Creation World Online
第38話
翌朝、俺はナクを伴って港の漁師達に声をかけていた。
理由はシーサーペントの棲息する海域に行くためなのだが、どの漁師も首を縦に振ってはくれなかった。
「どうするのシュウ」
「最悪泳いで行くしかないかもな」
途方に暮れていると港に面した宿屋からキョウジが出てきた。
そして俺たちに気がつくと軽く手を上げて近寄ってくる。
「よお、話は聞いたぜ。嬢ちゃんが大変なんだってな?」
「ああ、急いで攻略をしなきゃならないんだが、船がなくてな」
俺がそう言うとキョウジは「俺に任せろ」と言って近くを通りかかった漁師を捕まえる。
「な、なんだね?」
「なあ、おっさん。俺たちちょーっと困ってんだよね。船貸してくんない?もちろん金は払うぜ」
おい、明らかにカツアゲじゃねえか。
キョウジに肩を組まれた漁師は目を合わせないように逸らしている。
「わかった!じゃあ普段の2倍の料金を払おう!」
「い、命の危険があるから無理じゃ!」
「だったら船を買い取らせてもらう。いくらだ?」
「そ、それは出来ん!さあ、帰ってくれ!」
そう言って漁師はキョウジを押して立ち去ろうとした時キョウジがボソリと呟く。
「いくら貰ったんだ?」
その瞬間、漁師の動きが静止した。
ギギギ、と錆び付いた人形のようにキョウジを見る漁師。その顔は、「なぜお前が知っている」という表情をしていた。
ニヤーっと笑ったキョウジの顔は正に魔王と呼ぶのに相応しかった。
結局、漁師は泣く泣く普段の料金で俺たちに船を貸すことになったのだった。
「ねえ、シュウ」
「ん?なんだ」
「アレは何?悪魔?」
ナクの正直な感想にキョウジは頭を抱える。
そして港に「黒髪の悪魔には気をつけろ。絡まれたら最後、恐ろしい未来が待ち受けている」という噂が立った結果、キョウジがまた頭を抱えることになるのだが、それはまた別のお話。
☆
港から出航した俺たちは順調に海の上を進んでいた。
「なあ、キョウジ。さっきのアレはどういう意味なんだ?」
いくら貰ったんだ、つまり何かしらの賄賂的なものがあったということだろう。
俺がそう尋ねると、キョウジは苦笑いをして頬をかきながら教えてくれた。
「これは全部あのメガネのせいなんだわ。漁師はNPCだけど人間並みの思考が出来るわけだ。つまり、人間と同じ方法で買収したってわけだ」
「でもどうしてお前がそれを知っているんだよ」
俺がそう言うとキョウジは照れたように、頭を掻く。
「俺たちにもシュウを捕まえるのに協力しろって言われたんだけどなー。ただ、顔見知りが死ぬのは俺としても辛いから、シュウに協力しようと思ったんだ」
そう言ってキョウジが笑った瞬間、前方に何かが海から浮かび上がってくる。
一部しか出ていないにもかかわらず見上げるほどの巨大な体躯、その表面を触れるだけで切れてしまいそうな程、鋭利な鱗が覆っている。
その先端には俺たちを船ごと丸呑みにできそうな程巨大な口、そしてその中にはまるで剣のような牙が所狭しと並んでいた。
そこには、水神と崇められる反面、漁師からは海の王者と恐れられるシーサーペント。第2界層のボスが自身の縄張りに入り込んだ俺たちをその赤黒い目で睥睨していた。
☆
シーサーペントの姿を見たキョウジは苦笑いで俺に尋ねる。
「おいおい、なんてデカさだ!なあ、シュウ!これ人数不足なんじゃないか?」
「はっ、人数だけじゃなくてレベルも武器も足りねえよ…っ!避けろ!」
俺はそう言うと全力で横に跳んだ。
すると、先程まで俺たちが居た場所に水がまるでレーザーのようにシーサーペントの口から放たれる。
船の甲板は破壊不可能属性がついているため、破壊されることがないのが唯一の救いだろう。海上で足場無しにあいつと戦うのはマズい。勝てる気がしない。
「シュウ!来るぞ!」
「わかってるっての!【マルチウインドランス】!」
俺の手から放たれた複数の風の槍がシーサーペントの下顎部にぶつかると風の衝撃波が発生し、今にも水を放とうとしていたシーサーペントの頭を上に弾く。
シーサーペントの口から放たれた水は天を貫いて空を漂っていた雲に穴を開け霧散させる。
シーサーペントはゆっくりとこちらを睨みつけると、怒りの咆哮をあげる。まあ、雑魚だと思ってたやつに頭弾かれたとかそりゃ怒るわな。
「ん、準備できた」
そう呟いたナクの方向を向けばその頭上には太陽のごとき輝きを放つ巨大な光の槍が浮かんでいた。
「【ロンギヌス】」
ナクのその言葉で生み出された神話の槍が水神の胴体を刺し貫く。
光の槍に貫かれたシーサーペントは体力を大きく減らし、周囲の海をその血で赤く染める。
「よっしゃ!攻め時だ!行くぜぇええ!」
「あっ!おい!キョウジ待て!」
俺がそう止めるもテンションの上がったキョウジは船の甲板からシーサーペントに向かって跳んでいく。
そしてシーサーペントに着地してこう呟く。
「終わりだ。【重黒界】」
キョウジがそう言ってニヤリと笑うとシーサーペントを囲むように海に黒の魔法陣が複数発生し、そこから真黒な柱が出現すると柱の内部に半透明の黒いドームが出現する。
更に、キョウジが手を閉じるように動かすと、その動きに合わせて柱が間隔を狭めていき、シーサーペントの身体を圧縮していく。
「それじゃ、幕引きといこうか」
キョウジがパチンと指を鳴らすと、シーサーペントの身体がズレる。
パリンとガラスが割れるような音がして、圧縮されて真黒になったドームが砕け散る。
そこには身体を真っ二つにして絶命して光の粒子に変化しているシーサーペントとその上に無傷で立っているキョウジの姿があった。
「圧倒的だな」
「ははっ、すごいだろ?」
船の甲板まで跳んできたキョウジはそう言うとニヤッと笑う。
リザルト画面を見れば今回の戦いでレベルが4も上昇していた。流石に格上相手だとこのくらい上がるよな。
『第2界層がクリアされました。以下の特典をプレイヤーの皆様に送らせていただきます。
1.武器スキルの解放
2.レイド機能解放
以上です。それでは残り88界層頑張ってください』
そうアナウンスが流れると、目の前の海から骨や船の残骸で出来た島が現れる。
その島に降り立つと、そこには真黒のモノリスが立っていた。
俺がそれに触れるとモノリスから光が飛び出し2界層中に広がる。
そして、目の前が真っ白に染まると次の瞬間には3界層の始まりの街【ディヴァ=ヘト】のモノリス前に転送されていた。          
理由はシーサーペントの棲息する海域に行くためなのだが、どの漁師も首を縦に振ってはくれなかった。
「どうするのシュウ」
「最悪泳いで行くしかないかもな」
途方に暮れていると港に面した宿屋からキョウジが出てきた。
そして俺たちに気がつくと軽く手を上げて近寄ってくる。
「よお、話は聞いたぜ。嬢ちゃんが大変なんだってな?」
「ああ、急いで攻略をしなきゃならないんだが、船がなくてな」
俺がそう言うとキョウジは「俺に任せろ」と言って近くを通りかかった漁師を捕まえる。
「な、なんだね?」
「なあ、おっさん。俺たちちょーっと困ってんだよね。船貸してくんない?もちろん金は払うぜ」
おい、明らかにカツアゲじゃねえか。
キョウジに肩を組まれた漁師は目を合わせないように逸らしている。
「わかった!じゃあ普段の2倍の料金を払おう!」
「い、命の危険があるから無理じゃ!」
「だったら船を買い取らせてもらう。いくらだ?」
「そ、それは出来ん!さあ、帰ってくれ!」
そう言って漁師はキョウジを押して立ち去ろうとした時キョウジがボソリと呟く。
「いくら貰ったんだ?」
その瞬間、漁師の動きが静止した。
ギギギ、と錆び付いた人形のようにキョウジを見る漁師。その顔は、「なぜお前が知っている」という表情をしていた。
ニヤーっと笑ったキョウジの顔は正に魔王と呼ぶのに相応しかった。
結局、漁師は泣く泣く普段の料金で俺たちに船を貸すことになったのだった。
「ねえ、シュウ」
「ん?なんだ」
「アレは何?悪魔?」
ナクの正直な感想にキョウジは頭を抱える。
そして港に「黒髪の悪魔には気をつけろ。絡まれたら最後、恐ろしい未来が待ち受けている」という噂が立った結果、キョウジがまた頭を抱えることになるのだが、それはまた別のお話。
☆
港から出航した俺たちは順調に海の上を進んでいた。
「なあ、キョウジ。さっきのアレはどういう意味なんだ?」
いくら貰ったんだ、つまり何かしらの賄賂的なものがあったということだろう。
俺がそう尋ねると、キョウジは苦笑いをして頬をかきながら教えてくれた。
「これは全部あのメガネのせいなんだわ。漁師はNPCだけど人間並みの思考が出来るわけだ。つまり、人間と同じ方法で買収したってわけだ」
「でもどうしてお前がそれを知っているんだよ」
俺がそう言うとキョウジは照れたように、頭を掻く。
「俺たちにもシュウを捕まえるのに協力しろって言われたんだけどなー。ただ、顔見知りが死ぬのは俺としても辛いから、シュウに協力しようと思ったんだ」
そう言ってキョウジが笑った瞬間、前方に何かが海から浮かび上がってくる。
一部しか出ていないにもかかわらず見上げるほどの巨大な体躯、その表面を触れるだけで切れてしまいそうな程、鋭利な鱗が覆っている。
その先端には俺たちを船ごと丸呑みにできそうな程巨大な口、そしてその中にはまるで剣のような牙が所狭しと並んでいた。
そこには、水神と崇められる反面、漁師からは海の王者と恐れられるシーサーペント。第2界層のボスが自身の縄張りに入り込んだ俺たちをその赤黒い目で睥睨していた。
☆
シーサーペントの姿を見たキョウジは苦笑いで俺に尋ねる。
「おいおい、なんてデカさだ!なあ、シュウ!これ人数不足なんじゃないか?」
「はっ、人数だけじゃなくてレベルも武器も足りねえよ…っ!避けろ!」
俺はそう言うと全力で横に跳んだ。
すると、先程まで俺たちが居た場所に水がまるでレーザーのようにシーサーペントの口から放たれる。
船の甲板は破壊不可能属性がついているため、破壊されることがないのが唯一の救いだろう。海上で足場無しにあいつと戦うのはマズい。勝てる気がしない。
「シュウ!来るぞ!」
「わかってるっての!【マルチウインドランス】!」
俺の手から放たれた複数の風の槍がシーサーペントの下顎部にぶつかると風の衝撃波が発生し、今にも水を放とうとしていたシーサーペントの頭を上に弾く。
シーサーペントの口から放たれた水は天を貫いて空を漂っていた雲に穴を開け霧散させる。
シーサーペントはゆっくりとこちらを睨みつけると、怒りの咆哮をあげる。まあ、雑魚だと思ってたやつに頭弾かれたとかそりゃ怒るわな。
「ん、準備できた」
そう呟いたナクの方向を向けばその頭上には太陽のごとき輝きを放つ巨大な光の槍が浮かんでいた。
「【ロンギヌス】」
ナクのその言葉で生み出された神話の槍が水神の胴体を刺し貫く。
光の槍に貫かれたシーサーペントは体力を大きく減らし、周囲の海をその血で赤く染める。
「よっしゃ!攻め時だ!行くぜぇええ!」
「あっ!おい!キョウジ待て!」
俺がそう止めるもテンションの上がったキョウジは船の甲板からシーサーペントに向かって跳んでいく。
そしてシーサーペントに着地してこう呟く。
「終わりだ。【重黒界】」
キョウジがそう言ってニヤリと笑うとシーサーペントを囲むように海に黒の魔法陣が複数発生し、そこから真黒な柱が出現すると柱の内部に半透明の黒いドームが出現する。
更に、キョウジが手を閉じるように動かすと、その動きに合わせて柱が間隔を狭めていき、シーサーペントの身体を圧縮していく。
「それじゃ、幕引きといこうか」
キョウジがパチンと指を鳴らすと、シーサーペントの身体がズレる。
パリンとガラスが割れるような音がして、圧縮されて真黒になったドームが砕け散る。
そこには身体を真っ二つにして絶命して光の粒子に変化しているシーサーペントとその上に無傷で立っているキョウジの姿があった。
「圧倒的だな」
「ははっ、すごいだろ?」
船の甲板まで跳んできたキョウジはそう言うとニヤッと笑う。
リザルト画面を見れば今回の戦いでレベルが4も上昇していた。流石に格上相手だとこのくらい上がるよな。
『第2界層がクリアされました。以下の特典をプレイヤーの皆様に送らせていただきます。
1.武器スキルの解放
2.レイド機能解放
以上です。それでは残り88界層頑張ってください』
そうアナウンスが流れると、目の前の海から骨や船の残骸で出来た島が現れる。
その島に降り立つと、そこには真黒のモノリスが立っていた。
俺がそれに触れるとモノリスから光が飛び出し2界層中に広がる。
そして、目の前が真っ白に染まると次の瞬間には3界層の始まりの街【ディヴァ=ヘト】のモノリス前に転送されていた。          
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