超越クラスの異世界談義が花を咲かせたようです! 〜愚かな国の異世界召喚術にて〜
天才画家と天才執事
学校登校日の四日前のこと。
「もうすぐ長かった一週間の個展も終わりますね、彩葉さん」
「そうですね……空翔さん……見に来てくれた方々は喜んでいただけたですか……?」
「ええ、それはもう。お客様方皆、絶賛している御様子でしたよ」
「ほんとです…?」
「もちろんです。嘘偽りなく本当のことです」
自分に自信なさげな少女と、彼女を肯定し続ける紳士的な青年。
彼女らが、今いるところは、南アフリカの美術館である。まるまる一つの美術館を個展として使っているのだ。
そんな個展の絵画を書いているのは、猫っ毛の金髪セミロングで、白のリボン付きカチューシャをつけた150前半と少し小柄な美少女、白楽彩葉である。
年に4回行う個展、それをここ南アフリカにて開催していた。そこには、国内外、数々の著名人が彼女の個展に足を運んでいた。いや、そんなゆったりした言い方では表せない。すっ飛んで駆けつけていた、の方が正しいだろう。
何故、そんな事が起きているかというと、それには確固とした理由がある。彼女の異名もその一つだろう。
彼女の異名は
『生命神の右手を持つ者』
な、なんかものすごい厨二病、感じるです……と彼女は、これを聞く度、遠い目をしているとか。
その名の通り、彼女の絵画は一目見るだけで、その絵画が生命を宿し、生きて動いているように見え、本当に生命体がその中にあるように、見る人全ての脳内に一つのストーリーが再生される。
それこそ、一枚の絵を見ているだけでいつの間にか一日が終わるくらいに。
一枚五百億円はくだらないという絵画なのだが、数多の大富豪が競売をするという凄まじい光景が度々起こる。
いわば、彼女の絵画を持っているか否かで社会の地位に影響するというのも過言ではないらしい。
そんな彼女を後ろで護衛しているのが、影縫空翔という青年である。
燕尾服を着た、いかにも執事といった格好をしているが、別に彼は彩葉の執事ではない。いや、彩葉だけの、と言った方が正しいだろうか……
空翔は護衛につくもの全ての執事と化すのだ。
空翔が護衛に付くだけで、ボディーガードいらず。どんな巨漢ですら、一瞬で地に貼り付ける技量を持っている。
容姿においても、身長は178と日本人の平均よりは上で、甘いマスクを持った深緑色の髪を持つイケメンである。
大手の令嬢の護衛依頼を受け持つこともあるといった異常っぷりだ。
なんでも、その令嬢に告白され、その親、つまり大手企業の社長クラスにも頭を下げお願いされるくらいだとか。
結果は、彼は、丁重にお断りをしたとだけ……
そんな彼の異名は
『絶対的守護者』
自分は、只の執事ですので……とその青年は言っているが、
そんな謙遜捨ててしまえ!!
と、誰もが思うだろう。いや、ホントに……
実は、この執事の仕事は表の顔で、裏で違うこともしているのだが、今は置いておくとしよう。
――
「今日も、不審な者は見かけませんでしたね。沢山の方々が彩葉さんの絵画に惹かれている様子で……私も嬉しく思います」
「不審な者って……空翔さんがいて来るわけがないです……そうですね、描いた自分としても……本当に嬉しい限りです……!」
感情に乏しい彼女ですら呆れさせるという空翔の自覚の無さっぷりは凄まじいものだ。
しかしすぐに表情を変え、控え目に、けれども花が咲いたような笑顔を見せた彩葉。
そんな彼女を微笑ましく思う空翔。
仲の良い雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。
「終わりました……!!」
彩葉は両腕を上げ、大きな伸びをした。
「お疲れ様でした、彩葉さん」
ずっと立ちっぱなしだった彩葉を労り、空翔は椅子を用意した。
「ありがとうです……空翔さん……」
「いえ、遠慮せずに。明日の午後の便に乗りますので、ゆっくりしてくださいね」
「やっとみんなと会えるですね……! 楽しみです!!」
彩葉はコクンと頷き、楽しみの部分は、はっきりと言った。
「ええ、楽しみです」
空翔も彩葉の気持ちに共感して頷いた。
そうして二人は、十人全員が揃う地へと続く空を見上げた。
見上げた空には、多くの星が輝いていた。
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