Creation World Online

かずみ

87話

 第3界層『吸血鬼の古城』
 かつて、第3界層の主であるヴァンパイアが住処としていたダンジョンで、現在もレッサーヴァンパイアが湧いているため、住み着くやつはいない。
 だからこそ、格好の隠れ家だったってわけか。
 【感知】スキルを発動するが、残念なことに敵の存在は察知できなかった。
 そういえばおっさん達は何でここがやつらの拠点だってわかったんだ?やっぱり管理者権限的なものなのだろうか。
 そう考えて、【世界介入】を発動する。

「ビンゴ」

 思った通りだったな。
 クックックとほくそ笑む俺の目には、古城が透けて中にいるプレイヤーの姿が見えていた。
 1、2、3…全部で7人か。見たところ襲撃してきたやつらは居ないみたいだな。
 で、リーダーらしきやつが…居た。
 俺は椅子か何かに座っているように踏ん反り返っている1人の男性プレイヤーの姿を見つける。

「今回のミッションは潜入、及びリーダーらしきやつの確保か…あまり俺向きじゃないな」

 正面から殲滅とかなら以外といける気がするんだが、もし逃げられでもしたらかなり面倒だし、何より応援に駆けつけられると少し分が悪いからな。
 エアディスプレイを操作して、装備を変更していく。
 ちなみに俺の装備はこんな感じな。
 『ハイドコート:認識阻害Lv8
  高級消音靴:足音減少Lv.5
  盗賊王の眼晶:遠見Lv.3』
 なんというか…厨二心をくすぐるよな。この格好。

「さて、と…。行くか」

 スッとフードを被ると、俺の身体が半透明になる。
 崩壊した城門を潜ると、広大な敷地が広がっていた。
 敷地内には無数のレッサーヴァンパイアが動き回っており、もし装備なしで進んでいたなら、戦闘音で中のやつらに見つかっていただろう。
 俺はその横を気付かれることなく進んで行く。
 ははっ、なんだ。以外と余裕じゃないか。
 その時、パンと乾いた音が鳴り俺の【感知】に何かが引っかかる。
 咄嗟に身体を反らすと、俺の鼻頭ギリギリを銃弾が掠め、背後にいたレッサーヴァンパイアを絶命させる。
 銃弾が飛んできた方向を『盗賊王の眼晶』をコンタクトレンズのように嵌めた右眼で見る。
 倍率を上げて行くと、古城の二階にあるバルコニーから黒塗りのスナイパーライフルらしきものを構えている糸目の長い黒髪をポニーテールに結んだ黒スーツの男性プレイヤーが見えた。
 男性は立て続けに弾を撃ち、数匹のレッサーヴァンパイアを仕留めると満足そうに頷きながら部屋に戻って行った。

  ☆

「ふむ、今日も調子が良いね」

 自身の武器であるスナイパーライフルを満足気に撫でながら、糸目の男が室内に入ると、そこには不機嫌そうな顔をした黒スーツの男が立っていた。

「やあ、クロッドさん。どうかされましたか?」
「どうかされたじゃねえだろうがアホ。何やってんだ、万が一にも他の奴にこの拠点がバレたらどうするんだ」

 説教をするクロッドの言葉をあははと笑いながら適当に流していると、近くの部屋の扉が開き、そこからこの古城拠点の責任者であるテロウスが顔を出す。

「うるさいな。何時だと思ってるんだ」
「はっ!失礼しました。イドリスのやつがバカな行動をしていたもので…」
「わかったわかった。取り敢えず騒ぐなら別の部屋に行きなさい」

 テロウスはしっしと犬を追い払うように手を振ると部屋の中に引っ込む。
 廊下に残されたクロッドの肩にイドリスがポンと手を乗せる。

「クロッドさん怒られてるぅ」
「全部オメェのせいだろうがよ!」
「だからうるさいって言ってんじゃん!?」

 ゲラゲラと笑うイドリス、そんなイドリスに殴りかかるクロッド、そして2人に向かって怒鳴るテロウス。
 結局テロウスに怒られた2人は見張りを命じられ、その場所から追い出されたのであった。

  ☆

「ふぅ…なんとか着いたな」

 俺は古城の中に繋がる扉の前に立ってそう呟く。
 さてさて、敵の状況は?
 【世界介入】で古城を半透明化させ、中に見張りがいるかどうかを確かめる。
 一応扉が見える位置には敵の姿は見えないな。
 小さく扉を開くと、隙間から素早く滑り込む。
 取り敢えず探索してみるか、敵の拠点なんだ何かしらの情報があるかもしれん。
 1番近い部屋の中に入る。
 部屋の正体はどうやら元厨房だったようで、散らかった作業台の上に腐った何かや錆びついた包丁が置いてあり、床には割れた皿やくすんだ色の食器などが散乱していた。
 足元の皿を踏みながら室内を探索するが、目ぼしいものは何もなさそうだった。
 他の部屋を探索しようと踵を返した瞬間、扉が大きな音を立てて開く。

「っかしーなー。確かこの部屋から聞こえてきたはずなんだけどなー」

 扉を開いたのは【Slaughter Works】に所属しているのであろう男性プレイヤーだった。
 まさか見つかったのか?

「おい!誰か居るんだろ!わかってんだよ!」

 見つかってるわけではないみたいだな。
 青年はしばらく何かを言っていたが俺が無言でいると、痺れを切らしたのか懐を弄り赤い宝石を取り出すと地面に叩きつける。
 地面に叩きつけられた宝石はバラバラに砕けると、砕けた結晶が瞬時に炎へと変化して部屋中に飛び散り燃え移る。

「もしこれで誰もいなかったらクロッドさんにめちゃくちゃ怒られるだろうな…」

 こんな狭い部屋で範囲攻撃アイテム使いやがって!しかも自分は部屋の外とか効果的だなチクショウ!
 心の中で毒づいていた俺目掛けて飛んできた結晶の1つを咄嗟に風魔法で弾き飛ばす。

「そこかっ!」
「危なっ!」

 渾身の叫びと共に放たれたナイフの軌道を、風を纏った腕で反らしそのまま青年との距離を一気に詰めると、そのままの勢いで拳を振り抜く。
 拳をノーガードでくらった青年は吹き飛んで廊下で何度かバウンドすると、背中を擦りながら静止する。

「ぐ….!テメェ…どこの所属だ!」
「答える義理は無いな」

 喚く青年に対してそう返すと、悔しそうな表情を浮かべる。
 とは言えどうしたものかな…。何も考えずにブッ飛ばしたけど、こいつ情報とか持ってなさそうだしな。明らかな下っ端臭してたし。

「あ、そういやお前1つ聞きたいことあるんだけどさ」
「はぁ?教えるわけ無いだろ。聞くだけ無駄だっての」
「そうか、お前もスライムの刑に処してやろう」

 アイテムボックスから大量の召喚石を取り出して、青年を【世界介入】で作り出した囲いで囲むと音漏れしないように風スキル【遮音】を発動。

「それじゃ、レッツゴー」

 その数秒後、青年の悲痛な叫びが放たれたが俺以外のこの古城の中にいる人間にその声が届くことはなかった。

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