Creation World Online

かずみ

第72話

 エーテル武具店を後にした俺達は、第1界層の東にある『シオンの森』にやって来ていた。


「それじゃ、先ずはお前達のレベルと職業を教えてもらおうか」
「私はメインが剣士で、サブが騎士です。レベルは6です」
「僕はメインが星魔術士、サブが治癒士で、レベルは7です」


 星魔術士?聞いたことがないな、固有職業だろうか。
 すると、そんな視線に気がついたのかリックはボソボソとこう言った。


「えっと、星魔術士は固有職業です…はい」
「なるほどな、じゃあリーンはどれにしたんだ?」


 そんな俺の問いかけに対して、リーンは首をかしげる。
 ん?じゃねえよ。


「はぁ…固有技能、固有職業、固有装備。3つあっただろ、どれにしたんだよ?」
「ああ、アレですか!えっと…固有技能にしました!『ソード・チェイン』って名前です」


 ついでに効果も教えてもらった。
 スキル『ソード・チェイン』スキルレベル×2の連撃を叩き込むスキルだ。
 それだけだが、レベルが上がればその分だけ手数が増え、チェインボーナスによる大ダメージが狙えるという正統派スキルって感じだな。なんだかんだ言って、最前線のプレイヤーの固有スキルって一癖も二癖もあるようなやつばっかだからな。正統派なのは【聖騎士長】とかそのあたりくらいか?
 とりあえず前衛のアタッカー兼タンクにリーン、後衛の援護や遠距離攻撃にリックってとこか、運が良かったんだろうな。ま、例えバランスが悪くても9界層に行けば転職もできるからな。
 すると突然、近くの茂みから一体の薄青く輝く長剣を持った長身のゴブリン_ゴブリン・ソードマンが現れる。


「おっ、早速お出ましだな。それじゃ、やってみろ」
「は、はい!いっくぞー!『ステップ』」


 体術系スキルのステップを使って、リーンはゴブリン・ソードマンとの距離を詰めると剣で思い切り斬りつける。
 しかし、ゴブリン・ソードマンそれを軽々と弾くとリーンの胴体を薙ぐ。
 ガキンと、硬質な音がするとリーンの身体はゴムボールのように吹き飛ばされる。
 だが、ライフ自体はそこまで削られてはいない、なぜかと言うと俺の隣で大きく息を吐き出しているリックが防御力強化の魔法である『プロテクト』をギリギリのところで掛けたおかげである。


「くぅ〜!悔しい!」
「慌てすぎだ、相手の動きをよく見ろ。リックは中々良かったぞ」
「あ、ありがとうございます…」
「むー…私も負けませんし!」


 そんな俺達に構うことなくゴブリン・ソードマンはこちらに駆けてくる。


「さ、リーン。行ってこい」
「はい!てやぁあああ!『バッシュ』」


 盾術スキルの『バッシュ』で剣を弾かれたゴブリン・ソードマンは、体制を大きく崩す。


「はぁああああ!『ソード・チェイン』」
「行きます!『アース・ショット』」


 ガラ空きになったゴブリン・ソードマンの胴体に2連の斬撃と土の塊がぶつかると、ゴブリン・ソードマンのライフはゼロになり、光の粒子となって消え去る。


「や、やったー!勝ったー!ね、リック!」
「うん!勝てた!」
「どうでした、師匠?」
「ああ、良かったと思うぞ。ただし、師匠はやめろ」


 俺がそう言っても、リーンは「うへへ」とだらしなく笑っているだけだった。よっぽど嬉しかったんだろうな。


「リザルト画面は確認したか?」
「あっ、まだでした」


 そう言ってリーンとリックがエアディスプレイを操作すると、リーンの手元に先程のゴブリン・ソードマンの持っていた武器が出現した。


「えっ、何?」
「おっ、ドロップアイテムみたいだな。ラッキーだなレアドロップだぞ」


 鑑定を使用すると『ブルームーンソード』と言ってランクはA、1界層のドロップアイテムの中でも激レアに数えられる装備だった。
 するとリーンは、少し考えこむような動きをした後、ブルームーンソードを俺に差し出してくる。


「これは師匠のおかげで手に入ったものです。師匠が受け取るべきです」


 真っ直ぐな眼差しでこちらを見つめて来るリーン。
 そんなリーンの肩をポンと叩くと俺はこう言った。


「いいか、リーンそれを手に入れたのは俺のおかげじゃない。お前の、お前達自身の力だ。それは誇りだ、そんな誇りを易々と他人に渡すな」
「でも…」
「いいか?この先お前達はこの世界で生きて行かなきゃいけない、そのためには力が必要だ。そいつは心強い相棒になってくれると思うぞ」


 俺の言葉に渋々ながらも納得したのか、リーンはブルームーンソードを自身のアイテムボックスに仕舞う。


「それじゃあな。俺はそろそろ行くよ」


 そう言って俺は2人を置いて歩いて行く。


「あのっ!」
「ん?」
「ありがとうございました!」


 そう言って深々と頭を下げるリーンとリックに俺は軽く手を振って返すと、街を目指して歩くのだった。          

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