操蟲の勇者

かずみ

第4話

 僕達は今ルナに案内されて玉座の間らしき場所に立っていた。え?ここまでの道のり?そりゃもうファンタジー全開でしたよ。金属鎧を着た兵士とか、美少女メイドとか、クラスの男子や女子が見たらはしゃぎそうなものばっかりだった。その証拠に僕の横の2人は未だにキャーキャー言っている。
 そんな2人のうるささに少しだけうんざりしながら周囲を見渡すがこの場にいる人間はわずか数人だけだった。
 最初に僕達をここに連れてきたルナ、その横にはルナに似た銀髪の美しい女性。その向かいには少々ふっくらした『ザ・貴族』といった見た目の中年男性、そしてその横にいる派手な鎧を着たむさ苦しい男。そして王様という、両の手で事足りる人数である。
 僕が周囲を見渡していると王様が口を開く。


「よくぞ参った、勇者達よ」


 えっと、参ったというより強制的に呼ばれたんだけどそれは言わないほうがいいよね。
 僕が空気を読んで黙っていると王様は続ける。


「それでは勇者達のステータスを申してみよ」
「ステータス?」


 僕達が聞き慣れない単語に首を傾げていると王様は不思議そうに言う。


「なんじゃ、ステータスを知らぬのか?ふむ、それでは【ステータス】と念じてみよ」
「【ステータス】…って、なんだこれ」


 僕が【ステータス】と念じると目の前に水色のパネルが現れる。
 そこにはこう書かれていた。


     ◆◆◆◆◆◆
 名前:【冬原夏樹】 性別:【男】
 職業:【魔剣士】/【双剣士】
 Lv.1
【HP】150/150 【MP】80/80
【筋力】75 【耐久】80
【魔力】80 【精神】95
【敏捷】95 【器用】85


【技能】
・剣術Lv.1  ・双剣術Lv.1 
・光魔術Lv.1 ・闇魔術Lv.1
・詐称術Lv.8 ・鑑定眼SSS


【称号】
・異世界人 ・勇者 ・裏の顔を持つ者


     ◆◆◆◆◆◆


 さらにその下に【使用可能聖剣】という項目もあるのでタップしてみると、ズラリとアイコンが並ぶが、その殆どが赤いばつ印が付いていてタップしてみても反応しないため仕方なく1つだけ白く発光している【原初の聖剣】というものを選ぶ。


「うわっ、なんだ!」


 突如僕の目の前に白色の飾り気のない剣が現れる。
 王様がこちらを見て言う。


「それが勇者の武器である【神器】じゃ、お主の神器は剣のようじゃのう」
「他にもあるんですか?」
「そうじゃのう、例えば…ほれ横の娘達の神器を見てみよ」


 僕が隣の白河と佐伯を見てみると2人の手には僕の剣と同じように白色の飾り気のない杖と槍が握られていた。
 僕は2人の武器を確認すると王様の方を向いて言う。


「ところで王様、僕達はこれからどうしたらいいんですか?なんで僕達が呼ばれたんですか?」
「うむ、貴様達にはこれから魔王を討伐する日までレベルを上げて欲しいのじゃ」


 王様の説明を要約すると、南の国の魔王が最近活性化しているらしく世界中の魔物達が凶暴になり、さらに見たことのない魔物まで現れているためそれをなんとかするために勇者を召喚した。ということらしい。随分ずいぶんと勝手な話である。
 説明を聞いて僕が面倒だと思っていると佐伯が叫ぶ。


「そんなの嫌です!家に帰してください!」
「魔王を倒すまで返すことはできんのじゃ」
「そんな…!」


 佐伯と白河はショックを受けたように口を押さえている。
 しかし僕は気がついてしまった。ルナの隣の女性が顔を下に逸らしたことに。
(ああ、なるほど嘘か)
 僕はそう瞬時に理解する。帰還できるなんて言うのは嘘で、おそらく魔王を討伐した後は十中八九殺されるのだろう。
 しかし、現状でそんなこと言っても何もできないだろう。というか、食事に毒を盛られたり夜中に部屋で殺されたりするのがオチだ。それなら気づいてないフリをしているのが賢いだろう。
 僕はそう考え、ショックを受けたかのような演技をする。
 そうしていると、ルナが明るく話しかける。


「安心してください皆さん、明日仲間を募集しますのできっと直ぐに魔王なんて倒せますよ!」
「あ、うん。ルナありがとう…」


 そう言ってルナは笑う。僕は内心「下手な演技だ」と思いながらも感謝の言葉を口にする。
 そうしていると王様が口を開く。


「無理な願いだと言うのはわかっている、しかし、どうか。この国のため、世界のために力を貸してくれ!」
「…わかりました、僕はやりますよ」


 嫌です、そう出かかった言葉を僕は押さえてそう答える。すると、佐伯と白河も「やる」と言ったのであった。


「そうか、それでは勇者達よ。今日はゆっくり休んでくれ、部屋は用意してある」


 そう言うと王様と周りにいた人間達は退室していき代わりに3人のメイドさんが現れて僕達をそれぞれの部屋へと案内してくれた。
 僕は部屋に入ると直ぐにステータスの【使用可能聖剣】をタップする。すると先程と変わらない画面が表示される。そして僕はさっき気がついた事を確かめるためにその画面を左横にスワイプする。すると__


「やっぱりね」


 画面がカラオケのデンモクの表示変更のようにクルリと裏返りさらにアイコンが表示された。
 しかしわかってはいたけど使用可能なのは左端の1つだけか…
 その聖剣をタップすると目の前に深緑色に黄色いラインがまるで生きているかのように明滅する不気味な剣が現れる。
 その剣の名前は【原初の蟲剣ちゅうけん】と言った。さらに、その剣に【鑑定眼SSS】を使用してみると…


「ククッ、あはははは!面白いなあ…!」


 そこに現れた鑑定結果に僕は笑いが止まらなかった。


「これが使用できるのは僕が【双剣士】だからかな?それとも誰でも使えるけど気がつかなかっただけ?でもまあ、気がついても使わないよねこんな武器」


 【原初の蟲剣ちゅうけん】の鑑定結果は__


       ◆◆◆◆◆◆
名称:【原初の蟲剣ちゅうけん
<解放効果>
【筋力】+15 【敏捷】+20
<スキル>
植卵しょくらん】…卵を植え付けてそこからかえった蟲を操ることができる。蟲は植え付けた苗床によって特性や姿を変える。※ただし植え付けられるのは生命体限定。植え付けられた生命体は大抵が蟲がかえると同時に死ぬ。
       ◆◆◆◆◆◆


 おそらく普通の人間なら気がついたとしても使用しないようなおぞましい武器である。おそらくこんなものがバレれば間違いなく僕は消されるであろう。
 そんなものは僕も望んではいない。


「ああ、これから楽しくなるぞ!」


 そう言って僕は1人部屋で笑うのであった。          

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