僕のブレスレットの中が最強だったのですが
さんじゅっかいめ 休んで欲しい、かな?
最上階を制覇し続けているのも悪いので、翌朝ルネックスは空いた土地に街みたいなのを作る計画を立てた。
シェリアとカレン、フレアルが怖い表情をしているが気にしない。
コレムから渡された空いた広めの土地の情報と地図が入っている書類に目を通していく。そしてそこにはハイレフェアとハーライトがまとめた奴隷達の詳しい情報も入っている。
「よし、ここにしよう。じゃあ僕はちょっと行ってくる……ん?」
「ま、待って下さいルネックスさん!」
「はいはーいルネックス! 今日は行くの許さないからね!」
「わたしも……許さない……待って……」
服の裾を掴まれてドアノブを掴もうとしたルネックスが振り返る。カレンとフレアル、シェリアの言葉を聞いて一瞬固まる。
リーシャやリンネ、フェンラリアも同意して頷いてくれているようだ。
「でも、早く終わらせないと僕の計画が始まらないよ」
「ねえねえるねっくす。けいかくとかいいから……むちゃしてもなにもはじまらないよ? はじまりも、終わりもないよ?」
「無茶して……また倒れたりでもしたら……わたしたち……悲しむよ?」
「そうです―――です。ぱぱ、無理しちゃだめですよ―――ですよ!」
困った顔でルネックスがそう伝えるとフェンラリアが威圧をかけてのように器用に目だけ笑っていない顔を向けてそう言った。
追い打ちをかけるようにリーシャとカレンの言葉がルネックスに突き刺さる。
後ろではくすくすとリンネが笑っているが、彼女も反論する気はないようだ。
全員がルネックスの計画を後回しにしてでも彼を休ませたいという純粋な一心で提案しているのを見てルネックスも優しく苦笑いを浮かべた。
優しい皆の気づかいへの笑いと必死さへの苦笑い。
「うん、うん、分かったよ……話でもしながら過ごそうか」
「そうだねぇ、あれからぁあんまり話してないよねぇ」
「ねえるねっくす、前代大精霊様のぎりのむすこのなまえ……ちがった!」
「え」
「フィンっていうひとでね、あたしのかんちがいだったみたい!」
いきなり話された重大事実にルネックスもシェリアも固まった。
リンネたちは話をよく分かっていないようでルネックスの腕にぶら下がっている。
「うんー、ディステシアさまがね、神界へいくときにそういってたの」
「え、ディステシア様神界に行ったの?? なんで?」
「なんかね、かみさまによびだされたんだって。穏やかではないっていってたんだけど……あたしはなんだかふあん」
「ディステシア様くらいの強さですし、安心してもいいんじゃないですか?」
『ご主人様、本当に穏やかではないようですよ。あたちはこれ以上言えませんがね』
フェンラリアは楽観そうな顔をしながらも少し不安気にしてルネックスに話していた。ルネックスは優しく声をかけ、相変わらず重い腕をもう片方の腕で支えた。
アーナーの声が聞こえたが、よく意味が解らないので頭に留めておくだけにする。
さて……フェンラリアの話も終わったようだ。
他の女子陣達の言いたいことや愚痴が飛んでくるだろう。ルネックスは深呼吸を吸って覚悟をし、ベットの上に座って話を聞く準備をした。
最初に話し始めたのはリーシャだった。
「リーシャが、ダンジョンに行き始めた理由、気になりませんか―――ませんか?」
「何で十二歳でダンジョン何かに言ってるの?」
「あぁ、それ私も気になったよ。しかも一番はその強さ!」
フレアルの言葉でやっぱり、という顔をしてリーシャがくすりと笑った。ルネックスも最初から気になっていて、こんな子供が? と思ってしまったが失礼だと思うのであの時は止めておいた。
しかし自分から話すのならば、話してもらった方がいい。
「リーシャのねえちゃんは、あのダンジョンに挑んでいたんです―――です。でも、不慮の事故、で。亡くなって……リーシャがその思いを、引き継いでいたんです―――です」
「そっか、それでさ――――――」
続きの言葉を話そうとしたルネックスは一瞬ためらった。
確かに仲間のことを知る機会でいいのだが今から彼が話すことはリーシャの気に障らないかとても気になるのだ。
リーシャの方を見れば微笑んで次の言葉を聞いている。
周りもルネックスを見つめている。言わないわけには、行かないだろう。
「―――——なんで、亡くなっちゃったの?」
表情が、瞳が、裏にまだ何か隠されていると語っている。
「……仲間の、裏切りです――です。リーシャも聞いたときは本当かと驚きました――ました。なにせとっても頼れる方でしたから――から」
「そうなんだね、もう此処に居るみんな何か過酷だねえ」
「私が一番だという自信があります!!」
「わたし……シェリアと……同じくらい……だと思うよ……?」
「みんな何の自慢してるの!? それ言うなら僕が一番なんじゃない!?」
結局は張り合ってしまったルネックス。フレアル、カレン、シェリア、リンネ、リーシャ、フェンラリアの順番に振り返り、皆で考え込んだ。
「るねっくすがいちばんやばかったね、おもいだしたくもないよ」
「え、何か僕変なこと言った!? え!? なんで皆ちょっと距離とってるの!?」
「私もどうして皆さんが距離をとっているのか分かりませんね」
何の自慢をしてるのか、という疑問からの自分も同じ自慢をする……確かにルネックスが一番残酷な人生を歩んできたのかもしれないが、皆は少し引いたのだろう。
しかしルネックスに対しての好感度100通り越しての1000%であるシェリアとフェンラリアは表情を変えずに皆が下がったことに疑問を抱いた。
リンネとリーシャがぷっと笑いだし、やがて笑い声が広がる。この二人は最初こそ仲が悪かったものの、今では親友までになっている。
付き合ってみれば、意外に楽しかったりもするのだ。
「じゃあ次は私です! 奴隷たちを鍛錬しても、神界には届かないと思います。ルネックスさんはディステシア様から訓練を受けていて神くらいに強くなっていますが、彼女ら、彼らはただの人間です。どうするつもりなのですか?」
「うーん、それも今考え中なんだけどね。出来ればシェリアは鬼族から、リンネは魔女たちから僕に協力してくれる人を引き出してほしいんだ」
「ん、あたしもできるよ! せいれいたち、みんなるねっくすがすきだから!」
シェリアが手を上げて発言していた意見は、先程ルネックスが目を通していた奴隷達をまとめてある書類を見て彼も感じたことだ。
それについて案を立ててみたのだが、彼女らの都合も考えて出来るかはわからない。
もしできないと言われるのならば、ルネックスにはまだ方法がある。
「できます。勿論できます。ルネックスさんのためならなんだってできます。私はだてに上級の鬼じゃないんです! みんな私についてきますよ!」
シェリア・フェリス
レベル:66
魔力:5600
体力:6500
運:200
属性「闇(珍)/時空」
称号「鬼(上級)」
スキル「呪いLV15、動作不能眼LV6、鬼の威圧LV12、鬼の角LV5、闇杖術LV12」
(うん、知ってるよ)
フェンラリアが面白さ半分で鑑定しているのを見てルネックスは一瞬固まった。しかしフェンラリアにとっては何でもないようで「凄いねー」と笑っていただけだった。
レベルだけを見ると軽くルネックスを超えている。
闇杖術については賢者の使う聖杖術の真逆の術で、魔王軍の闇賢者が使うもの。鬼族がこのスキルを持つのはありえないはずだが、なぜ。
「私もぉ、出来るはずだよぉ。魔女の中ではぁ、上級だからねぇ?」
「そう。皆ありがとうね」
「じゃあつぎはあたしー、ききたいことがあるんだけどー」
ウィンクをして答えたリンネ。ルネックスは安心し、同時にこのような心優しい仲間を持って良かったとも思った。
フェンラリアが元気な声を上げながら手を上げる。
「どうしたの?」
「大賢者ってあたしの万分の一でたおせるのー? だってさいしょるねっくすいってたでしょ? あたしの万分の一でたおせるって」
「……昔の話だよ、今の大賢者はフェンラリアでも無理かな」
だよね、とフェンラリアは苦笑いする。
昔の大賢者は神や精霊には遠く及ばず、竜を倒すのでさえ苦戦をしていた。過去の勇者と共に倒しに行って満身創痍で帰って来たのだ。
ルネックスだったらもしかしたら一瞬で倒せるかもしれない相手なのに、だ。というか結構前に一瞬で倒してしまったことがあるのだ。
しかし昔の文献に載っていた大賢者は500年前の者。ルネックス的には大賢者に寿命はないと思い込んでいたので、きっと当時はそう言ったのだろう。
今の大賢者を表すにはルネックスの語彙力が足りなくなってしまう。称号には噂によると「全てを超えるもの」とついていて、彼女はこの称号に恥じぬよう全てを超え続けている。
大賢者テーラ。
それが彼女の名だ。それもルネックスが最近知ったのだが。だとしたら神界に突入した時に聞こえた声はテーラのものだったのだろう。
「てーら様とはね、あったことはないんだけど、その力のつよさならしってる」
「え? そうなの?」
「いっかい精霊界にてーら様のこうげきまじゅつがぶちこまれたことがあるの」
まだ200年前辺りの事で、テーラが力を扱いきれていないときに魔力を勢いよく放出して精霊界半壊。そしてテーラは自分の力を自覚して訓練に励んだのだという。
精霊界半壊についてはテーラ自身が軽く直してしまったのだという。
この世界アルティディアの何倍も何十倍もある精霊界を、一人で、一瞬で修復したのだ。
「ねえねえルネックス……ロゼス達今どうしてるのかな。もしも、ねえもしもだよ、私達に敵う能力を持っていたりでもしたら……」
「それは大変になっちゃうね。でもさ、僕たちは神界の征服を狙ってるんだ、そんなロゼス達のことに構っていられない、適当にあしらえばいいでしょ? 例えどれだけ強くても。テーラ様くらいでもね。そんなところで足止めを喰らっちゃいけないんだ」
「そうですよね、私達、無敵ですから!」
「そう……だよね……わたし達は無敵……敵は全部……薙ぎ払う……」
ふわり、と凛々しく優しく美しく、華やかな笑顔を浮かべてシェリアとカレンは言った。その笑顔は魅力的で、その場にいた全員が見入ってしまった。
そうだ、ルネックス達は無敵なのだと改めて自覚した時でもあった。
ルネックスがベッドを整理して寝る準備を始める。
「ねぇ、ルネックス?」
「ん? 何、リンネ」
「無理しすぎちゃ、駄目だよぉ?」
「え、僕無理してないよ」
「……嘘ついてるねぇ、じゃあこの傷はなぁに?」
「っ……あぁ、それは転んで」
「疲れて目がかすんだんじゃないのぉ? これで無理してないって言えるぅ?」
手首をつかまれて袖をまくり上げられると、真っ赤に染まった包帯が腕にぐるぐる巻きにされていた。それを発見したリンネの発見力は素直に凄いと思った。
リンネの言葉攻めにルネックスは返す言葉が無くなって黙り込んだ。
「うん、まあいいよぉ。でもぉ手当は明日ちゃんとするからぁ、もう無茶しないって約束してぇ? 怪我をしてもちゃんと言ってねぇ?」
「う、うん。ちゃんと言うよ」
リンネの優しさにルネックスは微笑んだ。
その日、皆は感動、嬉しさ、なつかしさ、ほほえましさ……たくさんの感情を抱いて眠りについた。
シェリアとカレン、フレアルが怖い表情をしているが気にしない。
コレムから渡された空いた広めの土地の情報と地図が入っている書類に目を通していく。そしてそこにはハイレフェアとハーライトがまとめた奴隷達の詳しい情報も入っている。
「よし、ここにしよう。じゃあ僕はちょっと行ってくる……ん?」
「ま、待って下さいルネックスさん!」
「はいはーいルネックス! 今日は行くの許さないからね!」
「わたしも……許さない……待って……」
服の裾を掴まれてドアノブを掴もうとしたルネックスが振り返る。カレンとフレアル、シェリアの言葉を聞いて一瞬固まる。
リーシャやリンネ、フェンラリアも同意して頷いてくれているようだ。
「でも、早く終わらせないと僕の計画が始まらないよ」
「ねえねえるねっくす。けいかくとかいいから……むちゃしてもなにもはじまらないよ? はじまりも、終わりもないよ?」
「無茶して……また倒れたりでもしたら……わたしたち……悲しむよ?」
「そうです―――です。ぱぱ、無理しちゃだめですよ―――ですよ!」
困った顔でルネックスがそう伝えるとフェンラリアが威圧をかけてのように器用に目だけ笑っていない顔を向けてそう言った。
追い打ちをかけるようにリーシャとカレンの言葉がルネックスに突き刺さる。
後ろではくすくすとリンネが笑っているが、彼女も反論する気はないようだ。
全員がルネックスの計画を後回しにしてでも彼を休ませたいという純粋な一心で提案しているのを見てルネックスも優しく苦笑いを浮かべた。
優しい皆の気づかいへの笑いと必死さへの苦笑い。
「うん、うん、分かったよ……話でもしながら過ごそうか」
「そうだねぇ、あれからぁあんまり話してないよねぇ」
「ねえるねっくす、前代大精霊様のぎりのむすこのなまえ……ちがった!」
「え」
「フィンっていうひとでね、あたしのかんちがいだったみたい!」
いきなり話された重大事実にルネックスもシェリアも固まった。
リンネたちは話をよく分かっていないようでルネックスの腕にぶら下がっている。
「うんー、ディステシアさまがね、神界へいくときにそういってたの」
「え、ディステシア様神界に行ったの?? なんで?」
「なんかね、かみさまによびだされたんだって。穏やかではないっていってたんだけど……あたしはなんだかふあん」
「ディステシア様くらいの強さですし、安心してもいいんじゃないですか?」
『ご主人様、本当に穏やかではないようですよ。あたちはこれ以上言えませんがね』
フェンラリアは楽観そうな顔をしながらも少し不安気にしてルネックスに話していた。ルネックスは優しく声をかけ、相変わらず重い腕をもう片方の腕で支えた。
アーナーの声が聞こえたが、よく意味が解らないので頭に留めておくだけにする。
さて……フェンラリアの話も終わったようだ。
他の女子陣達の言いたいことや愚痴が飛んでくるだろう。ルネックスは深呼吸を吸って覚悟をし、ベットの上に座って話を聞く準備をした。
最初に話し始めたのはリーシャだった。
「リーシャが、ダンジョンに行き始めた理由、気になりませんか―――ませんか?」
「何で十二歳でダンジョン何かに言ってるの?」
「あぁ、それ私も気になったよ。しかも一番はその強さ!」
フレアルの言葉でやっぱり、という顔をしてリーシャがくすりと笑った。ルネックスも最初から気になっていて、こんな子供が? と思ってしまったが失礼だと思うのであの時は止めておいた。
しかし自分から話すのならば、話してもらった方がいい。
「リーシャのねえちゃんは、あのダンジョンに挑んでいたんです―――です。でも、不慮の事故、で。亡くなって……リーシャがその思いを、引き継いでいたんです―――です」
「そっか、それでさ――――――」
続きの言葉を話そうとしたルネックスは一瞬ためらった。
確かに仲間のことを知る機会でいいのだが今から彼が話すことはリーシャの気に障らないかとても気になるのだ。
リーシャの方を見れば微笑んで次の言葉を聞いている。
周りもルネックスを見つめている。言わないわけには、行かないだろう。
「―――——なんで、亡くなっちゃったの?」
表情が、瞳が、裏にまだ何か隠されていると語っている。
「……仲間の、裏切りです――です。リーシャも聞いたときは本当かと驚きました――ました。なにせとっても頼れる方でしたから――から」
「そうなんだね、もう此処に居るみんな何か過酷だねえ」
「私が一番だという自信があります!!」
「わたし……シェリアと……同じくらい……だと思うよ……?」
「みんな何の自慢してるの!? それ言うなら僕が一番なんじゃない!?」
結局は張り合ってしまったルネックス。フレアル、カレン、シェリア、リンネ、リーシャ、フェンラリアの順番に振り返り、皆で考え込んだ。
「るねっくすがいちばんやばかったね、おもいだしたくもないよ」
「え、何か僕変なこと言った!? え!? なんで皆ちょっと距離とってるの!?」
「私もどうして皆さんが距離をとっているのか分かりませんね」
何の自慢をしてるのか、という疑問からの自分も同じ自慢をする……確かにルネックスが一番残酷な人生を歩んできたのかもしれないが、皆は少し引いたのだろう。
しかしルネックスに対しての好感度100通り越しての1000%であるシェリアとフェンラリアは表情を変えずに皆が下がったことに疑問を抱いた。
リンネとリーシャがぷっと笑いだし、やがて笑い声が広がる。この二人は最初こそ仲が悪かったものの、今では親友までになっている。
付き合ってみれば、意外に楽しかったりもするのだ。
「じゃあ次は私です! 奴隷たちを鍛錬しても、神界には届かないと思います。ルネックスさんはディステシア様から訓練を受けていて神くらいに強くなっていますが、彼女ら、彼らはただの人間です。どうするつもりなのですか?」
「うーん、それも今考え中なんだけどね。出来ればシェリアは鬼族から、リンネは魔女たちから僕に協力してくれる人を引き出してほしいんだ」
「ん、あたしもできるよ! せいれいたち、みんなるねっくすがすきだから!」
シェリアが手を上げて発言していた意見は、先程ルネックスが目を通していた奴隷達をまとめてある書類を見て彼も感じたことだ。
それについて案を立ててみたのだが、彼女らの都合も考えて出来るかはわからない。
もしできないと言われるのならば、ルネックスにはまだ方法がある。
「できます。勿論できます。ルネックスさんのためならなんだってできます。私はだてに上級の鬼じゃないんです! みんな私についてきますよ!」
シェリア・フェリス
レベル:66
魔力:5600
体力:6500
運:200
属性「闇(珍)/時空」
称号「鬼(上級)」
スキル「呪いLV15、動作不能眼LV6、鬼の威圧LV12、鬼の角LV5、闇杖術LV12」
(うん、知ってるよ)
フェンラリアが面白さ半分で鑑定しているのを見てルネックスは一瞬固まった。しかしフェンラリアにとっては何でもないようで「凄いねー」と笑っていただけだった。
レベルだけを見ると軽くルネックスを超えている。
闇杖術については賢者の使う聖杖術の真逆の術で、魔王軍の闇賢者が使うもの。鬼族がこのスキルを持つのはありえないはずだが、なぜ。
「私もぉ、出来るはずだよぉ。魔女の中ではぁ、上級だからねぇ?」
「そう。皆ありがとうね」
「じゃあつぎはあたしー、ききたいことがあるんだけどー」
ウィンクをして答えたリンネ。ルネックスは安心し、同時にこのような心優しい仲間を持って良かったとも思った。
フェンラリアが元気な声を上げながら手を上げる。
「どうしたの?」
「大賢者ってあたしの万分の一でたおせるのー? だってさいしょるねっくすいってたでしょ? あたしの万分の一でたおせるって」
「……昔の話だよ、今の大賢者はフェンラリアでも無理かな」
だよね、とフェンラリアは苦笑いする。
昔の大賢者は神や精霊には遠く及ばず、竜を倒すのでさえ苦戦をしていた。過去の勇者と共に倒しに行って満身創痍で帰って来たのだ。
ルネックスだったらもしかしたら一瞬で倒せるかもしれない相手なのに、だ。というか結構前に一瞬で倒してしまったことがあるのだ。
しかし昔の文献に載っていた大賢者は500年前の者。ルネックス的には大賢者に寿命はないと思い込んでいたので、きっと当時はそう言ったのだろう。
今の大賢者を表すにはルネックスの語彙力が足りなくなってしまう。称号には噂によると「全てを超えるもの」とついていて、彼女はこの称号に恥じぬよう全てを超え続けている。
大賢者テーラ。
それが彼女の名だ。それもルネックスが最近知ったのだが。だとしたら神界に突入した時に聞こえた声はテーラのものだったのだろう。
「てーら様とはね、あったことはないんだけど、その力のつよさならしってる」
「え? そうなの?」
「いっかい精霊界にてーら様のこうげきまじゅつがぶちこまれたことがあるの」
まだ200年前辺りの事で、テーラが力を扱いきれていないときに魔力を勢いよく放出して精霊界半壊。そしてテーラは自分の力を自覚して訓練に励んだのだという。
精霊界半壊についてはテーラ自身が軽く直してしまったのだという。
この世界アルティディアの何倍も何十倍もある精霊界を、一人で、一瞬で修復したのだ。
「ねえねえルネックス……ロゼス達今どうしてるのかな。もしも、ねえもしもだよ、私達に敵う能力を持っていたりでもしたら……」
「それは大変になっちゃうね。でもさ、僕たちは神界の征服を狙ってるんだ、そんなロゼス達のことに構っていられない、適当にあしらえばいいでしょ? 例えどれだけ強くても。テーラ様くらいでもね。そんなところで足止めを喰らっちゃいけないんだ」
「そうですよね、私達、無敵ですから!」
「そう……だよね……わたし達は無敵……敵は全部……薙ぎ払う……」
ふわり、と凛々しく優しく美しく、華やかな笑顔を浮かべてシェリアとカレンは言った。その笑顔は魅力的で、その場にいた全員が見入ってしまった。
そうだ、ルネックス達は無敵なのだと改めて自覚した時でもあった。
ルネックスがベッドを整理して寝る準備を始める。
「ねぇ、ルネックス?」
「ん? 何、リンネ」
「無理しすぎちゃ、駄目だよぉ?」
「え、僕無理してないよ」
「……嘘ついてるねぇ、じゃあこの傷はなぁに?」
「っ……あぁ、それは転んで」
「疲れて目がかすんだんじゃないのぉ? これで無理してないって言えるぅ?」
手首をつかまれて袖をまくり上げられると、真っ赤に染まった包帯が腕にぐるぐる巻きにされていた。それを発見したリンネの発見力は素直に凄いと思った。
リンネの言葉攻めにルネックスは返す言葉が無くなって黙り込んだ。
「うん、まあいいよぉ。でもぉ手当は明日ちゃんとするからぁ、もう無茶しないって約束してぇ? 怪我をしてもちゃんと言ってねぇ?」
「う、うん。ちゃんと言うよ」
リンネの優しさにルネックスは微笑んだ。
その日、皆は感動、嬉しさ、なつかしさ、ほほえましさ……たくさんの感情を抱いて眠りについた。
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