操蟲の勇者

かずみ

第9話

「さて、ここでいいか」


 僕は今街の外の川辺に来ていた。なぜかというならここで鎧の使用と、ついでに戦力の増強をするためである。
 僕は道具袋からククル一式を取り出して鑑定眼を使用する。そこに出た結果は


       ◆◆◆◆◆◆
名称:闇皇蟲ククルカン【鎧化】
ランク:SSS
説明
 三皇蟲の1匹。かつて龍人族の国を滅ぼし、勇者によって敗れた。
 不死であり、古の勇者ハルヒコにより鎧の状態に強引に固定されている。鎧になった今でもその力は健在であり装着した者を食い殺す。
 尚、その他の装備は本体から分離した素材で作られている。
       ◆◆◆◆◆◆


 なるほど、つまりこの鎧ククルスケイル以外はただの強い防具である、と。
 それにしても三皇蟲って…魔王のようなものだろうか?しかし、名前の物騒さが違うな…
 目の前の鎧を観察すると生きているかのように表面に刻み込まれた赤いラインが脈動するかのように明滅を繰り返している。とてもかっこいい。
 そんな鎧を前に僕は『原初の蟲剣』を取り出し、鎧の脇腹を守る部分に突き刺す。
 多少の抵抗の後、剣はズブリと鎧に突き刺さる。うへぇ、生き物を刺した時と同じ感触だ。
 剣の突き刺さる感覚に憂鬱ゆううつになりながら剣を抜く。すると次の瞬間には鎧に開いた傷は塞がってしまう。しかし、先程までとは違い脇腹部分にはボッコリとコブができていた。
 そして待つこと30分、ついに鎧に変化が起きる。先程まで規則正しく明滅していた赤のラインが苦しそうに激しく明滅を開始したのであった。まるで内部にいる何かと闘っているかのように。
 そしてその瞬間は訪れる。
 コブが破裂しそうなほどに膨らみ次の瞬間


 ドパァ!


 そんな音と共にコブが破れ、粘液と共にカブトムシの幼虫のような蟲が5匹転がり落ちる。その蟲達は『キィキィ』と鳴いており、正直気持ち悪い。
 鑑定を使ってみると思った通り『闇皇蟲ククルカン【幼体】』と出る。おそらく成長すれば大国を滅ぼす化物である闇皇蟲になるのであろう。
 僕はおもむろに転がっている蟲を手に取ると目の前にステータスプレートが現れる。
 そこにはこう書かれていた。


『闇皇蟲ククルカン【幼体】を吸収することが可能です。実行しますか?[必要数5/5]Y/N』


 これは武器の強化なのか?そういえばクラスメイトがよくやっていた狩猟ゲームでも武器の強化に蟲を使っていたな…
 少し悩んだ僕だが、このまま幼虫を5匹飼っても意味がないと考え実行を許可する。
 僕の手元の蟲が消え、分子が1つ減って4になる。なるほど、あと4匹必要なのか…ぴったりだな。
 なにか運命的なものを感じながら僕は足元の蟲を掻き集めて剣に吸収させる。
 するとプレートが蟲剣のページへと変化し、ページの右端の1番下のばつ印のついた蟲剣のばつ印が消え去る。
 アイコンをタップすると目の前に名称が浮かぶ。


「えっと…【闇皇蟲の卵剣らんけん】?」


 蟲剣じゃないのか?あ、その隣に蟲剣はあるようだ。
 まあ、とりあえず出してみるか…
 そう考え『闇皇蟲の卵剣』を呼び出してみる。すると、初日の聖剣と同じように目の前に剣が現れる。
 全体的に暗い紫色で剣身は湾曲しており曲がった内側に刃が付いている、地球で呼ばれるところの所謂いわゆるククリナイフと呼ばれる武器に似た構造をしていた。


「なんだこれ?」


 僕は闇皇蟲の卵剣を手に取って鑑定を使った僕は不思議なものを見つける。


       ◆◆◆◆◆◆
名称:【闇皇蟲の卵剣】
<解放効果>
【器用】+10 
<スキル>
【植卵II[闇皇蟲]】…闇皇蟲ククルカン[成体]の卵を植え付けることが可能。※ただし対象は生命体に限る。使用回数を過ぎるとこのスキルは自動消滅する。[残使用回数1/1]
       ◆◆◆◆◆◆


 残使用回数って…しかも、一回しか使えないなんて…
 僕がスキルをどう使うか悩んでいるとどこから飛んできたのか足元に矢が突き刺さる。
 聖剣とミスリルの剣を取り出して周囲を見渡すと少し離れた森の方から矢が飛んでくる。
 僕はそれを右手に構えた聖剣で切り落とすと、そのままの勢いで森に向けて走り出す。
 そんな僕に矢が飛んでくるがあるときは避け、あるときは手に持つ剣で切り落としついに森にたどり着くと木の上にいる狙撃手の姿を確認できた。
 子供のような小さな体躯に黄色く汚れた犬歯、そしてその肌は薄汚れた緑色をしている。


「キシャアアア!」
「ゴブリンかよ…」


 ゴブリン、日本ではファンタジー系の物語に必ずと言っていいほど出てくる魔物である。
 その見た目は先程述べたように子供のような体躯であることがほとんどである。
 大抵が粗末な武器を使用している、所謂いわゆる雑魚、というやつである。
 そして木の上のゴブリンの手には先程僕を撃っていたのだろう弓が握られていた。
 ひとまず僕は足元にあった石を今大学を続けているゴブリンに投げつける。すると、その石は日本にいた頃とは比べ物にならない速度でゴブリンの顔面に直撃する。
 ゴブリンは鼻血を撒き散らしながら地面に激突すると荒い息遣いのままその場から逃げようとする。しかし、どこか捻ったのだろうか思うように動けないでいるようだ。
 僕はそんなゴブリンの背後に立ち、脚の腱を手に持った聖剣で切り裂き、聖剣と入れ替わりで【闇皇蟲の卵剣】を呼び出すとスキル【植卵II】を使用しながらゴブリンの右手に突き刺す。ゴブリンは「グギッ」と苦しそうな声を上げるとこちらを睨んでいる。なるほどそのくらいの知能はあるのか。
 そう考えながら剣を抜くと10秒ほど経ってゴブリンに変化が起こる。
 ゴブリンの右手が膨らみ始めそれをゴブリンが搔きむしり始めたのだった。


「グギッ!ギャギギ!」


 苦しそうに転がるゴブリン。しかし、終了は唐突だった。
 ドパァと幼虫達が出てきた時と同じようにゴブリンの右手が破裂して中から闇色の僕の掌くらいの大きさのカマキリが出てきたのだった。
 それを見たゴブリンは怒り狂ったのか、生き残るためか、残っていた左手でカマキリに向けて拳を振り下ろす。
 カマキリは慌てた様子もなく手の鎌を振るうとそれだけでゴブリンの左手がバラバラになる。なにあいつ強い。
 さらに、カマキリは止まることなく怯えているゴブリンに飛び掛ると鎌を数回振るう。それだけでそこにはミンチの山が出来上がってしまった。
 その場に響く音は風に揺られてざわめく森とカマキリがミンチの山を食べる咀嚼音そしゃくおんだけだった。          

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