イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

5

「ん? これユカさんのものじゃない?」
 咲がピンクのカバーを付けたスマホを手に持ちながら言った。

「あ、それユカのだ。それなら明日朝から渡せばいいよな」

「ダメダメ! お兄ちゃん! それは地雷だよ! 女の子は色々と人間関係があるからスマホは必需品なんだよ! ツイッターとラインできなかったら、人生終わりなんだよ!」

 果たして本当かどうかは俺が女の子では無いから分からない。
だけど現役中学2年生の意見なのだから正しいのだろう。

「分かった分かったよ。今から届けてくれば良いのか?」

「イエス、あいどぅー! ユーシュッドセンド」

はい、そうです。
あなたは届けるべきだ。

意外と咲の奴英語ができるのか?
英語は確実に大学の受験科目になるから中学生の頃ぐらいから本気でやった方がいいからな。
案外咲がこのままなら有名大学も夢じゃない。
まぁ、こいつの場合は数学と物理が壊滅的に悪いがまだ今からなら遅くは無い。
だけど本人のモチベーションが今からだと持たないな。だから最悪でも英語だけはさせておこう。後悔しない為にも。

「じゃあ、行ってくる」

「はーい、おつかれー。帰りにコンビニでアイス買ってきてね。私は雪見だいふく。風華はジャイアントコーンかな。よろしくねぇ〜」

なるほど。
ユカにスマホを届けるのが目的じゃなくて、アイスを買いに行かせるのが目的だったわけか。
納得。

「はいはい、分かったよ」

✣✣✣
 走ったらすぐユカに追いついた。

「どうしたの? 息切らしっちゃって。
もしかして私に会いたくなったの?」
いたずらっぽくユカが笑う。

「いつも会いたいって思ってるよ。だけど今回はそうじゃなくて。はい、これ」
スマホを手渡す。

ユカは「え?」って顔をしていた。
忘れていたという自覚が無かったようだ。
顔を赤面にしている。
それほど忘れ物をしたのが恥ずかしかったのだろうか。

「あのさ……見た?」
 いつもは強気で明るい彼女の声が小さくて聞き取りづらい。

「ん? あの、もう一回言ってもらっていいか?」

「だから、見たか! って聞いてんの!」

何か怒っているけどどうでもいいか。

「見てないけど……どうしたんだ? 見られたくないものでもあるのか?」

「ええっ、べ、別にそういう訳でも無いんだけど」
 わざとらし過ぎる反応をする。
単純っていうか馬鹿っていうか分かりやすい。
だけど何を考えているのか分からないあのお嬢様よりはマシだ。まぁ、その何を考えいるのか分からない不思議な所が良い所だと思うんだよね。萌えポイントとして。

「ってかパスコードとかしてんだろ? それなら中身見られないだろ」

ん? この人何言ってるの? 意味が分からないみたいな表情でユカが俺を見ている。

「あのさ……パスコードって何?」

あぁ、しまった。
ユカは人一倍機械音痴だった。
忘れていた。

「ちょっと貸してみろ。俺がやってやるから」

「嫌だ! 嫌よ! 絶対に!」
ユカがスマホを強く握り締める。

「分かったよ。ってかパスコード知らないとかスマホを上手く活用できてないだろ?」

「うぅ……」
何も言い返せないユカ。

「俺が嫌ってなら風華の方が機械には詳しいからスマホについて教えて貰えよ。それにそっちのほうが風華の為にもなると思うし」

「別にそんな訳じゃ……まぁ、いいわ。風華ちゃんに教えてもらう。今週の日曜日とかどうかしら?」

今週の日曜日か。その日は風華とゲーセンに行く予定なんだけど。まぁ、いいか。
けどデートって事になってるしな。

「あぁ、わりぃー。その日はデートなんだ」

「で、デート?」
ユカの表情がガラリと変わり、睨みつける様な目になる。

「あ、でもデートと言っても」

「デートですか。それは良いですね。勿論私に何か奢ってくれるって事ですよね、秋月さん?」
 俺達の前に突如として学校に居たときと変わらず制服姿の夏影が現れた。
こんな時間帯に外を歩いているとは何をしていたのだろうか?

「あれ? 夏影さん? どうして……?」

「あ、言い忘れておりました。私、夏影三葉と申します。秋月さんのか……」

「ちょっとこっちに来い!」
 俺は夏影の腕を掴み、路地裏に連れ出した。

ユカには「悪い。ちょっと野暮用だ」と言って、先に帰ってもらう事にした。

明日の朝は色々と面倒くさい事になりそうだ。
それもユカの文句から始まりそうで怖い。

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