TUTORIAL-世界滅亡までの七日間-
第11話-変化-
突然の立ち眩みに襲われ、次に目を開けたときには更地ではなく見覚えのない広間だった。
いや、似たような造りの広間はよく知ってる。
6日前に同じ光景を見たばかりだ。
その証拠に私達の左右には一切の乱れもなく整列した見覚えのある全身鎧を着た者。
彼らの肩が僅に上下している事が置物ではなく人だという証明だろう。
そして何より私達の目線の先、そこにはThe・王様といった風貌のロマンスグレーの顎髭が特徴のナイスガイな少し困惑気味な男性、その横にちょこんとお人形のように佇む儚げな、こちらも少し困惑気味な少女。
私の白昼夢か?とも思いもしたが私と王様の間に立つ剣慈君と裕美さんが自らの胸を触っていることから夢でもなんでもなく、さっきのものは現実だったと悟る。
そして二人はお互いの顔を見合わせると喜びのあまりハグをした。・・・皆の前で。
「ごほん。すまない、勇者様方。少し予定外の事が起こったので待たせてしまった。何がなんだかわからないだろうから、まずは食事でもどうかな?落ち着いた頃に人を遣ろう。」
剣慈君たちの突飛な行動の困惑から立ち直ったナイスガイな王様の渋い声が皆を現実に引き戻し、私達の先導を左目の泣き黒子がいやらしいおっとりとした雰囲気のメイドさんに任せる。
「真帆ちゃん、けんけんとゆーみんの反応からして真帆ちゃんも、やんな?」
メイドさんが食堂まで案内してくれている道中、聡介君が確認するかのように尋ねてくる。
「うん。信じられないけどね。」
「なら・・・」
聡介君はそこまで言ってメイドさんに視線を向ける。
「待って待って。今捕まえたりしちゃうと逆に私たちがお尋ね者になっちゃうから!」
「ならどするんだ?言っとくが、神器はまだ持ってないから暴れられたら抑えられないぜ?」
私と聡介君の会話を聞いていたのか拳成君が混じってくる。
まぁ拳成君は主な被害経験者だから仕方ないけど。今回も同じとは限らないけど。
「まかせて。魔法は使えそうだから何時でも発動できるようにマークしておくね。<彼の者に隠れた拘束を。>"虚ろな拘束"」
私はメイドさんに気付かれないように徐々に魔力を高めていき、魔法を発動する。
「こちらのお部屋でございます。」
魔法の発動とほぼ同時に食堂に辿り着き、メイドさんが振り返る。気付かれた様子は今のところない。
・・・セーフっ!
私は聡介君と拳成君に向けて小さく頷く。
さて、ご飯ご飯。
「皆様。お食事も終わりましたのでそろそろ国王様から直々に今の状況説明が行われます。今一度、先ほどの謁見室に戻りましょうか。」
食事が一段落し、本来は不要なのだがしないと不自然な自己紹介が一通り済んだ頃、執事さんの言葉で再び戻ってきた謁見室。
そこには先ほどと変わらず、部屋の左右に全身鎧を着た人達が並び、部屋の先に王様と王女様が居た。
「勇者様方。お食事の方はお口に合いましたかな?一応過去の勇者の文献を元に味付けをしてみたのですが・・・その様子だと合わないということはなかったようですな。」
謁見室に入ってきた私達の顔をみて、緊張が解れたことに気づいた王様が満足げに頷く。
「はい、初めは見たことのない料理だったので困惑はしましたが、味に関しては私達の口に合う、美味しい料理でした。」
そんな国王様の言葉に一歩前に歩み出て頭を下げた剣慈君が答える。
多分一周目と同じ行動だね。良く覚えてるな。
「そうか。では、早速君たちが何故、ここに突然来たのか。どうすれば元の世界に帰ることができるか。それを話そう。地図と玉をここに。」
国王様がそう言うと左右に控えた数人の騎士がバスタオルサイズの紙を二人掛かりで掲げ、拳サイズの透明なビー玉のようなものを私達にそれぞれ一つずつ手渡す。
地図は、右上の1/3以外赤く塗られている。
そこからは一周目と全く同じ説明なので割愛する。
そして各自の属性を玉で鑑定する時に変化は起こった。
阿樟君は赤色。
拳成君は紫色。
裕美さんは水色。
淳君は黄色。
剣慈君は黄金色。
聡介君は緑色。
互いに光量の差はあれど、玉は確かに光を放つ。
「白銀?」
そんな中、国王様は私を見つめて目を見開く。
いや、国王様だけでなく隣の王女様も、左右の騎士たちも、執事とメイドでさえ私を見ている。
うん。予定通りだな。
「あの?」
「あ、あぁ。すまない。何しろ白銀というのは聞いたことも見たこともなかったのでな。色は火、風、水、土、光、闇の順に赤、緑、青、黄、金、紫の六色に近くなるはずなのだ。やはり今回の勇者召喚は何らかの異状が起こったと・・・」
ふふん、そうではないのですよ。
「お前は何か知っておるか?」
国王様はそう言って横に控える執事さんに声をかける。
さぁ、教えて差し上げなさい!
「いえ、私の知る限り初めてのことですな。勇者の文献には全て目を通しているのですが、白銀というのは・・・」
あれ?
昔にリーさんが居たんじゃないの?
「あの、昔に居たりしませんでした?ダイヤ・リーっていう人、とか。」
「ダイヤ・リー。ふむ、覚えがないが?」
「お恥ずかしながら私も存じ上げませんな 。」
執事さんの言葉に私だけでなく剣慈君たちも全員驚く。
「一度神殿へ向かうというのは如何でしょうか?」
戸惑う私たちを見て執事さんが提案する。
「そうだな。もし、我々が知らなくとも過去に白銀の勇者が居たなら神官が知っているはずだ。あそこは代々の神器を委細記録しているからな。・・・では勇者様、これから貴殿方に神器を与えますので神殿へ向かいましょう。」
その後、私たちと国王様、王女様、執事さんは馬車に揺られ数分の神殿まで来ていた。
そして驚くことにこの神殿、大きい。モン・サン・ミシェル並みに。見たことないけど。
他の皆は二度目だからそこまで驚いてないようだけど、これ下手したらお城より大きいよね?
「ここが我が国が世界に誇る創世教の総本山でございます。この世界最大の建物であると自負してございます。」
私の驚きを察したのか執事さんが説明してくれる。そうなのか、この世界最大。
政教一致という言葉が一瞬頭を過ったが、まぁここは日本じゃないのだし関係ないか。
私たちは執事さんの先導で神殿に入っていく。
中に入ると誰にでも分かるほど空気に変化が現れる。
何というか、正に魔力に満ち溢れてる!的な何かを感じさせる。
「空気が変わった?」
同じことを思ったのか皆も辺りをキョロキョロと見回す。
「おぉ、勇者様方もわかるかね?ここは云わば歴代の勇者の神器の保管庫。神器から放たれる魔力が神殿内に充満しておるのだよ。あまりの魔力の純度に神々しさすら感じるだろう?」
国王様と王女様は神殿の魔力を正に神の魔力だと言わんばかりに目をキラキラとさせる。
「あれ、執事さんは具合でも悪いんですか?」
私はあの完璧な執事さんも二人と同じなのかと視線を向けると、執事さんの顔色が悪く、うっすらと額に汗を浮かべていた。
「いやはや、お恥ずかしながらこの高純度な魔力を受け止めるのは、私には少々役不足のようでして。」
「ふむ、そういえばお前は何時も神殿には足を向けなかったな。」
「えぇ。若かい時分には感じなかったのですが、老いとは恐ろしいもので。」
「そうか、無理を言ってすまんな。ならお前は馬車で休んでいるがいい。なに、すぐに終わるさ。」
国王様の言葉に執事さんは一つお辞儀をして神殿を出ていく。
「ふむ、私はまだ分からんのだが、この神々しさが負担になるなど、歳は取りたくないな。」
「お父様、気を落とさないでくださいませ。ご自分の老いなんて考えるものではありませんよ?」
「そうだな。すまんな、勇者様方。先へ進もうか。」
少ししんみりした国王様に連れられて神殿の奥へと進んでいく。
途中、何人かの神官やシスターとすれ違いつつ迷路のような廊下を迷うことなく進む。
そして廊下を曲がること十数回、目の前に謁見の間並に重厚な扉が現れる。
「頼む。」
国王様がその扉の左右に控える門番に一言そう告げると、門番は扉に魔力を流す。
ズズッ
扉に流れた魔力はレリーフに沿って流れ、扉に模様を写し出す。
「・・・きれい。」
その光景に王女様がボソッと呟く。
ガコンッ
模様はすぐに消え、代わりに扉のロックが外れる音が響く。
ゴゴゴッ
重々しく開かれる扉。
部屋には中央に一つの祭壇があり、それ以外は柱も何も無い簡素な部屋だった。
「ではここからは勇者様方だけで。私たちはこの部屋に入ることを許されて居らんのでな。」
国王様の言葉に私たちは部屋に足を踏み入れる。
そして一歩ずつ祭壇に向かう。
バタンッ
祭壇と扉の間ほどに来た頃、独りでに扉がしまる。
「大丈夫だ。ここの魔力以外は前回と同じだから。」
振り返った私に剣慈君が声をかける。
「ほらほら、はよ終わらせるで。さっさと魔族倒しときたいし。」
聡介君も特に扉に反応を示さず、祭壇へ向かう足を止めない。
それに着いていくように皆も再び歩き出す。
皆が祭壇を囲うように立つ。
「準備はいいか?」
剣慈君の問いに皆は頷き、私は訳も分からず流されるように頷く。
ブワッ
皆が頷くのを確認したあと、剣慈君が祭壇に魔力を流すと部屋中の床からシャボン玉のような透明な球体が沸き出す。
「すごい。」
私はその光景をひとしきり眺め、そろそろ何か変化が起こるのかと祭壇に視線を戻そうとしたとき、祭壇の近くに不自然に球体が集まっているのを見つける。
その球体はウネウネと生き物のようにぶつかり合い、徐々に人形に近づいていく。
「みんな、あれは?・・・聞いてる?」
私の言葉に誰からも反応がないので振り返ると、そこは一面の白。
祭壇は元の位置にあるがこの部屋の大きさは明らかに縮小している上に、グレーだった壁が真っ白になっていた。
「驚いた?」
後ろから掛けられる声。
その声の主にある種の心当たりがありもう一度振り返る。
そこには先程不自然に集まっていた場所に立ち、こちらを見つめる男性。だが、その男性の容姿はこの世界のヨーロッパ的な顔立ちではなく、日本人に近いアジア系の顔立ちだった。
「やぁ、こうして顔を合わせるのは初めてだね。分かってると思うけど、僕の名前は・・・」
「リーさん。」
私は男性の言葉を遮り名前を口に出す。
男性、ダイヤ・リーは言葉を途中で遮られたことを気にも止めず、ただ一言、正解。と呟いた。
いや、似たような造りの広間はよく知ってる。
6日前に同じ光景を見たばかりだ。
その証拠に私達の左右には一切の乱れもなく整列した見覚えのある全身鎧を着た者。
彼らの肩が僅に上下している事が置物ではなく人だという証明だろう。
そして何より私達の目線の先、そこにはThe・王様といった風貌のロマンスグレーの顎髭が特徴のナイスガイな少し困惑気味な男性、その横にちょこんとお人形のように佇む儚げな、こちらも少し困惑気味な少女。
私の白昼夢か?とも思いもしたが私と王様の間に立つ剣慈君と裕美さんが自らの胸を触っていることから夢でもなんでもなく、さっきのものは現実だったと悟る。
そして二人はお互いの顔を見合わせると喜びのあまりハグをした。・・・皆の前で。
「ごほん。すまない、勇者様方。少し予定外の事が起こったので待たせてしまった。何がなんだかわからないだろうから、まずは食事でもどうかな?落ち着いた頃に人を遣ろう。」
剣慈君たちの突飛な行動の困惑から立ち直ったナイスガイな王様の渋い声が皆を現実に引き戻し、私達の先導を左目の泣き黒子がいやらしいおっとりとした雰囲気のメイドさんに任せる。
「真帆ちゃん、けんけんとゆーみんの反応からして真帆ちゃんも、やんな?」
メイドさんが食堂まで案内してくれている道中、聡介君が確認するかのように尋ねてくる。
「うん。信じられないけどね。」
「なら・・・」
聡介君はそこまで言ってメイドさんに視線を向ける。
「待って待って。今捕まえたりしちゃうと逆に私たちがお尋ね者になっちゃうから!」
「ならどするんだ?言っとくが、神器はまだ持ってないから暴れられたら抑えられないぜ?」
私と聡介君の会話を聞いていたのか拳成君が混じってくる。
まぁ拳成君は主な被害経験者だから仕方ないけど。今回も同じとは限らないけど。
「まかせて。魔法は使えそうだから何時でも発動できるようにマークしておくね。<彼の者に隠れた拘束を。>"虚ろな拘束"」
私はメイドさんに気付かれないように徐々に魔力を高めていき、魔法を発動する。
「こちらのお部屋でございます。」
魔法の発動とほぼ同時に食堂に辿り着き、メイドさんが振り返る。気付かれた様子は今のところない。
・・・セーフっ!
私は聡介君と拳成君に向けて小さく頷く。
さて、ご飯ご飯。
「皆様。お食事も終わりましたのでそろそろ国王様から直々に今の状況説明が行われます。今一度、先ほどの謁見室に戻りましょうか。」
食事が一段落し、本来は不要なのだがしないと不自然な自己紹介が一通り済んだ頃、執事さんの言葉で再び戻ってきた謁見室。
そこには先ほどと変わらず、部屋の左右に全身鎧を着た人達が並び、部屋の先に王様と王女様が居た。
「勇者様方。お食事の方はお口に合いましたかな?一応過去の勇者の文献を元に味付けをしてみたのですが・・・その様子だと合わないということはなかったようですな。」
謁見室に入ってきた私達の顔をみて、緊張が解れたことに気づいた王様が満足げに頷く。
「はい、初めは見たことのない料理だったので困惑はしましたが、味に関しては私達の口に合う、美味しい料理でした。」
そんな国王様の言葉に一歩前に歩み出て頭を下げた剣慈君が答える。
多分一周目と同じ行動だね。良く覚えてるな。
「そうか。では、早速君たちが何故、ここに突然来たのか。どうすれば元の世界に帰ることができるか。それを話そう。地図と玉をここに。」
国王様がそう言うと左右に控えた数人の騎士がバスタオルサイズの紙を二人掛かりで掲げ、拳サイズの透明なビー玉のようなものを私達にそれぞれ一つずつ手渡す。
地図は、右上の1/3以外赤く塗られている。
そこからは一周目と全く同じ説明なので割愛する。
そして各自の属性を玉で鑑定する時に変化は起こった。
阿樟君は赤色。
拳成君は紫色。
裕美さんは水色。
淳君は黄色。
剣慈君は黄金色。
聡介君は緑色。
互いに光量の差はあれど、玉は確かに光を放つ。
「白銀?」
そんな中、国王様は私を見つめて目を見開く。
いや、国王様だけでなく隣の王女様も、左右の騎士たちも、執事とメイドでさえ私を見ている。
うん。予定通りだな。
「あの?」
「あ、あぁ。すまない。何しろ白銀というのは聞いたことも見たこともなかったのでな。色は火、風、水、土、光、闇の順に赤、緑、青、黄、金、紫の六色に近くなるはずなのだ。やはり今回の勇者召喚は何らかの異状が起こったと・・・」
ふふん、そうではないのですよ。
「お前は何か知っておるか?」
国王様はそう言って横に控える執事さんに声をかける。
さぁ、教えて差し上げなさい!
「いえ、私の知る限り初めてのことですな。勇者の文献には全て目を通しているのですが、白銀というのは・・・」
あれ?
昔にリーさんが居たんじゃないの?
「あの、昔に居たりしませんでした?ダイヤ・リーっていう人、とか。」
「ダイヤ・リー。ふむ、覚えがないが?」
「お恥ずかしながら私も存じ上げませんな 。」
執事さんの言葉に私だけでなく剣慈君たちも全員驚く。
「一度神殿へ向かうというのは如何でしょうか?」
戸惑う私たちを見て執事さんが提案する。
「そうだな。もし、我々が知らなくとも過去に白銀の勇者が居たなら神官が知っているはずだ。あそこは代々の神器を委細記録しているからな。・・・では勇者様、これから貴殿方に神器を与えますので神殿へ向かいましょう。」
その後、私たちと国王様、王女様、執事さんは馬車に揺られ数分の神殿まで来ていた。
そして驚くことにこの神殿、大きい。モン・サン・ミシェル並みに。見たことないけど。
他の皆は二度目だからそこまで驚いてないようだけど、これ下手したらお城より大きいよね?
「ここが我が国が世界に誇る創世教の総本山でございます。この世界最大の建物であると自負してございます。」
私の驚きを察したのか執事さんが説明してくれる。そうなのか、この世界最大。
政教一致という言葉が一瞬頭を過ったが、まぁここは日本じゃないのだし関係ないか。
私たちは執事さんの先導で神殿に入っていく。
中に入ると誰にでも分かるほど空気に変化が現れる。
何というか、正に魔力に満ち溢れてる!的な何かを感じさせる。
「空気が変わった?」
同じことを思ったのか皆も辺りをキョロキョロと見回す。
「おぉ、勇者様方もわかるかね?ここは云わば歴代の勇者の神器の保管庫。神器から放たれる魔力が神殿内に充満しておるのだよ。あまりの魔力の純度に神々しさすら感じるだろう?」
国王様と王女様は神殿の魔力を正に神の魔力だと言わんばかりに目をキラキラとさせる。
「あれ、執事さんは具合でも悪いんですか?」
私はあの完璧な執事さんも二人と同じなのかと視線を向けると、執事さんの顔色が悪く、うっすらと額に汗を浮かべていた。
「いやはや、お恥ずかしながらこの高純度な魔力を受け止めるのは、私には少々役不足のようでして。」
「ふむ、そういえばお前は何時も神殿には足を向けなかったな。」
「えぇ。若かい時分には感じなかったのですが、老いとは恐ろしいもので。」
「そうか、無理を言ってすまんな。ならお前は馬車で休んでいるがいい。なに、すぐに終わるさ。」
国王様の言葉に執事さんは一つお辞儀をして神殿を出ていく。
「ふむ、私はまだ分からんのだが、この神々しさが負担になるなど、歳は取りたくないな。」
「お父様、気を落とさないでくださいませ。ご自分の老いなんて考えるものではありませんよ?」
「そうだな。すまんな、勇者様方。先へ進もうか。」
少ししんみりした国王様に連れられて神殿の奥へと進んでいく。
途中、何人かの神官やシスターとすれ違いつつ迷路のような廊下を迷うことなく進む。
そして廊下を曲がること十数回、目の前に謁見の間並に重厚な扉が現れる。
「頼む。」
国王様がその扉の左右に控える門番に一言そう告げると、門番は扉に魔力を流す。
ズズッ
扉に流れた魔力はレリーフに沿って流れ、扉に模様を写し出す。
「・・・きれい。」
その光景に王女様がボソッと呟く。
ガコンッ
模様はすぐに消え、代わりに扉のロックが外れる音が響く。
ゴゴゴッ
重々しく開かれる扉。
部屋には中央に一つの祭壇があり、それ以外は柱も何も無い簡素な部屋だった。
「ではここからは勇者様方だけで。私たちはこの部屋に入ることを許されて居らんのでな。」
国王様の言葉に私たちは部屋に足を踏み入れる。
そして一歩ずつ祭壇に向かう。
バタンッ
祭壇と扉の間ほどに来た頃、独りでに扉がしまる。
「大丈夫だ。ここの魔力以外は前回と同じだから。」
振り返った私に剣慈君が声をかける。
「ほらほら、はよ終わらせるで。さっさと魔族倒しときたいし。」
聡介君も特に扉に反応を示さず、祭壇へ向かう足を止めない。
それに着いていくように皆も再び歩き出す。
皆が祭壇を囲うように立つ。
「準備はいいか?」
剣慈君の問いに皆は頷き、私は訳も分からず流されるように頷く。
ブワッ
皆が頷くのを確認したあと、剣慈君が祭壇に魔力を流すと部屋中の床からシャボン玉のような透明な球体が沸き出す。
「すごい。」
私はその光景をひとしきり眺め、そろそろ何か変化が起こるのかと祭壇に視線を戻そうとしたとき、祭壇の近くに不自然に球体が集まっているのを見つける。
その球体はウネウネと生き物のようにぶつかり合い、徐々に人形に近づいていく。
「みんな、あれは?・・・聞いてる?」
私の言葉に誰からも反応がないので振り返ると、そこは一面の白。
祭壇は元の位置にあるがこの部屋の大きさは明らかに縮小している上に、グレーだった壁が真っ白になっていた。
「驚いた?」
後ろから掛けられる声。
その声の主にある種の心当たりがありもう一度振り返る。
そこには先程不自然に集まっていた場所に立ち、こちらを見つめる男性。だが、その男性の容姿はこの世界のヨーロッパ的な顔立ちではなく、日本人に近いアジア系の顔立ちだった。
「やぁ、こうして顔を合わせるのは初めてだね。分かってると思うけど、僕の名前は・・・」
「リーさん。」
私は男性の言葉を遮り名前を口に出す。
男性、ダイヤ・リーは言葉を途中で遮られたことを気にも止めず、ただ一言、正解。と呟いた。
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