女神の加護を持つ死神

つうばく

第1回キラリとの同室を決めよう大会 2

「じゃあ俺は別行動しとくから。戻ってきた時に誰と同室か教えてくれ」
「かしこまりました。多分……いや、絶対に私でしょうが」
「何じゃと。私が一緒にキラリと同じ部屋に決まっているじゃろうが」
「エルなのです〜!」
「いや、我が主人との同室はこの我だ」
「カカッ。儂に決まっておるだろうが」

 キラリは苦笑いをしながら、バチバチという音が出るかのように互い達を睨み合っている女性陣を見ていた。
 もしそれが、好意でやっているという事を気付いていての苦笑いならまだしも、全くもって気付いていない状態での苦笑いをしていたので、当たり前のように、争いの火花はキラリに向いた。

 だがそれも全てキラリは苦笑いで突き通す。
 突き通すのだ。
 それはもう頑固オヤジかのように。

 そうすると女性陣は諦めていく。

 初めから分かってはいたことだが、どれだけアプローチをしてもキラリは気付かないのだ。
 だからこそ、こんなのは無駄なのだと。

 それはまたすぐにしたら忘れ、今と同じようになるが。

「うんじゃまぁ、行ってくるわ」

 気の抜けた声でキラリは言った。

 全員が打ち合わせでもしていたわけではないのに、揃えてはあ〜という大きなため息を吐いた。
 だがそれでもすぐに気を取り直し「いってらっしゃい」という今度はみんなで揃えてキラリは送った。



 キラリが見えなくなったところでやった物語が始まるのだ。


 キラリとの同室を決めよう大会が開かれるのだ!


「じゃあルール説明頼むぞソラ」
「かしこまりました」

 五人は周りに迷惑にならないよう、予約を取っていた一部屋に集まり、フカフカで大きなベットの上で円になるようにして座った。
 ソラは何処から用意されたのかもわからないホワイトボードにルールを書いていった。

「これが大まかなルールです」
「ふむふむ。初めは全員、持ち金が金貨1枚なのじゃな」
「はい。ですが、ここのカジノで使えるお金に変えるので金貨ではございませんが」

 カジノでは普段使うお金とは違うお金を使うのだ。
 カジノ用のお金には幾つもの仕掛けがあり、防犯対策にもなっているからだと。

 因みに換金はカジノ前の入り口で出来る。

「質問して良いの〜?」
「はい。どうぞエル様」
「この大会にはしてはいけないゲームはないのですぅ〜? こんなに大っきいカジノだと楽に大儲け出来る機械とかもありそうなのです〜」
「はい。禁止機械はございません。良い機械を選んだり良いゲームを選んだりする目利きもこの大会のきもですから」
「分かったなの〜!」

 そう一般的なカジノにはあまりないのだが機械型のもここにはあるそうなのだ。
 人とのゲームより機械の方が殆どズルはないのでその辺も踏まえて機械型は何やら人気なのだと。

「じゃあ儂からもだ。このゲームの制限時間はないのだ? あるなら早めに教えて欲しいのだが」
「ああそうでしたね。制限時間を書き忘れていましたね」

 そう言ってソラはまたもや何処からかペンを取り出すとホワイトボードに書き出した。
 書ききるとソラは何処かにペンをしまった。

 そしてゆっくりと全員がホワイトボードを向いた。

 ホワイトボードには今からして4時間後の時間が書かれてあった。
 丁度、昼時の時間だった。

「多分ですが、キラリ様は一度昼食を食べに戻ってくるでしょうからこれぐらいの時間が無難かと」
「うん? 帰ってくるかの。何処かで食べてきそうじゃが」
「キラリ様は寂しがり屋ですよ」
「そうだったのじゃ」

 はははっ、そうみんなして笑った。




 ーーその時ーー

 キラリは身長差が目に見えて開いている大男と何かをしていた。

「は、は、は、ハックションっ! ……誰かが俺の噂をしてるのか?」

 そんな気の抜けた事をしていたキラリの横では、さっきまでは凄いぜ俺! 感を出していた大男が倒れていた。
 その大男には金銭が一枚も無い。
 逆にキラリの横には金銭となると思われるチップが大量の山となって積まれていた……。

 ーーーーーーー




「じゃあ皆様持ちましたね」

 全員の手には換金し終えたお金が握られていた。
 換金はソラが行ってきた。

 別に違う人でも良かったのかも……よく無かった。

 アルならば問題を起こす。
 エルも同じく問題を起こす。
 ヘーニルならば色んな意味で周囲を引きつけてしまい周りの迷惑になるので不可。
 ロタンは……無理だろう。

 ということでソラが行ったのだ。

「じゃあ、よーい!」
「開始なのじゃ!」

 ソラとアルの掛け声により一斉に全員が散らばった。

 アルとエルは誰かと対戦をするようなゲームエリアに。
 ヘーニルとロタンは機械でのゲームエリアに。

 ソラは何処となく歩いて行った。










 ーー4時間後ーー


「遅れてすみません。私で最後でしたね」
「と言いながら来たのは時間ピッタリじゃがな。驚きじゃ」
「そうなのです〜! 時間をしっかりと守っているのです〜!」
「有難うございますね。アル様。エル様」

 朝、会議もどきをしていた部屋に全員が集まった。
 ソラが一番最後だったのだが、それでも時間ピッタリだったので誰も遅れることは無かった。

 ソラは自然とみんながいる真ん中に寄って行った。
 その行動には理由がある。
 部屋の端には大きなゴツゴツとしている袋が四つ置いてあった。
 その袋の中身は全てカジノ用の金。

「誰からの発表にしますか?」
「見るからに少ないロタンからじゃろう」
「カカッ。酷い言い草だのう。カ、カ、カカッカカカッ」
「動揺しすぎじゃ」

 それでもまだロタンはカカッという笑いを続けている。
 そしてロタンからはピキッというような何かが切れる音がした。
 その音は周りにいる全員に聞こえた。

「カカッ。カカカッ。カカカカッ!」
「ロタンが壊れたのじゃ!」
「どうしようなの〜!?」
「頭を冷やさせるのだ!」
「はいなの〜!!」

 直様ロタンの頭を巨大な氷河で冷やさせた。
 これは比喩でもなんでもない。
 エルが氷魔法を使いロタンの頭上に巨大な氷河を出したので。

 まるでタライ落としかのように氷河はロタンの頭上にドォーン! という音を立てて落ちた。

 そしてロタンは背中から倒れた。

「……………」
「……………」
「……………」
「……………」

 数秒の沈黙が続いた。


 だがそれは直様、全員が騒ぎ立てたことによって消えたのだったーー







「……取り敢えずロタンは向こうで寝かしておいたのじゃ」
「ありがとうございますアル様」
「あの倒れたロタンの代わりに我が結果を発表しておこう。ロタンは通常の金に換金した場合、五十億アースだった」

 五十億アース。
 半日に、それもカジノで稼いだ金としては凄い金額だろう。

「ついでに言うと我は百七十億アースだ」
「二人とも中々じゃな」
「むぅ〜。エルは五十億アースなのですぅ〜。負けたのですぅ〜!」

 エルはラック値がカンストしていない。
 その中での五十億アースなので物凄いだろう。

「次は私がいくのじゃ。びっくりしろなのじゃ」
「一体どれぐらいだったのです〜!?」
「本当にだ。そこまで言うとは」
「どれぐらいの金額なのでしょうか?」

 全員(ロタンを除いた)が興味津々に聞いてくるのでアルはとても得意げになった。
 そして胸を張って言う。

「四百億アースじゃ! 半年間のカジノの売り上げに匹敵する量じゃ!」
「す、す、凄いなのですぅぅぅ〜〜〜!!!」
「本当にだ。まさかそこまで差がつくとは!?」
「本当にです。凄いですね」

 エルとヘーニルがアルに寄り添い驚愕している中、いつもと何も変わらないソラを見てアルは少し考えた。
 そう、四百億アースという大金をアルが持って帰ってきたのに、何も動揺していないのだ。
 まるでそれがまだまだ少ないかのように。

「ソラはどうだったのじゃ?」
「そうなのです〜? どうだったのです〜?」
「アルまではいかぬとも凄い数なのだろうな」

 何にかは不明だが何故か全員ソラに感心していた。

「……見せる前に、皆様に質問をしてもよろしいですか?」
「うむ。私は構わないのじゃ」
「エルもです〜!」
「我もだ」
「では……」

 そう言ってソラは言った。

「皆様は通常のカジノを行われたのですよね。なんの変哲もないカジノを」
「うむ。そうじゃが」
「そうなのです〜」
「我もそうなのだが」

 みんなソラが何が言いたいのかが分からず、頭の上にはハテナが立っていた。

「この船は豪華客船です。勿論、ギャンブル好きの大金持ちも沢山乗っています」
「……もしかして!?」

 無駄に勘のいいアルが何かに気付いた様だ。

「はい。その方々と交渉をしカジノをしました。無限収納アイテムボックスの中に勝ち取ったお金が入っているのですがここでは出せないので、額だけでよろしいですか?」

 そんなソラの言葉を今この場で断れる者はいなかった。

「額の方ですが、大体二千三百億アースです」
「「「「………………………!?」」」」

 全員が驚愕で固まった。
 その額が聞こえたのかロタンが起きたのだが、その直後に固まった。
 寝起きのロタンでさえ固まるのだ。
 その凄さが分かるだろう。

「……くっ、この大会の勝者はぶっちぎりでソラじゃな。キラリとの同室はソラで決定じゃな」
「おめでとうなの〜!」
「良かったな」
「譲っておくのだ」
「皆様、有難うございますね」

 従者パワー。
 キラリを愛し愛しまくる力はとても強かったのだった。

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