほうがからいいんじゃないですか?」

「なるほどなるほど。学校一のモテ男に言われるならそうなのかもな……。参考程度に聞いておこう」

「では、先生。俺は忙しいので……詳しくは電話かLINEで」

俺はそう言って、職員室を後にする。
次は生徒会に寄らなくてはならない。
やれやれ……生徒会長も懲りない人だ。

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