イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

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 泣き始めた女という生き物よりも扱いに困る生き物はいない。俺はそう思っている。
扱いに困るというか対応に困るのだ。
いや、言い換えている様に思えるが全く同じ事を言っている。比喩表現にもなっていない。
人それぞれに色々な対応があるのでどれが良くて悪いのかなどの判断が上手くつかない事が多い。それにもしミスってしまえば、最低だのなんだのとのたうち回されるわけだ。
女子の情報網と感染力は侮れない。

「こ、ここはユカ。お前の出番だ。頼む。ここで俺が慰めてしまったら、またまたフラグが立ってしまうからな」
 俺は泣いている彼女に聞き取れない様に小さな声でユカに耳打ちをする。

「えっ!? こういう時は男の出番でしょ! っていうか、責任転嫁するな! 元はと言えば、これはソラの問題じゃない! 私はただ付いてきただけなんだから」

「まぁ、そうなんだけどさぁ〜」
 頭をぽりぽりと掻く。

「はぁ……もう、分かったわよ。でも、来週の日曜日は私とデートだからねっ!」

「だから、その日は風華とデートなんだって」

「夏影さんじゃないの……?」
 ユカの目がギラリと光った気がしたけど、俺の勘違いだよな。

「違う違う。あれは夏影が勝手に言い出しただけで」

「本当ね。もう信じるんだから! もし嘘だったら、針千本飲んでもらうから」

「針千本。それは痛そうだ。なら、嘘は言わねぇーよ」

「うん、分かった。じゃあ、土曜日でいいわ。土曜日に私とデートよ。わかった?」

「土曜日は色々と忙しいんだ。土曜日はアニメを見なければならないからな」

「金曜日に見なさいよ! だから土曜日は私とデート!」

「分かったよ。そういう事にしといてやるよ。それでデートって何すんだよ?」

「う〜ん。そうねぇ〜私、行きたい所があるんだぁ〜」

「へぇ〜そうか。そこに俺は付いていけばいいんだな。了解!」

「物わかりがいいのね、今日は」

「まぁ〜な。今日は一味、違うんだぜ」

「はいはい、そうですね。それじゃ」
 そう言ってユカは涙を流している彼女の元に駆け寄った。

そして声を掛ける。

「だ、大丈夫?」と。
傍から見ていたらこの風景はさぞかし女の子同士の友情関係というものに萌えそうな気がするが、俺とのデートを目的に慰めに行ったユカには何とも思えなかった。一言だけ言うとすれば、計算高い奴だと言う所だ。

「来ないでください! 近寄ってこないでください! ビッチが感染ります!」

 ピキピキピキと堪忍袋の緒が切れる様な音がした。

その直後、ユカは他人事の様に言い始めた。

「もうぉ〜ムカつく! 朝からソラには振られるし、名前も知らない人からビッチと思われていたり。それにソラは彼女がいるみたいだし。それも校内トップの美少女だし。もうぉ〜本当にこの世界って残酷だわ!」

「び、ビッチが喋った……!」

「だ、だからぁ、ビッチじゃ無いって言ってるでしょうが!?」

 ユカは泣いている彼女のほっぺたを右手と左手で摘んだ。

「い、いったい。いたいですぅ〜。ごめんなさいですぅ〜。わっわっ、私が悪かったですぅ〜」

 子供みたいだった。
泣いている彼女がということでは無く、二人共ということだ。

「ほ、ほら、もうビッチとは言いませんって言いなさい」

 ユカの奴本性を表しやがった。
普段からユカは優しい人を装っていたが、流石に頭に来たのだろう。多分それは朝からの事も深く関係してそうだ。もし、土曜日のデートをさぼったら色々と厄介な事になりそうだ。

「も、もぅぅぅ〜」

 ユカが彼女のほっぺを更に強く摘んだ。

「い、いたいですぅ〜。もうゆるちてくだしゃい。おっ、ねがいしましゅ」

 摘まれているからあまりに口が動かないのだろう。可哀想だ。

「ほら、ユカ。もう許してやれよ。反省してるみたいだし」

「そ、ソラがそんなに言うなら……」

 ユカが手を離す。
すると彼女はイテテとほっぺたを擦り始めた。
そして俺の方へ近づいてきてこう言った。

「た、助けてくれてありがと。わ、わたしの名前は秋里あきざと美里みのり。これからよろしくね、秋月あきつき君」

 彼女は俺に微笑んだ。
その微笑みは何か邪悪な笑みに見えた気がしたけど俺の勘違いだよな。
いや、まさかな。
って、俺はまた何をフラグを立てているのだろうか。

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