Creation World Online

かずみ

第60話




 ☆


 玄関でペド扱いを受けた後、少女をベッドに運んで様子を見ることにした。
 白髪の少女は初期の装備で、見るからに初心者だと思うのだが、いくつか引っかかる点がある。
 ここは3界層、更に街からはかなり離れたところに位置している。
 初心者がレベル上げをするのには向いていないだろう。
 そして、何より気になるのはその手に持っている2振りの短剣だ。


「コレは初心者が持つにしては上等すぎないか?」
「ああ、確かにそうだよな」


 キョウジが指差したその短剣は、最近噂の6界層のフィールドボスのレアドロップである。
 片方は、黒の刀身に赤い筋が血管のように馳しる剣。
 もう片方は、黒の刀身に緑の筋がヒビの様に馳しる湾曲した剣。
 それぞれ名を【吸剣・赤蓮せきれん】【疾剣・緑皇りょくこう】と言った。
 この2つはセット装備であり、それぞれを使ってもそれなりに強いドロップ武器程度の扱いだが、2つ合わさると特殊な効果が発動する。
 それは【HP吸収】と【速度上昇】である。
 このゲームで回復する手段は、魔法、スキル、アイテムのいずれかでしか行えないため、戦闘中に回復をするというのはかなり危険なのだ。
 その為に、プレイヤー達はパーティーを組んで回復職や盾職などを用意し、安全マージンを取りながら狩りをするのだが、この装備があればソロでもある程度は戦えるのだ。
 なんせ、攻撃を加えればHPが自動で回復するのだから。
 追加で速度上昇もつく為、上手く立ち回れば一撃も食らうことなくHPを回復できるのだ。
 その為、この武器は個々でも数千万、2つ揃えば数億の値段で取引されるのだ。
 だから、初心者であるこの少女がこの武器を持っているのは、不自然なんだよな。
 まあ、男を誑かして貢がせたっていうなら納得できるんだけどな。


「うぅ…んぇ?」
「おっ、起きたな」


 薄っすらと少女は目を開くと、もう一度瞼を閉じて…


「〜〜〜〜!?」
いったあっ!」


 勢いよく起き上がって、覗き込んでいたアンリの鼻頭に頭突きをキメた。
 うわっ、痛そうだな。
 地面で鼻を抑えながら悶絶するアンリを見ながらそう思った。


「おーい、大丈夫か?」
「痛い…あっ、大丈夫で…大丈夫でござる!」
「ござる?」


 変なやつだけど、まあ、MMORPGなんだからロールプレイングってやつなんだろうな。
 脳内でそう結論付けると、少女は何かに気がついたかの様に、短剣を抱えるとベッドから転がり落ちる様に跳び降りて、壁に背をつけると短剣を逆手に構える。


「あ、あなた達は何者か答えるでござる!」
「わかった、わかったから刃物を仕舞え」


 両手を上げて敵意がないことを示すと、一応警戒を少しは緩めたのか少女は構えを解く。


「して、何者でござるか?」
『おい、小娘。主様に救われておきながら何様のつもりだ?あまり調子に乗るなら…今すぐあの世に送るぞ』


 そう言ってエンリベルは複数の黒色の武器を生み出して、全ての切っ先を少女に向ける。
 いや、やめてやれよ。泣いてんだろ。
 エンリベルのボスオーラに当てられた少女は、顔を真っ青にして泣いていた。
 これじゃ、何も聞けないな…


  ☆


「落ち着いたか?」
「は、はい…ごめんなさ…かたじけないでござる」
「いや、苦しいならやめていいんだぞ?その喋り方」


 正直隠せてないからやめてもいいと思う。
 そう言うと少女は、首を横に振って拒否の意を見せた。


「申し遅れました。拙者は、ニイナ。職業はニンジャでござる」
「ああ、なるほど。ニンジャだからそんな喋り方なのか」
「あっ、いえこれは…」


 俺の質問でニイナは、少し悲しげな表情を浮かべる。


「…そ、そうなんでござるよ!ニンジャと言えばコレかなと思いまして!」


 しかし、すぐに笑顔でそう答える。
 その後、ニイナには俺達の事やどうしてここに居るのか、などを教えた。


「ニイナさんはシュウ君にもう少しで傷物にされる所だったんですよ!」
「おい!変な嘘を吹き込むな!」
「えっ…?えっ…?シュウ殿は…ロリコ_「それ以上は言うな」_は、はい」


 喉元に手を添えて俺がそう言うと、ニイナはコクコクと涙目になりながら頷く。
 それを見たアンリが「ロリっ子を洗脳してやがりますね!さすが鬼畜!」などと抜かしたので、ナクと同じお仕置きをしておいた。
 今はその所為で、部屋の隅に転がって時々痙攣している。
 それを見てニイナがまた青ざめていたのは別の話だ。


「それで、どうしてニイナはこの界層にいるんだ?見たところ初心者ノービスみたいだが。それに、その武器。どうしたんだ?」
「えっと…その、この武器は形見なんでござる」


 そう言って短剣を抱きしめるニイナ。


「そうか…なあ、話を聞かせてくれないか?」
「はい…拙者はあるギルドに所属していたでござる。そのギルドの名前は【Simon'S Familiar】…拙者の姉がギルドマスターを務めていたギルドでござる」


 ギルド【Simon'S Familiar】
 全員の職業が【盗賊】【暗殺者】【ニンジャ】などの隠密性と機動性に富んでおり、その情報収集能力の高さから天議会の【観測者ウォッチャー】と直接契約を結んでいた。


「あれ?でも確か最近ギルマスが変わったって聞いたんだけど?」


 キョウジが不思議そうにそう言うと、ニイナはコクリと頷く。


「はい、ユキ姉さんは…殺されたのでござる」
「ん?でも、俺が聞いた話だと戦闘中に死んだって言ってた様な…」


 ダン!とテーブルを殴ると、ニイナはキョウジを睨む。


「違う!あれは…あれは…!」


 我に帰ったニイナは、自身を落ち着けるように数度深呼吸を行う。


「…すいません。取り乱しました」
「ああ、大丈夫だ。で、殺されたって誰に?」
「それは、他の誰でもない…」


 なんとなく答えは予想できていた。


「現ギルドマスター、宵影です」          

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