操蟲の勇者
第11話
森を抜け王都に戻ってきた僕はとりあえずグルッと辺りを見渡すと、定食屋らしき看板が見えたのでそちらに歩いていく。
道行く人々が僕の肩に乗っているクルを見てはびっくりしたような表情を見せる。そんなに珍しいのだろうか?
あまり心地が良いものではないのでクルに向かってこう言った。
「クル、人が多いから服の中に隠れてて」
僕がそう言うとクルは「キュイ!」と元気よく返事をして袖の中に入っていった。やっぱりこいつ賢いな。
☆
なんとか人混みを掻き分けて定食屋に入ると元気なおばさんが大きな声で「いらっしゃい!」と言った。
僕が席に着こうとするとおばさんが近づいてきてこう言った。
「注文は?」
「えーと、お姉さんのオススメでお願いします」
「はっはっは!あんた将来大物になるよ!ちょっと待ってな!」
そう言っておばさんが奥へ引っ込むと同時にクルが袖からもぞもぞと這い出てきて僕の目を見ながら「キュイ!」と鳴く。構って欲しいのだろうか。
僕が指でクルのお腹部分に触れると鎌でガッチリと捕まえられる。しかし、僕の指が切れたりすることはなかった。どうやら調節が出来るらしい。捕まえた僕の指をペロペロと舐めると指を離して、まるで「もう一回」とでも言いたげにこちらを見るので暫くの間そうやって遊んでいると不意に良い匂いが漂ってくる。
すると奥からおばさんが大きな皿をミトンで持ってやってくる。どうやらグラタン系の様だ。
おばさんは僕の席までくると不思議そうな顔で僕にこう尋ねる。
「あんた何やってんだい?」
「あ、僕の使い魔と遊んでるんですよ」
「ふーん、変わった人だねえ。ま、いいやほらお待たせ【黒魔牡蠣のグラタン】だよ!」
「黒魔牡蠣…ですか?それって魔物ですか?」
僕が質問するとおばさんはうんうんと頷きながらこう言う。
「ああ、そうだよ!この辺に生息している魔物でね!この時期が旬なのさ!旬であるその身はぷりっぷりで旨味が凝縮されているよ!」
「なるほど…確かに美味しそうですね」
「まあ、後は食べてみてごらん。それとコレは私からのサービスさ」
そう言っておばさんはリンゴの様な赤い実を1つ置いてニッと笑った。
「この実は【リングレ】って言ってね、これもこの時期によく取れる果物だよ。この辺りの人間はそのまま食べたり、絞ってジュースにしたりしてるね。あとは煮込んで砂糖の代わりに使ったりもしてる」
「これも美味しそうですね。楽しみです。ほんとにありがとうございます」
僕はおばさんの優しさに素直に感謝する。
するとおばさんは「はっはっは!」と笑いながらこう言った。
「いやなに、将来大物になりそうなやつに恩を着せようとしてるだけさ!それじゃ、ごゆっくり!」
そう言うとおばさんは新しく入ってきた客の方に歩いて行った。
「さて、それじゃあまずはこれからいただくか」
そう言って僕は焦げ目が美味しそうなグラタンのチーズ部分にフォークをぷすりと刺すと、途端に中にあったドロドロのホワイトソースが表面に漏れ出す。
僕は表面のチーズとホワイトソースを絡めると一気に口の中に入れる。
「あっつ…!でも美味い…」
ホワイトソースは濃厚で今まで僕が食べてきた中で1番美味しいホワイトソースだと思った。さらに焦げたチーズのサクサクとした食感と焦げたことによる香りがたまらなく美味い。
夢中になって次の一口を食べようとフォークを刺すと今度はなにか塊に当たる。
なんだろうと思い引き上げてみるとそれはまず日本ではお目にかかれないであろう大きさの牡蠣だった。
僕は牡蠣にがぶりとかぶりつくと口の中に牡蠣の旨味が広がる。
かぶりついた面から牡蠣のエキスが漏れ出すのでもったいないと思い口を近づけて吸ってみると凝縮された牡蠣の旨味が口の中に広がる。
そして半分ほど残った牡蠣の身にホワイトソースをつけて食べるとまた美味い。
「はふっ…美味っ…!…ん?」
僕が夢中になって食べているとクルがじーっとこちらを見ていた。食べたいのだろうか?
僕は備え付けのナイフを取り出して小さく切ってやるとクルの前に牡蠣の身を持って行ってやる。
すると恐る恐るといった様子で牡蠣の身を鎌で捕まえると口元に運んで齧る。
一瞬クルの動きが止まる。しかしすぐにガツガツと牡蠣を食べ始める。相当気に入ったのだろう。
小さく切った牡蠣はすぐになくなってしまった。
「キュイイイイ!」
「ん?おかわりか?」
クルにおかわりを与えつつ食べ進めていくとアレだけあったグラタンはすぐになくなってしまった。
クルはよほど気に入ったのか皿に入り込んで身体中をホワイトソース塗れにしながら皿に残ったホワイトソースを舐めていた。
僕はデザートのリングレを手に取ると一口齧ってみる。
齧った瞬間にスッと抜ける様な爽やかな香りと優しい甘さが口の中に広がった。かなり気に入ってしまった。
クルをツンツンとつつくと「邪魔しないで!」といった様子でこっちを振り向いたクルにリングレを与えてみるが少し齧るとそっぽを向いてしまった。あまり好みではないようだ。
そして僕がリングレを食べ終わるのと同時にクルが皿の上のホワイトソースと身体についたホワイトソースを綺麗に舐め終わる。
僕が立ち上がると同時にクルが僕の肩の上にとまりそのまま服の中に潜って行く。
「ごちそうさまでした!」
「はーい!またおいで!値段は銀貨3枚よ!代金はそこに置いといてちょうだい!」
おばさんがそう言ったので席を立って銀貨を3枚置くと僕は店を後にした。さて、このあとはなにをするかな…          
道行く人々が僕の肩に乗っているクルを見てはびっくりしたような表情を見せる。そんなに珍しいのだろうか?
あまり心地が良いものではないのでクルに向かってこう言った。
「クル、人が多いから服の中に隠れてて」
僕がそう言うとクルは「キュイ!」と元気よく返事をして袖の中に入っていった。やっぱりこいつ賢いな。
☆
なんとか人混みを掻き分けて定食屋に入ると元気なおばさんが大きな声で「いらっしゃい!」と言った。
僕が席に着こうとするとおばさんが近づいてきてこう言った。
「注文は?」
「えーと、お姉さんのオススメでお願いします」
「はっはっは!あんた将来大物になるよ!ちょっと待ってな!」
そう言っておばさんが奥へ引っ込むと同時にクルが袖からもぞもぞと這い出てきて僕の目を見ながら「キュイ!」と鳴く。構って欲しいのだろうか。
僕が指でクルのお腹部分に触れると鎌でガッチリと捕まえられる。しかし、僕の指が切れたりすることはなかった。どうやら調節が出来るらしい。捕まえた僕の指をペロペロと舐めると指を離して、まるで「もう一回」とでも言いたげにこちらを見るので暫くの間そうやって遊んでいると不意に良い匂いが漂ってくる。
すると奥からおばさんが大きな皿をミトンで持ってやってくる。どうやらグラタン系の様だ。
おばさんは僕の席までくると不思議そうな顔で僕にこう尋ねる。
「あんた何やってんだい?」
「あ、僕の使い魔と遊んでるんですよ」
「ふーん、変わった人だねえ。ま、いいやほらお待たせ【黒魔牡蠣のグラタン】だよ!」
「黒魔牡蠣…ですか?それって魔物ですか?」
僕が質問するとおばさんはうんうんと頷きながらこう言う。
「ああ、そうだよ!この辺に生息している魔物でね!この時期が旬なのさ!旬であるその身はぷりっぷりで旨味が凝縮されているよ!」
「なるほど…確かに美味しそうですね」
「まあ、後は食べてみてごらん。それとコレは私からのサービスさ」
そう言っておばさんはリンゴの様な赤い実を1つ置いてニッと笑った。
「この実は【リングレ】って言ってね、これもこの時期によく取れる果物だよ。この辺りの人間はそのまま食べたり、絞ってジュースにしたりしてるね。あとは煮込んで砂糖の代わりに使ったりもしてる」
「これも美味しそうですね。楽しみです。ほんとにありがとうございます」
僕はおばさんの優しさに素直に感謝する。
するとおばさんは「はっはっは!」と笑いながらこう言った。
「いやなに、将来大物になりそうなやつに恩を着せようとしてるだけさ!それじゃ、ごゆっくり!」
そう言うとおばさんは新しく入ってきた客の方に歩いて行った。
「さて、それじゃあまずはこれからいただくか」
そう言って僕は焦げ目が美味しそうなグラタンのチーズ部分にフォークをぷすりと刺すと、途端に中にあったドロドロのホワイトソースが表面に漏れ出す。
僕は表面のチーズとホワイトソースを絡めると一気に口の中に入れる。
「あっつ…!でも美味い…」
ホワイトソースは濃厚で今まで僕が食べてきた中で1番美味しいホワイトソースだと思った。さらに焦げたチーズのサクサクとした食感と焦げたことによる香りがたまらなく美味い。
夢中になって次の一口を食べようとフォークを刺すと今度はなにか塊に当たる。
なんだろうと思い引き上げてみるとそれはまず日本ではお目にかかれないであろう大きさの牡蠣だった。
僕は牡蠣にがぶりとかぶりつくと口の中に牡蠣の旨味が広がる。
かぶりついた面から牡蠣のエキスが漏れ出すのでもったいないと思い口を近づけて吸ってみると凝縮された牡蠣の旨味が口の中に広がる。
そして半分ほど残った牡蠣の身にホワイトソースをつけて食べるとまた美味い。
「はふっ…美味っ…!…ん?」
僕が夢中になって食べているとクルがじーっとこちらを見ていた。食べたいのだろうか?
僕は備え付けのナイフを取り出して小さく切ってやるとクルの前に牡蠣の身を持って行ってやる。
すると恐る恐るといった様子で牡蠣の身を鎌で捕まえると口元に運んで齧る。
一瞬クルの動きが止まる。しかしすぐにガツガツと牡蠣を食べ始める。相当気に入ったのだろう。
小さく切った牡蠣はすぐになくなってしまった。
「キュイイイイ!」
「ん?おかわりか?」
クルにおかわりを与えつつ食べ進めていくとアレだけあったグラタンはすぐになくなってしまった。
クルはよほど気に入ったのか皿に入り込んで身体中をホワイトソース塗れにしながら皿に残ったホワイトソースを舐めていた。
僕はデザートのリングレを手に取ると一口齧ってみる。
齧った瞬間にスッと抜ける様な爽やかな香りと優しい甘さが口の中に広がった。かなり気に入ってしまった。
クルをツンツンとつつくと「邪魔しないで!」といった様子でこっちを振り向いたクルにリングレを与えてみるが少し齧るとそっぽを向いてしまった。あまり好みではないようだ。
そして僕がリングレを食べ終わるのと同時にクルが皿の上のホワイトソースと身体についたホワイトソースを綺麗に舐め終わる。
僕が立ち上がると同時にクルが僕の肩の上にとまりそのまま服の中に潜って行く。
「ごちそうさまでした!」
「はーい!またおいで!値段は銀貨3枚よ!代金はそこに置いといてちょうだい!」
おばさんがそう言ったので席を立って銀貨を3枚置くと僕は店を後にした。さて、このあとはなにをするかな…          
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