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魔法兵器にされたので女学園に入ります ~俺は最強の魔兵器少女~

八木山蒼

第17話 ミニッツとの決闘、仕掛けられた罠

 学園ホール、体育などに使われる場所。
 上の観覧席から多くの生徒が見守る中、俺と、オニキス寮生ミニッツ・ペーパーの決闘は始まった。

「まず見せてやろう……! 分身魔法ッ!」

 ミニッツは手を組み目を閉じる。するとその瞬間、なんとその姿が二重になったかと思うと、2人、彼女とそっくり同じ見た目の分身が現れ並んだ。見たことのない魔法に俺は驚いた。

「幻ではないぞ、実体を持つ我が分身だ。さあ、行くぞッ!」

 ミニッツの体が浮かび上がる。直後、彼女は足をこちらに向けて俺へと『落ちてきた』。彼女の重力を操る魔法だ。俺と彼女の距離がそのまま落下速となり強烈な威力の蹴りとなる。
 だが落下ゆえに攻撃は直線的だ、避けれないわけがない。

「来るなら来い、迎撃してやる!」

 俺はミニッツが直前まで来た瞬間に横に跳び、そして無防備になったミニッツへ一撃をくらわせようとした。
 だがその瞬間、彼女の体がぐいっと不自然に曲がり、蹴りが俺へ吸い付くようになる。ギリギリで重力魔法を曲げたのだ、理解すると同時に俺はその蹴りを受け止めた。強い音がしたが、魔科学兵器のパワーをもってすれば片手で止められる程度だ。

「悪いが腕力には自身があってな……!」
「だが、それだけでは勝てん」

 俺とミニッツ、視線が交錯する。だが直後、俺の体は横に『落ちた』。

「うわっ!?」
「壁まで3階相当! 踏まれて潰れろッ!」

 触れたせいで俺まで重力魔法を受けてしまったのだ、壁まで『落ち』ればさすがにダメージを受けるかもしれない。
 だがこれだけ近づけばどうとでもできる。

「『攻性魔法陣』展開! ファイアッ!」

 俺はミニッツに触れた手から魔法陣を展開し、火炎魔法を打ち放った。慌ててミニッツも重力を反転させて逃げていき、落下から解放された俺も着地した。
 俺たちはまた距離を持って対峙する。ひとまず小競り合いが終わった格好だが――ミニッツは息もつかせず仕掛けてくる。

「どこを見ている!」
「我らの存在を忘れたか!」

 いつの間にか2体の分身が俺のそばまで迫っていた。鏡写しの動きで、俺の両側から攻めてくる。
 だが重力魔法を使う気配はない、あくまでも分身であり偽物のようだ。俺はそれぞれに手を向けた。

「『魔力解放』ッ!」
「「ぐっ!?」」

 魔科学兵器に指示を出す。すると両手から魔力の衝撃波が放たれて分身たちを吹き飛ばした。

「やっぱり分身は分身だな、ちょっと驚いたが多少数が多くとも……」

 そう言って余裕こいていた時、俺はさっきミニッツに触れていた右腕の異変に気付いた。
 右腕にはでかでかと、丸をいくつか重ねたような奇妙なマークが刻印されていたのだ。魔力によるものらしく不気味に光っている。
 慌ててミニッツを見ると彼女は笑っていた。

「気付いたようだな。さあ、我らの本当の実力を見せてやる! 重力を受けろッ!」
「くっ……!」

 ミニッツは腕のマークについては語らず、俺に対して重力をぶつけてきた。強い力が俺を押し潰そうとする。

「こんなもの……!」

 俺がそれを振り払おうとした時。
 俺はふいに、体のある場所を掴まれた。

「なっ……!? ぐっ!?」

 俺がそれに動揺していると、目の前の景色がぐにゃりと歪み始める。水中から水面を見た時のようにすべてがぼやけ、うまく見えない。明らかに重力魔法とは違う魔法が俺を襲っていた。

「オニキス寮筆頭、ミニッツ・ペーパーの力! とくと味わえッ!」
「くそっ」

 ミニッツがまた落下してくる気配がする。俺はそちらに手を向け、また迎撃の構えをとった。
 だがその瞬間、また俺はある場所を掴まれた。掴まれる感触がした。

「はっ!?」

 慌ててそこを振り払ったがまったく感触がない。幻覚? 錯覚? 混乱している内にミニッツが接近してくる。

「くっ……ま、『マージブースター』ッ!」

 魔力により身体能力を瞬間的・爆発的に伸ばす魔法を使い、俺は跳躍した。重力魔法をも軽く振り切り天井にまで達すると、俺は天井に張られていた棒のひとつを掴み天井にぶら下がる。すると視界の崩壊も謎の感触も消えた。俺はひとまず呼吸を整える。

「なんだあれは。ミニッツの奴、あんなに魔法を……いや」

 待てよ。俺は下を見て考えた。ミニッツとその分身、そして観覧席の大勢の生徒がこちらを見上げている。

「……そうか、やっぱり!」

 俺はひとつの予感に確信を抱き、天井を掴んでいた手を離し、下へ降りた。
 魔科学兵器の体は特に魔法を使わずとも難なく着地できる。ずどんという音と共に少し床が凹んだ気がしたがこの際気にしない。

「ミニッツ……お前の魔法の謎、わかった気がするぞ」
「ほう?」

 俺とミニッツはにらみ合う。互いに笑みを浮かべ、どちらかが虚勢。無論それはミニッツの方だ。

「この試験に乱入した理由、微妙に役に立ってない分身、そしてもうひとつ……」

 だがそうして俺が少しかっこつけて語っていると。 

「ひゃうっ!?」

 またあの『感覚』がして、俺は変な声と共に身をよじらせてしまった。そして再び視界が歪み始める。その間、ミニッツの分身が俺の隙を伺うようにして周囲を駆け回っていた。
 俺は魔科学兵器の能力をひとつ、解放した。魔兵器が勝手に俺の喉と声を動かし、俺の知らないことを始める。

「マージレーダレベル4……『魔流解析』、作動ッ!」

 魔科学兵器の機能のひとつ魔力の探知。その進化形だ。俺には周囲の景色がまったく違って見え、目には見えないものまで見えてくる。魔力の流れにより『3つ』、たしかに見つけた。

「何を企んでいるか知らんが、このまま押し潰すッ! 『相重力』!」

 ミニッツが叫ぶと彼女と俺それぞれに逆方向の重力魔法が発生した。互いを互いに落下させ、その瞬間に潰そうというのだ。だがそれすらも俺には見える。

「はあああ……ッ!」

 俺は全身を魔力で包み込んだ。すると俺にかけられていた魔法が吹き飛ばされ、視界も復活しあの感触も消える。重力魔法も強引に弾き飛ばした。俺へと落ちてこようとしていたミニッツが「ヤバい」と気付き焦りを見せるがもう遅い。

「吹き飛べええええっ!」

 全身の魔力を爆発させ、俺は衝撃波を巻き起こした。「きゃあっ」と観客席からも声が上がる。さすがにホール自体や観客に影響が出ない程度だが俺と同じ平面に立っている人間『すべて』を吹き飛ばすくらいの威力はある爆発だ。ミニッツの分身はそれで消し飛んでしまった。
 だがその時、ミニッツの前面を始めとして、ホール内のいくつかの場所に魔法の壁が発生し、衝撃波を防御した。それでもう確定だ。

「ふん、おかしいと思ったら道理でな……! ミニッツ、大きな口を叩いたわりにはせこい手を使うじゃあないか」
「なに?」

 衝撃波を警戒して足を止めたミニッツに対し俺は言い放つ。そして観客にも聞こえるように種明かしをした。

「俺と戦っているのはお前1人じゃない! 透明化の魔法を使ってこの場に3人……そして観客席に紛れて、2人。俺に対し魔法で攻撃しているんだ」
「なっ……」

 俺の言葉にミニッツは明らかに動揺した。こんなに早く見破られると思っていなかったのだろう。

「分身は透明化して暗躍する者たちの気配を隠すためのものだったんだろう、実体はあるが能力はなかったからな。試験にわざわざ乱入したのも観客席に紛れて違和感なく攻撃をするため。ミニッツが派手なパフォーマンスで登場したのも注意を自分に集中させ、協力者の存在を隠すためだったってわけだ」
「くっ……」

 ミニッツは悔し気に俺を睨みつける。どうやら完全に図星らしい。どうもこのミニッツ、口調と態度で強く振る舞ってはいるようだが、一度揺さぶられると弱いタイプのようだった。

「な、なぜわかった! 作戦は完璧だった、見破られるわけがなかったのに……!」
「まあそうだが、明らかにひとつ、他者の関与を伺わせることがあったからな……」
「なに?」
「一度ならず何度も、執拗に俺のある部位だけを狙ってきた奴。そして今話してるってのに透明化して俺の後ろから狙って来てるぶれない奴!」

 俺はすぐに振り返り、そこに透明化していた奴の両手を掴んだ。完全に俺の……胸に照準を合わせていた。

「お前だよ、ビルカ!」

 俺が名前を呼ぶと観念したのか、そのセクハラ魔人は透明化を解いて姿を現し、ばつが悪そうに笑っていた。
 そう、透明化したこいつが分身の気配に紛れて何度も俺の後ろに回り込み、胸を鷲づかみにしていたのだ。つくづくぶれない奴である。

「いやあやっぱ特待生のお胸は魅力的で……シークレット・コンタクト、どうだった?」
「お前、なんでオニキス寮の奴に協力なんてしてんだ。まさかお前……」
「ちがうちがう、あたしはオニキス寮生じゃなくてあくまで協力してるだけ! あたし、透明化と高速移動なら学園一の腕前だからね。コンタクト10回で引き受けちゃった。特待生とコンタクトできる機会だったし!」

 相手の善悪に関係なく己の欲望にのみしたがって動くビルカはある意味清々しく、俺は怒る気にもなれなかった。
 だがビルカはビルカで考えもあったらしい。

「でもさ、私がコンタクトしたおかげで協力者の存在に思い当たったんでしょ? 私の絶妙な指使いで思い出せたんでしょ」
「ん、それはまあ……あの独特な気持ちよさはお前しか……って何言わせんだ!」
「なら結果オーライじゃん! 私も絶対そうなるって思ってたんだー、オニキス寮も迂闊だよね。特待生に対してもそうだけど、私のコンタクトテクを見くびったんだもの!」

 そうして話が逸れた瞬間、ビルカは俺の手を脱出した。そしてあっという間に軽快な動きで飛び上がり、上の観客席の柵にぶら下がる。

「ミニッツ、私の仕事はもう十分でしょ。怪我したくないからこれで失礼! また頼みがあったらおっぱいで引き受けるよ~」
「う、うるさいこの役立たずがッ!」

 どうやらミニッツもビルカの被害に遭ったらしい。そこらへんは少し同情する。
 だがその時、柵にぶら下がっていたビルカの手を誰かが掴んだ。

「……こんな大事なことに、胸のためだけに加担するとは……」

 激怒するキャロルだった。それに気付いたビルカは、は、は、とかわいた笑いを見せる。
 キャロルはそのままビルカを持ち上げて腕で抑えると「こきっ」と首を一捻り。ビルカはぐえっとカエルのような声を出して動かなくなり、キャロルはビルカを抱えて去っていった。

「……ちょ、ちょっと調子が狂ったが、どうだミニッツ。もうお前らのタネは割れてるんだ、まだ続けるのか?」

 俺は改めてミニッツと向き合う。するといつの間にか透明化していた残る2人も彼女のそばで正体を現していた。
 それは案の定というべきか、俺に因縁のある2人組。オニキス寮のメアとミアの姉妹だった。

「ニャーッ! バレようがバレまいが関係ないのニャ!」
「そうだにゃ~。また、私の光魔法でぐるぐるにしてやるにゃ~」
「もとよりオニキスは闇の者、フェアなど幻想! ここにいる2人はともかく観客に交じった2人はどうすることもできまい!」

 3人は容赦なく戦闘態勢を作る。さらにその時、俺の右腕に刻まれた魔法のマークの光が強くなった。それを見てミニッツは笑う。

「来たな……その魔法は観客席にいる我が同胞、ソルナ・ブライトが操る『爆発の呪印』! 人から人へ接触で移動させられる魔力の印は、術者の意志により爆発を起こす!」
「そしてその爆発は、術の発現から時間が経てば経つほど強くなるのニャ~!」
「もはや最大にチャージされている。解除方法は術者への接触だが……今客席に飛び込んだら、大勢の生徒が爆発の巻き添えなのにゃ~」

 勝ち誇って笑うオニキスの3人組。さらに3人の四方を魔法の壁が覆った。

「そしてこの壁は同じく観客席に紛れた同胞プロミス・ブルーバードの魔力壁だ!」
「これで私たちは爆発の被害を受けないのニャ~」
「どの道もう、お前に勝ちはない、にゃ」

 そういっている間にも俺の腕のマークの光は強くなり、今にも爆発せんばかりだった。観客席に混ざった敵を探して攻撃している暇などない。
 だがそれでいいのだ。

「『マージブースター』ッ!」

 俺は魔力で脚力を強化した。そして天井に飛び上がった時以上の力で床を蹴り、今度は真横に跳ぶ。常人には目で追えもしない速度だっただろう。
 俺はそのまま壁に覆われた3人に迫り――

「シュートッ!」

 強化を腕力に移し、魔力壁を強引に殴り壊した。

「は?」
「へ?」
「な……」

 砕ける魔力壁の破片を見ながら、ミニッツたちは呆けた声を出す。その前に俺は着地した。

「さて……ここで爆発したら、壁で逃げ場のないお前らも巻き添えだな」
「ソ、ソルナ、爆発させるな! いやプロミス! 壁の解除を……」

 俺がこれ見よがしに腕のマークを見せつけると、まさか壁内に侵入されるとは思っていなかったミニッツたちはあからさまに動揺した。

「遅いッ!」
「がっ」
「ニ゛ャ゛ッ゛」
「ぐああっ!?」

 その動揺の隙をつき、壁で囲まれた3人を俺はラリアットでまとめて吹っ飛ばした。3人は壁に叩きつけられ、そのまま意識を失った。

「そこまでです!」

 そしてその瞬間、ステージ上で観戦していた学園長が叫んだ。

「勝負はついたようですね、ヴィーンさんの勝利です。お互い少しやりすぎな気もしますが……今回は不問にいたしましょう。特待生維持試験、イレギュラーな形となりましたが、合格です!」

 学園長が言うと観客席が一気に沸き立った。歓声と拍手がホールに響き、それが試験終了を知らせてくれるようだった。俺もふうっと息をつく、今回はさすがに気を張って少し疲れていた。胸も揉まれたし。

「……ん?」

 とその時、観客席から2人の生徒が飛び出し、ホールへと降り立った。黒い髪のスレンダーな生徒と青髪のグラマラスな生徒は共に俺に対し鋭い視線を送っている。ミニッツらの協力者、ソルナとプロミスだ。
 2人は俺を睨みはしたが何も言わず、倒れたミニッツ・メア・ミアを抱えると、そのままホールの外へと逃げていった。俺の腕のマークもいつの間にか消えていた。

「オニキス寮の連中も、これで少しは懲りてくれればいいんだがな……」
「ええ、そうですね」

 気が付けばいつの間にか学園長が俺のそばまで歩み寄っていた。そしてこっそりと俺に耳打ちする。

「今回は私の監督不行き届きであなたに迷惑をかけてしまいました。彼女らには改めて話をつけておきます」
「ああ……完全に脅迫でしたよ。俺はオニキス寮には入らない、彼女らにもそう伝えておいてください」
「はい。すみませんでした」

 すっと学園長は離れ、改めて観客の生徒たちにも試験の終了を告げる。俺もまた、観客席のセイナたちに手を振って応えた。
 ともあれ、紆余曲折あった特待生維持試験だが、なんとか無事に終わることができたのだった。



 編入生がやって来たのは、その翌日のことだった。

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