イケメン被りの青春オタク野郎と絶対利益主義お嬢様

片山樹

2

 夏影三葉に接触してしまった。
それは簡単に言うならばとてもとても素晴らしい事でとても光栄な事だと思うべきだ。
だって彼女は俗に言う有名人というカテゴリの中に分類できる程に俺達の高校である私立早慶高校の中で有名なのだから。
深窓の令嬢という言葉が彼女の為にあるんじゃないかって思う程に彼女は美しく、儚い。
閑話休題。とりあえずこれからの事を考えよう。俺のラノベが盗まれた。犯人は不明。
筆跡を確認した所、所々丸っこくなっているし女子だろうなっていうイメージがある。
それにしても果たし状っていうのは本当に凄いセンスだ。普通、ここは何も書かずに紙を入れておくべきだろうな。しかし果たし状と書くところを察すると曲がりくねった事が大嫌いな性格なのかもしれない。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
犯人が誰であれ、口止めだけはさせないとな。

「ただいまぁ〜」
サキが帰ってきたようだ。

「おかえりぃー」

「おっ!? おにぃーちゃん! 何か元気無い?」

「何でわかった?」

「ふふっ、私はお兄ちゃんの妹だからね!
付き合いが長ければ言わなくても分かるんだよ!」

そりゃ凄い。
なら、俺の解禁日とかも知ってるんすかね?

「まぁ、一理ある。俺も大体咲が困っている時は分かるからな」

「さすがっ! お兄ちゃんー! 私達、以心伝心だね! ってことで、お風呂の準備よろしく!」
そう言って、咲は洗面所の方へ向かっていった。

おいおい……兄貴に下着選びとかさせるのかよ。もしかして俺の妹はビッチなのかもしれない。何だ……このラノベのタイトル感は。
しかし仕方がない。
とりあえず妹の部屋に行き、下着をささっと選ぼう。後から咲に怒られるの怖いし、裸のままリビングをウロウロされても困るし。

「よいしょっと」
俺は重い身体をソファーから起き上がらせ、咲の部屋へと向かう。
咲の部屋は2階に上がったらすぐ右側にある部屋だ。そして左が引きこもりがちな我が妹の風華フウカの部屋である。風華は咲と同じ中学2年生だ。俗に言う双子って奴。
だけど一卵性じゃなくて二卵性双生児だから全く似ていない。咲はどちらかと言えば身体付きが良くて健康的なのだが、風華は生まれつき身体が弱くて学校に行くことができない。
その代わりと言っちゃ何だか、パソコンの技術はプロレベルで某有名動画サイトでmadを公開したり、絵を公開したりしている。
実際言って、風華はこれで金を稼いでいる。
俺よりも社会に貢献していると言っても過言では無い。
あれ? 左側のドアが開いている。
トイレか?
まぁ、そんな事はどうでもいい。
それよりもお風呂の準備だ。
っていうか、普通兄貴が準備しないよな。
そんな思いを馳せながら、咲の部屋を開ける。
すると、そこには人影があった。
その人影は咲のパンツと思われるものを伸ばしてみたり、匂いを嗅いだりとしていた。
パチンパチンとゴムの音がなる。
実際かなり怖い。

「おい……風華、何やってんだ? 咲の部屋で……」

珍しく風華の部屋が開いていたのでトイレにでも行っているのだろうと思っていた。
でも咲の部屋に居るなんて。
そして姉のパンツの匂いを嗅いでいるなんて。
どこの百合ラブコメかよ!

「お、おにぃー。少し手伝って欲しい。
男の裸を描きたいから」
 可愛い妹に頼まれたら仕方がない。
今日の風華の服装は緑のジャージに黒の眼鏡。

「全裸は無理だ。流石にな。だけど上半身だけなら芸術の為に脱ぐぞ、俺は」
一度は言ってはみたかった。
芸術の為に脱ぐって言う台詞を。


「う〜ん。上半身だけか……まぁ、いっか。どうにかなると思うし。それに下半身なら画像検索で調べればいいし。それにおにぃの見ても小さそうだし」

「ちょっと待った! 小さいとかデカイとかそういうのは関係ない! っていうか、下半身を画像検索するのはやめろ! 中学2年生はそんなことを調べたらだめだ!」

「それならおにぃが見せてくれる?」
 そんなに甘えた顔で俺を見ないでくれ。

「無理だ。っていうか、そんな仕事はダメだ! お兄ちゃんは却下だ! ラノベの挿絵にしなさい!」

「えっ……でも同人サークルで発表しようって決まってるし」

「それでもダメだ! 中学生にエロシーンは描かせない!」

「むぅーーなら、おにぃ! 今回は諦める。だからその代わりに今週末デートに行きたい!」

「デート? まぁ、予定無いしいいけど。それでどこに行くんだ?」

「決めてない。だけど楽しい所」

それならばゲームセンターと言った所か。

「いいだろう。お兄ちゃんが最強のデートコースを考えとくぜ。ってことでそこをどきな。風華」

「やだ! おにぃ、咲の部屋で何をする気?
ナニをする気?」

「咲に頼まれてんだよ。お風呂の準備を……」

「咲だけずるい! 私のお風呂の準備もして!」

「えっ? ちょっとそれは……」

「どうして?」

「だって風華の部屋ってごちゃごちゃしてんじゃん」

「だ、大丈夫! 片付けするから! だからお願い! おにぃ、私のも準備して!」

「はぁ……仕方ない。分かったよ。それで何時頃に風呂に入るんだ?」

「う〜んっとね。12時ぐらい?」

「まぁ〜それぐらいの時間なら勉強してる時間帯だ。だから起きてるはず」

「あ、お兄ちゃん。12時って昼のだよ?」

「お前は俺を学校に行かせないつもりか!」

「うん。お兄ちゃんもこっちの道に来てよ。それで楽しくニー……青春生活しようよ」
今、がっつりニートって言おうとしたよね。

「それは無理だ。俺は学校に行く理由ができたから」

明日は確実に行かなくてはならない。
だって明日は俺にとって勝負の日になるのだから。

「風華、とりあえず分かったよ。風呂の準備はしといてやる。といっても、今の内に風呂の準備をしとくだけど……それで良いよな?」

風華は少し考え、「うん!」と嬉しそうに返事をした後、自分の部屋に戻っていった。

俺は咲のパジャマを無難に選び、下着をポポイと適当に掴み、脱衣所に服を置く。

良いお兄ちゃんを俺を演じられてるかな?

俺はそんな疑問を胸に秘めながら、あの人が来ることを待ち望んでいた。

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