僕のブレスレットの中が最強だったのですが
にじゅっかいめ ランク上げかな?①
聖神。
毎度毎度夢に出てくるその単語を思い出すたびに心がぎゅう、と締め付けられる。ルネックスだけではなく、恐らくほかのメンバーも同じ気持ちだろう。
だって自分らは普通の人だと称して安全な街にいるのだ。
だって自分らは、本当は危険人物として拘束されるべきなのだから。
嘘をついている気分になり、どうしても安静にはできなかった。
「ねえルネックス、本当に良いの?」
「良くないとしても、追放があったとしても僕は事実を隠したくはないからね」
「そうですね。私も最近いやな予感が増してきているんです」
寝ていても、心が落ち着かない。
ルネックスに至っては夢の中で「もう……すぐ……」と囁きが聞こえるくらいになったのだ。
シェリア、フレアル、フェンラリア、ルネックスの四人で今コレムの部屋へ向かっている。ひとつは聖神のことを詳しく話すのと、昨日のリュスタたちの判決が上手く行っているかの質問が目的だ。
「きょむせいれいさまがはなしたように、ほんとうにうごきだしたらやっかいだよね」
「うん。フェンラリアが慕うくらいなんだし、虚無精霊さんの話は本当なんだと思う」
「そうだとしたらこの国を守れないかもしれないね」
「大変なことになりますね……反乱が終わったばかりなのに」
反乱をおさめながらも、ルネックス達は考えていたのだ。
いつこのことを話すか、あるいは自分達からこの国を出ていくのか。
「コレム様……いらっしゃいますか?」
コンコン、と軽くコレムの部屋のドアを叩いた。
コレムにとっては早い時間ではないが今は朝六時。この時間に人が訪れてくることはまず稀に無いだろう。
ルネックス達だということを確認し、コレムは彼らを部屋に入れた。
「……昨日の、判決は上手く行っていますか?」
「あぁ、大臣たちも渋々だが納得したようでリュスタ様も納得したんだ」
その表情は安堵に包まれていた。
余計、ルネックスの心は痛み、今から話すことをかみしめて言葉に出す。
「そして本題ですが……聖神は知っていますか」
「もちろん知っている、神でありながら邪神の称号を持つ禁忌なる神。それがどうかしたのか?」
「僕は、聖神に呪われている身です。ちょっと凄い人に「聖神が動く」と言われてしまったので此処に報告させていただきます……もしかしたら国が被害にあうかもしれません」
「うむ……」
「ですから、コレム様が望まなくとも僕はこの国から出ていく準備はできています。国に被害が出ないように、たくさんの場所を飛び回って聖神の注意力を分散させようと思っています」
しばしの、沈黙。
コレムは黙ってルネックスを見つめ、ルネックスは黙ってコレムを見つめた。
シェリア、フレアル、フェンラリアを襲ったのは恐怖感。もしもこれで住む場所を失ってしまったらと思うと、もしも迫害の対象になったらと思うと、恐怖は襲ってくるものなのだ。
しばらくして、コレムが口を開いた。
「私と貴様が築いた信頼を何だと思っている」
「へ?」
「あの時貴様は私に信頼を欲しがった。そしてそれだけでも私は驚き、喜んでいたのにさらに国まで救ってくれた。その時私が貴様に築いた信頼を、何だと思っている」
「僕は……それほど信頼されていたのですか?」
信頼なんて、されたことがない。
一言で言うとルネックスはボッチ生活で、信頼など築いたことがなかったし現時点でも気にしたことは無かった。
とんでもない信頼を築かれていた事なんて、全く気付いていなかった。
鈍い鈍い、と女性陣が喚いた。
「そのお返しに、私は貴様が国に滞在することを許そう」
「良いんですか? 僕は呪われているし、国に被害が及ぶかもしれないんですよ?」
「……それは確かに、認められるものではない。しかし貴様を失うこと自体が国の破滅につながるのだ。貴様がそう思うのなら、自身でこの国を守ってくれると助かる」
コレムのそんな言葉に、ルネックスは反論することができなかった。
その強き覚悟と信念と信頼に、口を出すこと自体ができなかったのだ。
カツン。
靴の音が長く終わりの見えない廊下に響く。その先には王国の城の正門であり、国の象徴ともなるドアがあった。
そこから出てきた人影。
茶色いローブを羽織り、その取り巻き達も高級な装備をしている。
「僕らだけが、楽していられるわけがないよね」
ルネックスと、カレン、リンネ、シェリア、フレアル、そしてフェンラリアも。
門をくぐると、門番たちが体を曲げ、綺麗な一礼をしてくれた。
それを一瞥し、ルネックスはギルドへ走る。
「はあ、はぁ、はあ」
勿論それで体力が切れたりなどしないのだが、急激に走ったために息切れをしたのだ。
幾度も見て、もう慣れてしまったギルドのやけにお洒落な門。
ギィ、と重苦しくそれを開けてルネックス達は受付に向かった。
「Fランクの依頼で、何か戦闘系のモノはありますか?」
「はい、それでしたら少し危険ですがスライムダンジョン撃破の依頼があります。報酬もまあまあいいし、ダンジョンも三層までしかないので人気なのですが、何故か依頼を受けた者はだれも戻ってこないんです」
「はあ、分かりました。受けてみようと思います。みんなもそれでいいよね?」
「負ける気が……しない……」
「並の冒険者なんかに負けたら私達の名が落ちます!」
念のためみんなに確認したルネックスだが、答えは全員一致。
だってルネックスの実力だけでもAランク冒険者並なのにこれだけの強者が集まってしまったらもう何とも言いようがない。恐らくSランク以上になるだろう。
そしてフェンラリアは人間の範疇じゃ測れないためダンジョンが消し飛ばされないか不安だが、彼女も魔力の抑え方を覚えている。というかルネックスが叩き込んだ。
「分かりました。依頼書については私が処理しておきますので、皆様は安心して行ってください。こちらスライムダンジョンの地図です」
「へ、へぇ……本当に難しい依頼なんですね、細かいところまで」
「そうなんです。もしも貴方方が失敗することがあれば指定ランクが上がるところでした。もっとも、私は失敗するとは微塵も思っていませんし、思えませんがね」
信頼、というものを意識してみると、この受付嬢にも相当信頼されていることが分かった。
渡された地図は大きな基本的な大道から冒険者達が近道しようと作った小道や、転移門、トラップの大まかな位置までが指示されていた。
受付嬢から話を聞くと、冒険者達が次から次へと失敗する前は大道しか書かれていなかったのだという。
ちなみに昨日の深夜まで続いた国家反乱については国民もごく僅かしか知らない。
知っている者の殆どは目撃者や情報屋だ。そして情報を買った者達だ。
「では、ご健勝を祈っております」
「ありがとうございます!」
地図を持って、茶色のバッグに入れる。
ギルドのドアをもう一度開け、歩き出したルネックスに皆が付いて行く。
その際リンネが盛大に転んで泣き出してしまい、周りから白い目で見られてしまった。恐らくリア充爆発しろくらいのことを言われているのだろう。
そんな単語あったっけ。
「てんいつかう?」
「そうすると地図いらなかったね」
「まあ、そういうことで! 【転移】」
LVXXXXXXXXX。
ルネックスの脳内にそう響き、フェンラリアをみると悪戯にわらっていた。そしてそれと同時に皆で転移され、スライムダンジョンへようこそ的なBGMが辺り一面に響き渡った。
「えっと……これは何でしょう? なんで曲が流れるのですか?」
「分かんない……ダンジョン……来た事……ない……」
「みんなぁ! ダンジョンっていうのは、物によって設備が違うからぁ」
リンネのツッコミはごもっともだ。
まず、形を変えてしまうダンジョンもあるし、ダンジョンとは何が起こるかわからないものだ。そのためしっかり調べておいても何かに遭って死んでしまう可能性もある。
実際帰ってこなくなった冒険者達もきっとそんな感じなのだろう。
死んでるかは知らないが。
何が起こるかわからないためルネックスは短剣を抜いておく。
そして警戒しながらもダンジョン内に足を踏み込む。
「うわ、声が響くね」
「回声ですね。私はこの声が返ってくるときがとても好きです」
変わった趣味ですよね、とシェリアは続ける。
話した言葉、声、それが返ってくるということを回声と言っている。
と。
ここでスライムの大群と遭遇する。ルネックスの短剣が華麗に払われ、銀色の糸を結んだ後には残酷とも何とも言えないぷるぷるなスライムの死体が残った。
「スライムじゃ相手にならないよ。一番重要なのは、奥に何があるか」
「このだんじょんじゃまずるねっくすのあいてにならないよね」
「フェンラリアさん、それは貴方が言っていいことなんですか?」
「私でもぉ相手にならないからぁ、此処に居る誰も言えないよぉ?」
そうだった。
この中では魔物を一瞬で薙ぎ払ったフレアルがあろうことか最低戦力なのだ。
リンネはそれより上なので相手にならないし、その遥か上であるルネックスとフェンラリアの相手になるはずがないのだ。
奥に進まなければならない。
奥で一体何が起こっているのか、確かめなければならない。
「ねえ待って、このスライムの数はさすがに異常じゃない?」
「え? 此処まだ一階層だよね……話でもこんな話は聞いてないし」
「ダンジョンマスターがぁ、何かしたってぇいうこともぉ、あるかもしれないよぉ」
リンネの知識は本当に役に立つ。
先程大量のスライムをなぎ倒したばかりなのに、また同じくらいの数のスライムたちが出てきた。しかも前よりも可愛いというおまけつき。
もう一度短剣ですべて略殺し……
「行くよ!!」
ルネックスの属性である風を有効利用し、シールドを張る。
向かっていく魔物をそのシールドについでに足した風の針で刺す。向かってくる魔物たちはそれだけで全滅。
これが最後まで行く一番の方法だと思ったのだ。
『君には可能性を感じました』
アナウンスのような機械のようであり感情がこもっているかのような声が響いた。
反応するその前に、ルネックス達の足元に、転送陣。
転移魔法陣とは違い、転送陣はダンジョンマスターの希望する場所へ送られる。
リンネがそれを思い出し、ルネックスに伝えたときには、一同はすでに真ん中に水晶が置いてある恐らくボス部屋に転送されていた。
―――――どうなるルネックス達!?
毎度毎度夢に出てくるその単語を思い出すたびに心がぎゅう、と締め付けられる。ルネックスだけではなく、恐らくほかのメンバーも同じ気持ちだろう。
だって自分らは普通の人だと称して安全な街にいるのだ。
だって自分らは、本当は危険人物として拘束されるべきなのだから。
嘘をついている気分になり、どうしても安静にはできなかった。
「ねえルネックス、本当に良いの?」
「良くないとしても、追放があったとしても僕は事実を隠したくはないからね」
「そうですね。私も最近いやな予感が増してきているんです」
寝ていても、心が落ち着かない。
ルネックスに至っては夢の中で「もう……すぐ……」と囁きが聞こえるくらいになったのだ。
シェリア、フレアル、フェンラリア、ルネックスの四人で今コレムの部屋へ向かっている。ひとつは聖神のことを詳しく話すのと、昨日のリュスタたちの判決が上手く行っているかの質問が目的だ。
「きょむせいれいさまがはなしたように、ほんとうにうごきだしたらやっかいだよね」
「うん。フェンラリアが慕うくらいなんだし、虚無精霊さんの話は本当なんだと思う」
「そうだとしたらこの国を守れないかもしれないね」
「大変なことになりますね……反乱が終わったばかりなのに」
反乱をおさめながらも、ルネックス達は考えていたのだ。
いつこのことを話すか、あるいは自分達からこの国を出ていくのか。
「コレム様……いらっしゃいますか?」
コンコン、と軽くコレムの部屋のドアを叩いた。
コレムにとっては早い時間ではないが今は朝六時。この時間に人が訪れてくることはまず稀に無いだろう。
ルネックス達だということを確認し、コレムは彼らを部屋に入れた。
「……昨日の、判決は上手く行っていますか?」
「あぁ、大臣たちも渋々だが納得したようでリュスタ様も納得したんだ」
その表情は安堵に包まれていた。
余計、ルネックスの心は痛み、今から話すことをかみしめて言葉に出す。
「そして本題ですが……聖神は知っていますか」
「もちろん知っている、神でありながら邪神の称号を持つ禁忌なる神。それがどうかしたのか?」
「僕は、聖神に呪われている身です。ちょっと凄い人に「聖神が動く」と言われてしまったので此処に報告させていただきます……もしかしたら国が被害にあうかもしれません」
「うむ……」
「ですから、コレム様が望まなくとも僕はこの国から出ていく準備はできています。国に被害が出ないように、たくさんの場所を飛び回って聖神の注意力を分散させようと思っています」
しばしの、沈黙。
コレムは黙ってルネックスを見つめ、ルネックスは黙ってコレムを見つめた。
シェリア、フレアル、フェンラリアを襲ったのは恐怖感。もしもこれで住む場所を失ってしまったらと思うと、もしも迫害の対象になったらと思うと、恐怖は襲ってくるものなのだ。
しばらくして、コレムが口を開いた。
「私と貴様が築いた信頼を何だと思っている」
「へ?」
「あの時貴様は私に信頼を欲しがった。そしてそれだけでも私は驚き、喜んでいたのにさらに国まで救ってくれた。その時私が貴様に築いた信頼を、何だと思っている」
「僕は……それほど信頼されていたのですか?」
信頼なんて、されたことがない。
一言で言うとルネックスはボッチ生活で、信頼など築いたことがなかったし現時点でも気にしたことは無かった。
とんでもない信頼を築かれていた事なんて、全く気付いていなかった。
鈍い鈍い、と女性陣が喚いた。
「そのお返しに、私は貴様が国に滞在することを許そう」
「良いんですか? 僕は呪われているし、国に被害が及ぶかもしれないんですよ?」
「……それは確かに、認められるものではない。しかし貴様を失うこと自体が国の破滅につながるのだ。貴様がそう思うのなら、自身でこの国を守ってくれると助かる」
コレムのそんな言葉に、ルネックスは反論することができなかった。
その強き覚悟と信念と信頼に、口を出すこと自体ができなかったのだ。
カツン。
靴の音が長く終わりの見えない廊下に響く。その先には王国の城の正門であり、国の象徴ともなるドアがあった。
そこから出てきた人影。
茶色いローブを羽織り、その取り巻き達も高級な装備をしている。
「僕らだけが、楽していられるわけがないよね」
ルネックスと、カレン、リンネ、シェリア、フレアル、そしてフェンラリアも。
門をくぐると、門番たちが体を曲げ、綺麗な一礼をしてくれた。
それを一瞥し、ルネックスはギルドへ走る。
「はあ、はぁ、はあ」
勿論それで体力が切れたりなどしないのだが、急激に走ったために息切れをしたのだ。
幾度も見て、もう慣れてしまったギルドのやけにお洒落な門。
ギィ、と重苦しくそれを開けてルネックス達は受付に向かった。
「Fランクの依頼で、何か戦闘系のモノはありますか?」
「はい、それでしたら少し危険ですがスライムダンジョン撃破の依頼があります。報酬もまあまあいいし、ダンジョンも三層までしかないので人気なのですが、何故か依頼を受けた者はだれも戻ってこないんです」
「はあ、分かりました。受けてみようと思います。みんなもそれでいいよね?」
「負ける気が……しない……」
「並の冒険者なんかに負けたら私達の名が落ちます!」
念のためみんなに確認したルネックスだが、答えは全員一致。
だってルネックスの実力だけでもAランク冒険者並なのにこれだけの強者が集まってしまったらもう何とも言いようがない。恐らくSランク以上になるだろう。
そしてフェンラリアは人間の範疇じゃ測れないためダンジョンが消し飛ばされないか不安だが、彼女も魔力の抑え方を覚えている。というかルネックスが叩き込んだ。
「分かりました。依頼書については私が処理しておきますので、皆様は安心して行ってください。こちらスライムダンジョンの地図です」
「へ、へぇ……本当に難しい依頼なんですね、細かいところまで」
「そうなんです。もしも貴方方が失敗することがあれば指定ランクが上がるところでした。もっとも、私は失敗するとは微塵も思っていませんし、思えませんがね」
信頼、というものを意識してみると、この受付嬢にも相当信頼されていることが分かった。
渡された地図は大きな基本的な大道から冒険者達が近道しようと作った小道や、転移門、トラップの大まかな位置までが指示されていた。
受付嬢から話を聞くと、冒険者達が次から次へと失敗する前は大道しか書かれていなかったのだという。
ちなみに昨日の深夜まで続いた国家反乱については国民もごく僅かしか知らない。
知っている者の殆どは目撃者や情報屋だ。そして情報を買った者達だ。
「では、ご健勝を祈っております」
「ありがとうございます!」
地図を持って、茶色のバッグに入れる。
ギルドのドアをもう一度開け、歩き出したルネックスに皆が付いて行く。
その際リンネが盛大に転んで泣き出してしまい、周りから白い目で見られてしまった。恐らくリア充爆発しろくらいのことを言われているのだろう。
そんな単語あったっけ。
「てんいつかう?」
「そうすると地図いらなかったね」
「まあ、そういうことで! 【転移】」
LVXXXXXXXXX。
ルネックスの脳内にそう響き、フェンラリアをみると悪戯にわらっていた。そしてそれと同時に皆で転移され、スライムダンジョンへようこそ的なBGMが辺り一面に響き渡った。
「えっと……これは何でしょう? なんで曲が流れるのですか?」
「分かんない……ダンジョン……来た事……ない……」
「みんなぁ! ダンジョンっていうのは、物によって設備が違うからぁ」
リンネのツッコミはごもっともだ。
まず、形を変えてしまうダンジョンもあるし、ダンジョンとは何が起こるかわからないものだ。そのためしっかり調べておいても何かに遭って死んでしまう可能性もある。
実際帰ってこなくなった冒険者達もきっとそんな感じなのだろう。
死んでるかは知らないが。
何が起こるかわからないためルネックスは短剣を抜いておく。
そして警戒しながらもダンジョン内に足を踏み込む。
「うわ、声が響くね」
「回声ですね。私はこの声が返ってくるときがとても好きです」
変わった趣味ですよね、とシェリアは続ける。
話した言葉、声、それが返ってくるということを回声と言っている。
と。
ここでスライムの大群と遭遇する。ルネックスの短剣が華麗に払われ、銀色の糸を結んだ後には残酷とも何とも言えないぷるぷるなスライムの死体が残った。
「スライムじゃ相手にならないよ。一番重要なのは、奥に何があるか」
「このだんじょんじゃまずるねっくすのあいてにならないよね」
「フェンラリアさん、それは貴方が言っていいことなんですか?」
「私でもぉ相手にならないからぁ、此処に居る誰も言えないよぉ?」
そうだった。
この中では魔物を一瞬で薙ぎ払ったフレアルがあろうことか最低戦力なのだ。
リンネはそれより上なので相手にならないし、その遥か上であるルネックスとフェンラリアの相手になるはずがないのだ。
奥に進まなければならない。
奥で一体何が起こっているのか、確かめなければならない。
「ねえ待って、このスライムの数はさすがに異常じゃない?」
「え? 此処まだ一階層だよね……話でもこんな話は聞いてないし」
「ダンジョンマスターがぁ、何かしたってぇいうこともぉ、あるかもしれないよぉ」
リンネの知識は本当に役に立つ。
先程大量のスライムをなぎ倒したばかりなのに、また同じくらいの数のスライムたちが出てきた。しかも前よりも可愛いというおまけつき。
もう一度短剣ですべて略殺し……
「行くよ!!」
ルネックスの属性である風を有効利用し、シールドを張る。
向かっていく魔物をそのシールドについでに足した風の針で刺す。向かってくる魔物たちはそれだけで全滅。
これが最後まで行く一番の方法だと思ったのだ。
『君には可能性を感じました』
アナウンスのような機械のようであり感情がこもっているかのような声が響いた。
反応するその前に、ルネックス達の足元に、転送陣。
転移魔法陣とは違い、転送陣はダンジョンマスターの希望する場所へ送られる。
リンネがそれを思い出し、ルネックスに伝えたときには、一同はすでに真ん中に水晶が置いてある恐らくボス部屋に転送されていた。
―――――どうなるルネックス達!?
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