僕のブレスレットの中が最強だったのですが
じゅうはちかいめ 国家反乱かな?
公式の場。
ルネックス達は初めて公式の場である謁見の間に足を踏み込んだ。
中ではコレムが王座に座って真ん中に、両サイドに大臣たちが真剣な顔をしていた。
勿論ルネックスも笑っているわけではない、頭の中はとても焦っており現状をどう凌いでいこうかフェンラリアと相談しながら謁見の間にはいっていった。
「……コレム様」
ルネックス達は一度跪き、コレムに許可をもらってから立った。
「さて、皆がそろったところで今皆が此処にいる理由をまとめよう」
「コレム様」
「うむ。姉と側近が魔物を従えて大量の騎士や兵士、魔術師、宮廷魔術師と共にやってきた。それは恐らく私を暗殺ではなく真正面から殺すつもりなのだろう」
コレムが騎士から戦場報告がまとめてある羊皮紙を受けとってそう言った。
姉と側近は心を使う者ではなく、挑戦状を送る前に真正面から不意打ちで当たってきたのだ。
今朝、第一砦である砂漠の辺りを突破され、大聖海と呼ばれるこの国最大の海に迫っており、今ではもうすぐ突破される。
ルネックスも暇というわけではなく、昨日夜中から作戦を立てたりしていた。
「そこで今回それを真正面から対決させる者達は宮廷魔術師長とその配下たち、騎士団長とその配下たち、兵士長とその配下たち、全てをまとめるリーダーをルネックスに任せようと思う」
「国王様! いくらなんでもこいつらは初心者で対人戦などは……」
「うむ、私も当時は思ったのだが、彼の戦闘力は本物だ」
「しかし」
「私が決めたことだ。いざとなれば責任は全て私が負う。貴様らは何も言うことは無い」
こういわれてしまえば、ルネックスも責任重大である。プレッシャーをものともせず、ルネックスは国の反乱に立ち向かなければならないのだ。
しかしルネックスには勝つ自信しかなかった。
自分がケガをしてもフェンラリアが挑めばそれでいいのだ。
シェリアとフレアル、カレンは特に何も任されてはいないが、コレムとルネックスとも相談し、彼女たちのやる事は全て確認済みである。
しかしそれは非公式で、今公式の謁見の間で言うことはできない。
「……コレム様。戦闘準備が整いました」
「ハーライトか。分かった、ルネックスを連れて各団のリーダーと共に向かえ!!」
「了解です! ルネックス、行くぞ!」
「分かりました!!」
ハーライトが報告書を持って、それを騎士に渡すとルネックスと共に去っていった。
残された女子陣だが、何か言う勇気は出てこない。
「……国王様……わたしたち……もう行く……」
そういってカレンはフレアルとシェリアの手を引いて自分たちの居るべき場所へと駆ける。
その横顔はやけに真剣で、本気さが見えていた。
シェリアはその思いを汲み、身体強化をしてフレアルとカレンを追い越していく……。
「心強いな……うくっ……」
「コレム様!」
「国王様!?」
「皆! 医者を、医者を呼べッ!!」
ここ最近色々考えすぎてそれほどというか全く眠っていなかったため、コレムは熱を出していても頑張って職務をこなしていた。
その姿があまりにも勇敢で強かったため、誰も熱を出していたことに気付かなかった。
しかしここ、謁見の間でその疲れは見えてコレムは倒れてしまったのだ。
……
。。。
宮廷魔術師長、騎士団長、兵士長、そしてそれぞれの副団長とルネックス。
彼らは集まって戦闘用の一時的なテントに居た。
宮廷魔術師、騎士団、兵士は姉達の所にもこちらの半分ほどはある。そのためそれをきわめてくるとすると、厄介なものになる。
そのため兵力をどう使うかの相談をしていた。
ルネックスが作戦に入れていることについては大半がハーライトのおかげだ。
「どうしてもいい方法が浮かばんな。問題は兵士団をどこに置くかだ」
強くもなく、弱くもなく。それが兵士団というものだ。
最初に置くにしてもすぐに突破されては困る。そう宮廷魔術師長ミェールは言ったのだ。
「そうですね、兵士団は混ぜましょう」
「ほう、具体的に言うと?」
「最初に責めるのが宮廷魔術師だとして、その中に半分の兵士団を混ぜるのです。これならば物理攻撃も均等に入りますし、戦闘力が上がる予想が付きます」
「ほぉ」と傍にいた他のリーダーたちも感心していた。
ハーライトはまるで自分の事かのように誇らしげに胸を張っていた。
ルネックスも採用された気分でとても嬉しかった。
現状はきっと今ルネックスが出したこの計画で凌いでいくだろう。さらなる問題は混ぜるのが宮廷魔術師だとすると後の戦闘が持たないのだ。
しかし騎士団を混ぜると物理攻撃が集中してしまう。
ここはハーライトが活躍しようと思い、机に広げてある人物関係図を指さす。
「全体出すんじゃねぇ、副団長の俺が率いるグループと兵士団を混ぜる。後半戦は団長の率いるグループと兵士団を混ぜる。最終決戦があるのだとしたら騎士団全員で最後の打撃に向かう。どうだ?」
いうのは簡単だが実行は難しい。
副団長と団長の率いるグループは確かに分かれるが、強さ平均で分かれているため副団長の率いるグループは団長のグループよりも少々弱い。
騎士団長のウリームはしばらく考え込む。
「宮廷魔術師副団長と団長の率いるチームの組み合わせ。団長と副団長の率いるグループの組み合わせ、これで力は均等じゃい」
「問題はルネックス君をどこに置くかっスねぇ」
チームについてはウリームの考案したものにして、やはり最後には問題がルネックスに来た。兵士長ぺチレイラストの言葉には少々嫌味が込められている。
今ルネックスが何か言ったら間違いなく暗算されるため彼に任せることにする。
「実力見たいッスから最初と最後でいいッスか?」
「……どうぞ、僕は何処に置かれても反論はありません。こうして作戦会議に参加できていること自体が幸せなのですから」
「そうっスか、精一杯頑張るッスよ!」
いかにも先輩のようにぺチレイラストは語り掛けるが、その言葉に真意はないのはルネックスにもこの場にいる全員も分かっていた。
しかし罪を問うにしてもどうするにしても、まずはこの戦を食い止めなければいけない。
チーム整理などはぺチレイラストに任せられ、此処本陣に滞在するのはウリーム。ルネックスはもう今から現場に向かうことになっている。
誰にも見つからないようにこっそりフェンラリアが転移を使って現場に向かう。そのフェンラリアの横顔はとても不機嫌だった。その体から漏れる真っ黒なオーラはルネックスに震え上がらせた。
「るねっくす。ぜんぶおわらせよう、はやく聖神をたおさないといけないよ。らぐなろぐをおこそう……あたし、もういい、このせかいをはじめにもどす」
「フェンラリア」
「……?」
「難しい話はわからないよ。でもひとつだけ分かることがあるんだ。僕はフェンラリアが、僕を変えてくれたフェンラリアが一番大切で、一番傷つけたくない」
「なにがいいたいの?」
「たとえ君が何を望もうと僕はついていく。でもねフェンラリア……僕「は」その表情を望まないんだ」
「でもね」と言ったルネックスのそれからの言葉は、その声は恐ろしいほど低くて、何だか狂っている声で、いつもの優しさあふれる気持ちを感じさせてはくれなかった。
フェンラリアは自分が何を言ったか思い返す。
あぁ、自分が間違っていたのだと。
ルネックスをご主人様だと認めだのだから、彼の望まないことはしていけないし、前にも謝らせて経験していたのだ。
―――ルネックスに感情の大きな揺れ動きをもたらす出来事を与えてはいけない。
「うん、わかった……」
ルネックスから感じられたそれは、神聖な存在である者の中でも一番上である、創造全能神。ゼウスが創造全能神をやっているのは、単純にその力が一番上だったから。
しかし「それ」は創造全能神を遥かに超えていた。
転移が終わり、二人はゆっくりと、向かってくる宮廷魔術師の集団の真ん前に立った。
笑顔で。
フェンラリアは今、その姿を現している。どうしてか?? 死人は口を出せないからだ。
「な……なんだオマエ……突然現れやがって! 殺せぇええ!!」
中の一人が、声を上げる。
宮廷魔術師達は一斉に前進してくる。
フェンラリアが黒い笑みを浮かべた。ルネックスは微笑んだまま動かない。そして一歩下がり、フェンラリアが全魔力の内……一万分の一を引き出す。
「ふふふ……あたしのだいじなごしゅじんさまをころす? よくわかんないなぁ……どうやって?」
フェンラリアの威圧を乗せた声は全兵力の前進をぴたりと止めた。その深い紫の瞳はいま真紅に輝いていて、狂気を出していた。
全兵力が、死を覚悟した瞬間だった。
「【酷熱地獄LVXXX】!!」
LVXXXとは限界突破し、それがまたMAXになった時のレベルのことを言う。
それほどの魔術が全体に放たれ、全滅……とはいかなかった。
全兵力を盾にして、リーダー格の男性が出てきて、にこりと微笑んだ。国王の姉の方の宮廷魔術師の長、リュドネスだ。
「すごいねぇ……君たち、でも僕はもっとすごいかもしれないよぉ?」
「やっほーみなさぁん! 魔女のリンネだよぉ? 敵は何処かなぁ?」
紫色の髪をロングにして足まで延ばし、黒いとんがり帽子に身を包んだ少女。伝説の一族であり、契約が最も難しい種族が今、此処にいる。
フェンラリアは警戒し、リンネは「てへぺろ」という様子でそれを見つめる。
狂気を出したままのルネックスがそっとフェンラリアの肩をぽん、と叩く。
「リュドネスさんのほうは任せましたよ、フェンラリアさん」
「!? ごしゅじん、さま」
ルネックスはゆっくりとした歩みでリンネに歩み寄った。そして。
「負けるという恐怖を知らないようですね? 【創造全能神LVXXXXXXXXXXXXXX】」
そんなレベル、知らない。
そんなの恐怖でしかない。
リンネは自身の無力さを感じ、逃げ出そうとするもののリュドネスの契約によって阻まれる。
「リュドネスぅ! これを解いてぇ!! 助けてぇ!?」
「駄目だ。僕はこの精霊さんの相手をしないといけない、任せたよ」
「そんなぁ!?」
「あたしをあいてにするの? そっか【大精霊の嘆き】!!」
「あぁああぁぁぁぁああああ!! やめてぇ!」
魔女と契約した場合、主人が死ねばその魔女も死ぬ。
だからいまリンネは命の危機に迫られていたのだ。
しかもルネックスは今すでに攻撃の発動準備をしている。今契約が解けたとしても、リンネが死ぬのは免れない。
しかしそこは相手にする者が普通ではない。
「るねっくすおわったよ、じっこうするね! 【契約破棄】」
「えあ?」
ぱきん、とそんな音がして、リュドネスの心臓が貫かれるとともに、リンネの契約が破棄される。破棄されれば、その契約にいかなる呪いがかかっていても無効になる。
しかしこのスキルはユニークスキルだ。
リンネが信じられない、と言った顔でルネックスとフェンラリアを見つめる。
「ま、まさか! 強制的に何かをしようとしているのぉ!?」
「なわけないでしょ? るねっくすが、そんなひどいことしないって」
「できればなんだけどさ、僕の仲間になってくれたら嬉しいかな」
「え? 私を、仲間にって、そう言ったのぉ? 奴隷の方じゃなくてぇ?」
「えぇ……奴隷なら僕持ってるしさ、その子も奴隷としてじゃなくて「仲間」として扱ってるよ」
リンネはしばらくルネックスとフェンラリアを交互に見つめていた。
そして自分の手を見つめて、意を決したようにまたルネックスを見つめた。
「私、仲間になりますぅっ!!」
決まった。
戦闘能力が上がると共に、陰でルネックス達の勝ちが決まった。
もしかしたらこれ以上の戦闘は要らないかもしれない。
第二戦が始まる。騎士団&兵士団VSハーライト&団長の率いるグループという感じだ。
ハーライト達はすでにここまで来ていた。
ルネックスは後方に下がり、フェンラリアは姿を消し、リンネは何故此処に居るか報告した。
それもあっさりと勝ち、騎士&兵士団の団長は捕らえられた。
そして最終決戦へと向かう。
宮廷魔術師副団長、騎士団副団長、兵士団副団長の三人が向かってきた。
ルネックス達は初めて公式の場である謁見の間に足を踏み込んだ。
中ではコレムが王座に座って真ん中に、両サイドに大臣たちが真剣な顔をしていた。
勿論ルネックスも笑っているわけではない、頭の中はとても焦っており現状をどう凌いでいこうかフェンラリアと相談しながら謁見の間にはいっていった。
「……コレム様」
ルネックス達は一度跪き、コレムに許可をもらってから立った。
「さて、皆がそろったところで今皆が此処にいる理由をまとめよう」
「コレム様」
「うむ。姉と側近が魔物を従えて大量の騎士や兵士、魔術師、宮廷魔術師と共にやってきた。それは恐らく私を暗殺ではなく真正面から殺すつもりなのだろう」
コレムが騎士から戦場報告がまとめてある羊皮紙を受けとってそう言った。
姉と側近は心を使う者ではなく、挑戦状を送る前に真正面から不意打ちで当たってきたのだ。
今朝、第一砦である砂漠の辺りを突破され、大聖海と呼ばれるこの国最大の海に迫っており、今ではもうすぐ突破される。
ルネックスも暇というわけではなく、昨日夜中から作戦を立てたりしていた。
「そこで今回それを真正面から対決させる者達は宮廷魔術師長とその配下たち、騎士団長とその配下たち、兵士長とその配下たち、全てをまとめるリーダーをルネックスに任せようと思う」
「国王様! いくらなんでもこいつらは初心者で対人戦などは……」
「うむ、私も当時は思ったのだが、彼の戦闘力は本物だ」
「しかし」
「私が決めたことだ。いざとなれば責任は全て私が負う。貴様らは何も言うことは無い」
こういわれてしまえば、ルネックスも責任重大である。プレッシャーをものともせず、ルネックスは国の反乱に立ち向かなければならないのだ。
しかしルネックスには勝つ自信しかなかった。
自分がケガをしてもフェンラリアが挑めばそれでいいのだ。
シェリアとフレアル、カレンは特に何も任されてはいないが、コレムとルネックスとも相談し、彼女たちのやる事は全て確認済みである。
しかしそれは非公式で、今公式の謁見の間で言うことはできない。
「……コレム様。戦闘準備が整いました」
「ハーライトか。分かった、ルネックスを連れて各団のリーダーと共に向かえ!!」
「了解です! ルネックス、行くぞ!」
「分かりました!!」
ハーライトが報告書を持って、それを騎士に渡すとルネックスと共に去っていった。
残された女子陣だが、何か言う勇気は出てこない。
「……国王様……わたしたち……もう行く……」
そういってカレンはフレアルとシェリアの手を引いて自分たちの居るべき場所へと駆ける。
その横顔はやけに真剣で、本気さが見えていた。
シェリアはその思いを汲み、身体強化をしてフレアルとカレンを追い越していく……。
「心強いな……うくっ……」
「コレム様!」
「国王様!?」
「皆! 医者を、医者を呼べッ!!」
ここ最近色々考えすぎてそれほどというか全く眠っていなかったため、コレムは熱を出していても頑張って職務をこなしていた。
その姿があまりにも勇敢で強かったため、誰も熱を出していたことに気付かなかった。
しかしここ、謁見の間でその疲れは見えてコレムは倒れてしまったのだ。
……
。。。
宮廷魔術師長、騎士団長、兵士長、そしてそれぞれの副団長とルネックス。
彼らは集まって戦闘用の一時的なテントに居た。
宮廷魔術師、騎士団、兵士は姉達の所にもこちらの半分ほどはある。そのためそれをきわめてくるとすると、厄介なものになる。
そのため兵力をどう使うかの相談をしていた。
ルネックスが作戦に入れていることについては大半がハーライトのおかげだ。
「どうしてもいい方法が浮かばんな。問題は兵士団をどこに置くかだ」
強くもなく、弱くもなく。それが兵士団というものだ。
最初に置くにしてもすぐに突破されては困る。そう宮廷魔術師長ミェールは言ったのだ。
「そうですね、兵士団は混ぜましょう」
「ほう、具体的に言うと?」
「最初に責めるのが宮廷魔術師だとして、その中に半分の兵士団を混ぜるのです。これならば物理攻撃も均等に入りますし、戦闘力が上がる予想が付きます」
「ほぉ」と傍にいた他のリーダーたちも感心していた。
ハーライトはまるで自分の事かのように誇らしげに胸を張っていた。
ルネックスも採用された気分でとても嬉しかった。
現状はきっと今ルネックスが出したこの計画で凌いでいくだろう。さらなる問題は混ぜるのが宮廷魔術師だとすると後の戦闘が持たないのだ。
しかし騎士団を混ぜると物理攻撃が集中してしまう。
ここはハーライトが活躍しようと思い、机に広げてある人物関係図を指さす。
「全体出すんじゃねぇ、副団長の俺が率いるグループと兵士団を混ぜる。後半戦は団長の率いるグループと兵士団を混ぜる。最終決戦があるのだとしたら騎士団全員で最後の打撃に向かう。どうだ?」
いうのは簡単だが実行は難しい。
副団長と団長の率いるグループは確かに分かれるが、強さ平均で分かれているため副団長の率いるグループは団長のグループよりも少々弱い。
騎士団長のウリームはしばらく考え込む。
「宮廷魔術師副団長と団長の率いるチームの組み合わせ。団長と副団長の率いるグループの組み合わせ、これで力は均等じゃい」
「問題はルネックス君をどこに置くかっスねぇ」
チームについてはウリームの考案したものにして、やはり最後には問題がルネックスに来た。兵士長ぺチレイラストの言葉には少々嫌味が込められている。
今ルネックスが何か言ったら間違いなく暗算されるため彼に任せることにする。
「実力見たいッスから最初と最後でいいッスか?」
「……どうぞ、僕は何処に置かれても反論はありません。こうして作戦会議に参加できていること自体が幸せなのですから」
「そうっスか、精一杯頑張るッスよ!」
いかにも先輩のようにぺチレイラストは語り掛けるが、その言葉に真意はないのはルネックスにもこの場にいる全員も分かっていた。
しかし罪を問うにしてもどうするにしても、まずはこの戦を食い止めなければいけない。
チーム整理などはぺチレイラストに任せられ、此処本陣に滞在するのはウリーム。ルネックスはもう今から現場に向かうことになっている。
誰にも見つからないようにこっそりフェンラリアが転移を使って現場に向かう。そのフェンラリアの横顔はとても不機嫌だった。その体から漏れる真っ黒なオーラはルネックスに震え上がらせた。
「るねっくす。ぜんぶおわらせよう、はやく聖神をたおさないといけないよ。らぐなろぐをおこそう……あたし、もういい、このせかいをはじめにもどす」
「フェンラリア」
「……?」
「難しい話はわからないよ。でもひとつだけ分かることがあるんだ。僕はフェンラリアが、僕を変えてくれたフェンラリアが一番大切で、一番傷つけたくない」
「なにがいいたいの?」
「たとえ君が何を望もうと僕はついていく。でもねフェンラリア……僕「は」その表情を望まないんだ」
「でもね」と言ったルネックスのそれからの言葉は、その声は恐ろしいほど低くて、何だか狂っている声で、いつもの優しさあふれる気持ちを感じさせてはくれなかった。
フェンラリアは自分が何を言ったか思い返す。
あぁ、自分が間違っていたのだと。
ルネックスをご主人様だと認めだのだから、彼の望まないことはしていけないし、前にも謝らせて経験していたのだ。
―――ルネックスに感情の大きな揺れ動きをもたらす出来事を与えてはいけない。
「うん、わかった……」
ルネックスから感じられたそれは、神聖な存在である者の中でも一番上である、創造全能神。ゼウスが創造全能神をやっているのは、単純にその力が一番上だったから。
しかし「それ」は創造全能神を遥かに超えていた。
転移が終わり、二人はゆっくりと、向かってくる宮廷魔術師の集団の真ん前に立った。
笑顔で。
フェンラリアは今、その姿を現している。どうしてか?? 死人は口を出せないからだ。
「な……なんだオマエ……突然現れやがって! 殺せぇええ!!」
中の一人が、声を上げる。
宮廷魔術師達は一斉に前進してくる。
フェンラリアが黒い笑みを浮かべた。ルネックスは微笑んだまま動かない。そして一歩下がり、フェンラリアが全魔力の内……一万分の一を引き出す。
「ふふふ……あたしのだいじなごしゅじんさまをころす? よくわかんないなぁ……どうやって?」
フェンラリアの威圧を乗せた声は全兵力の前進をぴたりと止めた。その深い紫の瞳はいま真紅に輝いていて、狂気を出していた。
全兵力が、死を覚悟した瞬間だった。
「【酷熱地獄LVXXX】!!」
LVXXXとは限界突破し、それがまたMAXになった時のレベルのことを言う。
それほどの魔術が全体に放たれ、全滅……とはいかなかった。
全兵力を盾にして、リーダー格の男性が出てきて、にこりと微笑んだ。国王の姉の方の宮廷魔術師の長、リュドネスだ。
「すごいねぇ……君たち、でも僕はもっとすごいかもしれないよぉ?」
「やっほーみなさぁん! 魔女のリンネだよぉ? 敵は何処かなぁ?」
紫色の髪をロングにして足まで延ばし、黒いとんがり帽子に身を包んだ少女。伝説の一族であり、契約が最も難しい種族が今、此処にいる。
フェンラリアは警戒し、リンネは「てへぺろ」という様子でそれを見つめる。
狂気を出したままのルネックスがそっとフェンラリアの肩をぽん、と叩く。
「リュドネスさんのほうは任せましたよ、フェンラリアさん」
「!? ごしゅじん、さま」
ルネックスはゆっくりとした歩みでリンネに歩み寄った。そして。
「負けるという恐怖を知らないようですね? 【創造全能神LVXXXXXXXXXXXXXX】」
そんなレベル、知らない。
そんなの恐怖でしかない。
リンネは自身の無力さを感じ、逃げ出そうとするもののリュドネスの契約によって阻まれる。
「リュドネスぅ! これを解いてぇ!! 助けてぇ!?」
「駄目だ。僕はこの精霊さんの相手をしないといけない、任せたよ」
「そんなぁ!?」
「あたしをあいてにするの? そっか【大精霊の嘆き】!!」
「あぁああぁぁぁぁああああ!! やめてぇ!」
魔女と契約した場合、主人が死ねばその魔女も死ぬ。
だからいまリンネは命の危機に迫られていたのだ。
しかもルネックスは今すでに攻撃の発動準備をしている。今契約が解けたとしても、リンネが死ぬのは免れない。
しかしそこは相手にする者が普通ではない。
「るねっくすおわったよ、じっこうするね! 【契約破棄】」
「えあ?」
ぱきん、とそんな音がして、リュドネスの心臓が貫かれるとともに、リンネの契約が破棄される。破棄されれば、その契約にいかなる呪いがかかっていても無効になる。
しかしこのスキルはユニークスキルだ。
リンネが信じられない、と言った顔でルネックスとフェンラリアを見つめる。
「ま、まさか! 強制的に何かをしようとしているのぉ!?」
「なわけないでしょ? るねっくすが、そんなひどいことしないって」
「できればなんだけどさ、僕の仲間になってくれたら嬉しいかな」
「え? 私を、仲間にって、そう言ったのぉ? 奴隷の方じゃなくてぇ?」
「えぇ……奴隷なら僕持ってるしさ、その子も奴隷としてじゃなくて「仲間」として扱ってるよ」
リンネはしばらくルネックスとフェンラリアを交互に見つめていた。
そして自分の手を見つめて、意を決したようにまたルネックスを見つめた。
「私、仲間になりますぅっ!!」
決まった。
戦闘能力が上がると共に、陰でルネックス達の勝ちが決まった。
もしかしたらこれ以上の戦闘は要らないかもしれない。
第二戦が始まる。騎士団&兵士団VSハーライト&団長の率いるグループという感じだ。
ハーライト達はすでにここまで来ていた。
ルネックスは後方に下がり、フェンラリアは姿を消し、リンネは何故此処に居るか報告した。
それもあっさりと勝ち、騎士&兵士団の団長は捕らえられた。
そして最終決戦へと向かう。
宮廷魔術師副団長、騎士団副団長、兵士団副団長の三人が向かってきた。
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