Creation World Online

かずみ

97話

 垂直に跳ぶ、するとその真下擦れ擦れを巨大な鉈が薙いだ。もし、跳ばずにいたら俺は真っ二つになっていただろう。
 攻撃を放った主、目の前で次の行動を起こそうとギッチリと牙の生えた凶悪な口を開く二足歩行の巨大ワニを睨む。
 すると、開かれたワニの口に紫のエネルギーが溜まっていくのがわかった。おそらくブレスだろう。
 しかし、ブレスを放つ直前に横から飛んで来た無数の黒色の針によってワニの口は逸らされ、ブレスは虚しく天井にぶつかることとなった。

「助かった」
「しっかりしてくれよ?」

 ひらりと地面に着地し、隣で禍々しい槍を構える男、キョウジに対して礼を言うとおちゃらけたようにそう返される。
 ブレスを邪魔され、怒り狂ったのかワニは鉈をやたらめったらに振り回す。そして、鉈に噛み付き一気に引き抜いた。
 引き抜かれた鉈は、バチバチと紫の電気を走らせており、これから大技が放たれるのは明らかだ。

「大技みたいだな」
「そうだな。まあ、任せろ【黒葉針】」

 そう言ってキョウジが槍を振ると、黒の針がその軌道上に展開される。

「逝ってこい!」

 キョウジの合図と共に黒の針がワニ目掛けて飛んでいき、突き刺さると針が爆発、そこから黒い小さな手がワラワラと生えワニの身体を締め付けていく。

「ッ!【世界介入】」

 だが、そんなもの関係ないとばかりにワニはその太い足に力を込め、8m程上空に跳び上がり、そのまま地面に鉈を叩きつけた。
 爆音、閃光、衝撃、【世界介入】で産み出したオリハルコン製の壁が衝撃で轟音を立てる。
 数秒の後、振動が止むと同時にオリハルコンの壁はバラバラに砕け、空気に溶けた。
 その先に広がっていたのは、ボロボロに焼けたダンジョンの壁や床、そしてその中心に無傷で立つワニの姿だった。

「これは…本気出していかないとな」
「そうみたいだな。【レイズ・オブ・マジシャン】【ダークエンチャント】【ソウルプロテクト】【フィジカルアーマー】【オーバーワイズ】」

 キョウジが魔法を唱えるごとに、その身体が様々なエフェクトで光り輝き、防御力の向上や魔法攻撃力上昇などのバフがかかっていく。
 俺もいくつかのステータス向上系の魔法を発動させると、アイテムボックスからトランプサイズのオリハルコン製の薄い金属板の束と真っ赤な血の色をした拳大の宝珠を取り出す。
 これらは俺の作品『SSシュウシリーズNo.4:賢王の十指』と『SSNo.5:不全なる賢者の石』という魔道具で、金属板の束は全10枚のカードの中に複雑に組み込まれた大魔法が刻まれており、発動に必要な魔力さえあれば、誰にでも取り扱い可能な超強力な魔道具なのだ。しかし、一度魔法を放つと一定時間その魔法は使用できないため、必ず当てなければならないのだ。
 そして、宝珠は相手に与えたダメージの6%を自身のMPとして吸収、余剰分を基礎ステータスに加算するというチート級の魔道具である。ただし、1日に稼動できる時間が1時間程度しかないため、短期決戦でとどめを刺さなければならないと、2つとも中々にクセの強い魔道具である。

「さあ、始めようか『始動:【災厄の雨ディザスター】』!」

 魔道具に刻まれた魔法を発動すると、自身の身体からゴッソリと魔力が抜けていくのを感じた。
 天井に巨大な水色の魔法陣が広がったかと思うと、次々と小型の緑や赤や橙といった様々な色の魔法陣が展開され─一気に発動する。
 炎の槍や風の刃、雷の矢に土のハンマー、それらを縫い止めるように鋭利に尖った氷が降り注ぎワニに炸裂する。
 鱗を切り裂き、身を焼き、骨を砕く。最後に巨大な水色の魔法陣から極太の氷柱がワニを叩き潰す。
 鼓膜を破りそうなほど大きな音が鳴り、舞い上げられた砂塵によって視界が塞がれる。

『グォオオオオン!』
「チッ、ダメか!」

 氷塊に潰されてもなお、ワニは健在だった。
 自身を押し潰した氷を真っ二つに叩き割り、鉈を居合の構えのようにしたまま俺目掛けて突進を仕掛けてくる。

「甘いぜ!」

 俺とワニの間に躍り出たキョウジが、槍を振るわれた鉈にぶつけると人間の絶叫のような音が鳴り、ワニが一瞬怯む。
 その隙にワニの懐に潜り込んだキョウジは、槍スキル【ロケットランス】を使い、ワニの巨体を上へ吹き飛ばしたかと思うと転移魔法によって吹き飛ばされる先へ移動、石突きの部分でワニの背中を思い切り殴り、再度転移、落下地点に転移したキョウジは槍スキル【千閃雨せんせんう】を発動。
 一突きで無数に分裂した穂先が、ワニの柔らかい腹部を刺し貫いていく。
 トドメとばかりに発動待機させておいた槍スキル【ブリューナク】を発動すると、ワニの身体の内部から閃光が溢れ出し、爆発。そのままワニは光の粒子へと変わった。

「お疲れさん」
「おう!いや〜、にしてもこのダンジョンの難易度高いな」
「だが、これがダンジョンボスなんだろ?だったら後は最後の部屋を調べて終わりだろ」
「ま、そうなんだけどな!」

 キョウジとそう話していると、ガコンと音が鳴り、地下へ向かう階段が出現する。

「よし、行くか!」
「ああ、そうだな」

 キョウジを先頭に暗い階段を降りて行くと、湧き水によって出来上がった淡く光る泉が姿を現した。

「ここが最下層…何もないな」
「っかしーな?これで何もないはずがないんだけどな…」

 キョウジと頭を悩ませていると、突然泉の中から美しい女性が浮かび上がってくる。
 女性はニコリと笑うとこう言った。

『私の眷属を滅ぼすとは…お前達は罪を犯した。その罰としてお前達からは時間を頂こう…』

 女性がそう言った瞬間、目を開けていられないほどの光に周囲が包まれた。

「シュウ!見えるか!?」
「ああ、なんとか…?なんだこれ」

 心なしか先程見ていた景色と何か違う、何というか全て高く大きく見えるのだ。キョウジを見て俺は驚愕する。キョウジも同じ顔をしており、まさかと思い自身の手を見る。
 小さな手、頬を触ればぷにぷにとしており、腕には筋肉など内容だった。
 エアディスプレイを開くと、システムメッセージが2件。1件は『チェーンクエスト発生』というもの、もう1つは『アバターが変更されています(解除不可)』というものだった。
 そして開かれる第三者視点での俺。
 その姿は正しく─

 ─幼児だった。

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