イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

13

「おにぃに彼女? またまた、嘘ついちゃってナイナイ」
 咲は信じられない様子だ。
自分で話を振っておきながら、そんな態度を取るとは失礼な奴だ。

「なんだよ? 俺に彼女がいたらおかしいのか?」

「まぁ〜ね。だっておにぃはオタクじゃん。それもヲタヲタのヲタクさんじゃん! だから絶対、ナイナイ!」
 咲が俺を罵倒する。
梅雨桜先生も同じことを言っていたけど、オタクはモテナイという理論はどこからやってきたのだろう。普通にオタクみたいな奴でも付き合っている人は多いと思うんだが。

「はいはい。分かったよ。お子様にはまだ分からんよね。うん、じゃあ。もういいよ。俺はソロってことで」
 やれやれと思いながら言葉を口にする。
それを聞いていた咲はお子さま扱いされたことに苛立ち、顔を赤くしながらこちらを睨んでいた。でもその睨みの中に照れもあった。
正直、物凄く可愛かった。

「お子様!? なにっ、それ! まじおにぃは私を馬鹿にしすぎ! 子供じゃないもん!」
 いやいやどう考えても子供だろ。
胸とか胸とか胸とか。

「ソラ、また変な事考えてるよ!」
 ユカに怒られた。
俺の心を読めると言うのか!

「考えてねぇーよ」

「う、うん……それなら良いんだけど。あ、それともう私、この家に来ないね。夏影さんの邪魔になっちゃうし……それにソラの邪魔にも」

「邪魔なんかにならねぇーよ! ユカはユカだろ? 俺に彼女ができても、ユカは俺にとって特別な幼馴染である事には変わりはねぇーだろ?」

 俺は正直な気持ち告げていた。
そう、俺とユカは幼馴染なのだ。
ずっと昔からそうだったのだ。
だからその関係はこの先もずっと変わらない――はずだったんだけど。

「あのね、もう言うね。私もソラの事が好きなの! ソラの事をずっと前から好きなの! だから……だから幼馴染以上の関係になりたいの!」

 ユカが突然涙を流し始めた。
ポロポロと流れる涙はテーブルの上にポタポタと頬を伝って、落ちていく。
正直、だろうなと昔から思っていた。
気づいてたけど気付いてないフリをしていた。
だって俺達は幼馴染なのだから。
だからこそ、俺等には壁があった。
幼馴染だから恋人になってはいけない。
そんなモノを持っていた。
勝手に作り出していた。
それを作っていたのは周りでは無く、俺達2人だ。2人でお互いにある程度の距離を作ってしまっていたのだ。そんな馬鹿馬鹿しい壁を。
だけどそんな壁は簡単に壊れた。
「好き」という2文字によって。
意図も簡単に。

「俺はお前の事が……」
言葉が詰まった。
行き詰まっていた。
どんな答えを出しても正解は無い。
でも正解は無くても、彼女の笑顔は見たい。
なんて、俺は傲慢なんだ。
傲慢過ぎる程に傲慢だ。
夏影カノジョの役に立ちたいと思ってる。
ユカには幸せになってもらいたいと心の底から思ってる。昔からずっと努力を見てきたから。
だからこそ、そう思う。でもだからこそ、彼女のそんな所に惹かれていた。努力する彼女の姿に見惚れていた。彼女が幸せがもし俺と恋人同士の関係になるとしても素直に俺は納得する事ができない。それは自分が情けない人間だと分かっているから。俺はカメラアイだけの男だから。だから……あの時。俺は振られたんだ。
あの女に。あの忌々しい女に。

「好きだよ。今も。だけどそれ以上に夏影の事が気になるんだ」

「えっ? でも夏影さんとソラって昨日……知り合ったばかりなんでしょ?」

「あぁ、そうだよ」

「そっ、それなら!? 私、諦められないんだから!?」

「えっ?」

「私、絶対にソラを諦められないから! いや、諦めきれないから!? 私だけの片想いとか辛すぎるから。ずっと前から好きだったのに途中出場の女の子に取られるとかマジないから!? だから、私は諦めない! さっき家に来ないって言ったのは前言撤回。毎日来るから!? それでソラの心を掴むから! だから絶対に負けないんだから!?」

 と言うわけでユカが俺の家に毎日来ることになりました。あの……実際こんなことを俺に言うんじゃなくて、夏影に言うべきだと思うんだけど。

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