女神の加護を持つ死神

つうばく

初めての地上では迷子?

 魔法陣の光が勢いよく増し、俺達は地上へと転移したーー

 そして、転移した先は、さっきまでいた迷宮とは全く違い、涼しい風、水のせせらぎ、鳥達の鳴き声、まさに自然、いや、大自然、そんなのが感じるーーいや、マジで感じるぞ。

 何でだ。

 そう、感じた俺は、意を決して目を開けた。
 そして、俺の目に写った、そこに広がっていた光景は……

 マジの大自然だった。

 何故? その言葉だけがが俺の頭の中をよぎりまくった。
 なので、別の事を考えた方が良いなぁ、という、結論に至った俺は、右隣、左隣と見るとそこには、アル、ヘーニルがいた。

 良かった、ちゃんとみんなで転移出来たんだ〜。
 はぁー、心配だったんだよな。
 なんか、ミスが起きて違うところに転移するとか、バラバラになってしまうとか、そんな事があるんじゃないかと、本気で、思ってたんだよな。
 いや〜、安心出来たし、もう一度言うが、良かった、良かった。

「……ヘーニル。私はこんなところを転移先に指名しておったか?」
「いえ、アルは、王都前の村の家の中にある、隠し転移場を指名していた筈だが。ここは……」

 何なんだろう、この二人は、今、とても理解したくない話をしている。
 転移の指名先が違うとか何とか。
 嘘だよね、異世界の地上に降り立って初めが、迷子で初まるのなんていやだよ、絶対!!

「……キラリ……ここ、どこじゃ……指名先、ミスったなのじゃぁぁああああー!」
「分かったから、待ってって。今詳細地図マップを使って調べてやるから」
「グスゥッ……グスゥッ……済まないのじゃ、来て早々迷子になってしまって……グスゥッ……」
「もう、そんなの良いからさっさと泣き止め。……ほら、これ、ハンカチ」
「ありがとうなのじゃ」

 はぁー……俺の心配がまさかの当たってしまうとはーーこれって、俺が予想したからとか無いよね。
 俺の運値が高すぎて、転移前に予想したから、それが当たってしまった。

 流石にそれは無いか〜……無いよな。
 ……一応、確認しておこう。

「あのさ〜、質問なんだけど、運値が高過ぎる場合、例えば俺とか、何かを予想したらそれが当たってしまうって無いよな」
「いや、我の記憶が正しければ、運値が主人みたいに表示無しになると、予想とかはほぼ百パーセント当たる筈だぞ」
「そうだよねー、そんな訳無いよね〜……って、あるの!?」

 この転移の指名先が違ったのって、もう百パーセント俺の所為って事が決まった。
 いや、言わなければ大丈夫な筈。

 てか、これって逆に利用出来る? ああして、こうしたら……行けるな!

「よし、開くぞーー詳細地図マップ

 ここでーーここは、王都前の村の前の森とかだろ、俺の予想では。

「ここは、ゴブリンの森という場所で、王都前の村からは……近い! そもそも、前の森じゃん」
「おお、指名先がミスと言ったて、直ぐ前の森だったのか」
「そうなのじゃ? 私はそんな言うほどミスって無かったのかのじゃ? ……良かった〜なのじゃ。もし、物凄く遠ければやばかったのじゃ。少しなら、良かった良かったのじゃ」
「ああ、近くて本当に良かった。まぁ、今日は、とりあえず、この森を抜けて村に行くという事で良いか?」

 俺は、ヘーニルが俺の運値まで行くと、予想が殆ど当たると言ったから、逆に、ここが指名先から近い、と予想した。
 この予想が当たって、本当に指名先から近い様にと願ってだ。

 この、俺の考えは当たっていて、詳細地図マップを使ってみると、俺が都合良く予想した村の前の森という事が現実的になった。
 これのお陰でやっと、アルが泣き止んで元気になった。
 やっぱりアルは元気っ子な、のじゃロリーーロリ少女が一番似合う。

「今、何か酷いこと私に思ったかの」
「……アハハ、ソンナワケナイダロ」
「じゃあ、何でカタコトなんじゃ」
「ソレハ……すみません」
「最初からそう謝っておけば良いのに。何で、そんな意地を張ったのじゃ」
「いやまぁー、お約束だろ。カタコトで言うのとかも……」
「はぁー……そんな理由じゃと思っとたのじゃが……マジで言うとはのー」

「ハハハ」と俺は笑うしか無かった。
 今のは、ネタ目的に走って、意地を張ったり、カタコトで言ったり、したのは俺だし、俺が悪いのだろうけど......いや、俺が全て悪いか。

「マジですまん。これからは」
「「これからは……」」

 俺が、これからは、と勿体振る様に溜めると、アルとヘーニルはそれを繰り返して聞いてきた。
 ここは、流石にふざけられないなぁ……真面目に言うか。

「俺はネタ目的に走るのを、自重する!」
「ううーん、進歩したのは、したと思うんじゃが、やめるとかでは無くて、気をつけるだけかぁー。それでも、キラリということを考えたら進歩したか」
「そうだ。あのネタ目的に行き過ぎてしまう様な主人が、自重するというだけでも大きな進歩だな」

 俺、ヘーニルの前ではネタ目的に走ったのが、今日以外、思い当たらないんだけれでも。
 なのに、何故、俺がネタ目的に行くというのを知ってるんだ……まぁ、アルに聞いたという線もあるかもだけれでも、もっと言えば、アルにもあんまり言ったことが無いんだよなぁ。

 まぁ、そこらへんは〝最強だし〟と〝邪神だし〟ですましておくか。
 こんなくだらない事に、頭は余り使わない方が良いだろうし。

「まぁ、この話はこれで解決としとこうか」
「そもそも、キラリのせいで始まった話なんじゃが」
「そうだな。主人がもっと早くから自重し、ネタ目的に走って行かなければこうもならなかったのに」
「ーーグッッ!?」

 最後の最後で俺に向かって、言葉という刃物が刺さった。
 俺の精神体力残り1だ。
 もう俺は……死ぬ……かも。

「はいはい、言った側からネタをしようとしないのじゃ。さっさと進むのじゃよ」
「勿論、進むのの先頭は主人でだぞ。我達への謝罪目的と、詳細地図マップを持ってるからそれを見て、進むというのをかけてからだぞ」
「…………分かった。なら、さっさと行くぞ」

 この二人は俺に対して、本当に遠慮が全く無い。
 ある意味信用されてるからとかの理由もあっての、この遠慮の無さとかかもしれないが。
 もしそうなら嬉しいよな、それでなら、俺は、全く遠慮が無くても良いぞ、ウェルカムだ!

(ほっとくのじゃ)
(分かった。早足で行くぞ)

 ふっふーん。
 この二人は、小声で話していて、聞こえて無いと思ってるだろう。
 しかし、俺は、スキルの《聴覚強化》で、どんな小声でも、ターゲットを決めれば聞こえる。
 これなら、神だろうと関係無い、そもそも、俺が一応神だから、神も対処内だ。

「二人とも、誰をほって行くのかなぁ〜」
「ええーと、じゃな。そんな事一欠片も思ってないぞ」
「ええぇー、全く考えもして無かった。特に、早足で逃げるなんて……あっ!」
「へぇ〜、早足で逃げるねー。どこへかな」

 俺には、詳細地図マップがあるし、神の気でも今ならば、スキルを使わなくても分かる。
 パーティーメンバーならそれこそ、尚更だ。
 そんな俺から、方向音痴のアルと、今分かったが、天然のヘーニルが逃げると……絶対、逃がさねーよ。

「すまんなのじゃ」
「主人、すみまなかった。少し、調子に乗りすぎていたな」
「まぁこれで、おあいこだな。それと、お前らあのまま逃げてたら、崖に一直線だったぞ。ついでに村とは真反対な」

 二人は、先が崖で目的の場所とは真反対と聞き、何と!? って顔をしている。
 それもそうだろうな。
 俺でも、進んでる方向が全く違い、それも真反対と伝えられたら、えっ!? マジで? と応えるだろう。
 だから、これには、納得が出来る。

「ああ、心配すんなよ。こっちが正しいルートだから」
「まぁ、キラリが間違うとは思っとらん」
「そうだな。主人だしな」

 何その、◯◯だし〜、的な感じのノリ。
 そっちの方からネタを振ってきてるだろう、これは。

「俺は……こんなんで……動じ……ないぞ」
「おお、全くわざとじゃ無く、偶々出たのじゃが、ちゃんと自重したのじゃな」
「主人が……主人が……進歩した」
「お前らな。そこまで、凄い事じゃないだろ。それとも、遠まわしで俺を馬鹿にしてんのか?」
「「そんな訳では無い(のじゃ)」」

 本当に偶々なのか、あのネタを振ってきたのは。
 それに、本当に遠まわしで俺を馬鹿にしてないのか。
 それを、誰かに聞かれようが今のは俺は、こいつらを信用してるから、わざととかでは無い、馬鹿にしてないと、胸を張って言えるだろう。

「やっと、そこまで、信用してくれたのか」
「主人がそこまで」

 なんか、照れる。
 美少女、二人から、猫が甘えてくる様なつぶらな瞳をして見つめられてるのだから。
 ここは、ドーン! と言いかましてやろ。

「ああ、今、俺は二人の事を物凄くしーー『むぅ』ああ!? ソラ、もだな。なら、言い直して、俺は三人の事を物凄く信用ーーいや、信頼しているぞ」

 転移してから、今日は、一回も喋って無かったから、忘れかけていた。
 すまないなぁ、ソラ。

『大丈夫です。もうすぐ、やっとキラリ様と触れ合えるのですから』

 それって、どういうーー

『気にしないでください。それよりも、私が、マップを使い道を言うので、キラリ様は、そのまま、指示通りに進んでください。場所は、森の前の村で良いのですよね』

 ああ。
 そこが、とりあえずの今日の目的地だ。

『かしこまりました』

コメント

  • 瑞樹の相棒ヤゾラっち

    予想が全て現実になったらいいな

    5
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品