Suicide Life 《スイサイド・ライフ》

ノベルバユーザー203842

■第7話:霊樹■




■ ■ ■



今現在、テラとゼプト、そして俺はこれ以上にないほどの緊張感でいっぱいだった…

「いい?イメージが大切なの。そう、イメージ。イメージさえすれば失敗しない魔法なの。ほら、種から芽が出て、育ち、トートが実イメージよ。」

「そうだ!!ユート!!イメージ!!イメージが重要だ!!イメージせよ!!(キリッ!!)(髪の毛が逆立つ)」

「う、うん…」

何故かゼプトは何処ぞのカードゲームにライドせよみたいな事を言っていたが、無理もない…

何故、これ程にイメージする事を要求されているかと言うと…


『クゥウン…』


と、ペットか何かが主人に甘えるような声が聞こえた。うん。何処から聞こえるかは分かってるんだよ。うん。分かってるんだ…


「…ええっと…“トート”?…その…そろそろ、噛み…ハミハミするのやめて欲しいんだけど…何か唾液みたいな謎のトマトの匂いのするドロドロの液体で服がベトベトなんだけど…」

と、先程から左腕を噛み…ハミハミと甘噛みしている、“巨大モンスタートマト”、“トート”にそう言ってみる…



■ 数分前 ■



「「ユート(君)!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」」


「(ぎゃぁあああああああああああ!?!?!?!?!?)」


俺は、トマトに食されていた。

木の初級魔法《栽培グロー》をテラに教わり、トート(トマト)を種から果実が実るまでを促進させるという魔法を使ったのだが…何故か、巨大なモンスタートマトが育ってしまったのだ…

「(うえ!?なんかヌルヌルする!!?なんかトマトの匂いがする!!?)」

と、トマトに食べられそうになりながら後から考えてみれば、トマトに食べられているのだから、トマトの匂いがするのは当たり前なのでは?と言ったことを考えながら、徐々に、体が圧迫されていく。
特に歯などの肉を食いちぎる様なものは付いていないらしく、圧迫して、栄養を吸収しようとしているのだろうか…?

まあ、当然ながら、物凄く“痛い”。体が押し潰されそうだ。
と、ふとこんなことが頭をよぎる…

このまま、放置しておけば、“死ねる”のでは…?

「(……。よし、このまま“死のう”。)」

脳さえ潰れれば、後は、天国か地獄にレッツゴーと言った感じだろう。
このまま、何もせず、目を瞑っていれば、そのままあの世に行けるだろうと思い、目を瞑る。

はぁ、思えば、辛く短い人生だったな…
楽しかった事…あったかな…?ははは…無い…という訳でもないか…
テラやゼプト…二人と会えた時間が…楽しかった…
これはこれで、ジョーカーには感謝しないとな…

次々と脳裏に記憶が蘇る…これが走馬灯と言うものなのだろうか…?


ふとこんな記憶が脳裏をよぎった…



『……絶対に…絶対に…!!○○○……から……からな…!!』



『……うん……○○○は…待っ……』



最初の声は…俺か…最後の声は……“誰”…だ…?

その記憶…その記憶の俺の手には…銀色の歯車で作られた時計の様なペンダントが握られていた…

何か大切な記憶だった気がする…

でも、もういいや…そんな走馬灯…どうでもいい…

そして、俺は、押し潰され…死……


『ニカカ☆…言ったはずだよ?プレイヤーさん。この世界で君は、君達は、自分の意思では“死ねないんだよ?”
ニカカ☆』


はっ、として目を開けると、突然、体にかかる力が消えた…
そして、言うまでもなく、重力に従い、地面に落ちた…

「うわっ!?」

何が起きたのだろうと、周りを見ると、地面は棘のような鋭角がモンスタートマトの根本の方向に伸び、その鋭角にモンスタートマトの蔦が絡み付いていたり、付近の地面にはクレーターが数個できていた…まるで、戦場のような…

「クッ…....!!テラを放せ!!!!クソトート!!!!」

「うっうう……!!!!」

と、そんな声が聞こえ、声の方向を見ると、テラとゼプトが、蔦で拘束され、今にもモンスタートマトに殺されそうになっていた…

「や、“やめろ”!!!!」

と、モンスタートマトにそう叫んだ。すると、モンスタートマトはゆっくりこちらを向き、テラとゼプトの拘束を解き、蔦を俺の方に伸ばし、周りをうねる様に囲った…
そして、その黒々しい頭(果実)を俺にゆっくりと、唾液のような液体を垂らしながら、近ずいてきた…
思わず、目を閉じ、今度こそ死を覚悟する…

「ユート(君)!!!!!!!!!!!!!!!!!」

と、テラとゼプトの声が聞こえた…

そして…


『“クゥウン…”』と謎の声が聞こえた…


「……………………………………………ん?」

なんだ今の声………
すると、体の胸から腹のあたりにかけて、何かが押し付けられ、こすりつけられるような感触が生まれた…

なんだ?と思い、ゆっくりと瞼を開ける…
そこには、巨大モンスタートマトは俺の体に頬刷りする様に頭を俺の体に擦り付けていた…

「「「……は?」」」

3人の声が重なった瞬間だった…

そう、巨大モンスタートマトは主人に懐く子犬か子猫のように、明らかに、俺に“甘えているのだ”…

『クゥウン…クゥウン…』←※巨大モンスタートマト

「ええっと…」

俺の額に汗が滲んだ後、テラとゼプトの方を向き…

「どうすればいいの…?これ…」



「「知るかぁああ!!!!!!!!!!!!!!」」



テラとゼプトが初めて俺にキレた瞬間だった…

その後、当然の如く、めちゃくちゃ怒られた…



■ ■ ■



そして、現在に至る…

私とお父さんはユート君にイメージをする事を強調して、《栽培》の使い方を叩き込んだ…

そして、イメージの練習すること約1時間…

「...イメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグロー……」


「「....………。」」


ユート君は、完全にイメージする事“だけ”をマスターした機械のよな状態になっていた…


人類初の、機械人間が完成してしまった瞬間だ……

「あ〜…うん。イメージは出来たみたいだから、もう1度《栽培》をやってみようか?」

「あ、ああ!!いい考えだなテラ!!うん!!それがいい!!ユートそれじゃあ《栽培》を…」


「イメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグロー....…」


あはは…多分、今、お父さんと私は同じことを考えているんだろうな…
お父さんの方を見ると、お父さんも私を見た…

うん。思っている事を同時に素直に叫ぼうと、目で会話し、今、自分が思っている事を口にする…


「「どうしてこうなった(の)!!!!!!!!!!!?!?!?!?!?!?!」」


とりあえず、お父さんが、ユートの体をゆする…

「イメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグロー....」

「「....…。」」

ゼプトが、「ユート!!!!」「大丈夫か!?」と声をかけながら肩をゆすったり、叩いたりしてみる…

「イメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグロー……」

お父さんが、脈、胸の動き、息をしているかを確認する…
もちろん、息はしている。

「イメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグロー……」

お父さんが、「お前は医者を連れてこい!!!」「お前は電気ショックの準備をしろ!!」と、誰もいないのに指を指して支持をする…

「イメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグローイメージグロー……」

お父さんが、何だか画風が変わったように真剣な顔になり…


「.............よし…!!…“心臓圧迫”を始める…!!」


「ストーーップ!!!!!!ストオォォーーーーーーーーーーーーーーーーーップ!!!!!!」


何か大変なことをしでかそうとしているお父さんを私は全力で止める…

お父さんは「ほへぇ?」と間抜けな声を出していた。
どうやら、自分が過ちを犯そうとしていたことに気づいてないらい…

「お父さん!!何しようとしてるの!?」

「何って…“心肺蘇生”…?」

「心肺蘇生は呼吸してない時だけだよ!?呼吸してる時に心臓圧迫を行うと心臓破裂するからやっちゃダメだよ!?」

「そ、そうか…」と、お父さんが、残念そうな顔をした瞬間…

明らかに、“周りの空気が変わった”…

何故か、この空間全てが凍りついたように刺すような冷たさが、全身を襲う…


そして、『接続コネクト、木魔法…モード《霊樹ユグドラシル》…』と声が聞こえた…


その声は、低く、殺気が込められ、聞く者を恐怖させる…


その声の主は…先程まで、壊れた機械人間のようだった、“ユート”であった…


変化したのは声だけでは無かった…


ユートの両目…瞳が、“銀色”と“緑色”の虹彩異色オッドアイとなり怪しく輝いていた…


『我、天の支配し、神に贖う者、精霊王を倒す為に宿る者…我にこの体…この魂…この世の全てを我に寄越せ…我の全ては精霊王を倒すために…我に尽くし…生きる物全て…全てに…恐怖…破壊…破滅を与える…木の精よ、我にお前達の持つ全ての力を寄越せ…寄越せ…寄越せ…!!!!……《霊樹監獄プリズン・オブ・ユグドラシル》!!!!!!!!!!!!』


ユートがそう唱えた瞬間…地面が“揺れた”…


地面が震動し、次々に辺りの地面に亀裂が走る…

「な、なんだ!?何が起こってる!!!!!?」

「あんな魔法聞いたことない…!!《霊樹監獄》って…ッ!?」


私が、《霊樹監獄》って何!!と言おうとした瞬間…地面が、ボコボコと荒れ出し、荒れ狂う真っ黒なオーラをまとった大樹が次々に生えだした…
大樹は、互いと互いを絡め合い、より強く、より固く、ギッチリと絡み合いながら伸びてゆく…

だが、成長している途中、その大樹は“崩壊”した…

バラバラと崩れるように地面に落ち、地面に触れると、黒い煙となるように消滅した…

残されたのは、ボコボコと荒れた地面とユートの姿だけであった…

何が起きたのか…そう思って、ユートを見る…

すると、ユートは糸の切れた操り人形のように、バタりと倒れ込んだ…

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