操蟲の勇者
第5話
「…知らない天井だ」
翌朝目覚めて早々僕はそう言った。いやほらネタ根性って大事だと思うんだよね。
そんな風に脳内で一人語りをしながら軽く伸びをして体をほぐしていく。
あの後は眠れなくて大変だった。地球では朝だったのにこっちの世界はもう夕方だったのだから。それでもなんとか朝特有の眠気を活かして熟睡したけど。
部屋を勝手に出るわけにもいかず、大人しくベッドに腰掛けてステータスを眺めていると部屋をノックされる、続いて聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「冬原君起きてるー?入るよー?」
「うん、起きてるよー、どうぞー」
「それじゃ失礼」
「お、おはよう冬原君…!」
「おはよう、白河さん。佐伯さん」
朝から僕の部屋へと訪ねてきたのはクラスメイトの佐伯と白河だった。こんな朝っぱらからなんのようなのだろう。
僕は2人を部屋に備え付けてある椅子に座るように促す。
椅子に座って2人は少しの間目配せをすると佐伯が口を開く。
「あのさ、朝から申し訳ないんだけど。昨日の告白のことちゃんと考えてくれた?」
「…ああ、あのことね?」
しまった、完全に忘れてた。
昨日の夜はこれからの生活について頭がいっぱいで正直忘れ去っていた。
僕は急いでどうやって断るかを考えて瞬時に回答を導き出す。
「白河さん、君の気持ちはとても嬉しいよ」
「じゃ、じゃあ!」
「でも、君とは付き合えない」
僕がそう言うと白河は泣きそうな顔になる。佐伯は聖槍を取り出していた。室内で武器を振り回すんじゃありません。
このままだと槍で突かれかねないので僕はさらに続ける。
「これから先何が起こるかわからないし、君を守れるか僕にはわからない、だから付き合えないんだ…ごめん…」
これはもっともらしいんじゃないか!?
僕は内心自分を褒める。だから佐伯よ、槍を構えるんじゃない。刺さるだろ。
そして、僕から振られた本人は泣くかと思いきや__
その顔は笑っていた。そして、白河はまだ震えている声で言う。
「そっか…それじゃあ、私が冬原君のこと守れるくらい強くなったら…また、考えてくれますか?」
面倒くせえええ!!!
しかし僕はそんな気持ちを表に出さずにニコリと優しく微笑む。
「あやちゃんよく言った!よーし!強くなって冬原君のこと見返してやろ!」
「あはは!ゆうちゃんくすぐったいよ〜!でも、ありがとう!」
そんな白河を見て佐伯は槍を消滅させると白河に抱きついてそう言った。
普通の人達が見たら女同士の友情に涙ぐむ人も居るのかもしれないが、そこは僕クオリティである。僕の感想は「ただただ鬱陶しい他所でやってくれ」である。
百合空間に僕がやられそうになっていると部屋の扉をノックする音が響き、続いて扉の隙間からひょこっとルナが顔を覗かせてニコリと笑うと部屋に入ってきて言う。
「朝食の準備が整いました、一緒に行きましょう」
「ありがとう、ほら、佐伯さんもいつまでも抱きついてないで2人とも行くよ」
「朝ごはーん!」
僕がじゃれあっていた2人に声をかけると佐伯は元気に立ち上がり扉から出て行くが白河はピクピク痙攣して動く気配がないので声をかけてみることにする。
「白河さん大丈夫?」
「う、ん…大丈夫…」
あー、これはダメだな…仕方ない、お腹も空いたし連れて行くか。
僕はそう思い白河を抱きかかえる。丁度お姫様抱っこというやつだ。
予想通り白河は顔を真っ赤にしている。
「にゃ、にゃにするの!?ふゆはらくん!?」
「ほら、歩けないなら運んで行ってあげようかなって。…嫌だった?」
「そんなことないです!!!」
予想以上に食い付きが良くて軽く引いた。
ルナに案内されてしばらく歩くと食堂の扉前で「もう大丈夫」と白河が言ったので降ろすと、やはり彼女の顔は真っ赤になっていた。それを見るルナの目は無関心といった様子だったけれども。
そして、ルナに促されて室内に入るとその荘厳さに僕達はびっくりした。広い部屋に赤い絨毯、とても広いテーブルに純白のテーブルクロス、そしてその上には精緻な細工が施された燭台に、天井には豪華なシャンデリアがぶら下がっていた。そして、そのテーブルに王様と昨日ルナの横にいた女性と佐伯が席についていた。
「どうぞ勇者様方、そちらのお席へお掛け下さい」
ルナはそう言うと女性の向かいの席に座る。
僕達もいつまでも立っているわけにはいかないので佐伯の横に座る。
僕達が座ったことを確認してルナが口を開く。
「こうして皆さんで朝食を食べるので互いに自己紹介をしてみてはいかがでしょうか?」
「ふむ、面白そうじゃな」
ルナが自己紹介を提案すると王様は微笑みながら肯定する。
王様が肯定するとルナは笑いながら言う。
「勇者様方は知っておられると思いますが私はルナ=シュガルです」
そう言ってルナはニコリと笑った。相変わらず目の奥は笑っていないが。
次に向かいの女性が口を開く。
「わ、私はミア=シュガルです…えっと、ルナの姉、です…」
向かいの女性、ミアはオドオドとそう言うと席についた。そんなミアをルナは忌々しげに睨んでいた。おい、せめて表情取り繕えよ。
僕がルナを見ていると今度は王様が口を開く。
「余はエルディア=ハル=シュガル8世である」
王様は堂々とそう言うと席についた。
今度は僕達の番か…
そう考えて僕は立ち上がって言う。
「僕の名前は冬原夏樹です。そして右の短髪の子が佐伯優希、左の子が白河綾音です」
「ふむ、フユハラ殿にサエキ殿にシロカワ殿か」
王様の名前の呼び方は若干イントネーションが違ったが、まあ仕方ないだろう。
僕達が自己紹介を終えたタイミングを見計らったかのように食事が運び込まれてくる。
ルナは手を顔の横で合わせて言う。
「さあ、丁度食事も来たところですし食べるとしましょう!」
食事はパン、サラダ、スープ、鶏肉のような肉、とザ洋食だった。
後で知ったことだったが肉はなんと魔物の肉だったらしいのだが美味しかったので良しとします。          
翌朝目覚めて早々僕はそう言った。いやほらネタ根性って大事だと思うんだよね。
そんな風に脳内で一人語りをしながら軽く伸びをして体をほぐしていく。
あの後は眠れなくて大変だった。地球では朝だったのにこっちの世界はもう夕方だったのだから。それでもなんとか朝特有の眠気を活かして熟睡したけど。
部屋を勝手に出るわけにもいかず、大人しくベッドに腰掛けてステータスを眺めていると部屋をノックされる、続いて聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「冬原君起きてるー?入るよー?」
「うん、起きてるよー、どうぞー」
「それじゃ失礼」
「お、おはよう冬原君…!」
「おはよう、白河さん。佐伯さん」
朝から僕の部屋へと訪ねてきたのはクラスメイトの佐伯と白河だった。こんな朝っぱらからなんのようなのだろう。
僕は2人を部屋に備え付けてある椅子に座るように促す。
椅子に座って2人は少しの間目配せをすると佐伯が口を開く。
「あのさ、朝から申し訳ないんだけど。昨日の告白のことちゃんと考えてくれた?」
「…ああ、あのことね?」
しまった、完全に忘れてた。
昨日の夜はこれからの生活について頭がいっぱいで正直忘れ去っていた。
僕は急いでどうやって断るかを考えて瞬時に回答を導き出す。
「白河さん、君の気持ちはとても嬉しいよ」
「じゃ、じゃあ!」
「でも、君とは付き合えない」
僕がそう言うと白河は泣きそうな顔になる。佐伯は聖槍を取り出していた。室内で武器を振り回すんじゃありません。
このままだと槍で突かれかねないので僕はさらに続ける。
「これから先何が起こるかわからないし、君を守れるか僕にはわからない、だから付き合えないんだ…ごめん…」
これはもっともらしいんじゃないか!?
僕は内心自分を褒める。だから佐伯よ、槍を構えるんじゃない。刺さるだろ。
そして、僕から振られた本人は泣くかと思いきや__
その顔は笑っていた。そして、白河はまだ震えている声で言う。
「そっか…それじゃあ、私が冬原君のこと守れるくらい強くなったら…また、考えてくれますか?」
面倒くせえええ!!!
しかし僕はそんな気持ちを表に出さずにニコリと優しく微笑む。
「あやちゃんよく言った!よーし!強くなって冬原君のこと見返してやろ!」
「あはは!ゆうちゃんくすぐったいよ〜!でも、ありがとう!」
そんな白河を見て佐伯は槍を消滅させると白河に抱きついてそう言った。
普通の人達が見たら女同士の友情に涙ぐむ人も居るのかもしれないが、そこは僕クオリティである。僕の感想は「ただただ鬱陶しい他所でやってくれ」である。
百合空間に僕がやられそうになっていると部屋の扉をノックする音が響き、続いて扉の隙間からひょこっとルナが顔を覗かせてニコリと笑うと部屋に入ってきて言う。
「朝食の準備が整いました、一緒に行きましょう」
「ありがとう、ほら、佐伯さんもいつまでも抱きついてないで2人とも行くよ」
「朝ごはーん!」
僕がじゃれあっていた2人に声をかけると佐伯は元気に立ち上がり扉から出て行くが白河はピクピク痙攣して動く気配がないので声をかけてみることにする。
「白河さん大丈夫?」
「う、ん…大丈夫…」
あー、これはダメだな…仕方ない、お腹も空いたし連れて行くか。
僕はそう思い白河を抱きかかえる。丁度お姫様抱っこというやつだ。
予想通り白河は顔を真っ赤にしている。
「にゃ、にゃにするの!?ふゆはらくん!?」
「ほら、歩けないなら運んで行ってあげようかなって。…嫌だった?」
「そんなことないです!!!」
予想以上に食い付きが良くて軽く引いた。
ルナに案内されてしばらく歩くと食堂の扉前で「もう大丈夫」と白河が言ったので降ろすと、やはり彼女の顔は真っ赤になっていた。それを見るルナの目は無関心といった様子だったけれども。
そして、ルナに促されて室内に入るとその荘厳さに僕達はびっくりした。広い部屋に赤い絨毯、とても広いテーブルに純白のテーブルクロス、そしてその上には精緻な細工が施された燭台に、天井には豪華なシャンデリアがぶら下がっていた。そして、そのテーブルに王様と昨日ルナの横にいた女性と佐伯が席についていた。
「どうぞ勇者様方、そちらのお席へお掛け下さい」
ルナはそう言うと女性の向かいの席に座る。
僕達もいつまでも立っているわけにはいかないので佐伯の横に座る。
僕達が座ったことを確認してルナが口を開く。
「こうして皆さんで朝食を食べるので互いに自己紹介をしてみてはいかがでしょうか?」
「ふむ、面白そうじゃな」
ルナが自己紹介を提案すると王様は微笑みながら肯定する。
王様が肯定するとルナは笑いながら言う。
「勇者様方は知っておられると思いますが私はルナ=シュガルです」
そう言ってルナはニコリと笑った。相変わらず目の奥は笑っていないが。
次に向かいの女性が口を開く。
「わ、私はミア=シュガルです…えっと、ルナの姉、です…」
向かいの女性、ミアはオドオドとそう言うと席についた。そんなミアをルナは忌々しげに睨んでいた。おい、せめて表情取り繕えよ。
僕がルナを見ていると今度は王様が口を開く。
「余はエルディア=ハル=シュガル8世である」
王様は堂々とそう言うと席についた。
今度は僕達の番か…
そう考えて僕は立ち上がって言う。
「僕の名前は冬原夏樹です。そして右の短髪の子が佐伯優希、左の子が白河綾音です」
「ふむ、フユハラ殿にサエキ殿にシロカワ殿か」
王様の名前の呼び方は若干イントネーションが違ったが、まあ仕方ないだろう。
僕達が自己紹介を終えたタイミングを見計らったかのように食事が運び込まれてくる。
ルナは手を顔の横で合わせて言う。
「さあ、丁度食事も来たところですし食べるとしましょう!」
食事はパン、サラダ、スープ、鶏肉のような肉、とザ洋食だった。
後で知ったことだったが肉はなんと魔物の肉だったらしいのだが美味しかったので良しとします。          
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