イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

14

 今、俺とユカは学校の屋上へと連なる階段を上っていた。まぁ、その理由は昨日俺の愛するラノベ『ハーレムルート? そんなのありません! 貴方は私だけを見て!』が盗まれたからだ。そしてその盗人が俺の机にどこかの怪盗さんみたいに果たし状を送り付けたわけだ。
そのせいで俺とユカはその怪盗さんの指定した学校の屋上という場所に向かっている。
実際的な事を言うならば、屋上という場所を指定した時点でパラグライダーがあるわけじゃあるまいし、その盗人は捕まるのが関の山だろう。そんな考えを馳せているとすぐに屋上のドアに辿り着いた。

「よしっ、開けるぞ? いいか?」
 俺は隣にいるユカに確認をする。
ユカはじっと目を見つめ、頷いた。
その仕草を可愛いとか思いながら、ドアを開けてみるとそこには――1人の女子生徒がいた。

「よく、やってきたなぁ!?」
 どこのRPGの魔王だと一人思い、口元を緩める。

「なにっ、笑ってんだ!? このこの!?」

「いや、別に……」

「ねぇ、ソラ。あの子見たことあるわ。あの子確か……私達と同じ学年の人じゃない?」
 ユカが俺に小耳を挟む。
確かに見たことがあるようなないような気がする。近づいて相手の顔を見ないと認識はできない。認識さえできれば、保存しているはずだからすぐに誰か分かるだろう。
そう思い、俺は一歩進む。
すると彼女は一歩下がった。
俺がまた前に進む。
すると彼女はまた一歩下がった。
俺がまたまた前に進む。
すると彼女はまたまた一歩下がった。

「あ!? もう、これ以上前に来ないでください! 怖いです!」

「はぁ……? 怖い?」
 俺は呆気に取られる。
どこから俺は怖いという事になるのだろう。
一応学校ではモテてるはずなんだけど。

「だっ、だって、貴方!? ドSなんですよね? 私、知ってるんですよ! 昨日、昨日の夜!? 夏影さんを強引に引っ張っているのみたんです! 昨日、私みたんです!」

 こ、これは……何かの誤解をされてそうだ。

「そ、それも……路地裏に行くなんて何をしてたんですか!?」

「べ、別に何もやってなんかねぇーし!? 俺は健全な男子高校生だ! そんなお前が思っていることは断じてやってない!」

「しっ、信じられません! それにその隣にいるのって、小春結花さんですよね……? 確か、貴方と小春さんって幼馴染でしたよね?」

「そ、そうよ……」
 ユカが答える。
これでどうにか誤解が晴れるか。

「も、もしゃっ!?」
豪快に噛んでいた。
そして顔を赤く染めながら、彼女が言い直す。

「コホンコホン、もしや小春さんはもう調教されているのですか?」

「はぁ……?」
 意味が分からなかった。

「あ、あのね。私とソラは幼馴染なの。まぁ……これからはもっともっと深い深い関係になっていくわけなんだけど……」
 ユカの顔が赤い。
俺も少し照れる。

「なるほどなるほど。深い深い関係ですか。ご主人様とメイドさん。そんな関係ですか。悪くないですね。」
 彼女が腕を組み、うんうんと頭を動かしている。

「いや、なわけねぇーだろ!」
「ななななっ、わけないじゃない!?」
俺とユカはほぼ一緒のタイミングで同じ様な事を言っていた。流石、幼馴染連携プレイ。

「息もピッタリです。もう……結婚すればいいのに。そして爆発しろ……」
 おいおい、こいつ最後に酷いこと言ったぞ。

「あのな……誤解している様だから言っておくけど、俺は夏影と付き合ってんだよ。それでユカとは幼馴染ってわけ。分かってくれたか?」

「なるほどなるほど。分かりました。要するに恋人が居るのにも関わらず、愛人を作ってしまったクズ野郎が貴方というわけなのですね」
 こいつ俺を馬鹿にしているのか?
それとも素の天然なのだろうか?
いや、こいつはただの馬鹿だ。
どっちにしろ、こいつは痛い目に合わせるべきだな。

「ねぇ? 勿論、恋人というのは私よね?」
 ユカが話に入ってくる。

「いえ、違いますよ。夏影さんです!」
グッジョブとウインクまで彼女がしてくれた。
それだけ見せつけたかったのか?
でもウインクできていなかった。
両目共目を瞑っていた。
残念だ。

「うぅ〜もう……」
 ユカはまた泣き目になっていた。
今日は朝から泣かせてしまっていたので面目ない。それに悲しむ姿は見せたくないんだよな。

「おい……それよりも早く俺のラノベを返してもらおうか?」
 俺がそう言うと、彼女はあわあわと怯えた顔になっていく。なんでそんな風な顔をしているのだろう。

「あ、あの……すいません!」
 彼女が頭を下げる。

「えっ……?」

「じっ、実は夏影さんに売ったんです!」

「う、売っただと?」

「どういうこと?」

「実は夏影さんに貴方のラノベを盗んでいる所を見られてしまい……それで『あぁ、そうだわ。良いことを思いついた。これは貴方のよ。それでこれを私に売って。勿論、お金は出すわ』と言われてしまいました。もしも売ってくれないなら貴方の人生をぶっ壊すと言われてしまいました。も、もぅぉ〜〜〜怖かったですぅ〜〜」

 彼女は泣いていた。
うわぁ〜んと泣く赤子の様に泣いていた。
それほどまでに夏影という存在は圧倒的というわけだ。っていう事は昨日、彼女が読んでいたラノベは俺のものだったわけか。


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