黒銀の精霊マスター ~ニートの俺が撃たれて死んだら異世界に転生した~

中七七三

第八八話:迫る! 決着までのタイムリミット

狂気の瞳で俺たちを見つめるガチホモ王。

「俺を殺す? やれるのか? アインよ、この牝ブタどもよ!」

 ガチホモが重低音のバリトンボイスで吼えた。
 
 俺と、エロリィ、ライサの3人がガチホモ王に対峙していた。
 ガチホモ城の塔の中だ。

 ガチホモ王は、散々ダメージを喰らい、もはやボロボロといっていい。

 その長い頭にはライサの釘バットがめり込み、食い込んでいる。
 そこから、ダラダラと血を流している。
 首バットをぶち込まれた衝撃で、顎の部分まで胴体に食い込んでいる状態だ。
 まるで、首を途中まで出している亀だ。

 さらに、俺の魔法で全身は黒焦げで、ブスブスいっている。
 エロリィの禁呪で作った刃が全身を貫き、体中に穴が空いて、そこら中から血を吹きだしているような状況。

 それでもだ――
 こいつは倒れない。
 狂気じみた視線をこっちに向け、まだ口元に笑みを張り付けていやがるのだ。

「あはッ! 上等ぉぉ~、殺してやる。徹底的に殺してやる。ぶち殺す!」

 釘バットを失ったライサが両手のメリケンサックをギュッと握りこんだ。
 緋色の髪が帯電したかのように舞い上がる。
 この美少女殺戮兵器のパンチは、釘バット攻撃とそん色ない。

『この剣…… 魔力を吸い込んで、循環させて…… この剣自体が馬鹿でかい魔力回路みたいになってるわ』

 サラームの声が心なしか震えて脳内に響いた。

 俺は覇王神剣ドラゴンザバッシュを握りしめる。確かにサラームの言っていることが分かる。
 俺の体から剣に魔力が流れ込み、更に大きな力となってこっちに流れ込んでくる感じだ。
 俺の7つの魔力回路に呼応するように、俺の全身に巨大な力を生み出している。
 
 心臓と剣が直結され、腕を通じて切っ先まで俺の鼓動がとどいているような、そんな感覚がある。

「魔力を流し込んで、威力を上げる剣なのか?」

 俺はそのとき、ドラゴンザバッシュに感じたことを言葉に出していた。
 おそらく、俺の親父もそう言う方法で、戦っていたんじゃんないか――
 そんな気がした。

 俺は剣なんか使ったことが無い。
 使う必要もなかった。
 ただ、これは、俺の手になじんだ。なんだか、昔から使っているようなそんな気がした。

「もうね、アインは天才だけど、剣も使えるの?」

 エロリィが効いてきた。

「アインちゃんは天才なの! もう、なんでも出来るの! 小さい時からかわいくて、超天才で、もうすごくかわいいの!! 剣だって使えちゃうわ!」
 
 天井から声がした。
 見上げる俺、エロリィ、ライサ。
 ママ、俺の母親、ルサーナだ。
 天井の割れ目から顔を出して、こっちを見て笑顔を見せていた。

 血まみれの笑顔。
 プラチナブロンドというか、月の光のような銀色の髪まで血で真っ赤。 

「ほら、もうガチホモは皆殺しにしたから、アインちゃんも早く、片付けてね!」

 そういって、ポイッと俺の方に何かを投げた。
 クリチャーだ。
 あの「男色孕ませ牧場」の触手にワサワサといた気持ち悪い奴らだ。
 ガチホモ王を10分の1に縮小して、3等身にしたような奴ら。
 それが、ぼろ屑のようになって、地に放られたのだ。

 上の方で、俺の親父であるシュバインの声が聞こえた。

「あら、パパが呼んでるわ。じゃあ―― アインも早くね。確実に、ぶち殺してね」

 笑顔で、パタパタと血まみれの手を振って去っていく俺のママ。
「銀髪の竜槍姫」の二つ名を持つ救国の英雄の1人――

 それをポカーンをと見つめるしかない。
 俺、ライサ、エロリィ。
 そして、ガチホモ王。

「もう、根底から、お前の野望はついえたぞ! 観念して、ここで死ね」

 男同士の繁殖を可能とする、よく分からん「男色孕ませ牧場」は壊滅した。

「く、『男色孕ませ牧場』は、俺さえ生きのこれば、再建ができるのだぁ――」

 そういって、放り投げられたクリチャーを自分の足で踏みつぶした。
 血が飛び散る。

「アインさえ、いればいい。俺とアインでいくらでも繁殖できるのだぁ」

「このクソが!! 誰がオマエと繁殖するか!」

「手足を斬り落とし抵抗できなくする。俺の子を孕むだけの存在にしてやろう」

 頭を胴体に半分陥没させながら、バリトンボイスで狂った言葉を響かせるガチホモ。
 
「いや、テメェをここで、ぶち殺す」

 俺は覇王神剣ドラゴンザバッシュの切っ先をガチホモ王に向けた。
 狂気のガチホモであり、このガチ※ホモ王国の支配者。
 コイツさえ倒せば、戦争は終わる。
 そして、シャラートを助けに行くんだ。
 
「俺と一緒にガチホモのエデンを作るのだぁぁ!!」

 股間から生えた槍を両手で握りしめ、ブンブンと振り回しながら突撃した来た。
 それは、一種の悪夢だった。
 電信柱を束ねたような太さをもった根元。
 その切っ先は鋭くとがっている。

「腕を叩き落してくれるわ!!」

 振り下ろされるガチホモ王の巨大な槍。
 巨大な鉄柱を振りますようなものだ。
 風を汚染し、空間を汚しながら、俺に向かって叩きこまれるガチホモの槍。

「ぬおぉぉぉ!!」

 俺は反射的に、覇王神剣ドラゴンザバッシュでそれを受け止めた。
 凄まじい火花のような物が飛び散る。

「あ、あぁ、あぁぁぁぁぁ、あ、あ、あ、あ~ この刺激が、俺を、俺を更なる、高みにぃぃぃ~。アウフヘーベン!!」

 頭を胴体に陥没させ、頭に釘バットがめり込んだ状態で、恍惚としたバリトンボイス。
 こっちの耳が腐りそうになる。

「汚らわしいんだよ!! くそが!!」

 俺の親父の剣が汚れそうな気がした。俺は、思い切り跳ねあげてやった。
 極太の槍が、吹っ飛ばされるように弾けて跳んだ。
 ガチホモ王が完全に体勢を崩していた。

「俺の、槍を弾き飛ばすかぁぁ!!」

 叫ぶガチホモ王。

「あはッ!! 死ね! 殺してやる!!」
 
 その瞬間だ。
 ライサが突っ込んだ。緋色の弾丸が空を切り裂くように飛ぶ。
 彼女は咆哮を響かせ、右ストレートを叩きこむ。
 本気の彼女の一撃は、人間のレベルじゃない。人知も魔法すら超えかねない。
 近代兵器と比較して考えるレベルだ。 

 顔面に爆弾を叩きつけられたようなものだ。
 ガチホモ王の顔面がひしゃげ、半分ほど吹き飛んだ。

 それでも彼女の攻撃は、終わらない。 

 血まみれになった右拳。メリケンサック付のそれを再び叩きこんだ。
 でっかい頭が拳の形に陥没する。次々にだ。
 左右の砲弾のような連打で、頭蓋骨が粉々になるような状況になっている。

「あはッ! 死ね! この腐れ、ガチホモの、外道野郎がぁぁぁ!!」

 ライサのボディアッパーが炸裂。
 腕が肘までめり込んだ。
 グボッと腕を引き抜くライサ。
 獰猛で美しい横顔から、牙のような犬歯が光る。

 ライサが抜いた腕から、ドーーッと大量の血が吹きだす。

「あはッ! 死んだか? 死んだか? もっと殺してやろうか? あははははははは!!」

 ライサの右腕が弓を引くように後方に引かれた。

「舐めるなよ! 牝ブタぁぁ」

「ライサ!!」

 俺の叫びと同時にライサが吹っ飛んだ。

 蹴りだ。ガチホモ四天王と合体したままの状態の蹴り。
 コイツ、こんな状態でまだ反撃してくるのかよ。

 もはや頭は原型をとどめていない。
 血まみれの肉塊のような状態だ。

「ライサ! 大丈夫か!?」

 ライサは、後ろの壁まで吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。
 塔がまた大きく揺れた。

 ライサの激突した石造りの壁はビシビシとヒビが入っていた。
 
「上等じゃねェか、ええ? ぶち殺してやる。殺してやる。ええ、何度でも殺してやる!! 殺す! 殺す! 殺す!」
 
 殺気が空気を帯電させ、バチバチと火花を上げる。
 血まみれで黒みがかってきた緋色の髪が、宙に舞い上がっていく。

「アイン!! 早くしないと、塔が倒壊するぞ!! 思うにこれは、地殻変動の影響で、この城自体がヤバい状態になっていたのかもしれんぞ! アインのあの――」

 千葉よ、それは俺のせいではない。天変地異なのだ。
 俺がそれを指摘しようとした瞬間だった。
 またしても、塔が大きく揺れた。
 塔が崩れる。俺のせいじゃないけど。絶対に。

 とにかく、もう時間が無い。決着は早くつけなければならなかった。

「黒銀の精霊マスター ~ニートの俺が撃たれて死んだら異世界に転生した~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く