Suicide Life 《スイサイド・ライフ》
■第2話:エルフ■
親玉…?奴隷…?
何のことだろうか…?
何故、ゼプトは怒っているのか見当もつかない…
俺が首を傾げていると…
「…………。
坊主、お前何処から来た。」
へ?
「いいから早く答えろ‼︎じゃないと首チョンパするぞ‼︎」
今時首チョンパって…
「に、日本です‼︎日本の東京都です‼︎」
「ふん…。」
ゼプトは顎に指を当て、何か考えるような仕草をした。
そして、俺の方をじっと見つめたのち
「お前、誰かからここに行って何かしらって命令されたか?」
「………命令…?何のことですか…?」
「ふん……うん。
嘘はついてないようだな。
いや〜悪かったな坊主‼︎急に怒鳴っちまって‼︎」
「へ?」
急にゼプトが「悪い悪い」と言いながら笑った。
そして、その隣にいた少女もまたホッとしたように胸をなでおろしていた…
「いや〜最近は世の中物騒なもんで‼︎
金巻き上げる族とかがわんさかいるから警戒しちまってよ〜‼︎坊主がその族の高いかと思ってちょっと怒鳴っちまったよ‼︎本当にすまんすまん‼︎」
「ナハハハ‼︎」っと笑いながらゼプトは説明した。
「ところで坊主、お前、にほん(?)から来たと言ったが、何処だそれ?」
「…………。」
「ん?どうした坊主?顔色が悪いぞ?」
ゼプトが心配そうな声をかけてきたが、それに答えることができない…
何故なら今、俺は悩んでいるからだ。
あの地獄…“異世界から来たと話すべきか”どうかをだ…
俺が考えているとゼプトが声をかけてきた。
「ま、話したくなければそれでいい。
故郷で何があったか知らないが、まぁ、なんだ。
誰にだって悩みはあるさ。
話したくなければそれでいい。
だが、いつかは聞かせてくれ。きっと楽になるはずだ。」
ゼプトはそう言ってくれた…
「わ、私はテラ…テラ・カルナルム‼︎
よ、よかったらしばらく家に居てもいいよ?
そ、その、凄い怪我しているみたいだし…」
…………え…?
どういうことだ…?
「あ?怪我?何だそりゃ?」
「え、ええっと、さっき小川から連れてきた時、場所者になってたから…」
「お前……………たのか………」
「え?」
俺の声のトーンが低くなったことに驚いたらしく、テラはギョッとしていた…
「お前俺の体見たのかって聞いてんだ‼︎‼︎」
自分でもよく分からなかった。
だが、気づいた時にはキレていた…
テラはビクッ‼︎驚き、少し怯えていた…
ゼプトも驚いたように目をぎょっとさせていた…
「…み、見ました……ふ、服を変えた時に……」
そう言われて、自分の体を見るとズボン以外の服が変わっていた。
ゼプトはキレた俺とテラを交互に見ながら「服ねぇ…」と呟き、今度はニヤついた…
「テラちゃ〜ん、初対面の男の服剥いじゃったの?まぁ〜やらしい〜ww」
「え?ええ⁉︎そ、そんなつもりじゃ‼︎」
「坊主〜寝ている間に襲われそうだったんだってww
逆パターンだよ逆パターンww」
「だ、だから違うって‼︎」
テラが必死に挽回しようとするが、ゼプトはテラをいじりにいじりまくった。
「私、テラをこんなスケベに育てた覚えはないわぁww」
「キモい⁉︎お母さんはそんな声してないよ⁉︎
って、私はスケベじゃない‼︎」
そんなやり取りを見ていると、急にゼプトがくるりとこちらを向き、「坊主。落ち着いたか?」と目が聞いてきた。
目が聞いてきたとは、実に可笑しな例えだと思うが、ゼプトの意は理解することができた。
気づくと自分の怒りはどこかに行ってしまった…
何で、この人たちはこんなに優しいんだろう…
そう思ってしまった…
そう思うと同時に、何故、“俺はあんな地獄に生まれてしまったのだろう”と思ってしまう…
そんなことを考えると、過去の記憶が蘇り、体が僅かに疼くのを感じた…
■ ■ ■
「そういやあ、坊主。お前、なんて名前なんだ?」
名前…?
あれ言ってなかったっけ…?
「……裕翔…神崎 裕翔です…。」
「カンザキ ユート?
ん?ファミリーネームがユートか?変なファミリーネームだな?」
「…いや、ファミリーネームが神崎で、名前が裕翔です。」
「へえ〜…ユートの故郷ではファミリーネームと名前が逆なのか…」
「…そう…ですね。そうなります。」
「ふ〜ん、じゃあユート。お前、魔法は何が使えるんだ?」
「へ?ま、魔法?」
「そう。魔法だよ、魔法。
自己紹介の基本中の基本だろ?
因みに俺は、炎、地、風の3つが使える。
サードユーザーだ。」
「私は、炎、水、木、風、地、氷のシクススユーザー。
ユートは?」
「お、俺は…使えません…」
「は?使えないって事はないだろう?
魔法は人間でも普通に使える。」
「つ、使えないんですよ。その、お、俺には魔力、とか作ったりするものがないんです。」
「は?何言ってんだお前?そんなのあるわけないだろう?
まさか、お前。魔法を知らないのか?」
「し、知りません…」
「ふん…じゃあ、自分の使える魔法でも調べてみるか?」
「そんなことできるんですか…?」
「ああ、ちょっと待ってろ?」
ゼプトは奥の美の向こうに行き「ええっと、どこにやったかな…」と呟きながら何やらゴソゴソ漁る音が聞こえてくる。
「ユート君ユート君…」
「は、もごぅ⁉︎」
急に話しかけられたので驚き、声を上げ用としたが、口に手で押さえられ、言葉を押し留められる。
すると、テラは自分の口の前に人差し指を立て、「しー」と言っている…
「ユート君は……から…………た……がい…よ…」
「え?ご、ごめんなさい、よく聞こえなかった…
もう一度お願いできるでしょうか…?」
そう言うとちょうどゼプトが戻ってきた。
その瞬間、テラが元々いた位置に瞬時に戻った…
何が言いたかったのだろう…?
すると、ゼプトは「合ったあった」と言いながら何かを持ってきた…
透明な水晶なような綺麗な石だった。
「………これは…?」
「あ?こいつも知らねえのか?
コレは魔法選別する為の石だ。
こいつに触れると、炎はアキ、水はアノ、木はシゾ、光はキキ、風はキゾ、闇はクヤ、地はチカ、氷はマシと言ったように、魔法の種類によって色の違う炎がこの水晶に映し出される。
因みに俺が触れると…」
と言って、ゼプトが水晶に触れると…
「………赤と黄緑と茶色だ…」
「ん?お前の所ではそう言うのか?
ここでは普通、この左のがアキ、真ん中がキゾで、右がチカって言うんだぞ?」
と言って、赤、黄緑、茶色の順に指を指した…
なるほど、異世界では者の名前が違うのか…
右や左などの方向や言語は同じでも、者の名前は違うのか…
とそんなことを考えていると、ゼプトが「ほれお前も触ってみ」と言って、水晶を突き出してくる…
俺が指で触ると、水晶に緑と水色、そして黒の炎が映し出された。
「ほぉ、お前も俺と同じサードユーザーか、右から順に、木のシゾ、氷のマシ、闇のクヤだな。
闇が出るのは珍しいなぁ、ひょっとするとユートには暗い闇でも潜んでるのかもな。」
と冗談か本気で言ったのかわからないが、ゼプトは笑ってそう言った。
「ちょっと待ってお父さん‼︎これを見て‼︎」
「んあ?どうしたテラ?」
急にテラが慌てたような声を上げた。
どうしたのだろうか?と思っていると、テラが俺が触れている水晶の一番右を指して
「コレ‼︎コレを見て‼︎」
「んあ?ん?な、なんだこれ⁉︎」
ゼプトは何かを見つけたらしく驚愕の声を上げている。
本当にどうしたんだろう?
「………あの…どうかしたのですか…?」
「どうしたもこおしたもねぇ‼︎
何だこの色⁉︎初めて見たぞ‼︎」
「え?どこです?」
「何処ってここだよここ‼︎」
ゼプトはテラと同じく、一番右、黒…クヤの隣を指差した…
だが、何も見えない…
ゼプトが「よーく見ろよーく」と言っているが何も見えない…と思ったが、何かが一瞬見えた気がした…
何だ?と思い、目をこすってもう一度よーく見てみる…
すると、クヤの隣に“透明な炎”が確かに存在した。
よく見ないとわからないが、一瞬だが、クヤに炎が揺れた時、右のあたりが薄くなり、何かが蠢いているのが確かに見えた…
「クーハの炎…初めて見た…お父さん‼︎この炎って何⁉︎」
「わからねぇ‼︎クーハの炎なんて見たことも聞いたこともないぞ⁉︎
ユート‼︎お前は一体何者だ⁉︎」
「お、俺は普通の…た、ただの人間です…」
そう、俺はただの人間だ…それ以上でもそれ以下でもない…
いや、もしかしたら、人間以上で人間以下かもしれない…
何故なら俺は死んだはずなのだから…
そんなことを話しても信じてもらえるはずもない…
そう考えてみると、俺は何者なのだろうか?俺は果たして人間と呼べるのだろうか?
そんな疑問が浮かぶが、考えても無駄だ…
それを知っているのは恐らく、この世でジョーカーただ1人だけなのだから…
■ ■ ■
「さあ、召し上がれ…」
「ほらユート。遠慮することはねぇ。たーんと食え‼︎
テラの料理は美味いぞ〜‼︎」
「い、頂きます…‼︎」
俺は起きた後、テラとゼプトに朝食を当てなされていた…
メニューは見たこともない料理だが、食欲をそそる香りを漂わせている…
魚介や野菜、果物を中心とした煮込み中心の料理だった…
いい香りににつられて、一口口に含み咀嚼する…
「お、美味しい…‼︎」
口に含んだ瞬間、魚介が下の上で蕩け、野菜の風味がほんのりと染み渡り、それを全て包み込むようにフルーティーな甘味が舌を喜ばせた…
「そ、そうですか…」
「ハッハハハハ‼︎そりゃそうだ‼︎テラの料理だ‼︎
俺の娘だぞ?不味くないわけがない‼︎
ほらもっと食え‼︎」
「ええっと…じゃじゃあお言葉に甘えて…」
そう言って、俺は料理を食べ進める。
その間、何故かテラは顔色が悪くずっと暗い表情をしていた…何かあったのだろうか…?
そんなことを考えながら食べ進めていき、あっという間に完食してしまった。
「ご、ご馳走様でした。」
「お、おう‼︎美味かっただろ‼︎」
「は、はい…‼︎」
「そ、そうか‼︎なら良かった‼︎」
何故だろうか。ゼプトが俺が完食したことに驚いているように見える。
テラも同じく、目を見開いてこちらを見ているのがわかる。何かまずいことでもしたのだろうか…?
そんなことを考えるが、答えは出るはずもなく、何もわからないまま俺は朝食を終えた。
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