女神の加護を持つ死神

つうばく

エルとロタンの迷宮攻略 3

 下へ下へと下り進め、現在二七層。
 ここまで来る途中に変わった事が何点かあった。

 まずは、迷宮が広がった事である。
 広がったと言っているが、デカくなったという訳ではない。
 迷宮の幅や高さが、一層などに比べれば徐々に広がっていっているのだ。

 最初は少しずつだった為、気の所為だろうと二人は思っていたが、だんだんそれが目に見えて来る様になってきて、確信を得た。


 そしてこの変化と共に、もう一つの変化も起きていた。
 それは、魔物が徐々に大きくなっているという事である。
 魔物自体の大きさ。それに纏う煙がだんだん濃くなっていた。

 そしてそれに伴い、魔物が急激に強くなっていったのだ。
 一撃で歪め倒す事が出来ていた重力を操る魔法が、下に降りるにつれ一撃では効かなくなっていった。
 一撃だけでは、右半身だけが歪んだ状態に、という感じであった。

 流石にエルもこれにはと、少しずつ他の遠距離で使える魔法も使い出してきた。
 ロタンも強くはないが使える遠距離の魔法を使って、魔物を倒し始めた。

 今まではエル一人で何とか出来たレベルだったが、そうにも行かなくなってきた。

 つまりはそれ程までに魔物のレベルが急に上がった訳である。

 だが、それだけでエルとロタンが少しだけだとしても、苦労するわけがない。
 ということはつまり、この地上では中々いないまでに魔物は上がっていたのである。


 キラリの様に【鑑定】を使えればレベルが知れるのだが、エルとロタンには使えない。
 いや、ロタンは使えたはずなのだが、昔よりも魔法が使えなくなった様に、【鑑定】含めるいくつかの能力も使えなくなっているのである。


 なので今まで戦ってきた感覚だけでの判断なのだが、推定レベル100以上。


 この世界で言う、上位の魔物レベルであるのだ。
 いないと言う訳ではないが、中々いないレベルであった。

 まぁ、アルの迷宮で考えると、一層に出て来るレベルではあるのだが。

 それでも、他の冒険者であれば倒す事は難しいかも知れない。
 複数のパーティーで挑む様なレベルだろう。
 レイドボスとかそういう系統のボスであるのだろう。

 少なくとも二人で挑むものではない。
 ……そもそも二人で挑む様な迷宮では元々ないので、当たり前だとも言えるかも知れないが。


「エルよ」


 何かを思ったのか、ロタンがエルに話しかけた。
 エルは「なんなのですぅ〜?」といつも通りの声で、聞き返した。


「この魔物達、少しおかしくないのだ?」


 息を吸い、続けてロタンは言う。


「この魔物から出て来る雰囲気に少し心当たりが出てきたのだ」
「それはエルも思ったのぉ〜」


 そう全ての知識を司るロタン。

 この禍々しい雰囲気を持つのに出会った事があるエル。
 この二人だからこそこの雰囲気の正体に気付けたのだ。



 ーーそれは、



「魔人が持つ雰囲気と同じなのだ」「魔人と同じ雰囲気をしてるのぉ〜」

 そう、魔人が持つ独独の雰囲気。それがこの魔物達が放っていたのだ。


 ーーどう考えてもおかしい


 魔物と魔人には明確な差が存在する。

 魔物とは、体内に魔素を持った生物。
 生物が歪んだ姿、それが魔物と言う事である。

 それに対して魔人とは、魔物の中でも上位の存在。
 魔素から生まれた者、魔物の突然変異種、動物や魔獣から進化した者など誕生方法は様々で、知識を有し生殖能力を持つ者たちの総称である。
 大抵の場合、魔人となった者は、人型の姿をしている。

 魔物と魔人では、魔物よりも何倍も魔人の方が強い。
 何故なら、魔人の方が知識を持ちながら、使う事ができるから。

 魔物にももちろん知識はある。
 だが、魔人の様に体内の魔素を放つ・・・・・・・・という事で、強さを表す様な知識を持ってはいないのだ。


 それが魔素と魔人に存在する大きな差である。


 だと言うのに、ここに出て来る魔物は、魔人の様に人の姿をしていないのに、体内の魔素を外に放つと言う知識を得ているのだ。


 それがエルとロタンが感じた可笑しなことであった。

 だが、この原因が起きている訳が分からない。
 ロタンの知識を持ってでしても、この様な事は、どの世界にも、どの並行世界にも、どの過去にでも、起こり得なかった事なのだ。











 ーーそして


 二人は原因の分からぬまま、最下層となる三〇層まで辿り着いた。

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